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第二部/3組目・英雄の子孫と獣人兄弟

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ーーー1部屋目ーーー



ーーヒュンッ


入口に設置された魔法陣を踏み、ダンジョン内部へと侵入したエリック達。

双剣を構えるソレイユと丸盾をかかげるリュンヌに守られつつ、エリックはじっと目を凝らして部屋の中を見渡した。


「…ふん、よくある陰気なダンジョンだな。本当にここが踏破者ゼロのダンジョンなのか?」

きっと他の挑戦者達が無能だったのだろう、と嘲るように笑うエリック。
しかしソレイユとリュンヌの2人は僅かに鼻を震わせ、奥から漂う『匂い』に警戒態勢を強めた。

「……エリック様。奥に魔物が居ます」
「この匂いは…おそらくローパー系が多数。それと植物系も少々」
「魔物程度構うものか。…『いつも通り』の戦法でいく。いいな?」

鼻のきく双子の言葉にエリックも渋々杖を構える。
そして……

コンッ

エリックが杖で床を小突いた瞬間、双子は獣人特有の驚異的な脚力で敵のいる方角へと同時に駆け出した。


ーースパッ

『うにょにょーん!』

真っ先に敵を切りつけたのは双剣を持ったソレイユだった。
左右の剣でローパー達の触手を切り落とし、攻撃手段を奪う。

その隣ではリュンヌが丸盾で敵を1箇所に押しとどめ、そこを短めの剣で切りつけていた。

…だが、双子の攻撃は決して相手を倒すものではない。

敵を集め、押しとどめ……を作ることが目的だ。

「よしよし、そのまま動くなよ…」

それを離れた箇所から見ていたエリック。
杖を構え、その先端に魔力を込めていく。

「照準固定、魔力充填……」

『英雄の子孫』と持て囃されているエリックだが、ただ持て囃されているだけではなくその実力は疑いようもなく本物だ。
ほんの僅かな時間で、並の冒険者では到底操ることの出来ない量の魔力が杖先に集められる。

そして……

「…行くぞ!劫炎拡散ファイアスプレッド!」

ーーカッ!

エリックの杖が眩く輝いた瞬間、双子が押し留めていた魔物達の中央から灼熱の炎柱が出現する。
その炎は次々と他の魔物達に燃え移り、その体を焼き尽くしていった。

そして目の前でごうごうと燃え盛る魔物達にエリックとリュンヌは咄嗟に距離をおこうと後ずさる。
…しかし、エリックはそれを許さない。

「お前たち何をしている!まだ敵が生きているうちはそこから動くな!…これは『命令』だ!」

エリックからの『命令』に、2人に刻まれている隷属の呪印が反応する。

すると2人は操られるように足を前に進め、燃え盛る炎を目の前にしたまま敵を逃がさないように包囲網を維持し続けた。

「ぐっ…!」
「あ、っつ…!」

魔物の体を焼き尽くす炎は傍に居る双子にもダメージを与える。
流石に完全に炎が燃え移るようなことはなかったが、それでも高温による火傷は回避出来なかった。


『ーーぶにゅ…』

そして数分後、最後の魔物が燃え尽きほぼ炭となった亡骸がその場に山積みになる。
そこでようやく『命令』の強制力は無くなり、ソレイユとリュンヌは武器を下ろしてその場から数歩離れた。

「はぁ…はぁ…」
「…リュンヌ、腕…」

息の荒いリュンヌの具合をソレイユが見てみれば、腕に取り付けた丸盾が高温に熱せられたのか火傷の跡が残ってしまっていた。

だがエリックはそれを無視し、双子のすぐ脇を通って次の部屋へと向かう魔法陣に歩み寄る。

「なるほど、入口にあった魔法陣と似ているな…やはりこれで次のエリアへと……」
「え、エリックさま!」
「……なんだ?」

興味深い様子で魔法陣を観察していたエリックは、ソレイユに呼び止められやや不機嫌そうに振り返る。

「…リュンヌが…火傷を負っています」
「それがどうした?…まさか、僕のせいだとでも言いたいのか?」
「っ、それは……」

確かにこの火傷は2人に被害が及ぶ可能性を無視して広範囲の炎魔法を放ったエリックの浅慮が原因だ。
が、奴隷の立場であるソレイユにそれを問い詰める事は出来ず、苦い顔で首を横に振る。

