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5章 団長の親友と愛人契約せよ
11 怪しげな飲み物
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日も暮れて、レネたちは夜会の会場となっている一室に案内される。
想像していたほど広い部屋ではなく、本人も言っていた通りそこまで畏まった会ではないようだ。貴族たちが集まるサロンのようなものだろうか。
部屋は臙脂色で統一されていて、高級感はあるが……どんよりとした空気が漂っている。
どこか今夜の夜会の主催者であるレオポルトを思わせる。
独特の空気の中、それぞれが思い思いの人物たちとの会話を楽しんでいた。
案内された席に座っていると、しばらくしてレオポルトとサシャがやって来た。
「ようこそ。今夜はゆっくり楽しみましょう」
レオポルトは目を細めて、まるで蛇のようにレネに視線を絡ませた。
一通り招待客への挨拶を済ませた後、二人は再びレネたちの所へと戻って来た。
「ダミィは綺麗な金髪だけど本物なの?」
サシャはダミアーンの見事な金髪の巻き毛を手に取ると、口付けを落す。
大きな身体の男にダミアーンは怯えを隠し切れないでいた。
前回はレネにちょっかいを出していたが手痛いしっぺ返しを食らったので、今回はダミアーンばかり執拗に話しかけている。
(汚い奴だ、やり方を変えてきやがった……)
レネは内心悪態をついた。
「下の毛を見たら本物の金髪なのかわかるね」
突然サシャがとんでもないことを言い出す。
「えっ……!?」
驚くダミアーンの腰を抱き寄せると、腰紐に手を掛けた。
「実際は、本物の金髪なんてそんなにいないからな」
レオポルトも止めるどころか、笑いながらその様子を見ている。
(ヤバい……)
思った時には咄嗟に身体が動いていた。
「——ねえ、今日はダミィばっかりで、なんでオレの相手してくれないの?」
レネはサシャの肩を抱いて、無理矢理自分の方へ向き直させる。
「いやー参ったな、ヤキモチを焼いてくれたのかい?」
(そんなわけあるかよっ! 気持ちわるっ……)
本当は声を大にして言いたいが、レネはぐっとがまんする。
サシャの手から逃れられたダミアーンは心底ホッとした顔をしていた。あのままエスカレートしていたら間違いなくダミアーンは下を脱がされていただろう。
レオポルトたちははなにをやり始めるかわからない。
部屋全体にそれを許容する、ねっとりとした淫猥な空気が淀んでいた。
こんなことになったのも、きのう自分が反抗したからだ。
あそこで言いなりになっておけば、執拗に付け回されることもなかったかもしれない。
マチェイやダミアーンまで巻き込んでしまったことが、レネには心苦しかった。
「そうだなぁー、ダミィも可愛いからな、レネにはなにか俺の気を引いてもらわないといけないな~」
サシャは思わせぶりにレネの頬を撫でながら、レオポルトに目で合図を送った。
「——あれを持って来い」
後ろで控えていた男に、レオポルトは声をかけた。
(なんだよいったい……)
最初から申し合わせたかのような二人の動きにレネは困惑する。
「レネは気に入ってくれるかな~」
暫くすると、高価なガラスの瓶に入った怪しげな色をした液体をお盆に乗せて、男が戻って来た。
レネの目の前に謎の液体が置かれる。
サシャは瓶を傾けると、クリスタルの美しい切り子のグラスにそれを注いだ。
「ほら、レネ。俺の気を引きたいんなら、これを飲んで」
厚い自分の唇をゆっくり舐めると、レネの口元にそのグラスを持っていく。
「えっ……なんだよこれ……」
明らかに怪しいとわかる濁った液体を、レネは素直に飲むことなどできない。
躊躇っていると、サシャは冷たく言い放った。
「じゃあ、ダミィに飲んでもらおうかな……」
これ以上、ダミアーンを巻き込んではいけない。
「わかったよ……飲めばいいんだろ!」
サシャの手からグラスを奪い取ると、一気に液体を呷った。
ねっとりと甘ったらしい味が、喉を滑り落ちていく。
「これで、いいんだろ?」
ぐっと手で口元を拭うと、レネはサシャを睨み返した。
「あー全部飲んじゃった……」
言葉とは裏腹に大層嬉しそうな顔をして、レネの顔を覗き込む。
「強気な瞳もゾクゾクするほど綺麗だ……」
近くで見ていたサシャが満足げに微笑んでいる。
(ここではオレたちはこいつらの玩具でしかない)
悔しさに思わず歯噛みする。
「——さあ……レネは素直になれるかな? 皆さんも一緒に観察しましょう」
