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御霊探偵事務所(2)
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「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「何あれ・・何あれ!!」
森の中を全速力で唯奈は走っていた。
今まで普通の学生として生きていた日常とは全く異なる非日常の化け物に追われていたからだ。
背後には鋭い牙、前足が異常に発達した四足歩行の化け物がグルルルと喉を鳴らし目の前を走る少女を目掛け確実に距離を縮めてきている。
夢であってほしいと願うばかりだが、数分前についた足の擦り傷の痛みが現実を教えてしまっている。
後ろを振り返る余裕など今の唯奈にはありはしなかった。
このまま走るペースを落とせば間違いなく背後の化け物に殺されしまうのを感じ取ってしまっているからである。
「あっ!!!!」
この現実から目を背けたい気持ちやどうにか逃げ切れる方法など考えているうちに足元が見えなくなっており、唯奈は地面より出てきている根っこに足をかけ転んでしまった。
化け物の姿はまだ目視できていない、だが足音が確実にこちらまで近づいて来ているのがわかる。
ズシズシ鳴り響く足音に地面と木は揺れ、周囲の動物は消えていく。
今すぐ立ち上がり再度逃げ出さなくてはいけない。しかし足に絡まった根っこがそれを許してはくれない。
焦りと恐怖で呼吸が乱れていたその時化け物はついに唯奈に追いついてしまった。
「あぁ・・あぁ・・」
異形の化け物を再度目にし、自身の死を感じ取った唯奈は恐怖のあまり涙がこぼれてしまう。
四つの目はこちらを捉え、鋭い歯と歯の間からはよだれ垂れ、ゴリラよりも太い片腕を唯奈目掛けり下ろした!
「お父さん、お母さん!!」
死の間際に遠い両親のことを思い出し、頭を抱えうつ伏せでその時を待った。
まだしたいことはたくさんあった。
恋愛だって、憧れの高校生活も一週間しか堪能していない。
唯奈は死ぬその時までやり残した事を思い出していた。
ボクサーのゾーンや走馬灯のように一秒がとてつもない長さを感じ取るように。
いや・・・明らかに長すぎる。
唯奈はなかなか来ない「死」を確認すべく伏せていた顔を上げた。
「ったく・・・こんなとこに御霊がいるのかよ」
「しかもこの世に完全干渉してきてるってことは相当厄介なレベルだな・・・」
唯奈が顔を上げるとそこには白髪の青年がいた。
青年は化け物に向かい指を二本突き出し、化け物の攻撃は空中で止まってしまっていた。
何やらバチバチと音を立ているが青年と化け物の間に何があるのかが理解できずに唯奈はただ、その度重なる異常な光景を眺めた。
すると青年はこちらを振り返り唯奈に向かって確認を行った。
「よぉ嬢ちゃん、無事か?」
「あ、あなたは・・・」
混乱をしていた。なにも理解できない現状で一つ反射的に質問をしてしまった。
何か障壁のようなもので化け物はこちらには来ないが依然安心はできない、現に化け物は見えない障壁を殴り続けこちらをあきらめていない様子だ。
「俺はまぁ神ってもんだな」
「神・・・様?」
その斜め上すぎる回答を行う事象神の青年を前に唯奈は一言
「しゅ、宗教か何かでしょうか?」
「いやいや大マジ」
これは手の込んだ宗教勧誘で間違いない、事象神を名乗る青年と見たことのない化け物。
この不可解な現状を理解するにはそう思うほかになかった。
「まぁ信じる信じないはこの際どうでもいいや」
「重要なのは、このままだと2人そろってコイツに喰われるって事だな」
化け物を指さしこの現状の説明を淡々と行う青年。
余裕というよりは少し落ち着いた様子だったが・・・
「おっと・・・・」
化け物の猛攻により見えない空間に亀裂が入ってしまった。
「まずいな、やはり神力がまだ戻りきってない・・・」
少し冷や汗をかき青年は唯奈に顔を近づけ、ある提案を行った。
「なぁ嬢ちゃん、俺の巫女にならねぇか?」
「巫・・・・女?」
突然の提案の意味も当然理解できず、と言うよりも唯奈はこの数分間の何もかもを理解できずにいた。
青年は自身の小指を噛みこちらに向かい、少量の血が出た小指を向けてきている。
「俺の血を飲めば神の力を少し使えるようになる」
「そうすりゃあんな御霊、一撃で祓えるんだ」
「信じらんねぇかもしれないが、これは現実だ。コイツは御霊、この化け物を祓う為に俺は天界からこの世に降りて来たんだ」
「なぁ嬢ちゃん、さっきも言ったが、このままじゃ俺たちコイツに喰われちまうがいいのか?」
恐怖と謎の説明で唯奈の頭の容量は限界に達していた。
そうこう言っているうちに亀裂は刻一刻と広がってきている。
「わかりました!!飲みます!飲みますから!!」
助かりたい一心で青年の提案と血を飲んだ。
「こ、これでいいですか?早く助けてください!!!」
気持ち悪さと恐怖が混ざり合いながらも青年の願いを聞き、助けを求めるが帰ってきたのは予想外の返答だった。
