上 下
245 / 321

沙羅からの疑問

しおりを挟む
「ルカは……アマミヤさんの事昔から知っていたの……?」
ルカは、震える声で私に問いかけた。
それに答えるように、私は……
「いえ、この間初めてアマミヤと知り合いました、でもどうして?」
「ううん!何でもない……なんでも……」
顔に暗い影を落とし、何でもないと言う沙羅。
やっぱり、私は沙羅に何かしてしまったのだろうか……何でもない
と言っているけれど、なんでもなければこんな表情浮かべる訳が無い。
「あの……沙羅……」
「今日ここに来たのは、ルークが用事があったのでしょう?その話をした方が良いのでは?」
私が、沙羅に話しかけようとした時、沙羅の隣にいたフィリスが
ルークに話しかける、まるで沙羅を庇うかの様に……
「あ、あぁ……そうだな……その、アマミヤさんに聞きたい事があって」
「私にですか?」
「はい、アマミヤさんは、別の世界から来た人だと聞いて……」
「あぁ、聖女様から聞いたんですね」
そう言って、アマミヤさんはチラッと、私の方を向いた。
勝手に、アマミヤさんの事を伝えてしまった事に対して、怒っているのかもしれない……
私は少し身構えつつ、アマミヤさんに視線を向けた。
すると、アマミヤさんはクスクスと笑い出し、私とルークを交互に見る。
「別に、怒ってませんよ。聖女様とルークさんには、話そうと思っていた事ですから、確かに……私は別の世界から来た人間です」
「やっぱり……そうだったんですね、沙羅以外にも異世界から来た人間がいるだなんて……」
ルークは驚きを隠せないと言う様に、そう呟いた。
私から聞いていたとはいえ、本人からそう言われるのは、やはり違うのかもしれない。
ふと、沙羅達の方を見ると、沙羅はまだ沈んだような表情を浮かべ
フィリスが沙羅の事を、落ち着かせる様に背中を撫でていた。
そして、そんな二人の様子をよそにアマミヤさんは話始めた。
別の世界からやって来た人間、だが私には魔力が無く……と
私に話してくれた事を、アマミヤさんはルークに伝えていた。
「……と、こんな感じです」
「お話していただきありがとうございます。……しかし、あの連中は昔から変わらないんだな」
そう言って、ルークはため息を吐く。
あの連中とは、きっとこの国の上の人達の事だろう。
私も、初めてこの話を聞いた時……きっと、ルークと同じ感情だっただろう。
そんな事、考えていたら沙羅が私の事をジッと見つめていた。
「沙羅?どうかした?」
「あ……えっと……」
「沙羅、大丈夫?話、聞くんでしょう?」
フィリスにそう言われながら沙羅は、うん……とか、そうだよね……とか
そんな事を呟き、大きく深呼吸をした後、私へと視線を向ける。
「沙羅は……アマミヤさんの事、いや……私達みたいな人間の事知っていたんじゃないの?」
そう言う沙羅の表情は、怒りの感情が含まれている様で……こんな沙羅の表情初めて見た、そう思いながら、私は沙羅の言葉を聞いた。
「聖女様なら……知っていても不思議じゃ無いでしょ?むしろ、ルカがお願いしてたりしたんじゃ……」
「そんな事無いわ!私だって、アマミヤさんに聞いて初めて知ったもの……」
「本当に……?」
「本当よ、むしろ……こんな事した国の人達に怒ってるのよ?」
私がそう言うと、沙羅は少しだけ、ホッとしたような表情を浮かべ
小さな声で、良かった……と呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚式をやり直したい辺境伯

C t R
恋愛
若き辺境伯カークは新妻に言い放った。 「――お前を愛する事は無いぞ」 帝国北西の辺境地、通称「世界の果て」に隣国の貴族家から花嫁がやって来た。 誰からも期待されていなかった花嫁ラルカは、美貌と知性を兼ね備える活発で明るい女性だった。 予想を裏切るハイスペックな花嫁を得た事を辺境の人々は歓び、彼女を歓迎する。 ラルカを放置し続けていたカークもまた、彼女を知るようになる。 彼女への仕打ちを後悔したカークは、やり直しに努める――――のだが。 ※シリアスなラブコメ ■作品転載、盗作、明らかな設定の類似・盗用、オマージュ、全て禁止致します。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

処理中です...