上 下
58 / 321

夜ごはんのお買い物

しおりを挟む
「そう言えば、学園の方は大丈夫なのか?」
「あっ!確かに、勝手に泊まるわけにはいかないよね……?」
ルークとエミリアは、沙羅とフィリスの方を向いてそう聞いた。
けれど、二人は困った様な表情はしていなくて
それどころか、どこか誇らしげな顔をしていた。
「ん~大丈夫だよ!ね?フィリス」
沙羅は、少し考えてからそう言った。
フィリスが、えぇ。と言って、それを聞いて沙羅はふふんっと
得意げな顔をした。
「実はね!お泊りの許可をもらっているのです!だから心配ありません!」
そう言って胸を張る沙羅に、エミリアはすごい~!と言って頭を撫でていた。沙羅も、えへへ~と、気持ち良さそうにしていた。
それを微笑ましく見ていると、フィリスと視線が合った。目が合うと、すぐに逸らされてしまったけど、彼女の頬は微かに赤く染まっていた。
「ふふ、フィリスも頭を撫でて欲しければいつでも言ってくれて良いのですよ」
私がそう言うと、また顔を真っ赤にしたフィリスは俯いて、小さな声で
お願いします……と呟いた。その姿が可愛くて思わず笑みが零れた。
「よしよし……」
私がそう言いながら、優しく頭に触れると、フィリスは更に耳まで赤く染めて
照れていたけれど、嫌では無さそうだったので、そのまま撫で続けた。
暫くそうしていると、ルークが咳払いをした。
「そろそろ行かないと暗くなるぞ?」
「そ、そうでした!早く買い物に行きましょう!」
ルークにそう言われて、慌てて手を離す。
何故かフィリスは残念そうな顔をしていて、沙羅はにこにこと笑っていた。
「じゃあ、改めてお買い物にしゅっぱーつ!」
エミリアが元気よくそう言うと、私達は皆、返事をして歩き出した。
買い物に向かいながら、今日のご飯はどうしようか?とか、何を食べたいか?などを話し合って、何を作るか決めていくことにした。
因みに、皆の料理スキルは特に心配はなく、フィリスも問題なく出来るらしい。
「そう言えば今日は何処にお泊りするつもりだったの?」
「あ……考えてなかった、私の所はダメだし……」
「じゃあ、私の所に来れば大丈夫だよ!」
「エミリアのお家に?迷惑じゃない?」
「うん!全然平気だよ~」
そんな会話をしながら歩いていると、いつの間にかお店に着くことが出来た。
お店の中に入ると、沢山の食材が並んでおり、色々あって目移りしてしまう程だった。とりあえず、皆で手分けして必要なものを探すことになった。
今日作る料理はカレーだ。
お泊りならカレーでしょ!と沙羅が提案したからだ。
「カレーなら……これと、これと……あとこれも」
思いつく食材をカゴに入れ、次はお肉のコーナーに行く。
どれがいいのか分からなかったので、店員さんに聞いてみた。
すると、おすすめを教えてくれたので、そのお肉を買っておくことにした。
野菜コーナーに戻ると、皆も丁度戻って来たようで、沙羅と一緒に食材を持って歩いてきた。
「これで大丈夫かしら……?」
「うん!ありがとう!皆で頑張って作ろうね!」
そう言う沙羅はとても楽しそうにしていた。
私達も、沙羅と同じ様に楽しみになってきた。
それから会計を済ませて、荷物はルークが持つことになり、お店を後にした。
「ちょっと、買いすぎちゃいましたかね?」
帰り道、フィリスが苦笑いを浮かべながらそう言った。
確かに、私達の持っている袋の中にはかなりの量の食材が入っていた。
「確かに……ルーク重くないですか……?」
「いや、大丈夫だ。気にしないでくれ」
ルークはそう言ってくれたけれど、やっぱり少し心配になってくる。
それに、彼の表情には疲れが見えている気がするし……。
「やっぱり、私も少し持ちます」
「でも……」
「ほら、貸してください」
そう言ってルークの手から袋を
一つ取ると、彼は驚いた表情をしていた。
そして、すぐに笑顔になると ありがとなと言ってそのまま歩き始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
 ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。  チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。  なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!  こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。  ※注:すべてわかった上で自重してません。

