上 下
255 / 321

熱にうなされ

しおりを挟む
お兄様と一緒に家の中に入り、自分の部屋に向かおうとした時 お兄様に呼び止められ、私は振り返る。
「お兄様?まだ何か?」
「無理しちゃダメ、だからね」
そう言ってお兄様は、にっこりと笑う。
けれど、その目は笑っていなくて、その顔を見た瞬間。
あぁ……無理しないと約束したのに、色々やっていた事がバレてしまったんだ
と、理解するのにそう時間はかからなかった。
お兄様は、私の事になると感が鋭くなると言うか……
まぁ、お説教が怖いのでこれ以上余計な事を言わないように気をつけよう。
そう、私は心の中で誓った。
「はい、もう無理はしません」
「そう?ならいいけど」
と、そう伝えればお兄様は満足気に笑って私の頭を撫でた。
しばらく、無理するのはやめよう……
無理をした所で、お兄様やルークにバレてお説教を受けるだろう。
それなら、大人しくしていた方が何倍もマシだ。
「お兄様、私そろそろ戻りますね」
「うん、じぁあね」
私は、お兄様に小さくお辞儀をすると、自分の部屋まで戻る事にした。
********
部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。
今日は、久しぶりにゆっくりと過ごせたし、ルークともゆっくり話すことが出来た。
そんな事を考えている時、ふと体に少しの違和感を感じた。
「なんだか……体が重い……?」
やはり、無理をし過ぎたのだろうか?
ここ、数日……このくらいなら大丈夫だろう、と自分に言い訳をして
無理を続けていた。
そのツケが今回って来たのだろうか……
まだ、夕食の時間までは時間があるし……少し眠ろう。
そう思った私は、ゆっくりとベッドに倒れ込むとそのまま目を閉じる。
そして、意識を手放すかのように眠りについたのだった。
********
「あ……れ……?私……」
目が覚めた時、窓の外は真っ暗で、かなりの時間眠っていたんだと気づいた。
私は慌てて起き上がろうとした時、ぐわんっと視界が歪み そのままベッドに逆戻りしてしまった。
自分の体を起き上がらせようと力を入れるけれど、全く起き上がることが出来ずにもう一度力一杯体に力を入れてみるけれど結果は変わらない。
仕方なく私は諦めて、またベッドへと横になる。
まだ疲れてるのだろう、自分にそう言い聞かせて私はまた眠りに付く事にした。
********
苦しい、熱い……
私は燃え盛る炎の中にいた、何処にも逃げる場所なんて無くて。
私一人炎の中に閉じ込められた。
そして、辺り一面火の海になっていて私はどんどんと飲み込まれて行く……
怖い……助けて……!誰か……!!! そんな、私の叫びも虚しく消えて行く。
もうダメだ……そう思った瞬間だった。
私を呼ぶ声が聞こえて、誰かが私の手を掴んでくれる。
「…………おにいさま……?」
目を開くと、そこには今にも泣きそうな顔をしたお母様と
私を心配そうな顔で見てくるお兄様と、お父様の姿
辺りを見渡せば、ここはいつもの私の部屋だ。
どうして……?私はさっきまで……火の海に……
あぁ……そうか……あれは夢だったんだ。
と理解するのに時間はかからなかった。
「どうして…………ここに…………?」
「ルカの姿が見当たらないから、部屋に行ってみれば 苦しそうにうなされれて……」
お兄様の言葉を聞いて、私はゆっくりと体を起こそうとするが
力が全然入らず、起き上がることが出来なかった。
「熱があるんだ……無理しなくて大丈夫」
「ねつ……」
「最近、無理しすぎていただろ?明日には医者が来てくれるから……大丈夫だよ」
そう言ってお兄様は、私の頭を撫でてくれる。
その手に安心した私は、いつの間にかまた眠りに付いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
 ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。  チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。  なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!  こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。  ※注:すべてわかった上で自重してません。

西成の銭湯

dragon49
大衆娯楽
短歌。

紅薔薇と森の待ち人

石河 翠
児童書・童話
くにざかいの深い森で、貧しい若者と美しい少女が出会いました。仲睦まじく暮らす二人でしたが、森の周辺にはいつしか不穏な気配がただよいはじめます。若者と彼が愛する森を守るために、少女が下した決断とは……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、夕立様に描いて頂きました。

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

テルミー通りの人形工房

Slugcat
ファンタジー
 排煙と汚水に塗れ、薄霧の立ち込める陰鬱な大都市の一角、うらびれた路地の片隅にひっそりと、一軒の“魔導人形工房”があった。“魔導人形”とは、機械技術と魔術の融合によって生み出される自動人形のことだ。外見こそ生身の人間と区別がつかないほど精巧だが、『人格』と呼べるような高度な知性はない。見た目は人間そのものだが意思も人権も持たない『人形』。それにどんな需要があるかは、あえて言うまでもないことだ。工房で働く人形師の主な仕事は、下衆な金持ち連中の欲望を余さず聞き取り、彼らの好みに忠実な見目麗しい人形を造り上げることだった。そんな人形師のもとに、ある日、奇妙な客が訪れた。その客は、一枚の写真を差し出して「この写真の人物を人形で再現することはできるか?」と尋ねた。そこに写っていたのは、絶世の美女でもなければ筋肉質の美男子でもなく、ごく普通の愛らしい童女だった。人形師が、これは誰の写真なのかと尋ねると、「孫娘だ」と客は答えた。一年前に、病で亡くなった孫娘だと。

婚約も結婚も計画的に。

cyaru
恋愛
長年の婚約者だったルカシュとの関係が学園に入学してからおかしくなった。 忙しい、時間がないと学園に入って5年間はゆっくりと時間を取ることも出来なくなっていた。 原因はスピカという一人の女学生。 少し早めに貰った誕生日のプレゼントの髪留めのお礼を言おうと思ったのだが…。 「あ、もういい。無理だわ」 ベルルカ伯爵家のエステル17歳は空から落ちてきた鳩の糞に気持ちが切り替わった。 ついでに運命も切り替わった‥‥はずなのだが…。 ルカシュは婚約破棄になると知るや「アレは言葉のあやだ」「心を入れ替える」「愛しているのはエステルだけだ」と言い出し、「会ってくれるまで通い続ける」と屋敷にやって来る。 「こんなに足繁く来られるのにこの5年はなんだったの?!」エステルはルカシュの行動に更にキレる。 もうルカシュには気持ちもなく、どちらかと居言えば気持ち悪いとすら思うようになったエステルは父親に新しい婚約者を選んでくれと急かすがなかなか話が進まない。 そんな中「うちの息子、どうでしょう?」と声がかかった。 ルカシュと早く離れたいエステルはその話に飛びついた。 しかし…学園を退学してまで婚約した男性は隣国でも問題視されている自己肯定感が地を這う引き籠り侯爵子息だった。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~) ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

たぬき寝入り〜気になる子が放課後になると毎日寝ているので気が気じゃない〜

歩くの遅いひと(のきぎ)
恋愛
山那(やまな)ちなつは高校生。 席が近くになったのをきっかけに同じクラスの同級生 平沢(ひらさわ)たまおの目覚まし役をお願いされる。 なかなか起きないたまおに対し、ちなつはいつしか魔が差したようでーー? 起きない女の子と負ける女の子のお話 ☆ 少し前まで公開していたHPに載せていたものを加筆修正しています。 こちらの作品はpixiv、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...