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強欲な甘い結婚
佑磨の申し出(2)
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「えっ、買っていただけるんですか? こんな土地を?」
父は驚いて、佑磨さんといびつな形をした土地の図面を交互に見る。
家を建てるには不自由な形の土地だ。あっさりと購入するなどという佑磨さんに驚くのは無理がない。
「はい。もう一つ、こちらの土地には埋没物があるとのことですが、地盤調査を行なったことがあるということでしょうか?」
「ああ……、それは。そういう書類はいっさい出てこないので、花里のお義祖父さんがそう言っていた、という話だと思います」
「わかりました。私どもは、埋没物がある可能性は低いと考えています」
「本当ですか?」
「そう考えています」
「じゃあ、お義祖父さんがうそを? いったい、なんで。真由は何か聞いてるか?」
父は尋ねるが、母はわからないと首を振る。
「何も埋まってないなら、安心だよな。でも、万が一のときはうちが負担しないといけないですよね。それは困るな……」
「ご安心ください。すべて、我が社が負担いたします」
「すべて……負担っ?」
「はい。相続税の用意もあります」
「相続税の用意って……」
困惑顔の父にかまわず、佑磨さんは振り返る。
「天ヶ瀬、西川さんにお見せして」
彼がそう言うと、天ヶ瀬さんはアタッシュケースを開き、中身を両親の方へ向けた。
息を飲む。そこには、見たこともない量の札束が入っていた。
「諸々の手続き、それにかかる費用も私どもがすべて請け負います。西川さんには、土地に関するすべての事由を、海堂リゾートに委託するという旨の書類にサインをいただけるだけで結構です」
佑磨さんがそう言うと、天ヶ瀬さんが契約書をテーブルの上に置いた。委任状と書いてある。
「なんで、海堂さんがうちのために、そんな……。あの……、大変言いにくいのですが、親切にしていただくいわれもないので、この話をお受けするのは……」
「ああ、もう二つ、言い忘れていました」
「二つ……?」
不安げな父に、佑磨さんは淡々と言う。
「一つは、西川つばささんと私との結婚を認めていただきたい。もう一つは、明日以降、つばささんを秘書の天ヶ瀬に預けていただき、海堂グループにふさわしい女性となっていただけるよう、教育を受けていただきたい。そういうわけですので、いわれもないわけではないのです」
「つばさと海堂さんが、結婚っ?」
びっくりして声をあげた父が、私を凝視する。私だって、びっくりしてる。そんな話をするなんて、聞いてない。
私は何も知らないと首を振って、佑磨さんを見上げるが、彼の横顔には清々しさがあった。
「いかがでしょう。ご納得いただけますでしょうか?」
佑磨さんが父に詰め寄るように問うと、母が口を開く。
「つまり、相続税の肩代わりをするから、つばさちゃんとの結婚を認めろと……?」
非難がましい目を母はする。
佑磨さんは眉をひそめ、物言いたげに口を開いたが、何か言う前に、母が私に目を移した。
「つばさちゃんはいいの? 海堂さんと結婚だなんて……」
「あ……、えっと……」
なんて答えたらいいのだろう。
佑磨さんとお付き合いしたい気持ちはある。まだ知り合って数日だけど、毎日のように求婚してくれて、私のために時間を割いてくれている。
もっともっとお付き合いを重ねて、お互いに好きって気持ちを確かめ合って結婚できるなら……と思うけど、目の前には現実がある。
両親を助けるために、今すぐ彼との結婚を決めなきゃいけないなら、私の答えは一つだけだと思う。
「海堂さんには前からお付き合いしたいって言われてて……、だからその、急だとは思ってるけど、お父さんたちが助かるなら、結婚してもいいかなって思ってる」
売れない土地を海堂グループが購入してくれるなら、両親はまとまった収入が得られるし、今より生活しやすくなると思う。父だって、お嬢さま育ちの母に苦労させてるのは申し訳ないと言っていたじゃないか。
「そういうことなら……」
母は不安げだったが、佑磨さんに頭をさげた。
「娘のことは、できる限りの教育をして育ててきたつもりでいます。それでも、海堂さんのところへ嫁ぐとなると、やはり心配はあります。そちらの秘書の方にいろいろと教えていただけるなら心強いですし、土地の件に関しましては感謝しかありません。どうか、つばさをよろしくお願いします」
