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柳川・立花山編
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しおりを挟む振り返ったとき、私の目の前には通り雨で濡れる色鮮やかな庭園が広がっていた。
板張りに座っていた私の爪先が湿度を帯びる。
「私……どうして一人で柳川に来ているんだっけ」
通り雨を眺めながら、思い出せない記憶を手繰り寄せる。庭が綺麗すぎて意識が飛んでいたのか。
「あそっか。確かチケットを貰ったんだよね。それで柳川観光したことないから、おひとり様でちょっと遠出しようと思って……そう、だよね」
ここにずっといては雨に濡れてしまう。
狐につままれたような気持ちでぼーっと立ち上がり、私はトートバックを持ち上げる。
「うわ、はや●かけんが割れてる。何で!?」
ふと体を見れば、肩のあたりに犬の抜け毛のようなものが数本ついていた。
まるで獣が、最後にふわりと撫でていったかのようだったけれどーー楓はそれすらも、柳川を出た頃には忘れてしまった。
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