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第16話・クラマリオ
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最初にクラマリオの元へと到着したのはバラックだった。
クラマリオはバラックに全員が到着するまではこの部屋からは出られないと告げた。
クラマリオの虚ろな表情を見たバラックは何事か言おうとしたが、またビリーの仕業かも知れないと思い、何も言わずに座った。
次に到着したのはクーリーン。
彼女は疲労困憊という顔だったが表情は何処か満足気な物だった。
バラックに全員が揃わないと進めないと聞かされるとその場にゴロンと横になってすぐに寝息を立て始めた。
そして、アインダークとマナルキッシュがやってきた時にはクラマリオがこの部屋に来てから約20時間が経っていた。
「なんだ、俺達が1番手こずったのかよ」
既に全員が揃っているのを確かめてアインダークが苦笑する。
クラマリオが全員が揃ったのに気づくとゆっくりと立ち上がった。
広間のたった一つの扉が独りでに開いた。
「おい、起きろクーリーン。 先へ進んでビリーのケツを蹴飛ばすぞ!」
アインダークが笑いながらクーリーンのケツを蹴って起こす。
クーリーンがアインダークを睨み「なにさ、1番遅かったくせ」とブツブツ言いながら起き上がった。
クラマリオが黙って扉を潜り、1人で部屋を出ていった。
それに続いてバラック、マナルキッシュ、アインダーク、クーリーンという順で扉を潜る。
扉を出ると広い空間になっていた、迷宮の最深部。
本来ならここには魔族の意志を護る守護魔獣がいるべき場所だ。
広い何も無い空間の中心でクラマリオが足を止めた。
「どうしたクラマリオ」
アインダークが声をかける。
「・・たし、・・かって・・さい」
クラマリオはボソボソと呟いた。
「なにさ、ハッキリ言いなよ」
クーリーンが苛立たしげに言う。
「私と戦って下さい!」
クラマリオが突然大声を出した事にクーリーンがびくっとなった。
「・・・ なんだよクラマリオ、お前と遊んでる暇はねーんだよ」
そう言ったアインダークに向かってクラマリオが魔法球を撃ち出した!
「なにっ!」
アインダークがすんでで身を捻って避ける!
「なにすんのさっ!」
クーリーンが叫ぶ!
「我慢ならないんです! ビリーさんは素晴らしい冒険者だ! この中の誰よりもっ! それなのに、それなのに罵倒する貴方達が私は許せない!」
そう叫ぶと同時にクラマリオは光弾を無数に体の周りに創り出した!
「どうなってんだ! なんで詠唱も無しに魔法が使えるんだ!」
アインダークが構える、剣は抜いていない。
「この空間はビリーさんが創り上げた魔法使いにとって無敵の空間と言っていい【無詠唱の間】。 ご安心を、殺しまではしません。 ただ、痛い目にあってもらうだけです」
クラマリオは自身の周りに夥しい量の魔力球を浮かび上がらせた!
それを見たバラックが大盾を構える。
「コレがビリーが与えたクラマリオの課題か・・・」
誰にも聞こえないような声でバラックがボソリと呟いた。
クラマリオはビリーの言葉で頭がいっぱいだった。
======
〈クラマリオ、君には次の守護魔獣の間で戦ってもらう。 相手はシルバーウィンド、つまり、君と僕を除いたパーティメンバーだ〉
〈その空間ではクラス2までの魔法や単純な魔力球を打ち出すだけなら詠唱も溜めも無しで使えるように細工しておいた〉
〈どうだい? いつも日和見主義の君には良い課題だろ? 味方のいない状況で戦うんだ、自分の思いを存分にぶちまけてくれ〉
======
姿勢を低くして突っ込むクーリーンにクラマリオが手を向ける!
「アースディグ!」
クーリーンの足元がガボッと陥没して穴に落ちた。
アインダークもクラマリオに向かって駆ける!
クラマリオが撃ち出した魔力球を左へ避けた瞬間
どおぉん!
アインダークの真横で魔力球が爆ぜる!
