上 下
78 / 321

市場と見慣れない果物

しおりを挟む
「さて!次は何処に行こうか?」
「えっと……」
「俺達もここで大丈夫です、ありがとうございました」
そう言って、ルークは頭を下げる。
私とエミリアもそれに続いてお辞儀をする。
「えっ!?俺何かしちゃったかな?」
「いえ!そういう訳では無いのですが、そろそろご迷惑になると思って……」
ルークがそう言うと、アルフレッドは大袈裟に首を振る。
それから、迷惑だなんて思っていないし、それに……と続けた。
話によると、アルフレッドさんは私達が困っていたのが分かったらしく、だから放って置けなかったらしい。
「でも、僕が勝手に決めたことだし……君達だって三人で行きたいところもあったよね」
そう言って、アルフレッドさんは申し訳なさそうな顔をした。
確かに、最初はいきなり話しかけられて、少し戸惑ってしまったけれど
今はこうして一緒にいるのがとても楽しかった。
私は、アルフレッドさんの目をじっと見て、それから、笑顔でこう言った。
「もし、また出会う時があったら……その時はまた案内してくれますか?」
すると、彼は一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった。
そして、もちろん。と言い、また会える日を楽しみにしているとお互いに約束をして別れた。
*****
「アルフレッドと別れちゃって良かったの?」
「えぇ……アルフレッドさんには申し訳ないのですが、三人で無いと話せない事もあるので」
「でも、アルフレッドは本当に良い人だったな……普通に旅行に来ていたのならもっと沢山遊べたのにな」
ルークがボソッと呟いた言葉に私達は、そうだね。と同意した。
私達は今旅行に来ているのではなく、黒いローブの男の情報をつかむ為、ムルを助ける為、そして……魔女を倒す為。
その為に、一般市民を巻き込むわけにはいかない。
だから、私達はアルフレッドさんとは離れなければならなかったのだ。
そうして、私達は王都を見て回った。
この国は、自然が豊かで食べ物も美味しい。
けれど、こんな寒い所だと言うのに、新鮮な食べ物が沢山あると言うのが
少しだけ引っかかる。
「次はどうするんだ?」
「そうですね……少し、調べたいことがあるので市場に向かいましょうか」
「はーい!女将さんにもおすすめしてもらったしね!」
「えぇ、ルークも大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ。市場だっけ?じゃあ行ってみようか」
そうして、私達は市場に向かった。
市場に着くと、あまりの人の多さに驚いてしまった。
私達は、人混みの波に流されないように気をつけながら歩いた。
すると、突然エミリアが立ち止まった。
どうやら、気になるお店があるようだ。
私達は、エミリアの後をついて行くことにした。
そこは、果物を売っているお店のようで、見たことの無い色とりどりの果実が並んでいる。
「すっごーい!こんな果物見た事ないよ!」
エミリアは興奮しながら、目の前にある赤い実を手に取り眺めている。
私も、初めて見るものばかりで目が離せなかった。
すると、店主と思われる男性が私達に話しかけてきた。
「それが気になるのかい?それはリンゴって言う果物だよ」
「リンゴ?それなら私の国にもあるけど……」
「ははっそれは普通のリンゴだろ?コレはうちの特産品の特別なリンゴなんだ」
「へぇ……なんていう名前なの?」
「それは言えないんだ、この国の決まりでな。それに!うちの特産品は他の国には売らないって決めているんだ」
そう言って男性は、笑っていた。
その様子から察するに、この人は嘘はついていないように思える。
他の国では売られていないと言うことは、この国独自の物なのかしら……?
そんな事を考えていると、エミリアは手に持っていたりんごをそのまま買ってしまった。
それも三つもだ。
エミリアは、お金を渡してからありがとう!と言ってお店を離れた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?

サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

処理中です...