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肉我
授からぬ者たち。
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あの日、世界は光に覆われた。
全ての人に1つずつ贈り物を届けるために。
かの者の名は「祝福」
目的は主の幸福を願うこと――願望を叶えることではなく。
全ての人に1つ。
同時に送られたイトラの「祝福」
後に、この日を神の恵み「奇跡の日」と人々は呼んだ。
祝福は光と土だけで活動できた、それぞれが使えた主の「幸福」を目的に行動をする。
食料を調達し、寝床を調達し、安全を確保する。
祝福は主の願望を叶えない。
それが主人の幸福につながるとは限らないから。
だから他人を攻撃したり、他人から奪ったりはしない。
それは争いを呼び、血を流す愚かな行為だと知っていたから。
あれから一年、灰色の者「祝福」は人々に受け入れられ始めた。
とても便利な子達だから。
イトラを失った日から丁度一年がたつ。
私はみんなで旅をしていた。もちろんストレに仕える祝福の「フクちゃん」も一緒に。
ズーミちゃんだけは地元、水の大陸アルケー湖に戻ったので、最初の一ヶ月は私達もそこに居た。
それ以降は「美味しいものを食べる」という当初の私の目的を基準に、風の大陸をゆっくりと旅をしている――建前上は。
本当はタチとの時間を過ごせれば何でもよかった。
彼女の残り時間は、私より遥かに少ない。
――なぜなら人間だから。
その上それを折りたたんで、好き勝手する力と体を得ている。
イトラを倒した直後は今後どうすればいいか迷いもしたけど、今となっては毎日を噛みしめることこそが、私の目的だ。
愛する人と。
「やはり……ポチさんは祝福と同化しているようですね。光の化身が贈り物をした際、ポチさんには特別な影響が現れたのでしょう」
風の化身ナビが、ポチ君の頭を撫でながら話をする。
場所は水の大陸アルケー湖の中、ズーミちゃんの部屋。
久しぶりの再会で、夜中だと言うのに大盛りあがりし、少し落ち着きを取り戻した頃。
「イトラの力で呼び込まれ、イトラの力を分け与えられたんだもんね……」
私はズーミちゃんと肩を組んだまま、ナビの結論に小さく頷く。
共に旅をしていた最中も彼女は各地を飛び回っていたのだ。
「光の化身という主人を失ったと共に、一人の人間として祝福を授かった……というわけじゃの」
隣で仲良く肩を揺らして居たズーミちゃんも、真面目な顔でポチ君を眺める。
この一年、変わらず犬なポチ君を。
「ポチ助が余りにも犬だったから、こうなった……ということでしょうか?」
祝福に肩を揉まれながら、ストレちゃんがふにゃけた顔で口を開く。
最初は「フクちゃん」に怯えていた彼女だけれど、自分だけに起こった異変ではない事、そしてフクちゃんの便利さに籠絡され、最近は寝る前のマッサージまで受け入れている。
「なぜ私には贈られてないのだ!!!」
酒に酔って頬を染めたタチが、不満全快で喚く。
ポチ君が余りにも犬になった理由と原因は、間違いなくこの人の影響だろう。
頭に懐かしのタコお面をつけた奇人の。
「お主は人とは呼べんじゃろう。」「お前を人として数えるわけないだろう。」
ストレとズーミが同時に、異なる言葉で同じ内容の意味をタチに投げつけた。
「なぜだ!!私だって祝福に色々と――」
「タチ。」
この手の彼女の騒ぎ方はもう馴れっ子だ。
村に立ち寄れば「あいつの体は良さそうだ」
街を通りすがれば「ヤツの具合はきっと良いぞ」
何に置いてもまずは「まぐわい」基準で人を見る。
しかも、良いところ探しがと~っても上手な良い子なので、結論は基本「いける」とだす。
さすが影の化身に、子を宿す能力と寿命の半分を捧げて「丈夫な体」を得ただけのことがある。
思考の出発も到達も同じ「すけべ」に繋がっている。
「タチはいいの。私がいるでしょ?」
「ナナ!!!」
「はいはい。そうやってすぐ物陰に連れ込もうとしない。誘い込むために愚痴ってるでしょ?」
