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糸島編
あやかしなんでも相談所が、実情。
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業務が始まると、私は篠崎さんに真っ先に呼ばれた。
「今日はお前、これから糸島に行ってくれ」
「糸島ですか」
ちょうど朝テレビで観た美しい海岸と自然の風景を思い出す。五月晴れの今日はきっと気持ち良い景色が広がっているだろう。
「移住や転職の相談ごとですか?」
「いや。少し違う。もう既に5年前、石川からこっちに越してきた人だ。その人から相談事があるから、新人一人寄越してくれと言われた」
「なるほどですね……」
篠崎さんがPCの画面を示してきたので覗き込む。そこには簡単にお客様の情報が表示されていた。
ーーーーーー
種族 浜姫
名前 清音(キヨネ)
生年 大体250年前くらいまで記憶あり
出身 加賀橋立(石川県加賀市)
移住先 糸島市
対応 磯女 瑛衣女(エイメ)の仲介により磯女の集落に移住。
ーーーーーーー
これ以外の情報はパスワードを入れないと見られないようになっている。社内でも顧客情報の管理がしっかり整っているのはさすがだと思う。前の会社では自宅のPCでも余裕で個人情報見られるような環境だったし。いや、あれは異常か。
一人色々と考えている私を見て、篠崎さんは金色の双眸を眇めてみせた。
「ま、お客様が新人の顔を見たいって御所望なわけだ。一度縁が繋がったあやかしとの縁をうちは大事にしている。丁重に挨拶しに行ってこい」
「承知いたしました」
私は頷きながら、気になったことを篠崎さんに尋ねてみる。
「篠崎さん、あの」
「ん?」
「弊社って、移住転職サービスという名目ですけど」
「ああ」
「実質的には、福岡に居住するもしくは居住希望のあやかしの方々に対しての、なんでも相談屋さんみたいなものーーという認識でよろしいんですよね」
「ああ。転職とは銘打ってはいるが、な。夜のように人とつながることで霊力が安定し居場所を得られるあやかしには文字通り仕事を紹介するが……例えば今回の浜姫の清音さんは、居場所さえあれば特に人に関わらずとも生きていける、いわば『場』で霊力が安定するあやかしだな」
「へー……」
浜姫。海のあやかしと言うことしかわからないので、移動中に調べておこう。
「そういうお客様には『場』と繋ぐお手伝いをすることもあるし、また『場』があって霊力が安定していても是非仕事をしたい、と相談にくるお客様にはもちろん仕事を紹介する。ほら、羽犬塚さんがそういうタイプだ」
篠崎さんが目線を羽犬塚さんに向ける。パソコンのディスプレイからひょこっと顔をだし、羽犬塚さんが尻尾をぱたぱたする。
「私は霊力は安定してるけどね、やっぱり働いていないと落ち着かないじゃない?」
「そういうものなんですね……」
「息子の育児中は何かとお金が必要だったし」
「あ、息子さんいるんですね……」
「そうよぉ。こう見えても独り立ちした息子がいるんだからあ」
こう見える……こう、見える、とは???
「今日はお前、これから糸島に行ってくれ」
「糸島ですか」
ちょうど朝テレビで観た美しい海岸と自然の風景を思い出す。五月晴れの今日はきっと気持ち良い景色が広がっているだろう。
「移住や転職の相談ごとですか?」
「いや。少し違う。もう既に5年前、石川からこっちに越してきた人だ。その人から相談事があるから、新人一人寄越してくれと言われた」
「なるほどですね……」
篠崎さんがPCの画面を示してきたので覗き込む。そこには簡単にお客様の情報が表示されていた。
ーーーーーー
種族 浜姫
名前 清音(キヨネ)
生年 大体250年前くらいまで記憶あり
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対応 磯女 瑛衣女(エイメ)の仲介により磯女の集落に移住。
ーーーーーーー
これ以外の情報はパスワードを入れないと見られないようになっている。社内でも顧客情報の管理がしっかり整っているのはさすがだと思う。前の会社では自宅のPCでも余裕で個人情報見られるような環境だったし。いや、あれは異常か。
一人色々と考えている私を見て、篠崎さんは金色の双眸を眇めてみせた。
「ま、お客様が新人の顔を見たいって御所望なわけだ。一度縁が繋がったあやかしとの縁をうちは大事にしている。丁重に挨拶しに行ってこい」
「承知いたしました」
私は頷きながら、気になったことを篠崎さんに尋ねてみる。
「篠崎さん、あの」
「ん?」
「弊社って、移住転職サービスという名目ですけど」
「ああ」
「実質的には、福岡に居住するもしくは居住希望のあやかしの方々に対しての、なんでも相談屋さんみたいなものーーという認識でよろしいんですよね」
「ああ。転職とは銘打ってはいるが、な。夜のように人とつながることで霊力が安定し居場所を得られるあやかしには文字通り仕事を紹介するが……例えば今回の浜姫の清音さんは、居場所さえあれば特に人に関わらずとも生きていける、いわば『場』で霊力が安定するあやかしだな」
「へー……」
浜姫。海のあやかしと言うことしかわからないので、移動中に調べておこう。
「そういうお客様には『場』と繋ぐお手伝いをすることもあるし、また『場』があって霊力が安定していても是非仕事をしたい、と相談にくるお客様にはもちろん仕事を紹介する。ほら、羽犬塚さんがそういうタイプだ」
篠崎さんが目線を羽犬塚さんに向ける。パソコンのディスプレイからひょこっと顔をだし、羽犬塚さんが尻尾をぱたぱたする。
「私は霊力は安定してるけどね、やっぱり働いていないと落ち着かないじゃない?」
「そういうものなんですね……」
「息子の育児中は何かとお金が必要だったし」
「あ、息子さんいるんですね……」
「そうよぉ。こう見えても独り立ちした息子がいるんだからあ」
こう見える……こう、見える、とは???
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