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強欲な甘い誘惑
ホテルにて(3)
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「あ、あの……困ります……」
腰に回る腕に気づいて、私は身をすくませた。
「何が困る?」
まるで、譲歩するように佑磨さんは言うが、ますます私を抱き寄せて、さっきプレゼントされたばかりのブレスレットをひとなでした。
手放さない、と宣言した通り、体を離そうとしても、腰に回った腕がそうさせてくれない。
シャツ越しでも伝わる鍛えられた胸に、ほおが触れたまま動けないでいる私の髪をなで、毛先を指にからめて、そのまま唇に寄せた。
私のすべてが愛おしいみたいに触れるのだ。
本当なんだろうか。私にひとめぼれしたって。
「状況がよく、飲み込めてなくて……」
「俺は言ったはずだが?」
彼は優しくそう言うと、髪に口付けてくる。
「えっ、あの……」
確かに、彼は言った。
私にひとめぼれした、と。
俺の妻になる人だ、と。
でも、それだけじゃ何もわからない。
「海堂さん……、私たち、お話をしたこともなくて」
「いま、してるが?」
「そうじゃなくて、私たちまだ、お互いに何も知らないですよね……?」
そう言葉にしてみてわかる。佑磨さんは性急すぎるのだ。だから、受け入れられるものも受け入れられない。
……って、まるで受け入れたがってるみたい。
ほおが赤らむ私の顔をのぞき込み、彼はそっと目を細める。
「キスしたときの顔にはそそられた」
「え……」
彼の指が私のほおを這う。
「言っておくが、俺は惚れた女しか抱かない。つばさを抱くってことは、そういうことだ」
抱くって……。
やっぱり、抱かれるの? このまま。
どうしよう。
「いやか?」
そう尋ねる彼の顔に見惚れてしまう。
とても素敵な人だ。いやじゃ……ない……かもしれない。でも……。
「こんな、急には……困ります」
「なんだ、急だから嫌がってるのか。かわいい女だ」
彼は薄く笑うと、そのまま唇を合わせてくる。
「んっ……」
さっきとは全然違う。
いきなり深く重なった唇は、感触を楽しむように食んできた。
柔らかくて、とろけていく唇を感じてるのは私だけじゃないのだろう。
彼はにやりと笑むと、ぼう然とする私の口内を割って、舌を滑り込ませてきた。思わず逃げた舌先に、そうはさせまいとからみついてくる。
全身から力が抜けていく。気持ちが良くて素直に受け入れてしまう。ずっと触れていてほしい。
「つばさ……、抱きたい」
ようやく、みだらなキスから解放され、佑磨さんをぼんやりと見上げる。乱れた息を整える間、優しく抱きしめてくれる。
「抱かれてくれるか?」
佑磨さんはほんの少し眉を下げて、甘えるように尋ねてくる。
ほとんどの女性はこんな風に懇願されたら拒めないだろう。ううん、拒まないと思う。
でも私は、勇気がなかった。
「海堂さん……、私……こういうの、初めてだから、だめ……」
心の準備が何にもできてない。
「初めてか」
彼は小さくつぶやく。
「……幻滅されるかもしれないですけど」
恥ずかしくてうつむくと、佑磨さんは私のほおを両手で優しく包み込んでくる。
「それを聞いて喜ばない男はいないと思うが?」
「そうなの……?」
「むしろ、俺以外の男が触れたと知ったら、気が狂いそうだ」
「大げさです……」
「大げさなものか。誰かに奪われる前に奪ってしまいたいが、どうしてもダメか?」
「私たちまだ、知り合ったばかりだから……」
それに、佑磨さんは海堂グループの御曹司。私と釣り合う人じゃない。
それなのに、どうしてこんなことになってるのか、やっぱりまだ、頭がついていってない。
「それはあまり重要じゃないだろう」
「海堂さんにはそうでも……」
「つばさはプロセスを大事にするタイプか」
佑磨さんは違うっていうのだろうか。
ウェディングドレス姿の私にひとめぼれしたからって、すぐに抱き合って、それでいいと思ってる。
私は違う。好きという気持ちを確かめ合う時間がほしい。
「私、海堂さんとお付き合いするなら、もっとデートとかして、それから……」
「わかった。明日、レストランへ連れていこう」
もしもの話をしてるのに、彼は即決する。
お付き合いするなら、という前提は、ありえない話だけど、と言ってるのに、彼には関係ないみたい。
「あ、明日っ?」
「はやく、つばさを抱きたい。週末まで待てる気がしない」
「それじゃあ、意味がないです……」
今日がだめで、明日は大丈夫なんて話じゃないのに。