「ん?戦うのは嬢ちゃんだぞ?」
「え?」
その言葉の後に唯奈の体は発光を始めた・・・
「何あれ・・何あれ!!」
森の中を全速力で唯奈は走っていた。
今まで普通の学生として生きていた日常とは全く異なる非日常の化け物に追われていたからだ。
背後には鋭い牙、前足が異常に発達した四足歩行の化け物がグルルルと喉を鳴らし目の前を走る少女を目掛け確実に距離を縮めてきている。
夢であってほしいと願うばかりだが、数分前についた足の擦り傷の痛みが現実を教えてしまっている。
後ろを振り返る余裕など今の唯奈にはありはしなかった。
このまま走るペースを落とせば間違いなく背後の化け物に殺されしまうのを感じ取ってしまっているからである。
「あっ!!!!」
この現実から目を背けたい気持ちやどうにか逃げ切れる方法など考えているうちに足元が見えなくなっており、唯奈は地面より出てきている根っこに足をかけ転んでしまった。
化け物の姿はまだ目視できていない、だが足音が確実にこちらまで近づいて来ているのがわかる。
ズシズシ鳴り響く足音に地面と木は揺れ、周囲の動物は消えていく。
今すぐ立ち上がり再度逃げ出さなくてはいけない。しかし足に絡まった根っこがそれを許してはくれない。
焦りと恐怖で呼吸が乱れていたその時化け物はついに唯奈に追いついてしまった。
「あぁ・・あぁ・・」
異形の化け物を再度目にし、自身の死を感じ取った唯奈は恐怖のあまり涙がこぼれてしまう。
四つの目はこちらを捉え、鋭い歯と歯の間からはよだれ垂れ、ゴリラよりも太い片腕を唯奈目掛けり下ろした!
「お父さん、お母さん!!」
死の間際に遠い両親のことを思い出し、頭を抱えうつ伏せでその時を待った。
まだしたいことはたくさんあった。
恋愛だって、憧れの高校生活も一週間しか堪能していない。
唯奈は死ぬその時までやり残した事を思い出していた。
ボクサーのゾーンや走馬灯のように一秒がとてつもない長さを感じ取るように。
いや・・・明らかに長すぎる。
唯奈はなかなか来ない「死」を確認すべく伏せていた顔を上げた。
「ったく・・・こんなとこに御霊がいるのかよ」
「しかもこの世に完全干渉してきてるってことは相当厄介なレベルだな・・・」
唯奈が顔を上げるとそこには白髪の青年がいた。
青年は化け物に向かい指を二本突き出し、化け物の攻撃は空中で止まってしまっていた。
何やらバチバチと音を立ているが青年と化け物の間に何があるのかが理解できずに唯奈はただ、その度重なる異常な光景を眺めた。
すると青年はこちらを振り返り唯奈に向かって確認を行った。
「よぉ嬢ちゃん、無事か?」
「あ、あなたは・・・」
混乱をしていた。なにも理解できない現状で一つ反射的に質問をしてしまった。
何か障壁のようなもので化け物はこちらには来ないが依然安心はできない、現に化け物は見えない障壁を殴り続けこちらをあきらめていない様子だ。
「俺はまぁ神ってもんだな」
「神・・・様?」
その斜め上すぎる回答を行う事象神の青年を前に唯奈は一言
「しゅ、宗教か何かでしょうか?」
「いやいや大マジ」
これは手の込んだ宗教勧誘で間違いない、事象神を名乗る青年と見たことのない化け物。
この不可解な現状を理解するにはそう思うほかになかった。
「まぁ信じる信じないはこの際どうでもいいや」
「重要なのは、このままだと2人そろってコイツに喰われるって事だな」
化け物を指さしこの現状の説明を淡々と行う青年。
余裕というよりは少し落ち着いた様子だったが・・・
「おっと・・・・」
化け物の猛攻により見えない空間に亀裂が入ってしまった。
「まずいな、やはり神力がまだ戻りきってない・・・」
少し冷や汗をかき青年は唯奈に顔を近づけ、ある提案を行った。
「なぁ嬢ちゃん、俺の巫女にならねぇか?」
「巫・・・・女?」
突然の提案の意味も当然理解できず、と言うよりも唯奈はこの数分間の何もかもを理解できずにいた。
青年は自身の小指を噛みこちらに向かい、少量の血が出た小指を向けてきている。
「俺の血を飲めば神の力を少し使えるようになる」
「そうすりゃあんな御霊、一撃で祓えるんだ」
「信じらんねぇかもしれないが、これは現実だ。コイツは御霊、この化け物を祓う為に俺は天界からこの世に降りて来たんだ」
「なぁ嬢ちゃん、さっきも言ったが、このままじゃ俺たちコイツに喰われちまうがいいのか?」
恐怖と謎の説明で唯奈の頭の容量は限界に達していた。
そうこう言っているうちに亀裂は刻一刻と広がってきている。
「わかりました!!飲みます!飲みますから!!」
助かりたい一心で青年の提案と血を飲んだ。
「こ、これでいいですか?早く助けてください!!!」
気持ち悪さと恐怖が混ざり合いながらも青年の願いを聞き、助けを求めるが帰ってきたのは予想外の返答だった。
「ん?戦うのは嬢ちゃんだぞ?」
「え?」
その言葉の後に唯奈の体は発光を始めた・・・
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