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十三話 毒の材料がほしい

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 城内を案内してもらいながら、どうすれば殺してもらえるかを考える。
 だいぶ無礼なことをしているつもりなのに、殺してくれる気配がない。朝食にも持ってきていた剣を一振りしてみてくれるだけでいいのに。

「ルーファス陛下ってどういう人ですか?」

 暴君という呼称に似合わず忍耐力のある彼について、前を歩く侍女に聞いてみることにした。
 すると彼女はこちらを向いて、とまどうように眉をひそめた。

「陛下は……その、気難しい方です」
「ヴィルヘルムさんもそう言っていましたね……ほかには、何かありますか?」

 気難しく、人に触れられるのが嫌いで、好き嫌いがない。この三つだけでは、人物像を描くには不十分すぎる。
 どうにか情報を集めて、逆鱗に触れるギリギリを狙わないといけない。

「……ほかには、ですか。……私もこちらに勤めはじめたのは最近のことで……陛下についてはあまり詳しくないんですよ」
「そう、ですか」

 ルーファス陛下が玉座についた時、何人もの臣下が殺されたと聞いた。そして、ヴィルヘルムさんは人手が足りないとも言っていた。
 もしかしたら、殺された人の中には昔から城で働いていた侍女も含まれていたのかもしれない。

 だから人手を増やすために新しい侍女を雇い――私の前を歩く彼女も、それなのではないだろうか。

 憶測に過ぎないけど、そう外れてないような気がする。
 エイシュケル国の城では大勢が働いていた。人手が――しかも、妃となった人に付けられないほど不足するなんて、そうあることではないと思う。

「それじゃあ、何かわかったら教えてくれますか? ルーファス陛下ともっと親しくなりたいので、色々知りたいんです」
「かしこまりました」

 少しだけ表情を和らげる彼女に微笑んで返す。彼女からルーファス陛下に聞けることは今はないようだ。
 なので、別のことを聞いてみよう。

「このお城に薬草とか、薬草じゃなくても草花がたくさん生えている場所ってありますか?」
「薬草、ですか?」
「はい。この国でしか栽培されていないものとかあれば、教えてほしいです」

 薬草は煎じたりすれば薬になるけど、量や調合方法を変えれば毒になるものも多い。薬も毒も紙一重なのだと、お母さまと二人で暮らしている間に知った。
 だから私はあえて、毒草についてではなく、栽培していてもおかしくない薬草について聞くことにした。

 馬鹿正直に毒草と言っても、教えてはくれないと思ったから。それで毒殺を企んでると思われて殺されても、非は完全にこちらにある。
 それでは意味がない。もしもそれがきっかけでアドフィル帝国がエイシュケル王国に攻め入りでもしたら、寝たきりのお母さまは放っておかれてしまう。

「薬草については知りませんけど……庭園がありますので、そちらでも構いませんか?」
「はい、お願いします」

 一見綺麗なだけの花でも、根や茎に毒を持つものもある。そういったたぐいの花であることを祈りながら、侍女の後ろをついていく。
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