「意味はあると思うけどね。譲歩しようか。あさっての夜、指定のレストランへ来てくれ。つばさが来るまで待ってる」
「あ、あの……困ります……」
腰に回る腕に気づいて、私は身をすくませた。
「何が困る?」
まるで、譲歩するように佑磨さんは言うが、ますます私を抱き寄せて、さっきプレゼントされたばかりのブレスレットをひとなでした。
手放さない、と宣言した通り、体を離そうとしても、腰に回った腕がそうさせてくれない。
シャツ越しでも伝わる鍛えられた胸に、ほおが触れたまま動けないでいる私の髪をなで、毛先を指にからめて、そのまま唇に寄せた。
私のすべてが愛おしいみたいに触れるのだ。
本当なんだろうか。私にひとめぼれしたって。
「状況がよく、飲み込めてなくて……」
「俺は言ったはずだが?」
彼は優しくそう言うと、髪に口付けてくる。
「えっ、あの……」
確かに、彼は言った。
私にひとめぼれした、と。
俺の妻になる人だ、と。
でも、それだけじゃ何もわからない。
「海堂さん……、私たち、お話をしたこともなくて」
「いま、してるが?」
「そうじゃなくて、私たちまだ、お互いに何も知らないですよね……?」
そう言葉にしてみてわかる。佑磨さんは性急すぎるのだ。だから、受け入れられるものも受け入れられない。
……って、まるで受け入れたがってるみたい。
ほおが赤らむ私の顔をのぞき込み、彼はそっと目を細める。
「キスしたときの顔にはそそられた」
「え……」
彼の指が私のほおを這う。
「言っておくが、俺は惚れた女しか抱かない。つばさを抱くってことは、そういうことだ」
抱くって……。
やっぱり、抱かれるの? このまま。
どうしよう。
「いやか?」
そう尋ねる彼の顔に見惚れてしまう。
とても素敵な人だ。いやじゃ……ない……かもしれない。でも……。
「こんな、急には……困ります」
「なんだ、急だから嫌がってるのか。かわいい女だ」
彼は薄く笑うと、そのまま唇を合わせてくる。
「んっ……」
さっきとは全然違う。
いきなり深く重なった唇は、感触を楽しむように食んできた。
柔らかくて、とろけていく唇を感じてるのは私だけじゃないのだろう。
彼はにやりと笑むと、ぼう然とする私の口内を割って、舌を滑り込ませてきた。思わず逃げた舌先に、そうはさせまいとからみついてくる。
全身から力が抜けていく。気持ちが良くて素直に受け入れてしまう。ずっと触れていてほしい。
「つばさ……、抱きたい」
ようやく、みだらなキスから解放され、佑磨さんをぼんやりと見上げる。乱れた息を整える間、優しく抱きしめてくれる。
「抱かれてくれるか?」
佑磨さんはほんの少し眉を下げて、甘えるように尋ねてくる。
ほとんどの女性はこんな風に懇願されたら拒めないだろう。ううん、拒まないと思う。
でも私は、勇気がなかった。
「海堂さん……、私……こういうの、初めてだから、だめ……」
心の準備が何にもできてない。
「初めてか」
彼は小さくつぶやく。
「……幻滅されるかもしれないですけど」
恥ずかしくてうつむくと、佑磨さんは私のほおを両手で優しく包み込んでくる。
「それを聞いて喜ばない男はいないと思うが?」
「そうなの……?」
「むしろ、俺以外の男が触れたと知ったら、気が狂いそうだ」
「大げさです……」
「大げさなものか。誰かに奪われる前に奪ってしまいたいが、どうしてもダメか?」
「私たちまだ、知り合ったばかりだから……」
それに、佑磨さんは海堂グループの御曹司。私と釣り合う人じゃない。
それなのに、どうしてこんなことになってるのか、やっぱりまだ、頭がついていってない。
「それはあまり重要じゃないだろう」
「海堂さんにはそうでも……」
「つばさはプロセスを大事にするタイプか」
佑磨さんは違うっていうのだろうか。
ウェディングドレス姿の私にひとめぼれしたからって、すぐに抱き合って、それでいいと思ってる。
私は違う。好きという気持ちを確かめ合う時間がほしい。
「私、海堂さんとお付き合いするなら、もっとデートとかして、それから……」
「わかった。明日、レストランへ連れていこう」
もしもの話をしてるのに、彼は即決する。
お付き合いするなら、という前提は、ありえない話だけど、と言ってるのに、彼には関係ないみたい。
「あ、明日っ?」
「はやく、つばさを抱きたい。週末まで待てる気がしない」
「それじゃあ、意味がないです……」
今日がだめで、明日は大丈夫なんて話じゃないのに。
「意味はあると思うけどね。譲歩しようか。あさっての夜、指定のレストランへ来てくれ。つばさが来るまで待ってる」
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