この一年何度も繰り返したやり取りだ。
馴れはしても、ゆっくり弱火で「モチ」は焼ける。
もはや、この流れにしたいがタメにタチに誘導されている気しかしない。
飽きないのかな?っと思ってしまう事があった。
こういうやり取りだけじゃなくて、私という存在に。
タチは自由奔放で好き勝手。
色んな面も、色んな色も持っている。色欲の色が強すぎる所はあるものの、彼女が面白い人間であるのは確かだ。
それに比べて、私は地味。味も薄め。タチに比べれば無味無臭に近い。
「元神」という強烈な「前」はあるものの、ただそれだけ。
並んで過ごすと余計に感じてしまうことがある、私で足りているのだろうか?飽きたりしないのだろうか?と。
そんな思いが強くなった夜。
私はそれをそのまま口にした。
だって、タチが一日に百回は「どうした?悩み事か?」って聞いてくるから。
当然、私のお悩みは爆笑で返された。
そしてもちろん、お仕置きされた。言うまでもなくエッチなヤツを。
どんなことも彼女の「おかず」になって美味しく頂かれるのが関の山だ。
「そうだ!イトラの贈り物などいらん!!私にはナナが贈られている!!いや!私が勝ち取ったのだ!!!」
「そういうこと」
馴れているが、不思議でもある。タチ中に何が詰まっているのか。
飽きられるかもという不安は、愚痴った夜からほとんど消えた。
だってこの一年毎日抱かれたから。
ほぼ、ではない。普通に毎日。
そんな環境で不安になるのはバチがあたると言うものだ。――神不在の今、誰から貰うのかわからないけど。
「お先に失礼してもいいですか?チビ様」
夕方に着いて、長いこと続いた馬鹿騒ぎに疲れたのだろう。
ゆいつ贈り物を貰えた真人間ストレちゃんは、既に半分閉じた瞳を私に向ける。
「どうぞどうぞ。良い夢見てね」
「ありがとうございます。チビ様」
何かと律儀に確認を求めるストレちゃん。
自らも仕える者を従える事になったが、私との関係に変わりはない。
彼女はフクちゃんを連れ、部屋の隅で横になった。
フクちゃんの膝枕で。
「いいな~。フクちゃん膝で寝ると、絶対にいい夢みれるんだって。知ってたズーミちゃん?」
「知っとるよ。アルケーの連中も話しとった。起きたくなくなるぐらい良い夢が見れるとの」
祝福の能力の1つ。主に穏やかな夜、幸福な夢を見せてくれるという素敵パワー。
実は一度、ストレのフクちゃんのお膝を借りて寝てみた事があるがダメだった。
私が主じゃないからか、人間じゃない判定なのかは分からないが、たぶんどちらかが原因で。
「ナナ」
ニコニコ笑顔のタチが自らの二の腕を叩く。
最強寝落ちのタチ枕を。
「夢を見てみたいな~って話。タチ枕は安眠快眠だけど、気づいたら朝だもん」
「不満か!?」
「ないってば。タチが最強に依存ございません」
「だろう!寝ている時間などもったいないだけだ、私と寝ればすぐに元気一杯で起きられる!だが浮気してもいいのだぞ?それでも私は決して離さないからな!!」
タチがこんなに大声で笑っても、ストレちゃんは気持ちよさそうに寝ている。
いったいどんな夢をみているのだろう?
私が見るとしたら、どんな夢なんだろう?
夢で覚えている事といえば、タチと離れていた頃だ。
悪夢だったけど、嫌というほど見せつけられた。
タチの首が飛ぶ場面。
「タチはさ、悪夢とかみたことある?」
私に抱きついてきたタチの鼻をつつき、浮かんだ疑問を口にする。
私の心得の1つ。思ったらできるだけ口にしよう。タチ相手には。
タチなら何を言っても気を悪くすることも無いし、気を使い黙る方が嫌がるから。
「見るぞ。ナナとはぐれた時には見ていた……気がする!」
「一緒だね。今私もその事を考えてたの――っていうか「気がする」って。忘れたの?」
「忘れた!!だが、見ていたな。たぶん」
彼女が言う通り見ていたのだろう、そしてなんとなく感覚は残っていて夢の内容とか詳細とかは忘れたのだ。
タチは興味無いことはすぐ忘れるしそもそも覚えないから。
私と過ごした日々はちゃんと覚えてくれているのだろうか?
