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現れた魔女と黒いローブの男

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「あらあら、素晴らしい友情ね」
魔女は、クスクスと笑いながらフィリスとユーリと呼ばれていたあの子の事を
からかうように話すと、私の事を睨みながら 、何かブツブツと呟き始めた。
「どうして……貴女は私の事ばかり邪魔をするのかしら……ねぇ?聖女様…?」
そう言った瞬間、魔女の周りに黒い靄が広がる。
何か来る、そう思った私はエミリアの結界を上書きするように結界を張り
魔女に向かって話しかける、この結界がいつまで持つか分からない 早くここから皆を逃がさないといけない……
「こんな所まで私を追いかけてくるなんて、随分と熱心なのですね」
「私は貴女の力を絶対手に入れて見せる……それに、ここにはもう一人聖女の力を持つ人間もいるみたいですしね、ふふっ」
そう言って魔女は、沙羅の方を見てニヤッと笑った。
やっぱり……魔女は沙羅の事も狙っている、だからこの学園にシロとして
現れて、人々の記憶を書き換えたんだ……
シロは昔から皆のの周りにいた、ユーリはシロと幼馴染で仲良しで、フィリスとユーリの仲は悪く、お互いがお互いの事を憎むように……そう、記憶を書き換えた。
「貴女沙羅は渡しません……」
「あら?そんなこと言って良いのかしら?」
そう言って魔女はパチンっと指を鳴らした。
すると、私達の前には黒いローブを着たあの男が立っていた……
禍々しいオーラを放つあの男は、私達の方を見てニヤリと不気味に笑った その笑い方は、シロがする笑顔とは全く別のもので思わず身震いをした。
「ルカ……」
「沙羅……そんな顔しなくても大丈夫です、知ってますか?こう見えて私
強いんですよ?」
「でも……!!」
「沙羅さん、今は聖女様の言う事を聞いた方が良いのでは?正直私達では
あの男には勝てません」
「そうね、ユーリの言う通りだわ、大人しくして……隙が出来たら逃げましょう」
「うん……」
沙羅達がそんな会話を
していると、魔女が黒いローブの男の腕に抱きつき甘えるような仕草を しながら、何かヒソヒソと話をしている。
一体何を企んでいるのだろう……そう警戒しながら
二人を見ていると、 魔女はクスクスと笑いながら、男に話しかけた。
そして男は私達の方を見てニヤリと不気味にほほ笑んだ。
何だろう……とても嫌な感じがする……すると男はおもむろに口を開くと、私に向かって話しかけてきた。
「やぁ!聖女様初めまして、いやあの森で一度会っていましたね」
「そうね……一つ聞いていいかしら?」
「あぁ、もちろん」
目の前の男はそう言うと、魔女と同じく指をパチンっと鳴らした。
そして、そこには一つの鳥籠……そして、その中には……
「ムル……!!」
『んんぅ……この声は……ルカ!!ルカ!無事だったんだね……良かった……』
「それはこっちのセリフです、でも……良かった……本当に……」
「おやおや、感動の再開ってやつですかね?くくっ」
鳥籠の中には、ムルがいた……良かった無事だと知って安心したと同時に
こんな事をした魔女に対して、許せない気持ちでいっぱいになった。
「ムルを返して……」
「それは難しいご相談ですねぇ、この子には、まだやってもらいたい事があるので。それより!流石聖女様です、この鳥籠の中身を魔法も使わずに見れるだなんて」
「それはどういう事……?」
「貴女の婚約者……いえ、元婚約者は、この鳥籠の中身が見えませんでした。魔法を使って見せてもインチキだと喚いて……あの人は本当にこの国の人間なのですか?」
「アイツ………やっぱりこの男との接点があったのか……」
「ありえない!アイツ本当にこの国の人間なの……?」
ルークは拳を握りしめ、エミリアは呆れたようにそう言っていた。
そして、沙羅は信じられないと言う顔で鳥籠と目の前の男を見ていた。
はぁ……なんでこんな事になってしまったのだろう、きっかけは
沙羅から貰ったメールだった。
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