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それだけは信じて

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朝起きても、蒼くんは私に会いに来てくれなかった。どうしよう、蒼くんに嫌われちゃった……。
お母さんにも蒼くんと喧嘩したのか聞かれた。してないよ、と笑って答えたがお母さんにはバレてるかもしれない。



学校に行っても蒼くんと話せなくてすれ違っても目さえ合わせてくれない。蒼くんはかわいい女の子や少しチャラそうな男の子と一緒にいて、私は近付けそうにない。春輝くんも周りの席の子と話してるし……。朝は話しかけてくれたんだけどね。



1時間目が終わった頃、教室が騒がしくなった。入口の方を見ると2人の男の子がいた。見たことない子だけど他クラスの子かな? 
そう思っていたが。



「新、俺たちの席あそこじゃない? 名前的に俺が後ろかぁ。1番前とか新どんまいすぎ。」



「……」



もしかして、隣の席の人達? 仲良くなれるのかな、私あのテンションについていけない気がする。



「新の隣の席の子可愛いじゃん。名前なんてゆーの?」



「へっ? 私……?」



「まって、この子タイプ。」



えっと、多分天沢蓮くんだよね? 



「えっと、天川詩です。よろしくね。」



「俺の事蓮って呼んで? 新、自己紹介しないの?」



「うるさい。」



この2人仲悪いのかな? でも、一緒に来てたし……。



「新でいい。よろしく、詩」



私がよろしくお願いします、と言うと蓮くん? は新が自己紹介するなんて珍しい……と言っていた。新くんって自己中な子なのかな? ……第一印象でそんなこと決めたらだめだよね。ごめんね、新くん。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

今は4時間目。2時間目からずっと新くんに教科書を見せている。何も持ってきていないらしい。机の上にあるのはシャーペンと消しゴムだけ。ルーズリーフも私があげたものを使っている。



「えー、じゃあ天川。」



えっ、話聞いてなかった……。今は私の苦手な数学の時間だ。実は進学校であるこの高校は英語や数学に力を入れており、結構難しい問題を解決解いていっている。英語は得意なんだけど……。聞いてませんでした、と正直に謝ろうとしていた時。



『5√3』



と、書かれた紙を新くんに渡された。



「ご、5√3です。」



「お、正解。これ結構難しい問題だったんだがなあ。」



新くんってもしかして、すごく賢かったりする……?



「あ、新くんありがとう。」



お礼を言うと、ん、とだけ言い、そっぽを向いた。これが噂のツンデレなのかな。でも、本当に助かった。机をくっつけていて良かったと思った瞬間だった。
ちなみに蓮くんは机をくっつけるどころか、寝てました。



「詩ちゃん! 昼一緒に食べよ!」



つい、蒼くんのことを思い出したが一緒に食べてくれるわけないしご一緒させてもらおうと思った。私はお母さんが昨日仕事で疲れていたため朝、弁当を作ることが出来なかったので学食分のお金を貰った。2人も学食のようで一緒にいこう、となったのだが。



「うえ、あいつの笑顔怖すぎ。他校の子が言ってたけど蒼ってやつやばいらしいね。」



蒼くんがやばい……? どういう意味だろう。



「詩は聞かなくていい。蓮は黙れ。」



「新くんひどーい! あ、俺ステーキ丼にしよっと。」



私はあまりお腹が空いていなかったのでサラダだけにした。そうすると2人に心配され少しずつおかずを食べさせられた。昼からステーキは重いよ……。

✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

「昼楽しそうだったね? 詩は俺がいなくても平気なの?」



帰ろうと1人で教室に残っていると蒼くんが私の教室を訪ねてきた。みんな部活体験とかで荷物は置いてあるが教室にはいない。



「そ、蒼くんだって……」



「俺が何?」



蒼くんが……怖い。



「はぁ、帰るよ。」



「やだっ! 蒼くんにはまりあちゃんがいるんでしょ……。」



涙が溢れそうで思わず下を見る。涙が溢れ出して床にしみを作る。



「……あいつはそういうのじゃない。俺には詩だけだから。」



「うそっ! 幼馴染としかしないって言ってたやつまりあちゃんともしたんでしょ? 蒼くんの嘘つき。」



涙が止まらず嗚咽が止まらない。そんな私を蒼くんは抱きしめた。でも……嬉しくないよ。



「詩、俺は詩のことしか好きじゃないよ。それだけは信じて。」



私には、蒼くんしかいない。本当は矛盾だらけだったけど私は頷いた。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

もうひとつ、すごく短い蒼sideを……。
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