「だが、その時感じた恐怖も焦りも本物だぞ?その全てが私のモノだ!!忘れる事があってもナナと過ごした時間が最高なことに変わりはない!!」
「……その人の考え読んで勝手に答えるの、時々怖いこともあるからね?」
私の表情から勝手に察して、勝手に答えるタチ。
真っ直ぐすぎる瞳で何度も見透かされ、何度も唇を強奪された。
そんでもって、してやった顔でニヤリと笑うのだ、コイツは。
「ハッハッハ!私が与えた恐怖だぞ!!私が感じた恐怖だってナナをこんなにも愛した私だけの宝物だ!!」
「忘れたのに?」
「忘れてもだ!!」
タチは感情が豊かだ。そんな所も好きだ。
怒るし、笑うし、子供みたいに苛立っている事も多い。
だけど、悲観はしない。
そう、それが彼女の強さの隠し味なのかもしれない。
「いい雰囲気でチューしそうな所わるいがの、わらわもそろそろ眠いぞ」
ズーミちゃんがタチの頭からタコ面を取り、大切そうに壁にかける。
「ちょっとまってね、キスだけ軽く済ませるから」
「よいよい、勝手にやっとれ今更とめん」
この状態で放置すると、タチは余計に火がつくタイプなのでご褒美を与えなければいけないのだ。
別にやっぱり素敵だなって、再確認して私がキスしたいわけじゃない。
「まぁ~待てズーミ、久しぶりにタチ枕で寝ていけ」
「ここはわらわの家じゃ!!なんでちょっと寄ってけみたいにお主が……まぁ良い。さっさとチュッチュ済ませろ」
そんなこんなでご褒美のキスをあげた後、3人で仲良く眠りについた。
軽くチュチュっとした後、別に止めないと言ったズーミちゃんに「いい加減にせい!」と怒られてから、最強安眠タチ枕で。
全ての人に1つずつ贈り物を届けるために。
かの者の名は「祝福」
目的は主の幸福を願うこと――願望を叶えることではなく。
全ての人に1つ。
同時に送られたイトラの「祝福」
後に、この日を神の恵み「奇跡の日」と人々は呼んだ。
祝福は光と土だけで活動できた、それぞれが使えた主の「幸福」を目的に行動をする。
食料を調達し、寝床を調達し、安全を確保する。
祝福は主の願望を叶えない。
それが主人の幸福につながるとは限らないから。
だから他人を攻撃したり、他人から奪ったりはしない。
それは争いを呼び、血を流す愚かな行為だと知っていたから。
あれから一年、灰色の者「祝福」は人々に受け入れられ始めた。
とても便利な子達だから。
イトラを失った日から丁度一年がたつ。
私はみんなで旅をしていた。もちろんストレに仕える祝福の「フクちゃん」も一緒に。
ズーミちゃんだけは地元、水の大陸アルケー湖に戻ったので、最初の一ヶ月は私達もそこに居た。
それ以降は「美味しいものを食べる」という当初の私の目的を基準に、風の大陸をゆっくりと旅をしている――建前上は。
本当はタチとの時間を過ごせれば何でもよかった。
彼女の残り時間は、私より遥かに少ない。
――なぜなら人間だから。
その上それを折りたたんで、好き勝手する力と体を得ている。
イトラを倒した直後は今後どうすればいいか迷いもしたけど、今となっては毎日を噛みしめることこそが、私の目的だ。
愛する人と。
「やはり……ポチさんは祝福と同化しているようですね。光の化身が贈り物をした際、ポチさんには特別な影響が現れたのでしょう」
風の化身ナビが、ポチ君の頭を撫でながら話をする。
場所は水の大陸アルケー湖の中、ズーミちゃんの部屋。
久しぶりの再会で、夜中だと言うのに大盛りあがりし、少し落ち着きを取り戻した頃。
「イトラの力で呼び込まれ、イトラの力を分け与えられたんだもんね……」
私はズーミちゃんと肩を組んだまま、ナビの結論に小さく頷く。
共に旅をしていた最中も彼女は各地を飛び回っていたのだ。
