上 下
89 / 321

怪しい生徒

しおりを挟む
次の日、私は朝早くから学園に来ていた。
その理由は、噂の出所を探る為と、その噂を流した人物を探す為で
まずは、学園の中を練り歩く事にしてみた。
朝早いからまだ生徒の数は少ないけれど、何人かの生徒とはすれ違った。
その時の視線は、やはり私の方を見て何かヒソヒソと何か話しているようだった。
その子達に話しかけてみようかな、とか思ったりもしたけれど、多分あの子達は
何か知っているような感じでは無さそうだしスルーすることにした。
「はぁ……やっぱり噂広まってるんだなぁ……」
私は大きな溜息をつきながら、ガックリと肩を落とす。
すると、後ろからクスッと笑う声が聞こえ
振り向くとそこにはフィリスがいた。
「ふ、フィリス……!?こんな朝早くにどうしたの?」
「それは私のセリフです、どうですか?手掛かりは見つかりましたか?」
「ううん……噂してる子達は見るんだけれど、肝心の誰が噂してるかっていうのが全然分からなくて……」
私がそう答えると、フィリスは顎に手を当てて考えている。
何か心当たりでもあるのかな……と期待しながら、私はフィリスの答えを待つ。
そして、フィリスはハッとした表情になり、私の顔を見る。
「すみません……!少し考え事をしていて……」
「ううん!何か心当たりでもあったの?」
「えぇ……私の勘違いかもしれませんが……」
そう前置きしてから、フィリスは話してくれた。
それは、昨日私と離れた後の事。
教室に忘れ物をした事を思い出したフィリスは、急いで教室へと戻った。
教室に着き扉を開くと、私の席に見慣れない生徒が一人座っていたのだと言う。
その人は、茶色の髪でポニーテールにしている女の子で、フィリスが話し掛けると慌てて教室から出て行ったらしい。
「沙羅の知っている子ですか……?」
「ううん……」
「そうですか……私も初めて見た子だったのですが……何処かで見たような気もして……」
「どこかで……?」
そんな会話をしていた時、チャイムの音が鳴り響いた。
折角いい所だったのに……そう、思ったけれど、このまま話していたら
遅刻してしまうので私達は急いで教室ヘと向かった。
「お昼にまたお話聞かせてくれる?」
「えぇ、もちろんです。とりあえず今は急ぎましょう?折角早く来たのに意味が無くなってしまいますから」
そう言って、私達は自分のクラスへ急いだ。
教室の中は特に変わったことも無く、いつも通りだった。
まぁ、一部の生徒は私の方を見てヒソヒソと何か話しているようだけれど……。
先生が来てホームルームが始まり、授業が始まった。
午前中の授業は問題なく終わり、私はフィリスと約束のお昼ご飯を食べる事にした。
「はぁ~~お腹すいた~~」
「そうですね、今日の沙羅は頑張ってましたからね」
そう言いながら、そう言いながら、私は持ってきたランチバックを開ける。
中にはサンドイッチが入っていて、これは私が作っておいたものだ。
フィリスの方を見ると、彼女も同じようにサンドイッチを食べていた。
私は、この時間が好きだ。
だって、フィリスと二人でゆっくりできるから。
「ん~美味しい~」
「それで、朝の続きですけど……あの時の子は一体誰なんでしょうか?」
フィリスが思い出したように聞いてきた。
確かにあの子が誰か分かれば噂の事も分かるかもしれないし 私も少し考えてみる。茶色の髪の毛でポニーテールの……やっぱり思いつかない……
「フィリスは何処であの子を見た
の?」
私が聞くと、フィリスは首を傾げて考える。
けれど、フィリスの答えはごめんなさい。と一言だけだった。
結局、あの子の事は分からずじまいだったけれど……まぁその内分かるよね。
そんな事を考えながら、フィリスとのお昼の時間を楽しく過ごした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?

サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」

その婚約破棄喜んで

空月 若葉
恋愛
 婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。  そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。 注意…主人公がちょっと怖いかも(笑) 4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。 完結後、番外編を付け足しました。 カクヨムにも掲載しています。

処理中です...