上 下
35 / 56
学園編

次の日の事

しおりを挟む
昨日、あんな事があったばっかりだけどサボるわけにもいかないし……仕方なく学園に向かう。
あの後お兄様達は輩達を連れてどこかに行ってしまったし……
それにしても今日はやけに視線を感じる気がする……
いつもなら気にしないけど、今は少しだけ居心地が悪い。
「おはよう百!今日は休んで良かったんだよ?」
「ううん、休んだら変な噂がまた立っちゃう」
「そんな事ないと思うけど……」
「あ、あの……小鳥遊さん」
「あら、おはよう。どうかされましたか?」
申し訳なさそうな声で話しかけてきたのはクラスメイトの子達。
今まであまり喋ったことはなかったけれど、一体どうしたのだろう。
「あの噂のこと……ごめんなさい」
「えっ……」
「私たち……あの噂を信じてあなたに酷い事を言ってしまった……だから、謝りたくて……」
「そうだったんですね……気にしてないので大丈夫です。それより、なんで今その話を?」
「あの噂が嘘だったと流れてきて……これも、嘘かもしれないですが私はそうは思えなくて……!」
「そうだったのですね。その噂は信じても大丈夫だと思いますよ、でもこれからは噂に流されないように」
「は、はい!」
それから、彼女達に謝罪されてこの話は終わった。
きっと、昨日お兄様と玲央様が何かしてくれたのだろう……あとでちゃんとお礼しないと。
それより、玲央様と奏がまだ教室に来ていない……何かあったのでしょうか……
不安な私の気持ちは膨らんでいく、探しに行こうと席を立った時授業を知らせるチャイムが鳴り
それと同時に先生が教室へと入ってきた。
授業が終わり、担任に二人の事をなんとなく聞いてみたが先生も分からないそうだ。
逆に私に何か知っているか?と聞かれ返答に困ってしまった。
「…………スマホに連絡は無いの?」
「うん……もうお昼なのにどうしたんだろう……」
お弁当を持って、屋上へと向かう。
いつもはみんなと中庭で食べるけれど
こんな気分の時はやっぱりここで食べるのが一番だ。
ガチャッ 扉を開けるとそこには、先客がいた。
「世良先輩……?」
「えっ!?小鳥遊さん!?」
今一番会いたくない人物に出会ってしまった。
先輩は私の姿を見ると、嬉しそうな顔で私に近づいて来ようとしたけれど直前であかりに止められた。
その後、私達は隣同士に座って昼食をとる事に。
気まずいな……と思っていると、いきなり先輩が頭を下げた。
突然の行動で頭が追いつかず、困惑していると彼は話し始めた。
「昨日はほんとにごめん……君に対して好きじゃなくなったって訳じゃないけど、今は友達として仲良くできたら
って思ってるんだ」
「はい……わかってます」
そう言うと、彼はほっとした表情をした。
私も、彼が反省してくれている事が分かって嬉しい。
でも、一つ疑問が残る。
なぜ、彼は私を好きだと言ったのか……
それがどうしても知りたい。
そして、私は彼に質問を投げかけた。
「そう言えば聞いて無かったなって思って……聞いてもいいですか?」
「ん?何を聞きたいのかな」
「私を好きになった理由です」
「あー確かに言ってなかったかも?……うん、俺が君を好きになったのはね、一度町で助けてもらったことがあったんだ。
その時の人懐っこくて可愛い笑顔が忘れられなくて……」
「そう……だったんですね」
そう言われるが私にはまったく記憶にない……きっと、今の私になる前の私がしたことだったんだろう。
自分の知らないところに自分がいるのが少し気持ち悪いな……なんて考えていたら
予鈴が鳴り、私たちはその場で解散した。
……結局二人は来なかったな……
しおりを挟む

処理中です...