「つばささんを、必ず大切にします」
そう答えた佑磨さんは、満足そうに、そして、うれしそうに微笑んだ。
父は驚いて、佑磨さんといびつな形をした土地の図面を交互に見る。
家を建てるには不自由な形の土地だ。あっさりと購入するなどという佑磨さんに驚くのは無理がない。
「はい。もう一つ、こちらの土地には埋没物があるとのことですが、地盤調査を行なったことがあるということでしょうか?」
「ああ……、それは。そういう書類はいっさい出てこないので、花里のお義祖父さんがそう言っていた、という話だと思います」
「わかりました。私どもは、埋没物がある可能性は低いと考えています」
「本当ですか?」
「そう考えています」
「じゃあ、お義祖父さんがうそを? いったい、なんで。真由は何か聞いてるか?」
父は尋ねるが、母はわからないと首を振る。
「何も埋まってないなら、安心だよな。でも、万が一のときはうちが負担しないといけないですよね。それは困るな……」
「ご安心ください。すべて、我が社が負担いたします」
「すべて……負担っ?」
「はい。相続税の用意もあります」
「相続税の用意って……」
困惑顔の父にかまわず、佑磨さんは振り返る。
「天ヶ瀬、西川さんにお見せして」
彼がそう言うと、天ヶ瀬さんはアタッシュケースを開き、中身を両親の方へ向けた。
息を飲む。そこには、見たこともない量の札束が入っていた。
「諸々の手続き、それにかかる費用も私どもがすべて請け負います。西川さんには、土地に関するすべての事由を、海堂リゾートに委託するという旨の書類にサインをいただけるだけで結構です」
佑磨さんがそう言うと、天ヶ瀬さんが契約書をテーブルの上に置いた。委任状と書いてある。
「なんで、海堂さんがうちのために、そんな……。あの……、大変言いにくいのですが、親切にしていただくいわれもないので、この話をお受けするのは……」
「ああ、もう二つ、言い忘れていました」
「二つ……?」
不安げな父に、佑磨さんは淡々と言う。
「一つは、西川つばささんと私との結婚を認めていただきたい。もう一つは、明日以降、つばささんを秘書の天ヶ瀬に預けていただき、海堂グループにふさわしい女性となっていただけるよう、教育を受けていただきたい。そういうわけですので、いわれもないわけではないのです」
「つばさと海堂さんが、結婚っ?」
びっくりして声をあげた父が、私を凝視する。私だって、びっくりしてる。そんな話をするなんて、聞いてない。
私は何も知らないと首を振って、佑磨さんを見上げるが、彼の横顔には清々しさがあった。
「いかがでしょう。ご納得いただけますでしょうか?」
佑磨さんが父に詰め寄るように問うと、母が口を開く。
「つまり、相続税の肩代わりをするから、つばさちゃんとの結婚を認めろと……?」
非難がましい目を母はする。
佑磨さんは眉をひそめ、物言いたげに口を開いたが、何か言う前に、母が私に目を移した。
「つばさちゃんはいいの? 海堂さんと結婚だなんて……」
「あ……、えっと……」
なんて答えたらいいのだろう。
佑磨さんとお付き合いしたい気持ちはある。まだ知り合って数日だけど、毎日のように求婚してくれて、私のために時間を割いてくれている。
もっともっとお付き合いを重ねて、お互いに好きって気持ちを確かめ合って結婚できるなら……と思うけど、目の前には現実がある。
両親を助けるために、今すぐ彼との結婚を決めなきゃいけないなら、私の答えは一つだけだと思う。
「海堂さんには前からお付き合いしたいって言われてて……、だからその、急だとは思ってるけど、お父さんたちが助かるなら、結婚してもいいかなって思ってる」
売れない土地を海堂グループが購入してくれるなら、両親はまとまった収入が得られるし、今より生活しやすくなると思う。父だって、お嬢さま育ちの母に苦労させてるのは申し訳ないと言っていたじゃないか。
「そういうことなら……」
母は不安げだったが、佑磨さんに頭をさげた。
「娘のことは、できる限りの教育をして育ててきたつもりでいます。それでも、海堂さんのところへ嫁ぐとなると、やはり心配はあります。そちらの秘書の方にいろいろと教えていただけるなら心強いですし、土地の件に関しましては感謝しかありません。どうか、つばさをよろしくお願いします」
「つばささんを、必ず大切にします」
そう答えた佑磨さんは、満足そうに、そして、うれしそうに微笑んだ。
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