「光の化身という主人を失ったと共に、一人の人間として祝福を授かった……というわけじゃの」
隣で仲良く肩を揺らして居たズーミちゃんも、真面目な顔でポチ君を眺める。
この一年、変わらず犬なポチ君を。
「ポチ助が余りにも犬だったから、こうなった……ということでしょうか?」
祝福に肩を揉まれながら、ストレちゃんがふにゃけた顔で口を開く。
最初は「フクちゃん」に怯えていた彼女だけれど、自分だけに起こった異変ではない事、そしてフクちゃんの便利さに籠絡され、最近は寝る前のマッサージまで受け入れている。
「なぜ私には贈られてないのだ!!!」
酒に酔って頬を染めたタチが、不満全快で喚く。
ポチ君が余りにも犬になった理由と原因は、間違いなくこの人の影響だろう。
頭に懐かしのタコお面をつけた奇人の。
「お主は人とは呼べんじゃろう。」「お前を人として数えるわけないだろう。」
ストレとズーミが同時に、異なる言葉で同じ内容の意味をタチに投げつけた。
「なぜだ!!私だって祝福に色々と――」
「タチ。」
この手の彼女の騒ぎ方はもう馴れっ子だ。
村に立ち寄れば「あいつの体は良さそうだ」
街を通りすがれば「ヤツの具合はきっと良いぞ」
何に置いてもまずは「まぐわい」基準で人を見る。
しかも、良いところ探しがと~っても上手な良い子なので、結論は基本「いける」とだす。
さすが影の化身に、子を宿す能力と寿命の半分を捧げて「丈夫な体」を得ただけのことがある。
思考の出発も到達も同じ「すけべ」に繋がっている。
「タチはいいの。私がいるでしょ?」
「ナナ!!!」
「はいはい。そうやってすぐ物陰に連れ込もうとしない。誘い込むために愚痴ってるでしょ?」
この一年何度も繰り返したやり取りだ。
馴れはしても、ゆっくり弱火で「モチ」は焼ける。
もはや、この流れにしたいがタメにタチに誘導されている気しかしない。
飽きないのかな?っと思ってしまう事があった。
こういうやり取りだけじゃなくて、私という存在に。
タチは自由奔放で好き勝手。
色んな面も、色んな色も持っている。色欲の色が強すぎる所はあるものの、彼女が面白い人間であるのは確かだ。
それに比べて、私は地味。味も薄め。タチに比べれば無味無臭に近い。
「元神」という強烈な「前」はあるものの、ただそれだけ。
並んで過ごすと余計に感じてしまうことがある、私で足りているのだろうか?飽きたりしないのだろうか?と。
そんな思いが強くなった夜。
私はそれをそのまま口にした。
だって、タチが一日に百回は「どうした?悩み事か?」って聞いてくるから。
当然、私のお悩みは爆笑で返された。
そしてもちろん、お仕置きされた。言うまでもなくエッチなヤツを。
どんなことも彼女の「おかず」になって美味しく頂かれるのが関の山だ。
「そうだ!イトラの贈り物などいらん!!私にはナナが贈られている!!いや!私が勝ち取ったのだ!!!」
「そういうこと」
馴れているが、不思議でもある。タチ中に何が詰まっているのか。
飽きられるかもという不安は、愚痴った夜からほとんど消えた。
だってこの一年毎日抱かれたから。
ほぼ、ではない。普通に毎日。
そんな環境で不安になるのはバチがあたると言うものだ。――神不在の今、誰から貰うのかわからないけど。
「お先に失礼してもいいですか?チビ様」
夕方に着いて、長いこと続いた馬鹿騒ぎに疲れたのだろう。
ゆいつ贈り物を貰えた真人間ストレちゃんは、既に半分閉じた瞳を私に向ける。
「どうぞどうぞ。良い夢見てね」
「ありがとうございます。チビ様」
何かと律儀に確認を求めるストレちゃん。
自らも仕える者を従える事になったが、私との関係に変わりはない。
彼女はフクちゃんを連れ、部屋の隅で横になった。
フクちゃんの膝枕で。
