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ホントは凄い先生

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「随分と楽しそうだねぇ~お二人とも」
「ウィル先生!?」
「図書室ではお静かに、だよ」
しーっと、口に指をあててウィル先生がそう言った。
私は慌てて、ウィル先生にごめんなさい……と謝ると、次からは気を付けようね
と言って、優しく笑った。
「それで、ウィル先生はどうしてここに……?」
「うーん?君達がお勉強頑張ってるかな~って、どう?難しい所とか分からない所はある?」
そう言いながらウィル先生は、私達の向かいの席に腰掛けた。
そして、私達の勉強ノートを覗き込み、ふむふむ。とかなるほどね。と言った
声を漏らした。
「流石、高木さんにフィリスさんだ、よく頑張ってるね」
「ありがとうございます、でも基礎を勉強してて思うんです……私も、まだまだだったんだなぁって……」
「沙羅……その気持ち私にも分かります、ちゃんと理解していたつもりなのに
……いざ勉強してみたら」
そう言って、フィリスと私はしょんぼりとした表情を浮かべていた。
そんな私達を励ますようにウィル先生が声を掛けてくる。
「それに気づいただけでも凄い事だよ、大丈夫、二人ならもっと成長出来るさ」
そう言って、ウィル先生は優しく微笑んだ。
そんなウィル先生の言葉に少し元気が出てきて 私は感謝の言葉を述べながら頭を下げた。
「うんうん、それで……どう?分からない所とかあるかな?今なら何でも質問し放題だよ」
「えっと…………じゃあこの問題なんですけど……」
そう言って私は、ウィル先生に向かって分からない所を伝えた。
すると、ウィル先生は嬉しそうに、それか~それはね……と言いながら 丁寧に教えてくれた。
*******
「なるほど……!ウィル先生の教え方すごく分かりやすかったです」
「ほんと?いや~そう言って貰えて嬉しいよ」
そう言って、ウィル先生は嬉しそうに笑う。
ウィル先生の教え方は、本当に分かりやすかった。
いつもの、あの雰囲気からは想像出来ないほどに……
「ウィル先生ってちゃんと先生なんですね」
「ん!?それは一体どういう……」
「だって、いつものウィル先生って何処か抜けてて、本当に凄い先生なのかな~って」
「高木さん……君は僕の事をそんな風に思ってたのか……」
そう言って、ウィル先生は落ち込んだ様に下を向いた。
そんなウィル先生の様子を見ているとフィリスがクスクスと笑った。
私はそんなフィリスにどうしたの?と声を掛けるとフィリスは、お二人とも
凄い楽しそうで……と言った。
「楽しそうって……」
「そうだよ、僕は今落ち込んでいるんだよ?」
そう言って、ウィル先生は、はぁ……とため息を吐いた。
「まぁ、いいや。そろそろ、下校時間になるから、片付けて帰りなさい」
そう言って、ウィル先生は席を立ち上がった。
私はフィリスと顔を見合わせてから、帰る支度をする事にした。
「アマミヤさん、今日はありがとうございました!」
「あら?もう帰るの?ちゃんとお勉強は出来た?」
「はい、お陰様で……あの、迷惑でなければまた、ここに来ても良いですか?」
私は勇気を出してアマミヤさんにそう聞くと アマミヤさんは、嬉しそうに笑って勿論よ。と言ってくれた。
そんなアマミヤさんの言葉に私とフィリスは顔を見合わせて笑いあった。
「さて、じゃあ今日は帰ります。さようなら」
「今日は本当にありがとうございました、さようなら」
「はい、さようなら。気を付けて帰るのよ」
「はい!行こ、フィリス」
そう言って、私はフィリスに向かって手を差し伸べた。
そんな私の手に、嬉しそうに微笑んでから、はい。と優しく返事をしてフィリスが私の手を取る。
そして、私たちは手を繋いだまま廊下を歩いて、自分たちの寮へと帰る事にした。
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