呪いの〇〇

金城sora

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父 前編

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「あなたー、私たちもう寝るわよ」

いつもの癖でテレビ前のコタツに横になってウトウトしていると嫁が声をかけてきた。

壁掛け時計に目をやると10時を少し回っていた。

「あぁ、おやすみ」

見ると娘が母親にしがみつくように立っている。

「まだ怖がってるの?
見間違いだってあんなの」

「なんでそんなこと言うのよ」

娘はそう言うとまたメソメソしだした。

「まだ小学6年生なんだから変な物見えたら恐いの当たり前よ」

妻が娘に助け船を出す。

「そんなに恐がって気にしてたら余計よくないぞ」

そう言うと娘は恨めしそうな顔をして妻の手を引っ張って二階に上がっていった。

さっきお風呂に入っているとき、頭を流して目の前の鏡を見たら長い髪の血塗れの女が立っていたと大騒ぎした。

そのあと妻が一緒にお風呂に入って上がってからもずっとあの調子だ。

でも最近、家の中でおかしなことが続いているのは確かだ。

誰もいない二階から物音がしたり。

閉めたと思っていた戸棚が開いていたり。

妻も金縛りにあったとか言っていた。

そのせいで河原の宝探しを辞めて拾ってきた物も処分しろと散々言われた。

これは最近、拾ってきた物にまたナニかが憑いていたのかもしれない。

前にもこんなことがあってそれをネットで幽霊が憑いていますと注意書して出品したら高く売れた。

どれを拾って来てからか後で調べてみようと思いながらウトウトしていた。

まどろみながらおかしな夢を見た。

夜明けの少し前のような明るさのなか、家の玄関に立っていた。我が家は築30年程の中古の一軒家だ。

傷み出した玄関扉を開けると開ききった辺りでいつものようにきぃっと高い音がする。

玄関には靴が一足もなかった。

娘と息子には何度言ってもくつ箱に靴を直さないのに珍しいなと思いながら靴を脱ぎ、家に上がるとリビングに人がいた。

そこにいるのに顔がわからない。

見知らぬ人間のはずなのにいるのが当たり前のような感覚。

ただいまもおかえりも声をかけることなくリビングから短い廊下を通って自室に行くと狭い部屋に二人いる。

この二人も顔がわからない。

すぐそこにいるのに。

目が覚めた。

部屋が暗くなっている、電気をつけっぱなしにしていたのを嫁が消したらしい。

テレビの明かりでボンヤリ見える時計を見上げると12時を回ったところだった。

テレビは放送が終わったあとのザラザラした映像でザーっという耳障りな音を出していた。

おかしいな?まだ12時回ったばっかりなのに?

そう思いながらも気だるくて動く気になれない。

リモコンに手を伸ばしてチャンネルを変えると何処もザラザラの映像だった。

はぁっと大きくため息をついた。
家はまだブラウン管のテレビを使っていた。

薄型テレビが台頭してブラウン管テレビがかなり下火になっていたときによく調べもせずに大型のブラウン管テレビが安値で売っていたので飛び付いて買ってしまったもので他の物を調べてみたらもっと安く同型の物が売っていたのを見て悔しかったのでもとをとれるまでと思いいまだに使っている。

それがとうとう壊れたかと思いため息が出た。

やっと壊れてくれたかという気分だ。

嫁と子供にはさんざん買い換えろと言われながら意地になって使っていた。

何となくチャンネルを回していると一瞬画面に手形にような物が見えた気がした。

ん?

そのままチャンネルをゆっくり回していくとまた手形があった。

なんだこれ?

そう思っていると手形が

バンッ

っと画面を叩いた。

画面の向こう側から。

背筋が凍りついた。

チャンネルを持ったまま横になった姿勢で固まって動けない。

するとまた

バンッ

っと画面を叩く。

バンッバンッバンッバンッ

激しく画面を叩き続ける、恐怖で体が動かない。

画面を叩く音以外にナニかが聞こえてきた。

「だせだせだせだせだせだせ」

いつのまにか息を吸ってばかりで苦しくなっていた。

過呼吸になり、全身から汗が吹き出す。

バンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッバンッ

どんどん音が大きくなる。

ボンッと大きな音を起てて画面が割れて飛び散った。

反射的に腕で顔を庇った。

恐怖で顔を覆った手を下ろすことが出来ない。

そのままの姿勢で固まっていると耳元で

「でられた」

声が聞こえた瞬間飛び上がって叫んだ、コタツを飛び越えて後ろを振り返ると長い髪の血塗れの女が立っていた。

逃げ道を探して階段の方に視線を向けてもう一度血塗れの女が立っていた方を見るとそこにはもう何もいなかった。
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