「いいな~。フクちゃん膝で寝ると、絶対にいい夢みれるんだって。知ってたズーミちゃん?」
「知っとるよ。アルケーの連中も話しとった。起きたくなくなるぐらい良い夢が見れるとの」
祝福の能力の1つ。主に穏やかな夜、幸福な夢を見せてくれるという素敵パワー。
実は一度、ストレのフクちゃんのお膝を借りて寝てみた事があるがダメだった。
私が主じゃないからか、人間じゃない判定なのかは分からないが、たぶんどちらかが原因で。
「ナナ」
ニコニコ笑顔のタチが自らの二の腕を叩く。
最強寝落ちのタチ枕を。
「夢を見てみたいな~って話。タチ枕は安眠快眠だけど、気づいたら朝だもん」
「不満か!?」
「ないってば。タチが最強に依存ございません」
「だろう!寝ている時間などもったいないだけだ、私と寝ればすぐに元気一杯で起きられる!だが浮気してもいいのだぞ?それでも私は決して離さないからな!!」
タチがこんなに大声で笑っても、ストレちゃんは気持ちよさそうに寝ている。
いったいどんな夢をみているのだろう?
私が見るとしたら、どんな夢なんだろう?
夢で覚えている事といえば、タチと離れていた頃だ。
悪夢だったけど、嫌というほど見せつけられた。
タチの首が飛ぶ場面。
「タチはさ、悪夢とかみたことある?」
私に抱きついてきたタチの鼻をつつき、浮かんだ疑問を口にする。
私の心得の1つ。思ったらできるだけ口にしよう。タチ相手には。
タチなら何を言っても気を悪くすることも無いし、気を使い黙る方が嫌がるから。
「見るぞ。ナナとはぐれた時には見ていた……気がする!」
「一緒だね。今私もその事を考えてたの――っていうか「気がする」って。忘れたの?」
「忘れた!!だが、見ていたな。たぶん」
彼女が言う通り見ていたのだろう、そしてなんとなく感覚は残っていて夢の内容とか詳細とかは忘れたのだ。
タチは興味無いことはすぐ忘れるしそもそも覚えないから。
私と過ごした日々はちゃんと覚えてくれているのだろうか?
「だが、その時感じた恐怖も焦りも本物だぞ?その全てが私のモノだ!!忘れる事があってもナナと過ごした時間が最高なことに変わりはない!!」
「……その人の考え読んで勝手に答えるの、時々怖いこともあるからね?」
私の表情から勝手に察して、勝手に答えるタチ。
真っ直ぐすぎる瞳で何度も見透かされ、何度も唇を強奪された。
そんでもって、してやった顔でニヤリと笑うのだ、コイツは。
「ハッハッハ!私が与えた恐怖だぞ!!私が感じた恐怖だってナナをこんなにも愛した私だけの宝物だ!!」
「忘れたのに?」
「忘れてもだ!!」
タチは感情が豊かだ。そんな所も好きだ。
怒るし、笑うし、子供みたいに苛立っている事も多い。
だけど、悲観はしない。
そう、それが彼女の強さの隠し味なのかもしれない。
「いい雰囲気でチューしそうな所わるいがの、わらわもそろそろ眠いぞ」
ズーミちゃんがタチの頭からタコ面を取り、大切そうに壁にかける。
「ちょっとまってね、キスだけ軽く済ませるから」
「よいよい、勝手にやっとれ今更とめん」
この状態で放置すると、タチは余計に火がつくタイプなのでご褒美を与えなければいけないのだ。
別にやっぱり素敵だなって、再確認して私がキスしたいわけじゃない。
「まぁ~待てズーミ、久しぶりにタチ枕で寝ていけ」
「ここはわらわの家じゃ!!なんでちょっと寄ってけみたいにお主が……まぁ良い。さっさとチュッチュ済ませろ」
そんなこんなでご褒美のキスをあげた後、3人で仲良く眠りについた。
軽くチュチュっとした後、別に止めないと言ったズーミちゃんに「いい加減にせい!」と怒られてから、最強安眠タチ枕で。
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