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18話〜四天王と赤龍王
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『かははははははっ! かあぁっはっはっはっはっはっ!! かぁーはっはっはぁーーー!!!』
人間であれば腹を抱えて転げ周り、涙を流しているであろう程にフェムノが笑っている。
他には誰も喋っていない、フェムノの笑い声だけが広間に響いている。
フェイとバーンダーバ、そしてレッドドラゴンの王。
赤い鱗の王が苦い顔でフェイの背中の聖剣を苦々しく眺めている。
『傑作だ! なぁ皆の衆! 聞いたか! 勇者にフラれたマヌケが4人に増えたぞ!』
自分もその1人のはずなのにフェムノはゲラゲラと笑っている。
その理由は・・・
数百年前、時の大神クーンアールのお告げにより、闘争の龍と愛情の龍が子を為した。
そのお告げというのが。
《この先、数百年の後に魔界より4人の魔王を率いた魔帝が現れる。 その魔帝は凄まじい力で現界を支配するやもしれない、時の加護だけでは太刀打ち出来ないかも知れないので勇者に他に3つの力を与える事にする》
《1つ目は異界から強力な聖剣を》
《2つ目はアグレスドラゴンとエロイスドラゴンの子から闘争の加護を》
《3つ目は今、現界にいる最強の存在を封印し、勇者の仲間として派遣する》
その1つ目は勿論、フェムノの事だ。
そして、2つ目がイスラン火山にて現在、苦りきった顔をしているレッドドラゴンの王、ロッソケーニヒ。
ロッソケーニヒは今回の魔帝を倒す為にわざわざ産み落とされた存在だった。
ロッソケーニヒはイスラン火山の麓で陣を張っている四天王・怒炎のオンオールを見て。
《この程度の者を倒せないなら加護を与えるに足らん》
と見て放置していた。
そして、勇者が現れ、オンオールを打ち倒すのを上空から眺めていた者から報告を受けた。
勇者がオンオールを倒し、もうすぐ自分の元へ来る。
自分の使命が達成される瞬間を心待ちに広間へと戻って勇者を待った。
だが
勇者は来なかった。
何を思ったのか勇者はオンオールを倒した後、踵を返してイスラン火山に背を向けて去っていった。
何かの間違いか?
忘れ物でも取りに戻ったのか?
いつまで経っても勇者が訪れることは無かった。
そして
魔王が討たれたという報告を受けた。
ロッソケーニヒは愕然とした。
なぜだ・・・
何故、勇者は来なかった・・・
その日からずっと、レッドドラゴンの王の機嫌はすこぶる悪かった。
自分の産まれた意義を失ったのだ。
当然といえば当然である。
「ロッソケーニヒよ」
バーンダーバが優しく声をかけた。
《・・・なんだ?》
ロッソケーニヒの恨めしそうな声が響く。
「私達と共に来ないか? こんなところに篭っていても気は晴れんだろう?」
・・・
・・・・・・
広い空間に重たい沈黙が満ちた。
《お前達と行って何をするというのだ?》
不満気なロッソケーニヒの声が響く。
「私は、魔界を豊かにして争いを無くしたい。 お主は勇者に争いを終わらせる為に加護を与える存在だった。 ならば、その存在意義からそう遠くない目標ではないだろうか? 私に力を貸してもらえないか?」
ロッソケーニヒは「ぐるる」と唸り、値踏みするようにバーンダーバを見つめる。
《魔界を豊かにしてなぜ争いがなくなる? また攻めてくるだけの話しではないのか?》
「そうならぬ様にするのだ、その為にまずは魔界を豊かにする。 今の魔界は余りにも貧しすぎる、満ちているのは不満だけだ。 そんな状態で現界に侵攻するなと言っても無理な話だ、腹が減って目の前にご馳走が並んでいる。 戦う理由しかないのが今の魔界の現状だ、せめて、戦わないでもいい理由が欲しい」
《分からんな、魔族は食料なんぞあろうが無かろうが争い続けてきた。 今さら争いが無くなる筈も無い》
「だが、私のように争いを好かない者もいるのだ。 それに、腹が減っていては話をする気にはなれない。 だから、まずは食料が必要なのだ」
《・・・》
「協力して貰えないか?」
《いいだろう》
暫しの沈黙の後、ロッソケーニヒが答えた。
「本当か!」
《ちょうどこの洞穴に嫌気がさしていたところだ、だが、条件がある》
ロッソケーニヒが鋭い爪でフェイを指さした。
