強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

文字の大きさ
上 下
18 / 44
強欲な甘い結婚

佑磨の申し出(2)

しおりを挟む
「えっ、買っていただけるんですか? こんな土地を?」

 父は驚いて、佑磨さんといびつな形をした土地の図面を交互に見る。

 家を建てるには不自由な形の土地だ。あっさりと購入するなどという佑磨さんに驚くのは無理がない。

「はい。もう一つ、こちらの土地には埋没物があるとのことですが、地盤調査を行なったことがあるということでしょうか?」
「ああ……、それは。そういう書類はいっさい出てこないので、花里のお義祖父じいさんがそう言っていた、という話だと思います」
「わかりました。私どもは、埋没物がある可能性は低いと考えています」
「本当ですか?」
「そう考えています」
「じゃあ、お義祖父さんがうそを? いったい、なんで。真由は何か聞いてるか?」

 父は尋ねるが、母はわからないと首を振る。

「何も埋まってないなら、安心だよな。でも、万が一のときはうちが負担しないといけないですよね。それは困るな……」
「ご安心ください。すべて、我が社が負担いたします」
「すべて……負担っ?」
「はい。相続税の用意もあります」
「相続税の用意って……」

 困惑顔の父にかまわず、佑磨さんは振り返る。

「天ヶ瀬、西川さんにお見せして」

 彼がそう言うと、天ヶ瀬さんはアタッシュケースを開き、中身を両親の方へ向けた。

 息を飲む。そこには、見たこともない量の札束が入っていた。

「諸々の手続き、それにかかる費用も私どもがすべて請け負います。西川さんには、土地に関するすべての事由を、海堂リゾートに委託するという旨の書類にサインをいただけるだけで結構です」

 佑磨さんがそう言うと、天ヶ瀬さんが契約書をテーブルの上に置いた。委任状と書いてある。

「なんで、海堂さんがうちのために、そんな……。あの……、大変言いにくいのですが、親切にしていただくいわれもないので、この話をお受けするのは……」
「ああ、もう二つ、言い忘れていました」
「二つ……?」

 不安げな父に、佑磨さんは淡々と言う。

「一つは、西川つばささんと私との結婚を認めていただきたい。もう一つは、明日以降、つばささんを秘書の天ヶ瀬に預けていただき、海堂グループにふさわしい女性となっていただけるよう、教育を受けていただきたい。そういうわけですので、いわれもないわけではないのです」
「つばさと海堂さんが、結婚っ?」

 びっくりして声をあげた父が、私を凝視する。私だって、びっくりしてる。そんな話をするなんて、聞いてない。

 私は何も知らないと首を振って、佑磨さんを見上げるが、彼の横顔には清々しさがあった。

「いかがでしょう。ご納得いただけますでしょうか?」

 佑磨さんが父に詰め寄るように問うと、母が口を開く。

「つまり、相続税の肩代わりをするから、つばさちゃんとの結婚を認めろと……?」

 非難がましい目を母はする。

 佑磨さんは眉をひそめ、物言いたげに口を開いたが、何か言う前に、母が私に目を移した。

「つばさちゃんはいいの? 海堂さんと結婚だなんて……」
「あ……、えっと……」

 なんて答えたらいいのだろう。

 佑磨さんとお付き合いしたい気持ちはある。まだ知り合って数日だけど、毎日のように求婚してくれて、私のために時間を割いてくれている。

 もっともっとお付き合いを重ねて、お互いに好きって気持ちを確かめ合って結婚できるなら……と思うけど、目の前には現実がある。

 両親を助けるために、今すぐ彼との結婚を決めなきゃいけないなら、私の答えは一つだけだと思う。

「海堂さんには前からお付き合いしたいって言われてて……、だからその、急だとは思ってるけど、お父さんたちが助かるなら、結婚してもいいかなって思ってる」

 売れない土地を海堂グループが購入してくれるなら、両親はまとまった収入が得られるし、今より生活しやすくなると思う。父だって、お嬢さま育ちの母に苦労させてるのは申し訳ないと言っていたじゃないか。

「そういうことなら……」

 母は不安げだったが、佑磨さんに頭をさげた。

「娘のことは、できる限りの教育をして育ててきたつもりでいます。それでも、海堂さんのところへ嫁ぐとなると、やはり心配はあります。そちらの秘書の方にいろいろと教えていただけるなら心強いですし、土地の件に関しましては感謝しかありません。どうか、つばさをよろしくお願いします」
「つばささんを、必ず大切にします」

 そう答えた佑磨さんは、満足そうに、そして、うれしそうに微笑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

あざとい後輩に彼氏を奪われそれでもめげずに頑張っていたらとんでもないイケメンに言い寄られた話

ももくり
恋愛
同じ部署の誠一郎と付き合っていた希代は、ある日突然別れを告げられる。どうやら、あざといと評判の新入社員・早緒莉に奪われてしまったらしい。──ふん!どうせ私なんか、寿司屋のおまかせ10貫セットの中で、マグロやウニに紛れて堂々としているカンピョウ巻きみたいな存在の女ですよッ。…うまい具合に部署異動の話が出て、新天地のデジタルコンテンツ部でオタサーの姫状態となってしまう希代。更になぜか伝説のイケメンまで接近してきて…。※『私たちは恋をする生き物です』の御門圭がメインの物語ですが、あちらを未読でも全然大丈夫です。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結・R18】姫様の玩具にされたメイドと騎士

ハリエニシダ・レン
恋愛
メイドさんが片思いの相手と無理矢理エッチなことをさせられて精神的にガツガツ傷つけられていきます。 巻き込まれた騎士はプライドをズタズタにされます。 姫様はそれを楽しみます。 徐々にエロく切なくなっていく方式 ◻︎◾︎◻︎◾︎◻︎ あらすじ 王宮で働くメイドのミリアは、一人の騎士に憧れを抱いていた。 もちろん身分が高く人気も高い彼と結婚できるなどとは思っていなかった。たまに見かけた時などに、その姿をそっと目に焼き付けては後で思い返してうっとりする。 その程度の淡い想いだった。 しかし、その想いに姫が気づいた。 姫はとても退屈していた。 とても。 だから、そのメイドでちょっと退屈を紛らわしたくなったのだ。 ちょっと純潔を失わせて、その心をボロボロにしてみたくなったのだ。 ほんの気まぐれ。 ちょっとした退屈しのぎ。 これは、そんな姫に狙われた二人の物語。 ◻︎◾︎◻︎◾︎◻︎ お知らせ: リチャードの奥様のスピンオフ「なにぶん、貴族の夫婦ですので」を公開しました。完結済み。 そちらはR15ですが、よろしければどうぞ。 姫様の乱れる姿が見たい!それを鑑賞するミリア達も!というリクエストに応えようとしてできた、ちょっとはっちゃけ過ぎの陵辱微百合エンド「下々を玩具にした姫の末路」も公開しました。 全4話、完結済みです。

処理中です...