アリスと魔王の心臓

金城sora

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決着

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室内に轟音が反響する。

塔そのものがむせぶように振動する。

フェムノと剣を交差すれば弾き返されて隙を与える!

さっきまでの戦い方じゃ駄目だ。

じりじり押されて最後は負ける。

今度は奇襲は成功しないだろう。

仕留めきれなかったのが悔やまれるが、言っていても仕方ない。

地力は向こうが上だ。

避けるか、打ち負けない方法を考えないとっ!

今ある手札でどうにかカバーするしかない。

私はルシールに魔力を注ぎ込み、フェムノの剣と合わせた瞬間に小爆発を起こした!

上手くいった!

距離を取ってさらに魔力を流し込む。

剣を交える毎に小爆発を起こす!

その力をさらに心現術で増幅して力負けしないように押し返す!

魔族の魔力を纏う剣を即席で真似てみたものだが、予想よりかなり上手くいっている。

持続性のない瞬間の力なので打ち合えば距離を取る。

部屋中を駆けながらスピードを落とさないようにする、気を緩めれば命を落とす。

部屋中の空間で私とフェムノがぶつかり合うたびに塔が震える!

連続で剣を交えれば魔力が間に合わずに押し負ける。

打ち合う度に距離を放し、また打ち合う!

打つ度に走る!

その打ち合う間隔が段々と短くなっていく!

ぶつかり合う音がどんどん激しさを増していく!

「おぉぉっ!」

部屋の中央でぶつかったとき、とうとう私の剣がフェムノの両手剣ロングソードを弾き返した!!



「くっ!  どういう事だ?  心現術と魔力は相容れない力の筈だ!
だが何度見ても、お前は魔力を心現術で増幅している。
何故だ!?」

弾かれたフェムノが驚愕の顔で聞いてくる。

「あんた、お喋りが多いわね」

フェムノがまた大きく笑う。

「教えてくれないのか?」

「そうね、私の下僕になるんなら教えてあげてもいいわよ」

考え無しに適当にそんなことを言ったら場がしんとなった・・・

「冗談よ、皆でそんな黙んなくてもいいじゃない」

「ばっ、まじかっ」

ウェインが呆れている。

「カァーハッハッハ!!!
本当に面白い女だ!
真紅の雑草を刈る者デイジーカッターよ!!
良いだろう!  お前が私より強ければお前につこうじゃないか!!」


はっ?


「「まじか・・・」」


姉弟仲良くハモった。


「なに考えてんのよ?」

「お前が言い出したんだろう?
さぁ、決着をつけようじゃないか!!」

気合いと共にフェムノの纏う銀色の光がさらに激しさを増した!

フェムノが向かってくる!

私も床が割れる程に踏み込んで斬りかかる!

さらに力を増したフェムノの剣にまた弾き飛ばされる!

「うおおぉぉっ!」

魔法石に魔力を流し込み、小さく爆発を起こして心現術で増幅する。

一連のコントロールが切り結ぶ度に自然に出来るようになっていく。

当然の事だ。

出来なければ死ぬだけ。

注ぎ入れる魔力をさらに大きく速く、

爆発はもっと小さく鋭く、

増幅させる心現術はもっと強く、

力まずに剣を走らせる!

剣がぶつかる衝撃はその余波で天井からパラパラと石の雨を降らせる!

手足の先がピリピリと痺れるように感覚が研ぎ澄まされていく!

頭の中は風でも吹いているかのように冴えわたってくる!

魔法石に魔力を流し込む感覚がどんどん勢いを増していく!

ルシールが淡く深紅に光出した!

「なにっ!」

フェムノは目を見張った!


上段から切り下ろし、返す刀で切り上げる!


その度に起こる小爆発がフェムノの剣を弾き返し、フェムノを後退させていく!


フェムノが鍔迫り合いに持ち込もうとする!


