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禁じられた恋
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「理乃の話を聞かせてほしいって、ついさっき」
驚いた彼女だったが、すぐに眉をひそめていぶかしむ。
「それだけで、わざわざ、警察に行く?」
「実は……、拓海ね、理乃と付き合ってたみたい」
おずおずと言うと、美帆はぽかんと口を開く。
「は? 本気で言ってるの? それ」
「拓海は全然覚えてないんだけど、それらしい証拠があって……」
「覚えてないって、何それ」
ますます険しい表情をする彼女を見て、ハッとする。
「もしかして、聞いてない? 拓海ね、記憶喪失なんだよ」
「記憶……? うそっ。全然知らない。だって、月島くんのお母さん、引っ越したってここの住所教えてくれただけ……。あ、でも、言われてみれば、なんか気まずそうな顔してた。記憶喪失だなんて言いたくなかったのかな」
「そうかも」
「それにしても、なんで記憶喪失になんて。……もしかして、松村さんの事件と何か関係あるの?」
「わかんない。拓海が理乃と付き合ってたなんて、ちょっと信じられないし」
理乃が拓海に固執する理由はある。光莉への嫌がらせのために彼に近づき、恋人関係になるのを望むのは、まったく考えられない話ではない。しかし、拓海が応じたのには、正直驚いている。
「私も信じられない。絶対、それはないでしょ」
絶対と言い切るだけの根拠を、彼女は持っているのだろうか。そう思えるぐらい、彼女の態度はきっぱりとしていた。
「美帆、何か知ってる?」
尋ねると、美帆はしばらく沈黙したあと、ほんの少し笑みを浮かべた。
「知ってるよ」
光莉が知らないことを知っている。そういう優越感を見た気がして身震いした。大親友だった美帆であっても、10年も経てば、大親友ではなくなっているのだと、心のどこかで感じたのかもしれない。
光莉がアメリカへ引っ越したあと、理乃は一人であたりさわりのない高校生活を過ごしていたと彼女は言ったが、本当にそうなのだろうか。
「美帆は理乃のこと、どう思ってる?」
「どうって?」
「私が転校したあと、理乃はあたりさわりなく過ごしてたって言ってたけど、本当?」
「どうして違うって思うの?」
疑われたのが不快だったのか、美帆は不満そうに唇を歪めた。やっぱり、嘘なんて言ってないのだろうか。だけど、どうしても彼女が何か隠しているような気がしてならない。
「……美帆には何も話さなかったけど、理乃ね、私のことが嫌いだったから」
「それはなんとなく感じてたよ。私と光莉が仲良くしてるの知ってて、松村さん、私にばっかり話しかけてきたから。まるで、光莉から私を奪おうとしてるみたいだった」
「そうだよね。私もそう感じてた」
驚いた彼女だったが、すぐに眉をひそめていぶかしむ。
「それだけで、わざわざ、警察に行く?」
「実は……、拓海ね、理乃と付き合ってたみたい」
おずおずと言うと、美帆はぽかんと口を開く。
「は? 本気で言ってるの? それ」
「拓海は全然覚えてないんだけど、それらしい証拠があって……」
「覚えてないって、何それ」
ますます険しい表情をする彼女を見て、ハッとする。
「もしかして、聞いてない? 拓海ね、記憶喪失なんだよ」
「記憶……? うそっ。全然知らない。だって、月島くんのお母さん、引っ越したってここの住所教えてくれただけ……。あ、でも、言われてみれば、なんか気まずそうな顔してた。記憶喪失だなんて言いたくなかったのかな」
「そうかも」
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「私も信じられない。絶対、それはないでしょ」
絶対と言い切るだけの根拠を、彼女は持っているのだろうか。そう思えるぐらい、彼女の態度はきっぱりとしていた。
「美帆、何か知ってる?」
尋ねると、美帆はしばらく沈黙したあと、ほんの少し笑みを浮かべた。
「知ってるよ」
光莉が知らないことを知っている。そういう優越感を見た気がして身震いした。大親友だった美帆であっても、10年も経てば、大親友ではなくなっているのだと、心のどこかで感じたのかもしれない。
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「どうって?」
「私が転校したあと、理乃はあたりさわりなく過ごしてたって言ってたけど、本当?」
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「……美帆には何も話さなかったけど、理乃ね、私のことが嫌いだったから」
「それはなんとなく感じてたよ。私と光莉が仲良くしてるの知ってて、松村さん、私にばっかり話しかけてきたから。まるで、光莉から私を奪おうとしてるみたいだった」
「そうだよね。私もそう感じてた」
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