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弐、次男の苛立ち
反抗期の理由(エルドレッド視点)
しおりを挟むオヤジとのいざこざから一夜。
俺は狩りの勉強とストレス解消を兼ねて家の近くの森へと足を踏み入れていた。
そしてまっすぐ向かった先は森の少し奥。
人は立ち入らないその場所には幾つかの罠を仕掛けていた。
…ガシャッ
「…………外れか」
仕掛けた罠の中身を確認して大きくため息をつく。
…勉強熱心なモーリスとは違い、俺は外で体を動かす方が好きだった。
だから、俺が選んだのは屋外での狩りの仕事。
危険なオオカミや野犬を追い払い、また食料となる兎などを仕留める仕事だ。
(1人になれるのはありがたいな。…家にいると、イライラして仕方がない)
その原因は主にあのクソオヤジ。
頭でっかちで、陰気で、体はひょろくて、そのくせ偉そうに父親面して…とにかく何をしていても気に食わない。
「……クソっ、イラつく…」
周りに獣の気配もないことを確認してから倒木に腰掛け、ふと昔…数年前のことを思い出す。
(あの頃の俺は…まだこんな感情に振り回されていなかった)
今のヴィヴィアンほどではないが……とにかく、あの頃の俺はそれなりに素直で、日々の暮らしにも満足していた。
『父さん。また研究か?』
『エルドレッドか。…今は女性型ホムンクルスの研究をしていてな』
『…女性型?』
『あぁ、上手く行けば来年には妹が出来るぞ』
そう言って笑っていた父親の…とても楽しそうな顔が気に入らない。
ーー何故その顔は俺を見ていないのか
そしてガラス容器の中の胎児に呼びかける…優しそうな声も気に入らない。
ーー何故その声は俺に向けてのものではないのか
そんな感情を抱くようになり、胸の奥で燻らせること数年。
今ではオヤジの姿を見るだけで苛立ち、ものの見事にひねくれてしまった。
(あのクソオヤジは『反抗期』とか言っていたが……この感情は、多分違う)
自問自答しながらも、既に俺はその答えを知っている。
しかしそれを受け入れることはまだ出来ない。
「…次の罠、見に行くか」
俺は心の奥底に封じられたそれから目を背け、さらに森の奥へと足を踏み入れるのであった。
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