若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

部屋に訪れた人物は

「ルカ！！！」
「お父様！？！？どうしてここに？今日は遅くなるって……」
扉が開いた先にいたのは、焦った様な顔をしたお父様がいた。
お父様は、今日は遅くなると聞いていた為、なぜお父様がここに居るのか 疑問に思い首を傾げていると、お父様は安心したように息を吐いた。
そんな私達を見てお父様が近づき私の手を強く握る。
突然の事で驚きながらも、私はお父様の顔を見た。
その顔は本当に焦っている様で、不安そうな顔だった。
「今日聞いてしまったんだ……ルカがこの国からいなくなってしまうと……」
今にも泣き出してしまいそうなお父様の顔を見て、私は胸が苦しくなる。
どうしていいか分からず、ただお父様の手を握る事しか出来なかった。
すると今度はお兄様が後ろから私を抱きしめて頭を撫でてくれる。
その優しい手つきに少し落ち着いた頃、私は口を開いた。
「……そのお話は誰から聞いたのですか？」
「今日会った人から……ルカが、変な計画を立ててると言う噂があると聞いて……ルカは本当にこの国を出ていくつもりなの？」
そう言ってお父様が不安そうに私を見つめる。
そんなお父様の目を見て、私はゆっくりと頷く。
それを見たお父様はまた泣きそうな顔になってしまった。
「……この家が嫌になったのか？それともこの国が……」
「いいえ、どちらも違います」
「では何故……」
「………私の話、聞いてくれますか？」
そう言って私は、お父様の手を更に強く握った。
お父様は、優しく微笑みながら私の手を握り返してくれた。
そんなお父様の様子に安心した私は、ふぅ、と息を吐いて
お兄様に話した事と同じ話をお父様にした。
最後まで聞き終わった後、お父様は少し考えている様子だったが、少しして口を開いた。
「それは……ルカが自分で決めた事なんだよな？誰かに言われてとか、強制されたとかでは無いんだよな？」
「はい、すべて自分で決めた事です」
「………そうか、なら私からはもう何も言わない、気を付けて行くんだよ」
「ありがとうございます……！！」
「ただ……まだ説明してない人がいるんじゃないか？」
「お母様ですね……大丈夫です、私から説明しますから」
「そうか、分かった……だがルカ、私はお前の父なんだからもう少し頼ってくれてもいいんだからな」
そう言ってお父様は私の頭を撫でると優しく微笑んだ。
そんなお父様の微笑みに、私も思わず笑顔になる。
「はい、でも頼ってばかりでは成長できませんから」
そう言って私が微笑むと、お父様は呆れながらも優しく微笑んでくれた。
そんなお父様を見て少し心が軽くなった気がした。
「あ、一つだけお願いをしてもいいですか……？」
「お願い？なんでも言ってごらん」
お父様は、そう言って私の言葉に耳を傾けてくれる。
そんなお父様の優しさに感謝しつつ私は口を開いた。
「その……沙羅とフィリスの事を気にかけてあげて欲しいんです。
私がいなくなったら、あの子達の事を
気にかけてあげられる人が誰も居なくなってしまうので……その、よろしくお願いします」
そう言って私が頭を下げるとお父様は優しく微笑んだ。
そして私の頭を撫でると、任せておいて。と優しい言葉をかけてくれた。
その優しい言葉に私は嬉しくて笑顔で頷いた。
そんな私達の様子を見ていたお兄様が私の隣に立ち、私の手を取って握った。
私が驚いてお兄様を見ると、お兄様は優しく微笑んでいた。
「俺も二人の事気にかけてあげるから、だからルカは安心して行っておいで」
「お兄様……お父様……ありがとうございます！！」
私がそう言って笑うと、お父様もお兄様も嬉しそうに微笑んでくれた。
二人の笑顔に、私は心が軽くなっていくのを感じた。
そして改めて、この人達の家族で本当によかったと思った。
「さて、今日はもう遅いからもう休みなさい」
「はい、おやすみなさいお父様、お兄様」
「うん、お休みルカ」
そう挨拶を交わして、二人は自分の部屋に戻って行った。