レオポルトがそう言うと、まわりで遠巻きに見ていた男たちもぞくぞくと近くへ集まって来た。
想像していたほど広い部屋ではなく、本人も言っていた通りそこまで畏まった会ではないようだ。貴族たちが集まるサロンのようなものだろうか。
部屋は臙脂色で統一されていて、高級感はあるが……どんよりとした空気が漂っている。
どこか今夜の夜会の主催者であるレオポルトを思わせる。
独特の空気の中、それぞれが思い思いの人物たちとの会話を楽しんでいた。
案内された席に座っていると、しばらくしてレオポルトとサシャがやって来た。
「ようこそ。今夜はゆっくり楽しみましょう」
レオポルトは目を細めて、まるで蛇のようにレネに視線を絡ませた。
一通り招待客への挨拶を済ませた後、二人は再びレネたちの所へと戻って来た。
「ダミィは綺麗な金髪だけど本物なの?」
サシャはダミアーンの見事な金髪の巻き毛を手に取ると、口付けを落す。
大きな身体の男にダミアーンは怯えを隠し切れないでいた。
前回はレネにちょっかいを出していたが手痛いしっぺ返しを食らったので、今回はダミアーンばかり執拗に話しかけている。
(汚い奴だ、やり方を変えてきやがった……)
レネは内心悪態をついた。
「下の毛を見たら本物の金髪なのかわかるね」
突然サシャがとんでもないことを言い出す。
「えっ……!?」
驚くダミアーンの腰を抱き寄せると、腰紐に手を掛けた。
「実際は、本物の金髪なんてそんなにいないからな」
レオポルトも止めるどころか、笑いながらその様子を見ている。
(ヤバい……)
思った時には咄嗟に身体が動いていた。
「——ねえ、今日はダミィばっかりで、なんでオレの相手してくれないの?」
レネはサシャの肩を抱いて、無理矢理自分の方へ向き直させる。
「いやー参ったな、ヤキモチを焼いてくれたのかい?」
(そんなわけあるかよっ! 気持ちわるっ……)
本当は声を大にして言いたいが、レネはぐっとがまんする。
サシャの手から逃れられたダミアーンは心底ホッとした顔をしていた。あのままエスカレートしていたら間違いなくダミアーンは下を脱がされていただろう。
レオポルトたちははなにをやり始めるかわからない。
部屋全体にそれを許容する、ねっとりとした淫猥な空気が淀んでいた。
こんなことになったのも、きのう自分が反抗したからだ。
あそこで言いなりになっておけば、執拗に付け回されることもなかったかもしれない。
マチェイやダミアーンまで巻き込んでしまったことが、レネには心苦しかった。
「そうだなぁー、ダミィも可愛いからな、レネにはなにか俺の気を引いてもらわないといけないな~」
サシャは思わせぶりにレネの頬を撫でながら、レオポルトに目で合図を送った。
「——あれを持って来い」
後ろで控えていた男に、レオポルトは声をかけた。
(なんだよいったい……)
最初から申し合わせたかのような二人の動きにレネは困惑する。
「レネは気に入ってくれるかな~」
暫くすると、高価なガラスの瓶に入った怪しげな色をした液体をお盆に乗せて、男が戻って来た。
レネの目の前に謎の液体が置かれる。
サシャは瓶を傾けると、クリスタルの美しい切り子のグラスにそれを注いだ。
「ほら、レネ。俺の気を引きたいんなら、これを飲んで」
厚い自分の唇をゆっくり舐めると、レネの口元にそのグラスを持っていく。
「えっ……なんだよこれ……」
明らかに怪しいとわかる濁った液体を、レネは素直に飲むことなどできない。
躊躇っていると、サシャは冷たく言い放った。
「じゃあ、ダミィに飲んでもらおうかな……」
これ以上、ダミアーンを巻き込んではいけない。
「わかったよ……飲めばいいんだろ!」
サシャの手からグラスを奪い取ると、一気に液体を呷った。
ねっとりと甘ったらしい味が、喉を滑り落ちていく。
「これで、いいんだろ?」
ぐっと手で口元を拭うと、レネはサシャを睨み返した。
「あー全部飲んじゃった……」
言葉とは裏腹に大層嬉しそうな顔をして、レネの顔を覗き込む。
「強気な瞳もゾクゾクするほど綺麗だ……」
近くで見ていたサシャが満足げに微笑んでいる。
(ここではオレたちはこいつらの玩具でしかない)
悔しさに思わず歯噛みする。
「——さあ……レネは素直になれるかな? 皆さんも一緒に観察しましょう」
レオポルトがそう言うと、まわりで遠巻きに見ていた男たちもぞくぞくと近くへ集まって来た。
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