「がっ!」
そのままアインダークは衝撃で地面に転がった。
クラマリオが距離を取ろうと衝撃波をバラックに放つがバラックは大盾で受けて体を捻り衝撃波を完璧に受け流して見せた。
クーリーンが穴から飛び出してクラマリオの背後に回り込む、また、クラマリオが【アースディグ】で地面を陥没させてクーリーンを落とす。
かに見えたがクラマリオが手を向けた瞬間にクーリーンは後ろに跳んで落ちる前に目標から逸れていた。
バラックもゆっくりと確実に距離を詰めていた。
「くっ」
クラマリオがバラックに手を向けた瞬間にアインダークが起き上がって突っ込む!
「うああぁぁぁっ!」
クラマリオが全方位に向かって魔力球を乱射した!
クーリーンはその全てを避け、アインダークは闘気を纏って向かってくる全ての魔力球を斬り裂き、バラックは大盾を構えて受け切った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
クラマリオが肩で息をしている。
「無駄だ、クラマリオ。 お前は確かにすげぇ魔法使いだけど、それだけだ、1人じゃなんにも出来ないんだよ」
「黙れっ! ウィンドバースト!!」
クラマリオを中心に爆風が起こって全員が弾き飛ばされた!
「クラス2のただの風おこし魔法とは思えない威力だな」
アインダークが体を起こしながら呟いた。
「魔法の深淵を見せてやる!」
数十の魔力球がバラックとクーリーンに襲いかかる!
バラックは大盾で耐えているがどんどんと壁際に追い詰められる。
クーリーンは避け切れずに何発か被弾して距離をとった。
『アイン、私を使え、ビリーの言う通り、思い上がった魔法使いの小僧に魔法がどういう物かを教えてやろう』
「なんだよ?」
『魔法の深淵を教えてやるのだ』
アインダークはふっと笑った。
「おい、クラマリオ! シゼルがお前の相手をしてくれるってよ!」
アインダークはそう言うと喋る魔法剣をマナルキッシュに手渡した。
『女、ありったけの魔力を私に流し込め』
シゼルがマナルキッシュに命令した、マナルキッシュは柄を通して直接喋りかけられた事に少し驚いたが「はい」と返事をして言われた通りに魔力を流し込む。
1度流れを作ると後はシゼルがグングンとマナルキッシュから魔力を吸い上げていった。
クラマリオがマナルキッシュを見て、マナルキッシュの持つ魔法剣を睨んだ。
「面白い」
そう言って詠唱を始めた。
「フォトンブレス!!」
とてつもない圧縮された風の龍が姿を現した!
うねりながらマナルキッシュに向かって襲いかかる!
『ふん』
鼻で笑うような声がシゼルから聞こえたと思うと魔法剣が緑色に光り、クラマリオの出した風の龍と同じものが魔法剣から姿を現した。
だが、それはクラマリオが出した物よりも大きく、数は三体。
呆気なくクラマリオの風の龍を食い破り、威嚇する様にクラマリオの周りを回って消えた。
「なんだと、くそっ」
もう一度、クラマリオは詠唱を始めた。
「アイシクルエンド!!」
室内の空気が一気に冷え込み、マナルキッシュの周りに凍てつく氷がまとわりつく様に姿を現して飲み込もうとする!
だが、またシゼルが『ふん』と鼻を鳴らすと一瞬でクラマリオの氷は姿を消し、今度は部屋中が氷ついて天井から壁から床から氷刃を伸ばしてクラマリオに襲い掛かる!!
