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20話〜商都襲来
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「それで、魔弓の、どうやって大量の食料を手に入れんだい?」
レッドドラゴンの住処を出て山の斜面を歩きながらロゼがバーンダーバに尋ねる。
「今は冒険者をしながら金の稼ぎ方を覚えているところだ、ある程度纏まった金額になったら他のことを始めようと思っている。 それと、私の事はバンと呼んでくれ」
「あぁ、分かったよ。 バン、それにしても、レッドドラゴン一族が唯一恐れる男が現界で冒険者をやってるなんて傑作だね。 よし、せっかくだからアタイも冒険者になろうか」
ロゼはなにが面白いのかニヤニヤと笑っている。
「そうか、それではまたダイナスバザールに戻るとするか」
「どこだいそりゃ」
「ここから走って2日程の距離だ」
バーンダーバが大体の方向に指をさす。
「めんどくさいね、アタイの背中に乗んなよ。 運んであげるよ」
ロゼが言いながら既にレッドドラゴンに姿を変えていた。
大きさは人間2人が乗るのに丁度いい程の大きさだった。
「器用だな、大きさを調整出来るのか。 城で見たのが最大なのか?」
《そうだよ、さぁ、早く乗んな》
バーンダーバがロゼに跨る。
「空を飛ぶんですか、その、ちょっと、怖いというか」
引きつった顔でフェイが空を見てからロゼを見る。
「つべこべ言ってないでさっさと乗んな、早くしないと咥えて飛ぶよ」
ロゼが長い首を曲げてフェイの方を見る、フェイはロゼの牙を見てさらに顔が引きつった。
「ロゼ、そんな言い方はないだろう。 フェイ、怖いならやはり走って帰るか?」
バーンダーバがフェイを気遣う。
「・・・ いえ、乗ります」
バーンダーバの顔を見て、意を決したようにフェイがロゼに跨る。
「大丈夫か? フェイ」
「はい、邪魔にはなりたくないので頑張ります」
ギュッと目を瞑っている。
《ふふ、さぁ、行くよ。 しっかり掴まってな!》
ロゼが地面を強く蹴ると一瞬で視界が上へと飛ぶ!
「きゃあぁぁっ」
フェイが悲鳴を上げてバーンダーバの腰に抱きつく。
『懐かしいな、龍の背中なんぞ、魔族として人間と戦っている頃以来だ』
フェムノが昔を懐かしむように呟いた。
「ほう、フェムノが人間だった頃か。 いや、人間では無いのか」
『どっちでもいい、時にバーンダーバよ、お主道案内はちゃんと出来るのか?』
「大丈夫だ、ロゼよ、もう少しだけ左に進路を取ってくれ」
《あいよ》
ロゼは殆ど羽ばたくこと無く大空を進んでいく。
「魔力で飛んでいるのか?」
《そうだよ、最初に飛び立つ時と降りる時くらいだね。 羽ばたくのは、フェイ、どうだい? ちょっとは慣れたかい?》
フェイは相変わらず目を瞑ってバーンダーバの背中に顔を埋めている。
そのまま顔を左右に振る。
《あはは、それじゃあ慣れるもんも慣れないよ。 ちょっと周りを見てご覧よ、結構、いい景色だよ》
フェイは言われて少し目を開けた。
周りを雲が浮いている、遥か下に見える地面の景色は不思議とゆっくり過ぎていくように感じる。
「意外と、素敵ですね・・・」
《そうだね、アタイも外をこんな風に飛び回るのは初めてだよ》
「それは、使命があったからですか?」
《そうさ、アタイはあの穴ぐらから遠くへ離れる事は許されなかったのさ。 フェイ、あんたのお陰で出られたよ。 あんがとね》
「いえ、そんな」
「凄いな、もう見えてきたぞ」
眼前に綺麗な円の塀に囲まれた都市が見えてきた。
「上から見るとあんな風になってたんですね」
《どの建物だい? 冒険者ギルドってのは》
「うむ、南門があれだから、大通り沿いの・・・ アレだな、石造りの剣と靴とマントの描かれた旗の立っている」
バーンダーバが指を指し示す。
「よく見えますね、バン」
フェイには遠すぎて全く分からない。
「弓手は目が良いからな」
《あれだね、行くよ》
「えっ!? このまま行くんですか!? 大騒ぎになりますよ!」
《いーじゃないか、アタイだって冒険者になるんだ。 毎回歩いてなんて面倒臭いしね》
「だが、街中は中々に見物だぞ」
《それじゃあまた今度観光するよ》
ロゼはどんどんと冒険者ギルドに向かって高度を下げていく。
ロゼに気付いた道行く人々が叫びながら逃げていく。
長閑な夕暮れの街並みが突然に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
泣き叫ぶ子供、それを庇う母親。
死を覚悟しながらも剣に手をかける冒険者。
バサッバサッと凄まじい風を巻き起こしながらドシンと降り立った。
足を付けたとほぼ同時にロゼはカッと光を放って人間の姿に変じていた。
「邪魔したね」
それだけ言うとロゼは何事も無かったように冒険者ギルドの中へと入っていった。
道端の人々は残ったバーンダーバとフェイを凝視している、その顔は狐につままれたようなものだ。
・・・
・・・・・・
「失礼した」
バーンダーバはそれだけ言ってギルドへと入っていった、フェイもそそくさと後に続く。
ギルドの外はしばらく、誰も動くことなく固まっていた・・・
レッドドラゴンの住処を出て山の斜面を歩きながらロゼがバーンダーバに尋ねる。
「今は冒険者をしながら金の稼ぎ方を覚えているところだ、ある程度纏まった金額になったら他のことを始めようと思っている。 それと、私の事はバンと呼んでくれ」
「あぁ、分かったよ。 バン、それにしても、レッドドラゴン一族が唯一恐れる男が現界で冒険者をやってるなんて傑作だね。 よし、せっかくだからアタイも冒険者になろうか」
ロゼはなにが面白いのかニヤニヤと笑っている。
「そうか、それではまたダイナスバザールに戻るとするか」
「どこだいそりゃ」
「ここから走って2日程の距離だ」
バーンダーバが大体の方向に指をさす。
「めんどくさいね、アタイの背中に乗んなよ。 運んであげるよ」
ロゼが言いながら既にレッドドラゴンに姿を変えていた。
大きさは人間2人が乗るのに丁度いい程の大きさだった。
「器用だな、大きさを調整出来るのか。 城で見たのが最大なのか?」
《そうだよ、さぁ、早く乗んな》
バーンダーバがロゼに跨る。
「空を飛ぶんですか、その、ちょっと、怖いというか」
引きつった顔でフェイが空を見てからロゼを見る。
「つべこべ言ってないでさっさと乗んな、早くしないと咥えて飛ぶよ」
ロゼが長い首を曲げてフェイの方を見る、フェイはロゼの牙を見てさらに顔が引きつった。
「ロゼ、そんな言い方はないだろう。 フェイ、怖いならやはり走って帰るか?」
バーンダーバがフェイを気遣う。
「・・・ いえ、乗ります」
バーンダーバの顔を見て、意を決したようにフェイがロゼに跨る。
「大丈夫か? フェイ」
「はい、邪魔にはなりたくないので頑張ります」
ギュッと目を瞑っている。
《ふふ、さぁ、行くよ。 しっかり掴まってな!》
ロゼが地面を強く蹴ると一瞬で視界が上へと飛ぶ!
「きゃあぁぁっ」
フェイが悲鳴を上げてバーンダーバの腰に抱きつく。
『懐かしいな、龍の背中なんぞ、魔族として人間と戦っている頃以来だ』
フェムノが昔を懐かしむように呟いた。
「ほう、フェムノが人間だった頃か。 いや、人間では無いのか」
『どっちでもいい、時にバーンダーバよ、お主道案内はちゃんと出来るのか?』
「大丈夫だ、ロゼよ、もう少しだけ左に進路を取ってくれ」
《あいよ》
ロゼは殆ど羽ばたくこと無く大空を進んでいく。
「魔力で飛んでいるのか?」
《そうだよ、最初に飛び立つ時と降りる時くらいだね。 羽ばたくのは、フェイ、どうだい? ちょっとは慣れたかい?》
フェイは相変わらず目を瞑ってバーンダーバの背中に顔を埋めている。
そのまま顔を左右に振る。
《あはは、それじゃあ慣れるもんも慣れないよ。 ちょっと周りを見てご覧よ、結構、いい景色だよ》
フェイは言われて少し目を開けた。
周りを雲が浮いている、遥か下に見える地面の景色は不思議とゆっくり過ぎていくように感じる。
「意外と、素敵ですね・・・」
《そうだね、アタイも外をこんな風に飛び回るのは初めてだよ》
「それは、使命があったからですか?」
《そうさ、アタイはあの穴ぐらから遠くへ離れる事は許されなかったのさ。 フェイ、あんたのお陰で出られたよ。 あんがとね》
「いえ、そんな」
「凄いな、もう見えてきたぞ」
眼前に綺麗な円の塀に囲まれた都市が見えてきた。
「上から見るとあんな風になってたんですね」
《どの建物だい? 冒険者ギルドってのは》
「うむ、南門があれだから、大通り沿いの・・・ アレだな、石造りの剣と靴とマントの描かれた旗の立っている」
バーンダーバが指を指し示す。
「よく見えますね、バン」
フェイには遠すぎて全く分からない。
「弓手は目が良いからな」
《あれだね、行くよ》
「えっ!? このまま行くんですか!? 大騒ぎになりますよ!」
《いーじゃないか、アタイだって冒険者になるんだ。 毎回歩いてなんて面倒臭いしね》
「だが、街中は中々に見物だぞ」
《それじゃあまた今度観光するよ》
ロゼはどんどんと冒険者ギルドに向かって高度を下げていく。
ロゼに気付いた道行く人々が叫びながら逃げていく。
長閑な夕暮れの街並みが突然に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
泣き叫ぶ子供、それを庇う母親。
死を覚悟しながらも剣に手をかける冒険者。
バサッバサッと凄まじい風を巻き起こしながらドシンと降り立った。
足を付けたとほぼ同時にロゼはカッと光を放って人間の姿に変じていた。
「邪魔したね」
それだけ言うとロゼは何事も無かったように冒険者ギルドの中へと入っていった。
道端の人々は残ったバーンダーバとフェイを凝視している、その顔は狐につままれたようなものだ。
・・・
・・・・・・
「失礼した」
バーンダーバはそれだけ言ってギルドへと入っていった、フェイもそそくさと後に続く。
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