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柳川・立花山編
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「え? それって言われても……」
私は足元をじっと確かめる。よく見れば確かにそこには、拳ほどの大きさの岩が二つ、寄り添い合うように落ち葉に埋もれていた。
ぱっと見では岩があることもわからないほど、苔生して埋もれている。
私は膝をついて紅葉や落ち葉や土をかき分け、岩を露にする。
「篠崎さん……旬ちゃん……」
隣に高橋さんが片膝を立ててしゃがみ、苔生した岩の汚れを優しく撫でて払い落とす。
「二人は旧い神だ。本来は鳥居や祠に住まう神ではなく、こうして自然の中に暮らしていた獣だったのだ。大和言葉ではない『春雷』という名も、大陸文化に通じたこの土地の古い神だからこそ、発展を願った民に名付けられた名だろう」
岩に触れる。その瞬間、頭の中でいろんな景色が巡る。
繁栄を象徴する、黄金色の稲穂の海を駆ける二匹の狐。
服装も言葉も今とは全く違う人々が、今と変わりない笑顔と感謝を込めて彼らに祈りを捧げる。
二匹の狐は幼い子供の姉弟となり、手を取り合って楽しそうに駆ける。
ーー二匹で完璧で、二匹で永遠だった。
金色の稲穂の海が、桜の花吹雪に洗い流される。
花吹雪の乱れる中、一人の少女が綺麗な少女を連れ、二匹の元へ駆け寄っていく。
少女は勢いよく、二匹に向かって飛びついた。
三人で笑い合いながらゴロゴロと転がるのを、綺麗な少女が笑いながら幸福そうに眺めていた。
桜吹雪が消えたとき、世界は暗闇だった。
姉は弟の首を締め、弟は姉の元から人里へとかけていった。
姉は一人ただ、悲しげな顔をして弟の背中を見つめていた。
「楓殿、楓殿」
名前を呼ばれ肩を揺すられハッとする。
高橋様が気遣わしげにこちらを覗き込んでいた。
「呑み込まれていたぞ、大丈夫か」
「あ……はい。ありがとう、ございます」
「危なっかしいね、そのだだもれ素人。早く狐と仲直りして、もっと修行積んどいて」
徐福さんは肩をすくめて踵を返そうとする。高橋様が笑顔で言った。
「あ、車は置いていってくれ」
「随分なこと頼むね、あんたは」
ーーその時。
ガサガサと足音が近づいてくる。
なぜだろう。その足捌きでもう、誰が来たのか私は気づいてしまった。
「楓」
掠れたような、聴き慣れた声に名を呼ばれる。
振り返れば、燃えるように真っ赤な紅葉の中、白装束を纏った綺麗な人が立っていた。
「…………どうして来た」
篠崎さんだ。
私は彼を見つめたまま、静かに片足を後ろに引く。
低く構えてコンマ1秒、思い切り叫びながら、手のひらを思い切り突き出す。
「破ーーーーーーーッ!!!!!」
「!?」
私の霊力で篠崎さんが吹っ飛んだ。
私は足元をじっと確かめる。よく見れば確かにそこには、拳ほどの大きさの岩が二つ、寄り添い合うように落ち葉に埋もれていた。
ぱっと見では岩があることもわからないほど、苔生して埋もれている。
私は膝をついて紅葉や落ち葉や土をかき分け、岩を露にする。
「篠崎さん……旬ちゃん……」
隣に高橋さんが片膝を立ててしゃがみ、苔生した岩の汚れを優しく撫でて払い落とす。
「二人は旧い神だ。本来は鳥居や祠に住まう神ではなく、こうして自然の中に暮らしていた獣だったのだ。大和言葉ではない『春雷』という名も、大陸文化に通じたこの土地の古い神だからこそ、発展を願った民に名付けられた名だろう」
岩に触れる。その瞬間、頭の中でいろんな景色が巡る。
繁栄を象徴する、黄金色の稲穂の海を駆ける二匹の狐。
服装も言葉も今とは全く違う人々が、今と変わりない笑顔と感謝を込めて彼らに祈りを捧げる。
二匹の狐は幼い子供の姉弟となり、手を取り合って楽しそうに駆ける。
ーー二匹で完璧で、二匹で永遠だった。
金色の稲穂の海が、桜の花吹雪に洗い流される。
花吹雪の乱れる中、一人の少女が綺麗な少女を連れ、二匹の元へ駆け寄っていく。
少女は勢いよく、二匹に向かって飛びついた。
三人で笑い合いながらゴロゴロと転がるのを、綺麗な少女が笑いながら幸福そうに眺めていた。
桜吹雪が消えたとき、世界は暗闇だった。
姉は弟の首を締め、弟は姉の元から人里へとかけていった。
姉は一人ただ、悲しげな顔をして弟の背中を見つめていた。
「楓殿、楓殿」
名前を呼ばれ肩を揺すられハッとする。
高橋様が気遣わしげにこちらを覗き込んでいた。
「呑み込まれていたぞ、大丈夫か」
「あ……はい。ありがとう、ございます」
「危なっかしいね、そのだだもれ素人。早く狐と仲直りして、もっと修行積んどいて」
徐福さんは肩をすくめて踵を返そうとする。高橋様が笑顔で言った。
「あ、車は置いていってくれ」
「随分なこと頼むね、あんたは」
ーーその時。
ガサガサと足音が近づいてくる。
なぜだろう。その足捌きでもう、誰が来たのか私は気づいてしまった。
「楓」
掠れたような、聴き慣れた声に名を呼ばれる。
振り返れば、燃えるように真っ赤な紅葉の中、白装束を纏った綺麗な人が立っていた。
「…………どうして来た」
篠崎さんだ。
私は彼を見つめたまま、静かに片足を後ろに引く。
低く構えてコンマ1秒、思い切り叫びながら、手のひらを思い切り突き出す。
「破ーーーーーーーッ!!!!!」
「!?」
私の霊力で篠崎さんが吹っ飛んだ。
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