「シゼル! もういいだろ!」
アインダークが叫ぶと氷刃はクラマリオの喉元で止まった。
そして、バキンっと音を立てて氷が砕け散り、一瞬で姿を消した。
クラマリオはその場にへたりこんだ。
アインダークはクラマリオの傍へ言って肩を叩いて語りかける。
「ここにいる俺達はな、1人じゃなんにも出来ねぇ。 ここへ来る前にビリーに嫌って程に思い知らされた。 自分にどんだけ仲間が必要かってな。 さぁ、もういいだろう! 聞いてるんだろビリー! 扉を開けてくれ!」
アインダークが天井に向かって声をあげた。
クラマリオはバラックに全員が到着するまではこの部屋からは出られないと告げた。
クラマリオの虚ろな表情を見たバラックは何事か言おうとしたが、またビリーの仕業かも知れないと思い、何も言わずに座った。
次に到着したのはクーリーン。
彼女は疲労困憊という顔だったが表情は何処か満足気な物だった。
バラックに全員が揃わないと進めないと聞かされるとその場にゴロンと横になってすぐに寝息を立て始めた。
そして、アインダークとマナルキッシュがやってきた時にはクラマリオがこの部屋に来てから約20時間が経っていた。
「なんだ、俺達が1番手こずったのかよ」
既に全員が揃っているのを確かめてアインダークが苦笑する。
クラマリオが全員が揃ったのに気づくとゆっくりと立ち上がった。
広間のたった一つの扉が独りでに開いた。
「おい、起きろクーリーン。 先へ進んでビリーのケツを蹴飛ばすぞ!」
アインダークが笑いながらクーリーンのケツを蹴って起こす。
クーリーンがアインダークを睨み「なにさ、1番遅かったくせ」とブツブツ言いながら起き上がった。
クラマリオが黙って扉を潜り、1人で部屋を出ていった。
それに続いてバラック、マナルキッシュ、アインダーク、クーリーンという順で扉を潜る。
扉を出ると広い空間になっていた、迷宮の最深部。
本来ならここには魔族の意志を護る守護魔獣がいるべき場所だ。
広い何も無い空間の中心でクラマリオが足を止めた。
「どうしたクラマリオ」
アインダークが声をかける。
「・・たし、・・かって・・さい」
クラマリオはボソボソと呟いた。
「なにさ、ハッキリ言いなよ」
クーリーンが苛立たしげに言う。
「私と戦って下さい!」
クラマリオが突然大声を出した事にクーリーンがびくっとなった。
「・・・ なんだよクラマリオ、お前と遊んでる暇はねーんだよ」
そう言ったアインダークに向かってクラマリオが魔法球を撃ち出した!
「なにっ!」
アインダークがすんでで身を捻って避ける!
「なにすんのさっ!」
クーリーンが叫ぶ!
「我慢ならないんです! ビリーさんは素晴らしい冒険者だ! この中の誰よりもっ! それなのに、それなのに罵倒する貴方達が私は許せない!」
そう叫ぶと同時にクラマリオは光弾を無数に体の周りに創り出した!
「どうなってんだ! なんで詠唱も無しに魔法が使えるんだ!」
アインダークが構える、剣は抜いていない。
「この空間はビリーさんが創り上げた魔法使いにとって無敵の空間と言っていい【無詠唱の間】。 ご安心を、殺しまではしません。 ただ、痛い目にあってもらうだけです」
クラマリオは自身の周りに夥しい量の魔力球を浮かび上がらせた!
それを見たバラックが大盾を構える。
「コレがビリーが与えたクラマリオの課題か・・・」
誰にも聞こえないような声でバラックがボソリと呟いた。
クラマリオはビリーの言葉で頭がいっぱいだった。
======
〈クラマリオ、君には次の守護魔獣の間で戦ってもらう。 相手はシルバーウィンド、つまり、君と僕を除いたパーティメンバーだ〉
〈その空間ではクラス2までの魔法や単純な魔力球を打ち出すだけなら詠唱も溜めも無しで使えるように細工しておいた〉
〈どうだい? いつも日和見主義の君には良い課題だろ? 味方のいない状況で戦うんだ、自分の思いを存分にぶちまけてくれ〉
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姿勢を低くして突っ込むクーリーンにクラマリオが手を向ける!
「アースディグ!」
クーリーンの足元がガボッと陥没して穴に落ちた。
アインダークもクラマリオに向かって駆ける!
クラマリオが撃ち出した魔力球を左へ避けた瞬間
どおぉん!
アインダークの真横で魔力球が爆ぜる!
