強欲御曹司の溺愛

水城ひさぎ

文字の大きさ
上 下
8 / 44
強欲な甘い誘惑

ホテルにて(3)

しおりを挟む



「あ、あの……困ります……」

 腰に回る腕に気づいて、私は身をすくませた。

「何が困る?」

 まるで、譲歩するように佑磨さんは言うが、ますます私を抱き寄せて、さっきプレゼントされたばかりのブレスレットをひとなでした。

 手放さない、と宣言した通り、体を離そうとしても、腰に回った腕がそうさせてくれない。

 シャツ越しでも伝わる鍛えられた胸に、ほおが触れたまま動けないでいる私の髪をなで、毛先を指にからめて、そのまま唇に寄せた。

 私のすべてが愛おしいみたいに触れるのだ。

 本当なんだろうか。私にひとめぼれしたって。

「状況がよく、飲み込めてなくて……」
「俺は言ったはずだが?」

 彼は優しくそう言うと、髪に口付けてくる。

「えっ、あの……」

 確かに、彼は言った。

 私にひとめぼれした、と。
 俺の妻になる人だ、と。

 でも、それだけじゃ何もわからない。

「海堂さん……、私たち、お話をしたこともなくて」
「いま、してるが?」
「そうじゃなくて、私たちまだ、お互いに何も知らないですよね……?」

 そう言葉にしてみてわかる。佑磨さんは性急すぎるのだ。だから、受け入れられるものも受け入れられない。

 ……って、まるで受け入れたがってるみたい。

 ほおが赤らむ私の顔をのぞき込み、彼はそっと目を細める。

「キスしたときの顔にはそそられた」
「え……」

 彼の指が私のほおを這う。

「言っておくが、俺は惚れた女しか抱かない。つばさを抱くってことは、そういうことだ」

 抱くって……。
 やっぱり、抱かれるの? このまま。

 どうしよう。

「いやか?」

 そう尋ねる彼の顔に見惚れてしまう。

 とても素敵な人だ。いやじゃ……ない……かもしれない。でも……。

「こんな、急には……困ります」
「なんだ、急だから嫌がってるのか。かわいい女だ」

 彼は薄く笑うと、そのまま唇を合わせてくる。

「んっ……」

 さっきとは全然違う。

 いきなり深く重なった唇は、感触を楽しむように食んできた。

 柔らかくて、とろけていく唇を感じてるのは私だけじゃないのだろう。

 彼はにやりと笑むと、ぼう然とする私の口内を割って、舌を滑り込ませてきた。思わず逃げた舌先に、そうはさせまいとからみついてくる。

 全身から力が抜けていく。気持ちが良くて素直に受け入れてしまう。ずっと触れていてほしい。

「つばさ……、抱きたい」

 ようやく、みだらなキスから解放され、佑磨さんをぼんやりと見上げる。乱れた息を整える間、優しく抱きしめてくれる。

「抱かれてくれるか?」

 佑磨さんはほんの少し眉を下げて、甘えるように尋ねてくる。

 ほとんどの女性はこんな風に懇願されたら拒めないだろう。ううん、拒まないと思う。

 でも私は、勇気がなかった。

「海堂さん……、私……こういうの、初めてだから、だめ……」

 心の準備が何にもできてない。

「初めてか」

 彼は小さくつぶやく。

「……幻滅されるかもしれないですけど」

 恥ずかしくてうつむくと、佑磨さんは私のほおを両手で優しく包み込んでくる。

「それを聞いて喜ばない男はいないと思うが?」
「そうなの……?」
「むしろ、俺以外の男が触れたと知ったら、気が狂いそうだ」
「大げさです……」
「大げさなものか。誰かに奪われる前に奪ってしまいたいが、どうしてもダメか?」
「私たちまだ、知り合ったばかりだから……」

 それに、佑磨さんは海堂グループの御曹司。私と釣り合う人じゃない。

 それなのに、どうしてこんなことになってるのか、やっぱりまだ、頭がついていってない。

「それはあまり重要じゃないだろう」

「海堂さんにはそうでも……」
「つばさはプロセスを大事にするタイプか」

 佑磨さんは違うっていうのだろうか。

 ウェディングドレス姿の私にひとめぼれしたからって、すぐに抱き合って、それでいいと思ってる。

 私は違う。好きという気持ちを確かめ合う時間がほしい。

「私、海堂さんとお付き合いするなら、もっとデートとかして、それから……」
「わかった。明日、レストランへ連れていこう」

 もしもの話をしてるのに、彼は即決する。

 お付き合いするなら、という前提は、ありえない話だけど、と言ってるのに、彼には関係ないみたい。

「あ、明日っ?」
「はやく、つばさを抱きたい。週末まで待てる気がしない」
「それじゃあ、意味がないです……」

 今日がだめで、明日は大丈夫なんて話じゃないのに。

「意味はあると思うけどね。譲歩しようか。あさっての夜、指定のレストランへ来てくれ。つばさが来るまで待ってる」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

あざとい後輩に彼氏を奪われそれでもめげずに頑張っていたらとんでもないイケメンに言い寄られた話

ももくり
恋愛
同じ部署の誠一郎と付き合っていた希代は、ある日突然別れを告げられる。どうやら、あざといと評判の新入社員・早緒莉に奪われてしまったらしい。──ふん!どうせ私なんか、寿司屋のおまかせ10貫セットの中で、マグロやウニに紛れて堂々としているカンピョウ巻きみたいな存在の女ですよッ。…うまい具合に部署異動の話が出て、新天地のデジタルコンテンツ部でオタサーの姫状態となってしまう希代。更になぜか伝説のイケメンまで接近してきて…。※『私たちは恋をする生き物です』の御門圭がメインの物語ですが、あちらを未読でも全然大丈夫です。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

悪の組織のイケメンたちに捕まったのですが、全員から愛されてしまったようです。

aika
恋愛
主人公ユミは、ヒーローたちが働く秘密組織のしがない事務員。 ヒーローたちは日夜、人々の安全を守るため正義の名の下に戦っている。 ある朝目が覚めると、ユミは悪の組織のメンバーに誘拐され監禁されていた。 仮面で素顔を隠している悪の組織のメンバーたち。 ユミの前で仮面を外すと・・・彼らは全員揃いも揃ってイケメンばかり。 ヒーローたちに恨みを持つ彼らは、ユミを酷い目に合わせるはずが・・・彼らの拷問はエッチなものばかりで・・・? どうやら私には悪者の心を惹きつける、隠された魅力があるらしい・・・!? 気付けばユミは、悪の組織のイケメンたち全員から、深く愛されてしまっていた・・・・! 悪者(イケメン)たちに囲まれた、総モテ逆ハーレムラブストーリー。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...