西成の銭湯

dragon49
大衆娯楽
短歌。

紅薔薇と森の待ち人

石河 翠
児童書・童話
くにざかいの深い森で、貧しい若者と美しい少女が出会いました。仲睦まじく暮らす二人でしたが、森の周辺にはいつしか不穏な気配がただよいはじめます。若者と彼が愛する森を守るために、少女が下した決断とは……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、夕立様に描いて頂きました。

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

テルミー通りの人形工房

Slugcat
ファンタジー
 排煙と汚水に塗れ、薄霧の立ち込める陰鬱な大都市の一角、うらびれた路地の片隅にひっそりと、一軒の“魔導人形工房”があった。“魔導人形”とは、機械技術と魔術の融合によって生み出される自動人形のことだ。外見こそ生身の人間と区別がつかないほど精巧だが、『人格』と呼べるような高度な知性はない。見た目は人間そのものだが意思も人権も持たない『人形』。それにどんな需要があるかは、あえて言うまでもないことだ。工房で働く人形師の主な仕事は、下衆な金持ち連中の欲望を余さず聞き取り、彼らの好みに忠実な見目麗しい人形を造り上げることだった。そんな人形師のもとに、ある日、奇妙な客が訪れた。その客は、一枚の写真を差し出して「この写真の人物を人形で再現することはできるか?」と尋ねた。そこに写っていたのは、絶世の美女でもなければ筋肉質の美男子でもなく、ごく普通の愛らしい童女だった。人形師が、これは誰の写真なのかと尋ねると、「孫娘だ」と客は答えた。一年前に、病で亡くなった孫娘だと。

婚約も結婚も計画的に。

cyaru
恋愛
長年の婚約者だったルカシュとの関係が学園に入学してからおかしくなった。 忙しい、時間がないと学園に入って5年間はゆっくりと時間を取ることも出来なくなっていた。 原因はスピカという一人の女学生。 少し早めに貰った誕生日のプレゼントの髪留めのお礼を言おうと思ったのだが…。 「あ、もういい。無理だわ」 ベルルカ伯爵家のエステル17歳は空から落ちてきた鳩の糞に気持ちが切り替わった。 ついでに運命も切り替わった‥‥はずなのだが…。 ルカシュは婚約破棄になると知るや「アレは言葉のあやだ」「心を入れ替える」「愛しているのはエステルだけだ」と言い出し、「会ってくれるまで通い続ける」と屋敷にやって来る。 「こんなに足繁く来られるのにこの5年はなんだったの?!」エステルはルカシュの行動に更にキレる。 もうルカシュには気持ちもなく、どちらかと居言えば気持ち悪いとすら思うようになったエステルは父親に新しい婚約者を選んでくれと急かすがなかなか話が進まない。 そんな中「うちの息子、どうでしょう?」と声がかかった。 ルカシュと早く離れたいエステルはその話に飛びついた。 しかし…学園を退学してまで婚約した男性は隣国でも問題視されている自己肯定感が地を這う引き籠り侯爵子息だった。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~) ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

たぬき寝入り〜気になる子が放課後になると毎日寝ているので気が気じゃない〜

歩くの遅いひと(のきぎ)
恋愛
山那(やまな)ちなつは高校生。 席が近くになったのをきっかけに同じクラスの同級生 平沢(ひらさわ)たまおの目覚まし役をお願いされる。 なかなか起きないたまおに対し、ちなつはいつしか魔が差したようでーー? 起きない女の子と負ける女の子のお話 ☆ 少し前まで公開していたHPに載せていたものを加筆修正しています。 こちらの作品はpixiv、小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...