「がっ!」
そのままアインダークは衝撃で地面に転がった。
クラマリオが距離を取ろうと衝撃波をバラックに放つがバラックは大盾で受けて体を捻り衝撃波を完璧に受け流して見せた。
クーリーンが穴から飛び出してクラマリオの背後に回り込む、また、クラマリオが【アースディグ】で地面を陥没させてクーリーンを落とす。
かに見えたがクラマリオが手を向けた瞬間にクーリーンは後ろに跳んで落ちる前に目標から逸れていた。
バラックもゆっくりと確実に距離を詰めていた。
「くっ」
クラマリオがバラックに手を向けた瞬間にアインダークが起き上がって突っ込む!
「うああぁぁぁっ!」
クラマリオが全方位に向かって魔力球を乱射した!
クーリーンはその全てを避け、アインダークは闘気を纏って向かってくる全ての魔力球を斬り裂き、バラックは大盾を構えて受け切った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
クラマリオが肩で息をしている。
「無駄だ、クラマリオ。 お前は確かにすげぇ魔法使いだけど、それだけだ、1人じゃなんにも出来ないんだよ」
「黙れっ! ウィンドバースト!!」
クラマリオを中心に爆風が起こって全員が弾き飛ばされた!
「クラス2のただの風おこし魔法とは思えない威力だな」
アインダークが体を起こしながら呟いた。
「魔法の深淵を見せてやる!」
数十の魔力球がバラックとクーリーンに襲いかかる!
バラックは大盾で耐えているがどんどんと壁際に追い詰められる。
クーリーンは避け切れずに何発か被弾して距離をとった。
『アイン、私を使え、ビリーの言う通り、思い上がった魔法使いの小僧に魔法がどういう物かを教えてやろう』
「なんだよ?」
『魔法の深淵を教えてやるのだ』
アインダークはふっと笑った。
「おい、クラマリオ! シゼルがお前の相手をしてくれるってよ!」
アインダークはそう言うと喋る魔法剣をマナルキッシュに手渡した。
『女、ありったけの魔力を私に流し込め』
シゼルがマナルキッシュに命令した、マナルキッシュは柄を通して直接喋りかけられた事に少し驚いたが「はい」と返事をして言われた通りに魔力を流し込む。
1度流れを作ると後はシゼルがグングンとマナルキッシュから魔力を吸い上げていった。
クラマリオがマナルキッシュを見て、マナルキッシュの持つ魔法剣を睨んだ。
「面白い」
そう言って詠唱を始めた。
「フォトンブレス!!」
とてつもない圧縮された風の龍が姿を現した!
うねりながらマナルキッシュに向かって襲いかかる!
『ふん』
鼻で笑うような声がシゼルから聞こえたと思うと魔法剣が緑色に光り、クラマリオの出した風の龍と同じものが魔法剣から姿を現した。
だが、それはクラマリオが出した物よりも大きく、数は三体。
呆気なくクラマリオの風の龍を食い破り、威嚇する様にクラマリオの周りを回って消えた。
「なんだと、くそっ」
もう一度、クラマリオは詠唱を始めた。
「アイシクルエンド!!」
室内の空気が一気に冷え込み、マナルキッシュの周りに凍てつく氷がまとわりつく様に姿を現して飲み込もうとする!
だが、またシゼルが『ふん』と鼻を鳴らすと一瞬でクラマリオの氷は姿を消し、今度は部屋中が氷ついて天井から壁から床から氷刃を伸ばしてクラマリオに襲い掛かる!!
「シゼル! もういいだろ!」
アインダークが叫ぶと氷刃はクラマリオの喉元で止まった。
そして、バキンっと音を立てて氷が砕け散り、一瞬で姿を消した。
クラマリオはその場にへたりこんだ。
アインダークはクラマリオの傍へ言って肩を叩いて語りかける。
「ここにいる俺達はな、1人じゃなんにも出来ねぇ。 ここへ来る前にビリーに嫌って程に思い知らされた。 自分にどんだけ仲間が必要かってな。 さぁ、もういいだろう! 聞いてるんだろビリー! 扉を開けてくれ!」
アインダークが天井に向かって声をあげた。
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