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それでも愛してる

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 日野谷さんは結局のところ、信用できない綾斗さんとは婚約破棄した方がいい、と言いに来たのだと思う。

 実際、綾斗さんは私に嘘をついていた。結婚を成立させるためなら、どんな嘘も甘言も言う。

 ただただ穏やかで、私のすべてを許して受け入れてくれていた彼はもういないのだ。いるのは、七海紗由理の持つ影響力を手に入れたいだけの狡猾な彼なのだろう。

「紗由理、ちょっといいか?」

 部屋のドアがノックされ、兄の佳孝の声がする。

「お兄さん、どうしたの?」

 ドアを開けて尋ねる。

 兄はスーツにネクタイをしたままで、ビジネスバッグを提げていた。帰宅するなり、私の部屋を訪ねてきたのだろう。

「今日、誰か来たんだって?」

 いきなりそう尋ねてくるから、面食らう。

 母に言われて探りに来たのだろう。あんまり心配かけるなよ、と言わないばかりの表情を兄は浮かべている。

「日野谷さんがいらしたの」

 そう答えると、兄はうれしそうな笑みを浮かべた。

「樹里くん? なんだ、まだ交流があるのか。それはよかった。前はうちによく来てくれてたんだから、あがってもらえばよかったのに」

 そう言えば、日野谷さんは兄ともよく会話を弾ませていたんだっけ。

 彼は婚約者になるだろう青年として我が家では受け入れられていた。縁談がうまく進まなかったときは、両親も兄もがっかりしていたのだった。

 日野谷さんのように、綾斗さんも受け入れてもらえるだろうか。そのためには、今ある不穏なうわさを払拭しなければいけないと思うのだけど。

「雨がひどく降っていたから、遠慮されたの」
「ああ、そうらしいね。せっかく来てくれたのに大変だったね。それはそうと、何か用事でもあったのかい?」
「綾斗さんのね、話をしに来たの」
「久遠さんの?」

 兄はふしぎそうな顔をして、こちらを見る。

「綾斗さんが久遠になってから、ずっと仲良くされてるそうなの。だから、私よりも彼をよく知ってるみたい」
「それは知らなかったよ。かつての婚約者候補が友人と結婚するとあっては、物言わずにはおられないって感じかい?」

 冷やかすように言う兄を不機嫌に見返す。

「そうじゃないの。彼と結婚する前によく調べた方がいいって忠告に来たのよ。綾斗さんね、私に嘘をついていたの」

 一気にそう吐き出すと、兄は事の深刻さに気づいて眉をひそめた。

「嘘をついたって、どんな?」
「綾斗さんが養子になったいきさつのこと。久遠さんと綾斗さんのお父さんが友人だったから養子のお話をいただいたって言っていたけど、違うの。ふたりは知り合いでもなんでもないって」
「やっぱりそうか」

 間髪入れずに兄が言うから驚いた。

「やっぱりって、何か知ってるの?」
「俺も調べてみたんだ。久遠さんと小早川さんの直接のつながりが見えなくて、もう少し詳しく調べないとなって思ってたんだ。ほかに、樹里くんは何か言ってたかい?」

 私はうなずいて、日野谷さんから聞いた話をかいつまんで話す。

「久遠さんね、奥さまと離婚されたそうなの。それも、綾斗さんと養子縁組したあとに。離婚の理由は、本来なら奥さまの縁者が養子に入る予定だったのに、綾斗さんを養子にしたからじゃないかって」
「縁者ねぇ」
「日野谷さんは縁者の男の人としか言わなかったから、どんな方かは知らないの。でもね、日野谷さんはその人が久遠ホールディングスの社長になれなかった恨みを綾斗さんに向けるかもしれないって心配して、縁者の男を調べてみようって彼に提案したらしいの」

 へえ、と兄は意外そうな表情をしたあと、興味津々に身を乗り出した。

「それで、綾斗くんの反応は?」
「調べなくていいって。むしろ、余計なことするなって、日野谷さんに嫌悪感を見せたらしいわ。だからね、綾斗さんは何か知ってるんだと思うの」
「縁者の男を調べられたら困る何かを知ってるってことか」

 兄はあごをさすり、思案げに天井を見上げる。

「私もね、綾斗さんが何かに巻き込まれてるのかもって思うの」
「どうしてそう思う?」
「綾斗さんが言ってたの。お父さんは自ら命を絶ったって。それをきっかけに、久遠さんと出会ったって。久遠さんと綾斗さんのお父さんが知り合いじゃないなら、久遠さんが彼に近づいたのには何か理由があると思うの」

 久遠隆之は小早川綾斗を利用するために近づいた。その目的を知っていて、綾斗さんが養子になる決意をしたのかまではわからない。

 だけど、綾斗さんが七海の力を手に入れたがっているのは事実で、その思いを久遠隆之本人が抱いてないわけないとも思う。

「小早川進さんが亡くなってること、紗由理も知ってたのか」

 兄はそのことを私に知らせたくなかったのだろう。ひどく残念がるような表情を見せた。

「お兄さんがひとりっ子を養子に出すなんておかしいって言うから、綾斗さんに聞いてみたの。そうしたら……、部下の使い込みに責任を感じて、それでって」
「部下の使い込み?」
「うん。お客さまのお金を使い込んだ行員がいたそうなの。大きな扱いにはなってないって言っていたから、銀行内で片付けられた話かもしれない」

 そう言うと、兄は眉をひそめた。

 七海フィナンシャルグループのトップである父や、次世代を担う兄のもとへ情報が届くような事件だったのではないなら、兄が知らなくても当然だとは思う。

 むしろ、事件が明るみになっていたらよかった。私の耳にも届いて、綾斗さんは養子に入る決断をしなかったかもしれない。きっと私たちは、今とは違う未来を描いていた。

「その部下の名前は聞いたか?」

 険しい表情で問う兄にうなずいて、綾斗さんとの会話を思い出しながら言う。

「確か、高畑……だったかな。高畑……」
「高畑悠二?」
「あっ、うん、そう。高畑悠二さん。お兄さん、知ってるの?」
「ああ、知ってる。当時、春海支店にいた行員のことはあらかた調べたつもりだったが、綾斗くんの話でつながりの糸口が見えたな」
「つながりって、久遠さんと小早川さんの?」
「そう。綾斗くんは確かに、何かに巻き込まれてるのかもしれないね。それとも……」
「それとも?」
「自ら、何かしようとしてるかもしれない」
「何かって……」

 脳裏に、乗っ取り計画が浮かんだ。

 私は指をきつく組み合わせ、ため息をつくように言う。

「綾斗さん、お父さんを亡くして、つらかったんだと思うの。高畑さんは七海銀行をやめたらしいけど、やめたぐらいじゃ怒りはおさまらないかもしれないでしょ。七海銀行まで憎らしく思ってるのかも」

 乗っ取り計画というより、七海をつぶす計画をしてるのかもしれない。そう考えたら、体が震えてくる。

「調べられたら困る何かは、七海銀行への復讐計画か?」
「その可能性はあるかもしれない……」

 父や兄と綾斗さんが対立するなんて見たくない。その思いが伝わったのか、兄はうつむく私の肩に手を置いた。

「でもな、紗由理、大前提が間違ってる」
「え?」

 驚いて顔を上げるが、兄は私を安心させてくれるような笑みは浮かべていなかった。

 私の知らない何かを兄は知ってる。しかし、それはもろ手をあげて歓迎できるようなものではない。胸はドクンドクンと音を立てた。

「高畑悠二は確かに5年前、七海銀行春海支店で小早川進の部下として働いていた。しかし、使い込みの話は嘘だ。高畑は小早川さんが亡くなったあと、異動にはなったが、今でも七海銀行で働いている。不祥事を起こしたという話は聞いてない」
「うそ……」

 かすれた声が出た。

 綾斗さんのお父さんが久遠さんの友人だって話は嘘だった。高畑さんが使い込みをしたって話も嘘。綾斗さんはどれだけ私に嘘をついてるのだろう。

「うそじゃないよ」
「綾斗さんはどうして、高畑さんに悪印象を持たせるような嘘を私に……?」
「わからない。ただ、高畑を調べてみる価値はあるだろう」
「お兄さんはまだ何か知ってるの?」
「それがな……、小早川さんは亡くなる前日、高畑に会ってるんだ」

 兄は話していいものかと、迷いを見せてそう言った。

「そのとき、どんな会話があったのか、高畑さんならわかるのね」

 頼りなげな表情をしていた兄が、こちらへ目を向ける。

「なあ、紗由理、落ち着いて聞け。綾斗くんが樹里くんに深入りするなと警告したのは、友人を大切に思うからだと思う」
「どういうこと?」
「高畑悠二はな、高畑実里の縁戚なんだ」
「高畑実里……?」

 眉をひそめると、兄は真剣な眼差しをしてうなずいた。

「久遠隆之の元妻の実里だ。高畑はやすやすと手を出せる相手じゃない。樹里くんには荷が重いだろう」
「じゃあ……、高畑さんは」
「ああ。本来、養子縁組しようと思ってた縁者の男っていうのは高畑悠二かもしれないな」
「久遠さんは高畑さんが七海銀行で働いてるのを知って、利用しようとしたの? それがうまくいかなくて、綾斗さんに……」

 久遠隆之の目的はやはり、七海の権力を得ることなのだろう。私の結婚相手になり得る青年と養子縁組することで、その目的を果たそうとしてる。

 じゃあ、綾斗さんは? 嘘をついてまで、何をしようとしてるの?

「紗由理、大丈夫か?」
「……大丈夫よ。混乱してるだけ」

 何もわからなくて不安だ。震える手をこすり合わせる。

「座るか?」

 兄は私をベッドに腰かけさせると、落ち着かせようと背中をさすった。

「お兄さんは調べるの? 高畑さんのこと」
「そのつもりでいる。紗由理は反対か?」
「……わからないの。調べたら、綾斗さんのお父さんが亡くなった理由も、綾斗さんがどうして私と結婚したがってるのかもわかるかもしれないのに」
「知りたくないか?」

 知りたいけど、知りたくない。それが正直な気持ちだろう。せめぎ合う好奇心と不安に押しつぶされそうでもある。

「お兄さん……、ごめんなさい」

 か細い声が出た。不安で仕方なかった。

「紗由理……?」
「私、綾斗さんと結婚したいの。どんな理由があったとしても、結婚したい」

 調べることで、綾斗さんと別れなければならなくなったりしたら耐えられない。だからって、何も知らずにのうのうと彼の妻として生きていけるとも思ってない。

「お父さんやお母さんにも、迷惑をかけたらごめんなさい」

 両手に顔をうずめて、深く息を吐き出した。兄は無言で、何度も頭を優しくなでてくれた。幼い頃、思うようにならなくて泣く私をなだめてくれていたように。
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