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禁じられた恋
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「そうだよ。光莉は私たちに連絡先も教えずにいなくなったのに、月島くんが追いかける価値あるのって言った。彼はどうしても光莉が忘れられないって言ったけど、私はそれでもいいって言った。光莉を抱くつもりで私を抱いてって言った。キスもそれ以上も全部、初めては月島くんだよ」
光莉は痛くなる胸をぎゅっとつかんだ。それを見た美帆が、薄い笑みを浮かべる。
「許せない?」
光莉はまぶたを伏せて、いつの間にか詰めていた息を吐き出す。
「許すとか許さないとか言える立場じゃないから」
「そうだよね。優等生の光莉なら、そう言うんじゃないかなって思ってたよ。でも、月島くんはそうは思えなかったみたい。一年もしないうちに、やっぱり別れたいって言い出した」
拓海は、光莉が好きなのに美帆と関係を持った自分が許せなかったのだろう。
「それで、別れたの?」
「仕方ないじゃない。好きな人に振り向いてもらえないってわかってるのに付き合い続けるの、私だって苦しかったんだから」
「拓海、それからも恋人いなかった?」
「いないと思うよ。私はすぐに彼氏作ったから、月島くんとは疎遠になっちゃった。真中くんや杉谷くんがたまに連絡くれるから、月島くんの情報も入ってくるってだけの関係」
美帆は投げやりに言って、肩をすくめる。
「理乃は? 理乃のことは何か知ってる?」
「奨学金もらって大学に進学したっていうのは聞いたけど、たぶん、クラスメイトのみんなもよく知らないんじゃないかな。真中くんたちからも松村さんの話なんて聞いたことないし。少なくとも、あの状況で月島くんが松村さんと付き合うなんてありえないと思う」
「そっか。教えてくれてありがとう」
そう言うと、美帆はくすりと笑う。
「やっぱり、光莉っていい子だね」
「え?」
「10年経っても、全然変わってないね。月島くん、光莉のことも忘れちゃってるんだよね? でもさ、記憶が戻ったら、きっとまた光莉を好きになるんだろうな」
少しさみしそうにそう言った美帆の足が、駐車場から遠のこうとする。
行ってしまう。このまま帰したら、もう二度と会えないかもしれない。そう思ったら、とっさに引き止めていた。
「私たち、昔のように仲良くできない?」
驚いて美帆は目を丸くするが、すぐにおかしそうに細めた。
「光莉はどうなの? 私と仲良くできる?」
どうだろう。仲良くできるだろうか。仲良くしたいという思いと、拓海と付き合っていた彼女を受け入れられるかという気持ちは別物なのだと思う。
「女の嫉妬って怖いんだから」
光莉の気持ちを見透かしたかのように、美帆は笑う。
「え……」
「なーんて、嘘。これ、私の連絡先。登録しておいてよ。聞きたいことがあったら、遠慮なく連絡してね」
彼女はバッグから名刺を取り出すと、光莉へそっと差し出した。
光莉は痛くなる胸をぎゅっとつかんだ。それを見た美帆が、薄い笑みを浮かべる。
「許せない?」
光莉はまぶたを伏せて、いつの間にか詰めていた息を吐き出す。
「許すとか許さないとか言える立場じゃないから」
「そうだよね。優等生の光莉なら、そう言うんじゃないかなって思ってたよ。でも、月島くんはそうは思えなかったみたい。一年もしないうちに、やっぱり別れたいって言い出した」
拓海は、光莉が好きなのに美帆と関係を持った自分が許せなかったのだろう。
「それで、別れたの?」
「仕方ないじゃない。好きな人に振り向いてもらえないってわかってるのに付き合い続けるの、私だって苦しかったんだから」
「拓海、それからも恋人いなかった?」
「いないと思うよ。私はすぐに彼氏作ったから、月島くんとは疎遠になっちゃった。真中くんや杉谷くんがたまに連絡くれるから、月島くんの情報も入ってくるってだけの関係」
美帆は投げやりに言って、肩をすくめる。
「理乃は? 理乃のことは何か知ってる?」
「奨学金もらって大学に進学したっていうのは聞いたけど、たぶん、クラスメイトのみんなもよく知らないんじゃないかな。真中くんたちからも松村さんの話なんて聞いたことないし。少なくとも、あの状況で月島くんが松村さんと付き合うなんてありえないと思う」
「そっか。教えてくれてありがとう」
そう言うと、美帆はくすりと笑う。
「やっぱり、光莉っていい子だね」
「え?」
「10年経っても、全然変わってないね。月島くん、光莉のことも忘れちゃってるんだよね? でもさ、記憶が戻ったら、きっとまた光莉を好きになるんだろうな」
少しさみしそうにそう言った美帆の足が、駐車場から遠のこうとする。
行ってしまう。このまま帰したら、もう二度と会えないかもしれない。そう思ったら、とっさに引き止めていた。
「私たち、昔のように仲良くできない?」
驚いて美帆は目を丸くするが、すぐにおかしそうに細めた。
「光莉はどうなの? 私と仲良くできる?」
どうだろう。仲良くできるだろうか。仲良くしたいという思いと、拓海と付き合っていた彼女を受け入れられるかという気持ちは別物なのだと思う。
「女の嫉妬って怖いんだから」
光莉の気持ちを見透かしたかのように、美帆は笑う。
「え……」
「なーんて、嘘。これ、私の連絡先。登録しておいてよ。聞きたいことがあったら、遠慮なく連絡してね」
彼女はバッグから名刺を取り出すと、光莉へそっと差し出した。
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