「…いえ…その、応急処置の許可をいただきたく…」
「チッ…分かった。だが僕を待たせるなよ」
「……はい」

直ぐに背を向けたエリックに頭を下げると、ソレイユはリュンヌの丸盾を外して火傷の治療を始める。

「……ごめん、ソレイユ」
「いや、リュンヌが謝る必要は無い。……悪いのは、あのクソガキの方だからな」

エリックには聞こえないように小声で呟くソレイユ。
その表情は怒りで震えていたが、ギリギリのところで踏みとどまっていた。

(…下手に逆らえばどうなるかは簡単に想像がつく。せめて…この呪印さえなければ…)

リュンヌの腕に軟膏を塗り、包帯を巻きながらもソレイユは歯を食いしばる。
その感情が痛々しい程伝わったのか、リュンヌも少し暗い表情をしていた。

「……ソレイユ。そんな顔しないで」
「だが…」
「大丈夫。…いつか、きっと自由になれるから」

弟の根拠の無い言葉にソレイユは思わず眉間に皺を寄せてしまう。
しかしその言葉が自分を宥めるためのものだと理解しているため、それ以上何かを言うことは無かった。


(……いつか自由に、か…もしそうなったら、真っ先にあのクソガキに復讐してやる)



…………


……………………



ソレイユとリュンヌが治療を行っていた頃、エリックはダンジョン内部を調査していた。

(…なるほど、ただの石造りの壁かと思っていたけど…これはただの石じゃないな)

ダンジョンの壁にそっと触れてみれば、微量ながらも魔力を吸われる感触に眉を顰める。

(普通にしていれば気付かないレベルだが…長居すればするほど魔力を吸われるのは厄介だな)

そうしてその場に屈み、今度は床に描かれた魔法陣を観察し始めるエリック。

だが…その背後から、小指ほどの長さの小さな触手が音もなく迫っている事には気付けなかった。

ーーぬるんっ

「ひっ…!?」

それはほんの一瞬の事だった。
エリックのローブの裾から触手が衣服の中へと滑り込むと、そのまま足を伝って下着の中…尻の谷間へと逃げ込んでしまう。

「や、やめっ…!ぅ、ぁあっ!」

そして『にゅるん』という感覚と共に、触手はエリックの尻穴へと入り込んでしまった。

「…エリックさま?」
「っ!」

流石に悲鳴のような声に気付いたのか、双子が不安げにエリックに声をかける。

咄嗟に触手の事を話そうとしたエリックではあったが…奴隷相手に『尻の中に何かが入った』などとは言えず、わなわなと震えた唇をキツく噛み締める。

「な、ん…でも、ない…」
「ですが顔色が……」
「なんでもないって言ってるだろ!!」

そして半ば逆ギレするかのようにそう怒鳴り散らすと、エリックは双子に視線を向けないまま次の部屋へと向かう魔法陣に乗ってしまった。

ーーヒュンッ

「……先に行っちまったな…」
「と、とりあえず追おうか」
「そうだな。…万一先走られたまま死なれたら、呪印のせいで俺達も道連れだし」


エリックの様子に疑問を抱きながらも、双子はその後を追うように魔法陣へと飛び乗るのであった。



ーー1部屋目 触手魔物の部屋 突破ーー



----------------------------
エリック 人間・魔道士
Lv.48 性別:男 年齢:17
HP:198/198
MP:162/200
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[非童貞]、触手寄生(MPドレイン)
----------------------------

----------------------------
ソレイユ 獣人(狼)・双剣士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:223/275
MP:73/82
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]、隷属の呪
----------------------------

----------------------------
リュンヌ 獣人(狼)・軽戦士
Lv.38 性別:男 年齢:26
HP:251/310
MP:45/51
絶頂回数:0
感度:等倍
状態:[処女]、[童貞]、隷属の呪、火傷(軽)
----------------------------

 
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