72 / 321
北の国と魔女
しおりを挟む
「二人とも、準備はいいですか?」
「うん!大丈夫だよ!」
「俺も大丈夫だけど、沙羅には伝えたの?」
「はい、昨日メッセージで伝えましたから」
そう、昨日沙羅にメッセージで、しばらくここを離れる。と言う事を伝えた。
私の事を沙羅は少し疑っていたけれど、最後には分かった、気を付けてね。と返って来た。沙羅に噓を付くのは心苦しいけれど、これも沙羅のためだから……
そして今、私たちはこの国を出て、北の国に向かおうとしている。
目的は、ムルを助ける事、黒いローブの男の手掛かりを見つける事そして……
闇魔法を使う人間を見つける事。
上手くいくかは正直分からない……けれどやらなければ始まらない。
そう決意して、私は転移魔法を発動させた。
「上手くいくかな?」
「大丈夫です、きっとうまくいきます」
「そうだな、俺達なら大丈夫だ」
ルークはそう言って、私の頭をポンッと撫でてくれる。その手は大きくて暖かくて、私はいつも安心する。
私達はこれからこの国を出る。
もう、後戻りはできない、するつもりもない……
「さぁ、行きましょう」
暖かい光が私達を包み込み、次の瞬間目の前に現れたのは 真っ白な雪景色の世界でした。一面に広がる銀世界に思わず息を飲む。
「ここは……」
「北の国、だね」
「すご~い!雪いっぱい!寒い!」
エミリアは興奮気味に辺りを走り回っている。
確かに、すごい量の雪が積もっている。それに気温が低いせいか、吐く息が白い。私達の国では、ここまでの積雪はないから、とても新鮮に感じる。
しかし、あまりゆっくりもしていられない。早く、情報を集めないと。
「ほら、エミリア行きますよ?」
「えぇ~まだ遊んでても大丈夫じゃない?」
「ダメです!ほら行きます……」
「ルカ?」
「ルーク、エミリア、私の後ろに隠れてて」
「あ、ああ」
私は魔力探知をしてみる。すると、近くで微かに反応があった。
恐らくこれは……
私達が警戒しながら進んでいると、前から一人の女性が現れた。
見た目は普通の女性に見えるが、魔力の質が普通ではない。
しかも、この感じ……覚えがある。
「おや?この国にお客様とは珍しい」
女性はにこやかな表情を浮かべながらこちらに向かってくる。
一見害はなさそうな人だが、油断は出来ない。
私はいつでも魔法を使えるように構えていると 女性が口を開いた。
この人は一体……? 目の前の女性から感じ取れる気配は明らかに異質だった。
「おやおや、随分と警戒されてるようですね」
「貴方は……この国の魔女……そうですよね?」
「まぁ、よくわかりましたね!そうです、私がこの国の魔女、マリーです」
彼女はにっこりと微笑み、スカートの裾を摘まんで優雅にお辞儀をする。
やはり彼女が……
私はエミリアとルークを庇う様に前に出る。
後ろからエミリアの心配そうな声と、ルークの緊張した空気を感じる。
そんな私たちの様子を見て、クスリと笑いをこぼす彼女。相変わらず、何を考えているのか読めない。
けれど、一つだけはっきりしている事がある。
それは、彼女が敵であると言う事。
私の中で警鐘が鳴り響く。
彼女をここで逃がすわけにはいかない。
私は、彼女に問いかける。
「貴方は、どうしてここにいるのですか?」
私がそう聞くと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
まるで何故そんな事を聞くのだろうか。と言いたげな様子で。
「お客様が来たのなら、出迎えるのは当然でしょう?」
そう言って、にやりと笑った。
彼女の言っている事はもっともだけれど、どうにも違和感を感じてしまう。
そして、その笑顔を見た瞬間、ゾクッとした寒気が背筋を走る。
それは、恐怖なのか、それとも別の何かなのか。
とにかく、このまま話していては良くない気がする。
私は話を逸らす事にした。
今は少しでも情報が欲しい。
まずは会話を続けよう。
そう思い私は、彼女との対話を試みた。
「うん!大丈夫だよ!」
