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魔女
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「貴女は……この国で何をしているんですか?」
私の質問に、今度は彼女が黙り込んでしまった。
先程までの笑みはなく、じっと私を見つめてくる。
その視線に少し気圧されそうになるが、負けじと見返す。
しばらく沈黙が続いた後、彼女が口を開いた。
「それを知ってどうするの?まさか私を止める。とでも言うのかしら?」
今まで聞いたことのないような冷たい声で、私達に問う。
その姿からは、ただならぬ威圧感を感じた。
けれど、引くことはできない。
ここで引き下がったら、何も解決しない。
それに、ムルを助けるためでもある。
だから、私ははっきりと答える。
「はい。それが私の使命だからです」
私の答えを聞いて、彼女は少し驚いた表情を見せた。しかし、すぐに元の冷めた目に戻る。そして、小さく呟いた。
残念ね……と。そして次の瞬間、彼女の身体から黒い霧のようなものが溢れ出した。何……これ……? 黒い霧はどんどん広がっていき、あっという間に視界を奪っていく。これは、マズイ……! そう思った時にはもう遅くて、 黒い霧は辺り一面を覆った。
「今日の所はこれで許してあげるわ」
霧の向こうからそう声がして、辺りは静寂に包まれた。
そして、ゆっくりと晴れていく黒い霧。
そこにはもう誰もいなかった。
私達は呆然と立ち尽くしていた。
黒い霧に覆われて、気が付いたら周りは雪景色の世界。
そして、目の前にいたはずの魔女の姿も消えていた。
「皆無事ですか……!?」
「うん……何とか」
「俺も大丈夫だ……だが、あの女……」
「うん、多分何か知ってると思う……早くムルを助けたいのに……」
私は焦っていた、こんな所で足止めを食らう訳にはいかないから……
あの魔女……マリーはきっと何か知っている。
けれど、それを聞こうとしても簡単には答えてくれるとも思えない。
それに、彼女には戦う意思が無いように思った。
あの霧………最初は確かにびっくりしたけれど、あの霧自体に
害はなかった。
そうだとすれば、無理に追う必要もない。
今優先すべきなのは、一刻も早くここを出て、情報を集める事だ。
「このままだと日が暮れてしまいますし、一旦町の方に行きましょうか?」
「そうだね、町なら何か情報とか分かるかもだし!」
「俺も賛成、このまま外にいるのも危ないしね」
三人の意見が一致したので、私たちは町に向って歩き始めた。
すると、遠くに大きな城が見えてきた。
あれがこの国の王都かな? やっと着いたみたい。
ここまで来るのにかなり時間がかかってしまった。
「やっと着いた~!」
「ふふっ、二人ともお疲れ様」
「とりあえず休めそうな所を探さないか?」
「そうね、どこかいい場所があれば良いんだけど……」
そう言いながら、きょろきょろと辺りを見回す。
すると、ちょうど良さそうな宿屋を見つけた。
看板を見ると、どうやら食事処も兼ねているようだ。
中に入ると、恰幅の良いおばさんが出てきた。
この人がこの宿の女将さんらしい。
空いている部屋はないか聞くと、丁度空きがあるとのことだったのでそこでお願いする事にした。
案内された部屋に荷物を置き、少し休憩してから町の探索に行くことにした。
部屋から出て、階段を下りると、食堂らしきところに出た。
既に何人かのお客さんがいるようで賑やかだった。
「ここなら、何か情報が掴めそうですね」
「だね~私聞いてこようか?」
「エミリアだけだと心配だから俺も行く」
「じゃあ、みんなで行きましょうか?あ、それと、私達は旅行で来ている設定でお願いします、私が聖女だっていう事も秘密ですよ?分かりましたか?」
「「はーい」」
「いい返事です、じゃあ行きましょう」
私達は、席に着く前にまずは情報収集を始める事にした。
私の質問に、今度は彼女が黙り込んでしまった。
先程までの笑みはなく、じっと私を見つめてくる。
その視線に少し気圧されそうになるが、負けじと見返す。
しばらく沈黙が続いた後、彼女が口を開いた。
「それを知ってどうするの?まさか私を止める。とでも言うのかしら?」
今まで聞いたことのないような冷たい声で、私達に問う。
その姿からは、ただならぬ威圧感を感じた。
けれど、引くことはできない。
ここで引き下がったら、何も解決しない。
それに、ムルを助けるためでもある。
だから、私ははっきりと答える。
「はい。それが私の使命だからです」
私の答えを聞いて、彼女は少し驚いた表情を見せた。しかし、すぐに元の冷めた目に戻る。そして、小さく呟いた。
残念ね……と。そして次の瞬間、彼女の身体から黒い霧のようなものが溢れ出した。何……これ……? 黒い霧はどんどん広がっていき、あっという間に視界を奪っていく。これは、マズイ……! そう思った時にはもう遅くて、 黒い霧は辺り一面を覆った。
「今日の所はこれで許してあげるわ」
霧の向こうからそう声がして、辺りは静寂に包まれた。
そして、ゆっくりと晴れていく黒い霧。
そこにはもう誰もいなかった。
私達は呆然と立ち尽くしていた。
黒い霧に覆われて、気が付いたら周りは雪景色の世界。
そして、目の前にいたはずの魔女の姿も消えていた。
「皆無事ですか……!?」
「うん……何とか」
「俺も大丈夫だ……だが、あの女……」
「うん、多分何か知ってると思う……早くムルを助けたいのに……」
私は焦っていた、こんな所で足止めを食らう訳にはいかないから……
あの魔女……マリーはきっと何か知っている。
けれど、それを聞こうとしても簡単には答えてくれるとも思えない。
それに、彼女には戦う意思が無いように思った。
あの霧………最初は確かにびっくりしたけれど、あの霧自体に
害はなかった。
そうだとすれば、無理に追う必要もない。
今優先すべきなのは、一刻も早くここを出て、情報を集める事だ。
「このままだと日が暮れてしまいますし、一旦町の方に行きましょうか?」
「そうだね、町なら何か情報とか分かるかもだし!」
「俺も賛成、このまま外にいるのも危ないしね」
三人の意見が一致したので、私たちは町に向って歩き始めた。
すると、遠くに大きな城が見えてきた。
あれがこの国の王都かな? やっと着いたみたい。
ここまで来るのにかなり時間がかかってしまった。
「やっと着いた~!」
「ふふっ、二人ともお疲れ様」
「とりあえず休めそうな所を探さないか?」
「そうね、どこかいい場所があれば良いんだけど……」
そう言いながら、きょろきょろと辺りを見回す。
すると、ちょうど良さそうな宿屋を見つけた。
看板を見ると、どうやら食事処も兼ねているようだ。
中に入ると、恰幅の良いおばさんが出てきた。
この人がこの宿の女将さんらしい。
空いている部屋はないか聞くと、丁度空きがあるとのことだったのでそこでお願いする事にした。
案内された部屋に荷物を置き、少し休憩してから町の探索に行くことにした。
部屋から出て、階段を下りると、食堂らしきところに出た。
既に何人かのお客さんがいるようで賑やかだった。
「ここなら、何か情報が掴めそうですね」
「だね~私聞いてこようか?」
「エミリアだけだと心配だから俺も行く」
「じゃあ、みんなで行きましょうか?あ、それと、私達は旅行で来ている設定でお願いします、私が聖女だっていう事も秘密ですよ?分かりましたか?」
「「はーい」」
「いい返事です、じゃあ行きましょう」
私達は、席に着く前にまずは情報収集を始める事にした。
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