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47話〜連なる塔と魔法使い

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「見えてきたぞ、あれが魔法都市・ラスレンダールだ」

 カルバンの指さした方向には、塔がいくつも乱立していて都市というよりは遺跡のような風景が広がっていた。

 中心に一際高く、古ぼけていて黒く変色しているが荘厳な雰囲気を醸す塔が立っている。

「アレがラスレンダールの建てた塔か?」

「そうだ、ここに住む魔法使い達はあの塔に敬意を評してあれよりも高い塔を建てないという暗黙のルールがある」

 ゆっくりとロゼが下降する、魔法都市からほど近い場所に降りていつものように徒歩で入る。

「素材はいくつかの場所で分けて売る、いつもなら纏めて売るんだが、少しでも金を作っとかないとな」

 他の面々はカルバンの話に頷きながら後に続く。

「ひとしきり纏まった現金になったらそれを持ってセルカとロゼはダイナスバザールで買い出しだ、水筒と野菜だな。 先ずは命を繋ぐ物からだ、それから村を作る場所に農具や家を建てるための工具を買い入れて運ぼう」

 都市の端にたどり着いた、塔は1つ1つが住んでいる魔法使いの趣味なのか、やたらと窓が多かったり煙突があちこちから出てモクモクと煙を出していたり。

 煉瓦が全て微妙に違う色で作られていたり、塔その物の形も様々だ。

 バーンダーバが例の如くずっと周りをキョロキョロと絶え間なく首を動かしている。

 カルバンの言っていた通り、全ての塔の1階部分は解放されていて人の住居になっているか店が開かれている。

 売られているものは食料もあれば怪しげなマジックアイテムを並べている店や動物が並んでいる店。

 動物は主に鳥類だが、猫やトカゲ、ネズミなどもいる。

 魔法使い用の杖を並べていたり、ローブを並べている店もある。

 ダイナスバザールにはない怪しく神秘的な雰囲気が漂っている。

「ここで商売する時は塔を見て出来るだけマトモそうな物を選ぶんだ、例えばアレを見てみろ」

 カルバンが指さしたのは一見すると特に変わったところのない塔だ。

「窓が1つもないだろう? ありゃ、引きこもりの偏屈野郎が住んでるはずだ」

 その言葉にロゼとセルカが吹き出した。

「アレはそうだな」

 今度は塔の下が細く、真ん中が太くなっていて先端にいくにつれて細くなっていく塔を指さした。

「気をてらって立てたんだろう、魔法使いは見栄っ張りや目立ちたがりが多いからな。 アレにゃ見るからに馬鹿が住んでそうだ、アレじゃあ俺達が次に来る頃には倒れちまってるだろうな」

 ロゼとセルカがお互いの肩を叩いてけたけたと笑っている。

 フェイはカルバンの毒舌に笑えないでいた、バーンダーバは「なるほど」とか言っている。

 セルカとロゼの2人は塔を指さして「あの塔にはこんな奴が」「こっちの塔はどういう奴が」と、中々に下世話な話題で盛り上がり始めた。

 その後もカルバンはキョロキョロと塔を値踏みするように暫く魔法都市を歩いて回る。

「あれにしよう」

 カルバンが指さしたのはなんの変哲も無い鼠色の塔だ。

 高さも他の塔より若干低い、言われなければ素通りしていたかもしれない。

 どの塔も入口は1階部分には無く、階段が横にあって2階部分に直接扉がある。

 階段も螺旋階段だったり、折り返しの階段だったり。

 中には梯子の塔もあった。

「恐らく、交渉は難航するだろう。 迷宮を踏破した情報もまだ出回っていないしな。 確認だが、バン、お前さんが魔族だという事は話しても差し支えないのか?」

「ふむ、必要なのか?」

「あぁ、素材を高く売るにはな」

「・・・ そうだな、隠していても前には進めんか」

 バーンダーバが呟いた。

「分かった、素性を知られれば迷惑をかけるかもしれん。 すまないが、よろしく頼む」

「その辺は任せてくれ」

 カルバンが頷いて進む、狭い階段を登ると重厚だがシンプルな木の扉がある。

 扉には呼び鈴もノッカーも無い、カルバンは扉の前で何もせずに立っていた。

 どうするんだ?と、バーンダーバが訪ねようとした時、木の扉の木目が変化して目と口が現れた。

「ここはクラス3のマスター、偉大な魔法陣魔術師・ジャスハン様の塔である。 何用か?」

 大きなタレ目の眠そうな瞳でこちらを眺めながら扉が喋る。

「私はダイナスバザールの冒険者ギルドに所属している商人のカルバンです。 北の荒野の迷宮産の魔法素材を売りに来ました、よければ見ていただけないでしょうか?」

 扉は目と口を閉じて暫く沈黙した後に口を開いた。

「通るがいい、主は4階におられる。 入れば正面に階段がある、そこを登ればまた正面の突き当たりに階段がある、余計な物には触れぬようにな」

 それだけ言うと音もなく扉は開いた。

 中は薄暗い、正面に通路がまっすぐ伸びていて両脇に扉が等間隔に3つずつ並んでいた。

 扉に案内されたように階段を昇り、4階に着く。

 4階は左側が大きな窓があり広い空間になっていた。

 キッチンがあり、食事用と思しきテーブルや調度品が並べられている。

 右側には扉が2つ。

 手前の扉をカルバンがノックする。

 暫く待って反応がないので隣の扉をノックすると低い男の声で「入れ」と聞こえた。

 カルバンを先頭に扉を開くと塔と同じ鼠色のローブを着て丸眼鏡をかけた男が机に座って正方形の羊皮紙に何事かを書き込んでいた。
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