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引っ掛かる記憶

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「ねぇ!また、ここに三人で……いや、ルークとエミリアも入れて五人で
来てみない?」
そう、沙羅が大きな声で提案をする。
それを聞き、私はどうして?と問うと 沙羅は笑って、ルカの忘れ物を見つける為だよ。と言った。
「また皆でここに来れば、ルカも何か思い出すかもしれないでしょ?」
「でも、そんな事の為に皆さんの力を借りる訳には……」
「そんな事、じゃ無いですよ?私達だってルカの力になりたいでんです。
それに、思い出せないのは苦しいでしょう?」
沙羅の意見に賛同するように、フィリスがそう言った。
二人共、ルカの為なら何でもすると言う顔をしている。
そんな二人の好意を無駄にするほど私も薄情ではない。
「二人ともありがとう、そうよね……じゃあ、ルークとエミリアにも連絡して 皆でまたここに来ましょう」
「うん!何か思い出せるといいね」
「そうですね、何かあればいつでも力にならせてください」
「お二人とも……本当に、ありがとうございます。
ここ最近の私は、お二人に情けない姿ばかり見せていますね」
ぎこちない笑顔を浮かべ二人を見れば、二人はそんな事ないよ。と 笑顔で返してくれた。
「やっぱり、お二人にはかないませんね」
と、小さく呟く私に、沙羅とフィリスは顔を見合わせて笑い合った。
そんな二人をみているだけで、なんだか私も笑えてきて、三人で笑いあった。
「ふぅ、そろそろ帰りましょうか?夜になると何も見えなくなりますし、冷えますから」
「そうだね、またルカが風邪引いたら大変だもんね」
「ふふ、そうですね。その時は、また私達がお見舞いに伺います」
「まぁ、ありがとう。貴女達が風邪を引いたら、今度は私がお見舞いに伺いますね」
そう、クスクスと笑いながら言えば、二人は顔を見合わせて
その時は、よろしくね。なんて沙羅が言った後に、フィリスが私もよろしくお願いします。と笑って答える。
そんな二人に、頼もしいです。と言って三人で笑い合った。
それから、またいつか同じように五人でここに来ようと約束をして 二人は寮へ私は、自分の家へと戻る事にした。
********
「結局何も分からなかった……」
自室に戻り、最初に発した言葉はこれだった。
四人で色んな事を話したけれど、結局何かを思い出すことは無かった。
私は一体何を忘れているのだろう……モヤモヤとした気持ちが私を襲う。
そして、その日私は夢を見た。
真っ暗な場所に一人きりで佇んでいる私の目の前には……大きな湖。
これはきっと……あの、裏の森だ。
周りを見回しても何もいない、誰もいない……
そう思った時、私の周りが明るく光り輝き、小さな風が吹く。
何かいる。
そう思って振り返ろうとしたその時、私は目を覚ました。
「ゆめ…………あれは一体…………」
私の呟きは、誰もいない部屋の中に消えていった。
けれど、あの気配を私は知っているような気がして………それに、何処か懐かしいような……そんな気がした。
結局、昨日見た夢は一体何だったのか、分からずじまいだったけれど あの場所に何かがある気がするのは確かだ。
「今度は、ルークと行ってみるのもいいかもしれないわね……エミリアも誘って」
あの二人が一緒なら、安心できる気がする。
私はそう思い、一つ伸びをしてから身支度を始めた。
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