私の剣に瞬発力はあっても持続性が無いことを見切っている。


そうはさせじとまた距離を取る、さらに加速して突き放す!

フェムノは追うのを止めて銀色の魔力弾を放つ!

一発一発射ってくる魔力弾を難なく避ける!

「これならどうだ!」

フェムノの廻りに無数の魔力弾が浮かび上がり私に向かって一斉に襲いかかった!

上下左右から遅い来る魔力弾を最小限の動きで避けながら後退していく!

その間にもフェムノは新たな魔力弾を打ち続ける!

(このままじゃ壁際に追いやられて逃げ場を失うだけ、どうする?  剣で弾いてまたワゼルの時みたいに電撃を受けたら動きが止まって魔力弾の雨に殺られる。)

「ぬああぁぁっ!」

爆炎を起こして魔力弾を防いだ。

(あの魔力弾の雨を全て打ち落とすには爆炎と飛閃では手数が圧倒的に足りない。)

私はさらに爆炎を起こして煙幕を張る!

持っているルシールを壁に向かって投げて反対方向に走る!

「なにっ!」

まんまと一瞬ルシールに標準を合わせて反対方向から来る私に対応が遅れる!

抜き打ちでフェムノの剣を弾き飛ばして鳩尾に前蹴り叩き込む!

「がはっ!」

壁に叩きつけられるフェムノ。

その首筋にミスリルの片手剣ショートソードを突き付ける。

「私の勝ちね」

「くっくっく、良いだろう。
お前の勝ちだ」

笑ってる、なんだコイツ?

剣を鞘に納めて背を向けてアネイラとウェインの元へ行く。

二人とも私とフェムノを交互に見て怪訝な顔をしている。

「真面目にあの魔族を配下にするつもりか?」

アネイラが聞く。

「分かんない、この流れでとどめっていうのもなんかね・・・
ウェイン、傷の具合は?」

「良くはないが、今はそんなことよりアイツだろう?
どうするんだ?」

(うーん、ぶっちゃけ私が聞きたいくらいだ。
アイツどうするんだ?)

見ると私が投げて壁に突き刺さったルシールを引き抜いてまじまじと眺めている。

「とにかく、王都に帰りましょう。  疲れたわ」

「そうだな、  アイツは?」

アネイラがフェムノを指差す。

「王都に入れても問題無いんじゃない?   アイツは弱体化して私達は強くなるんだし」

「まじかっ、俺はアイツにへらへら笑いながら指を千切られたんだぞ?
そんな危ない奴を王都に入れられるか!?」

確かに

「ねぇ!  フェムノ!   あんたウェインの指パッと治せないの?」

フェムノがつかつかと歩いてくる。

「ふむ、治せんこともない」

ウェインを見下ろしながら私にルシールを手渡す。

「じゃあ治しなさいよ、あんたがやったんだから。」

「治せんこともないが・・・」

「なによ?」

「魔族になってもらう必要がある」

フェムノが悪びれもせずに言う。

「まじかっ、却下だ!  そんなもんなってたまるか!」

(確かに、指を生やして体を乗っ取られたんじゃ意味がない)

「なんで魔族になる必要があんのよ?」

「魔族になると自ら魔力を生み出す核がその身に宿る。  すると全身の細胞に魔力が宿るのでそれくらいの傷なら再生することも出来る。
外部から干渉して治すのは無理だが、内部から治すのなら出来ると言うわけだ。」

「騙してないでしょうね?   他に方法は?」

肩をすくめるフェムノ。

「外部から干渉するなら傷を塞ぐので精一杯だな」

「あんた、ちょっとは申し訳なさそうな顔出来ないの?」

「悪かった、拷問は今度から治せるようにしておこう」

なんか、コイツと喋ってたら頭痛くなってきた。

「もういいわ、とにかく王都に帰りましょう」


アネイラがウェインに肩を貸して支える。


螺旋階段を4人で降りていった。
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