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ルカを助けに

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皆の元に急いで戻ると、三人の方もちょうど準備が終わったようで、私は三人にありがとう、とお礼を言うとポーション作りを始めた。
「沙羅、私も手伝いましょうか?」
「えっ!いいの……?」
「もちろんです、えっとまずは……計量からですかね?」
「うん、初めてだし最初から上手くいくとは思わないけどね~他の人達は休んでて大丈夫だから!一つ目が完成したら呼ぶからそれまで待っててね」
私はそう言って、フィリスと共にポーション作りを始めた。
材料はちゃんと揃っている……上手くできるかは私の腕に掛かっている し、材料も少ないんだから失敗しないように気を付けなきゃ……そう思いながらポーション作りを始めた。
私は、まずフィリスに手伝ってもらいながら材料を計量していった。
まずは、ポーション作りに大切な聖水と薬草の量を確認する。
材料をきちんと量って、混ぜ合わせないと思った様な効果が出ないので
ここは、慎重に計量をする。
次に、薬草を聖水と混ぜやすいように細かく刻み、聖水の入った鍋の中へと入れる。
そして……これがかなり重要で、鍋をかき混ぜながら私の魔力を
鍋に注ぎこむ。
私の魔力が鍋へと吸収されていくのを感じ、それと同時に何とも言えない感覚が体を襲う。
その感覚に負けない様に私は魔力を注ぎ、願いを込める。
魔力を上げるポーションが欲しいと。
「………………出来た!早速試して……っ」
「沙羅……!!」
フィリスは私の顔色が悪いのを見て、心配をしてくれた。
確かに気分は悪いけれど……ポーションを作るのに魔力を大量に使うから仕方がない事だと私は思っている。
だから、大丈夫と言うとフィリスはまだ何か言いたげな顔をしたがそれ以上は何も言わなかった。
「ふぅ……心配かけてごめんね、でもコレを誰かに試してもらいたいんだけど……皆を呼んできてもらえるかな?」
「はい、分かりました。沙羅はそこで休んでいてください」
「は~い」
そんな気の抜けた返事をして、フィリスが皆を呼びに行っている間私は休むことにした。
私がしばらく休んでいると、ルーク達は心配そうな様子でこちらにやって来た。
そして、私の顔を見るとホッとしたように息を吐いた。
ユーリも安心した様な顔をしていて、なんだか恥ずかしくなってその場から起き上がった。
「沙羅!まだ横になってて大丈夫ですから……」
「皆が来たし、私だけ休んでる訳にはいかないよ……よいしょっと、ポーションが出来たから試してもらいたいんだけれど……誰がいいかな?」
「私がやります!」
「生徒会長?良いのですか?」
「はい、沙羅さんには沢山迷惑をかけてしまったので……これくらいはさせてください」
「ありがとうございます……では、どうぞ」
私はそう言って、生徒会長にポーションを手渡した。
生徒会長は緊張した面持ちで瓶を受け取り、蓋を開けて中身を一気に飲み干した。
「どう……ですか………??」
「特に変わった感じはしませんね……」
「はぁ~ダメだったかぁ……もう一回作ってみる」
私はそう言って、新たに材料を計量しポーションを作り直した。
*********
ポーションは完璧に出来ている筈なのに……
エミリアやフィリスが試してもダメだった、最後の砦のルークも……まさかのダメで私は、ガックリと肩を落とした……
「どうして……」
「沙羅……」
「ポーションの材料は……あと一個分……」
もう失敗は出来ない。
材料は全部使いきった、もう後戻りはできないのだ……
私は自分にそう言い聞かせながら最後のポーション作りをすることにした。
最後の材料を入れて、鍋の中へと液を入れると魔力を注ぎながら願いを込めていく……
「できた………!!でも、誰が飲めば……」
「沙羅が飲んでみたら?」
「えっ?でも……私の力は弱いし……」
「でも、沙羅は聖女でしょ?私達には無い力があって上手くいくかもしれない」
「フィリス……一応皆にも聞いてみるよ」
「えぇ、でも皆さんも同じような意見だと思いますよ」
にっこりと笑い、フィリスはみんなの事を呼びに行った。
そして、皆が私の所まで来ると、さっきフィリスにした説明を皆にした。
すると、皆もフィリスと同じで私がいいと言って、私がポーションを飲むことになった。
私は皆にお礼を言って、最後のポーションを飲み干した……する、何か不思議な感覚を感じ、体の中から力が溢れるような感じがした。
「成功……みたいね」
「フィリス……うん!これでルカを助けに行ける……!!」
「凄いよ沙羅!!」
「よくやったな、沙羅」
「さぁ、行きましょう……聖女様を助けに」
「うん!!」
そう言って私は力を集中させルカの気配をたどる。
すると、奥底の空間に微かにルカの気配を感じることが出来た、見つけた
ルカはきっとここにいる。
「待っててルカ、今行くからね!!」
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