《女よ、聖剣を持っているのだ。 お前が吾輩の加護を受けよ、でなければ吾輩はここから動けんのだ》
「えぇっ! 私がですか!?」
フェイが困った顔で叫ぶ。
人間であれば腹を抱えて転げ周り、涙を流しているであろう程にフェムノが笑っている。
他には誰も喋っていない、フェムノの笑い声だけが広間に響いている。
フェイとバーンダーバ、そしてレッドドラゴンの王。
赤い鱗の王が苦い顔でフェイの背中の聖剣を苦々しく眺めている。
『傑作だ! なぁ皆の衆! 聞いたか! 勇者にフラれたマヌケが4人に増えたぞ!』
自分もその1人のはずなのにフェムノはゲラゲラと笑っている。
その理由は・・・
数百年前、時の大神クーンアールのお告げにより、闘争の龍と愛情の龍が子を為した。
そのお告げというのが。
《この先、数百年の後に魔界より4人の魔王を率いた魔帝が現れる。 その魔帝は凄まじい力で現界を支配するやもしれない、時の加護だけでは太刀打ち出来ないかも知れないので勇者に他に3つの力を与える事にする》
《1つ目は異界から強力な聖剣を》
《2つ目はアグレスドラゴンとエロイスドラゴンの子から闘争の加護を》
《3つ目は今、現界にいる最強の存在を封印し、勇者の仲間として派遣する》
その1つ目は勿論、フェムノの事だ。
そして、2つ目がイスラン火山にて現在、苦りきった顔をしているレッドドラゴンの王、ロッソケーニヒ。
ロッソケーニヒは今回の魔帝を倒す為にわざわざ産み落とされた存在だった。
ロッソケーニヒはイスラン火山の麓で陣を張っている四天王・怒炎のオンオールを見て。
《この程度の者を倒せないなら加護を与えるに足らん》
と見て放置していた。
そして、勇者が現れ、オンオールを打ち倒すのを上空から眺めていた者から報告を受けた。
勇者がオンオールを倒し、もうすぐ自分の元へ来る。
自分の使命が達成される瞬間を心待ちに広間へと戻って勇者を待った。
だが
勇者は来なかった。
何を思ったのか勇者はオンオールを倒した後、踵を返してイスラン火山に背を向けて去っていった。
何かの間違いか?
忘れ物でも取りに戻ったのか?
いつまで経っても勇者が訪れることは無かった。
そして
魔王が討たれたという報告を受けた。
ロッソケーニヒは愕然とした。
なぜだ・・・
何故、勇者は来なかった・・・
その日からずっと、レッドドラゴンの王の機嫌はすこぶる悪かった。
自分の産まれた意義を失ったのだ。
当然といえば当然である。
「ロッソケーニヒよ」
バーンダーバが優しく声をかけた。
《・・・なんだ?》
ロッソケーニヒの恨めしそうな声が響く。
「私達と共に来ないか? こんなところに篭っていても気は晴れんだろう?」
・・・
・・・・・・
広い空間に重たい沈黙が満ちた。
《お前達と行って何をするというのだ?》
不満気なロッソケーニヒの声が響く。
「私は、魔界を豊かにして争いを無くしたい。 お主は勇者に争いを終わらせる為に加護を与える存在だった。 ならば、その存在意義からそう遠くない目標ではないだろうか? 私に力を貸してもらえないか?」
ロッソケーニヒは「ぐるる」と唸り、値踏みするようにバーンダーバを見つめる。
《魔界を豊かにしてなぜ争いがなくなる? また攻めてくるだけの話しではないのか?》
「そうならぬ様にするのだ、その為にまずは魔界を豊かにする。 今の魔界は余りにも貧しすぎる、満ちているのは不満だけだ。 そんな状態で現界に侵攻するなと言っても無理な話だ、腹が減って目の前にご馳走が並んでいる。 戦う理由しかないのが今の魔界の現状だ、せめて、戦わないでもいい理由が欲しい」
《分からんな、魔族は食料なんぞあろうが無かろうが争い続けてきた。 今さら争いが無くなる筈も無い》
「だが、私のように争いを好かない者もいるのだ。 それに、腹が減っていては話をする気にはなれない。 だから、まずは食料が必要なのだ」
《・・・》
「協力して貰えないか?」
《いいだろう》
暫しの沈黙の後、ロッソケーニヒが答えた。
「本当か!」
《ちょうどこの洞穴に嫌気がさしていたところだ、だが、条件がある》
ロッソケーニヒが鋭い爪でフェイを指さした。
《女よ、聖剣を持っているのだ。 お前が吾輩の加護を受けよ、でなければ吾輩はここから動けんのだ》
「えぇっ! 私がですか!?」
フェイが困った顔で叫ぶ。
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