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第一部/2組目・ギルドからの調査員
閑話:運営!エロトラップダンジョン!
しおりを挟むルーカスとシルバーが脱落して数時間。
ダンジョンの管理人室では、ダンテが上機嫌な様子で魔力のモニターを見ていた。
「…やはり今回は良物件だったな。高レベルのエルフ…想定以上の数値だ」
「良かったですねぇダンテさま。俺も楽しかったですし、淫魔冥利に尽きますよぉ」
モニターには録画されていたルーカスとシルバーのダンジョン攻略の様子が映し出されており、キールはそれを見てうっとりとため息をする。
「ふふ…♡この綺麗な顔が、最終的にこぉんなドスケベなアヘ顔になるなんて…♡」
ダンジョン攻略前と後…変わり果てたルーカスの表情を比較し、キールは淫魔としての悦楽を感じていた。
だが…
「さて…精力の魔力変換も終えたことだ。次はその映像を増産するぞ」
「え?」
意気揚々とそう話すダンテに、キールは小首を傾げた。
「映像を、増産…?何に使うんです?」
「無論、ダンジョン運営資金の調達だ。挑戦者から拝借した金銭や装備では到底事足りないからな。……それに、私の知り合いの魔人に幾人かこういうモノを好む変人がいる」
『そもそも映像を記録していたのも主にそれが目的だ』との説明に、キールは残念そうに項垂れた。
「なぁんだ…ダンテさまもスケベな事が好きなのかと…」
「昔から言っているだろう。私の興味は、ダンジョンに関係することだけだ」
その言葉に嘘偽りはなく、ダンテは昔からダンジョン以外の事に興味を示さなかった。
高位魔人としての地位も、魔王すら圧倒する力も、ダンテにとってはその全てが『ダンジョン作りに利用出来る要素』である。
「資金を調達したら魔物を補充しておかねばな…ブラッドに連絡するか」
「えぇ~。俺、あの変態男苦手なんですけどぉ。…こないだもダンテさまからのお手紙届けようとしたら、メスのミノタウロスとセックスしてたし……」
嫌な記憶を思い出したのか、キールは頭痛を堪えるように頭を抱えた。
ブラッド…彼は『ブリーダー』の血筋を持つ高位魔人で、ダンテとは幼なじみにあたる。
『ブリーダー』の血筋はその名が示す通り、魔物の繁殖、改良などに長けており、このダンジョンに巣食う魔物のおよそ9割超がブラッドの手がけたものだ。
但し…その人柄には重度の魔物(not人型)フェチという欠点があったが。
「別にお前に手を出すようなことはないのだろう?…なら問題ない。個々人の趣味嗜好は自由だからな」
「でもぉ…」
頬を膨らませ、不服そうに尻尾を揺らすキール。
しかし……
ーーむぎゅっ!
「ひにゃぁあっ!?」
「だぁれが変態男だ」
突然何者かが背後から歩み寄り、キールの尻尾を無遠慮に握った。
その不審者は長身で褐色の肌をした男で、不敵に笑いながらキールとダンテを見下ろす。
「け、ケダモノー!!人の敏感な箇所をいきなり…!」
「ハハッ、インキュバスにケダモノ呼ばわりされるとはな」
「はぁ…来て早々騒がしいな、『ブラッド』」
不審者…いや、高位魔人のブラッドは、ダンテに名を呼ばれるとキールの尻尾を離してから軽く手を振った。
「よおダンテ!直接会うのは久しぶりだな」
「そうだな。…確か17年ぶりぐらいだったか?」
「もうそんなに経つのか?あの時は確かお前が『クイズダンジョン』を……」
「あぁ、あのダンジョンは最初こそ良かったが……」
そして昔話に花を咲かせる2人の魔人。
普段あまり表情が変わらないダンテもこの時ばかりは楽しそうに歓談していた。
キールはその姿に盛大なため息をつくと、邪魔をしないように…と言うよりも、『ブラッドと関わりたくない』という思いで出口へと歩を進める。
(…人間の街に出て軽く食事でもしてこよっと)
そしてキールはそのままダンジョンの外へと繋がる魔法陣へと足を……
『ぎにゃー!!』
「む?」
「ん…?」
不意に管理人室に間抜けな悲鳴が響き、ダンテとブラッドは同時に出口の方を向く。
するとそこには、何故か下半身を抑えたキールが見知らぬローパーと睨み合っていた。
「キール、どうした」
「だ、ダンテさまぁ!こ、こいつ…このローパー!」
「あー、そいつのこと忘れてたわ」
ブラッドはポリポリと頬を掻くと、うねうねと動くローパーの触手を掴んだ。
「これ、俺の新作。その名も『ローバーローパー』」
「…やけに語呂がいいな」
「そ、そんなことより俺の下着返してくださいよ!!」
ローパー…新種の『ローバーローパー』を指さし、顔を真っ赤にして声を張り上げる。
その言葉にダンテは小首を傾げたが、よくよく見ればローパーの手(触手)には紐のような下着が握られていた。
「それは…」
「こいつはその名の通り『盗人』みたいなローパーでな。相手が身につけているものを掠め取る能力を持ってる」
「なるほど。それでキールの下着を…」
「感心してる場合じゃないですよぉ!返してください!」
バッ!
若干涙目になりながらもローパーから下着(紐パン)を奪い返したキール。
頬を膨らませて踵を返すと、今度こそダンジョンの外へと出ていってしまう。
「はは、怒らせちまった。……んで、本題だが…今日はコイツの売り出しに来たんだ」
「なるほど。お前が直接出向いてくるのは珍しいと思ったが…そういうことだったか」
ダンテは納得したように頷くと、ローパーに歩み寄り上から下までよくよく観察する。
「ふむ…見た目は他のローパーと変わらないな…」
「あぁ。普通のローパーに紛れ込ませるのも面白いと思ってな。…ちなみに盗みの能力に特化させたせいか、戦闘能力は下の下だ」
「そちらの方がむしろ好都合だな」
ダンテのダンジョンは人を殺すことを目的としていないため、魔物の戦闘能力は意図して低めの物を用意していた。
しかしその分、精力を効率的に搾取する為の特異なスキルを持つ魔物や、様々なトラップに力を入れている。
「…よし。ではこいつも頂こう。それとゴブリンの補充も頼む」
「まいどありっ!」
ダンテは懐から金貨を数枚取り出し、それをブラッドの手のひらに乗せる。
それはダンテが過去製作した数々のダンジョンから得た利益で、それらのダンジョンは今も半自動で稼働し続けながら冒険者たちを苦しめているのだが…それはまた別のお話。
「じゃあ後でいつものところに運び込むな」
「あぁ。いつもすまないな」
「なぁに、いいんだよ。お前の奇特な注文、応える俺も楽しいからな」
それは同じ高位魔人としてではなく…幼なじみとしての信頼に応える喜び。
ブラッドの裏表のない笑顔に、ダンテも思わず顔を綻ばせるのであった。
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