「俺も大丈夫だけど、沙羅には伝えたの?」
「はい、昨日メッセージで伝えましたから」
そう、昨日沙羅にメッセージで、しばらくここを離れる。と言う事を伝えた。
私の事を沙羅は少し疑っていたけれど、最後には分かった、気を付けてね。と返って来た。沙羅に噓を付くのは心苦しいけれど、これも沙羅のためだから……
そして今、私たちはこの国を出て、北の国に向かおうとしている。
目的は、ムルを助ける事、黒いローブの男の手掛かりを見つける事そして……
闇魔法を使う人間を見つける事。
上手くいくかは正直分からない……けれどやらなければ始まらない。
そう決意して、私は転移魔法を発動させた。
「上手くいくかな?」
「大丈夫です、きっとうまくいきます」
「そうだな、俺達なら大丈夫だ」
ルークはそう言って、私の頭をポンッと撫でてくれる。その手は大きくて暖かくて、私はいつも安心する。
私達はこれからこの国を出る。
もう、後戻りはできない、するつもりもない……
「さぁ、行きましょう」
暖かい光が私達を包み込み、次の瞬間目の前に現れたのは 真っ白な雪景色の世界でした。一面に広がる銀世界に思わず息を飲む。
「ここは……」
「北の国、だね」
「すご~い!雪いっぱい!寒い!」
エミリアは興奮気味に辺りを走り回っている。
確かに、すごい量の雪が積もっている。それに気温が低いせいか、吐く息が白い。私達の国では、ここまでの積雪はないから、とても新鮮に感じる。
しかし、あまりゆっくりもしていられない。早く、情報を集めないと。
「ほら、エミリア行きますよ?」
「えぇ~まだ遊んでても大丈夫じゃない?」
「ダメです!ほら行きます……」
「ルカ?」
「ルーク、エミリア、私の後ろに隠れてて」
「あ、ああ」
私は魔力探知をしてみる。すると、近くで微かに反応があった。
恐らくこれは……
私達が警戒しながら進んでいると、前から一人の女性が現れた。
見た目は普通の女性に見えるが、魔力の質が普通ではない。
しかも、この感じ……覚えがある。
「おや?この国にお客様とは珍しい」
女性はにこやかな表情を浮かべながらこちらに向かってくる。
一見害はなさそうな人だが、油断は出来ない。
私はいつでも魔法を使えるように構えていると 女性が口を開いた。
この人は一体……? 目の前の女性から感じ取れる気配は明らかに異質だった。
「おやおや、随分と警戒されてるようですね」
「貴方は……この国の魔女……そうですよね?」
「まぁ、よくわかりましたね!そうです、私がこの国の魔女、マリーです」
彼女はにっこりと微笑み、スカートの裾を摘まんで優雅にお辞儀をする。
やはり彼女が……
私はエミリアとルークを庇う様に前に出る。
後ろからエミリアの心配そうな声と、ルークの緊張した空気を感じる。
そんな私たちの様子を見て、クスリと笑いをこぼす彼女。相変わらず、何を考えているのか読めない。
けれど、一つだけはっきりしている事がある。
それは、彼女が敵であると言う事。
私の中で警鐘が鳴り響く。
彼女をここで逃がすわけにはいかない。
私は、彼女に問いかける。
「貴方は、どうしてここにいるのですか?」
私がそう聞くと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
まるで何故そんな事を聞くのだろうか。と言いたげな様子で。
「お客様が来たのなら、出迎えるのは当然でしょう?」
そう言って、にやりと笑った。
彼女の言っている事はもっともだけれど、どうにも違和感を感じてしまう。
そして、その笑顔を見た瞬間、ゾクッとした寒気が背筋を走る。
それは、恐怖なのか、それとも別の何かなのか。
とにかく、このまま話していては良くない気がする。
私は話を逸らす事にした。
今は少しでも情報が欲しい。
まずは会話を続けよう。
そう思い私は、彼女との対話を試みた。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる