上 下
51 / 321

不安と悩み

しおりを挟む
「そういえば、さっきムルを助けたいって言っていたけど……」
「うん、夢を見たんだ。悪いやつにムルが連れ去られる夢……」
「エミリアも夢を?」
「と言う事はルークも見たんだ?」
何となく、エミリアの言葉に引っ掛かっていたけれど、エミリアも夢を見ていたんだ。
エミリアも力を持つ者だから予知夢を見る事はあるだろうけれど
多分、これはムルの力なんだろう。
ムルが俺達に助けを求める為に力を飛ばして夢を見せた。
精霊のムルなら簡単にできる筈だ。
「ねぇ、ルーク」
「ん?なんだ」
「この事はルカに伝えるの?」
「いや、伝えたらきっと心配して私も行くと言うだろうからな……」
「そっか、私もそれでいいと思う」
俺がそう言うと、エミリアは納得したように首を縦に振った。
きっと、エミリアも俺と同じ事を考えていたのだと思う。
ルカの性格上、自分だけ安全な場所に居るなんて出来ないはずだ。
だからこそ、ルカには伝えない。
そんな会話をしていた時、エミリアのスマホが鳴った。
エミリアは、出ようか悩んでいるようだったので、俺が出ていいよ。
と言うと、エミリアはありがとう。と言って電話に出た。
「もしもし、ルカ?」
どうやら、電話の相手はルカだったらしい。
タイミングがいいのか、悪いのか……
『もしもし、エミリア?家に行ってもいなかったから……』
「ご、ごめんね~今少し出掛けてて……それで、電話してくるって事は何か大切な用事だったんでしょ?」
『うん、あのね……沙羅が今度の休みに皆に会いたいって……大丈夫かな……?』
「沙羅が?そっか…沙羅は学園に入ったんだっけ。私は全然大丈夫だよ!」
『ほんと!じゃあ、あとはルークだけど……』
「きっと、大丈夫じゃない?」
『そうよね、明日ルークに電話して聞いてみる』
「うん、きっといいって言ってくれるよ!」
『そうだといいんだけれど……それじゃあ、またね』
「うん、バイバイ~」
どうやら、電話は終わったようで、エミリアは電話を切った。
話は良く聞こえなかったけれど、どうやら沙羅が休みの日に俺達に会いたい
と言う話だったみたいだ。
沙羅が学園に入学して数か月が経っただろうか。
きっと、沙羅も話したいことが沢山あるのだろうと想像出来る。
明日、ルカから電話がかかってきた時は了承しようと心に決めた。
「はぁ~それにしてもびっくりした~ルカの話をしてたらルカから電話が掛かってくるんだもん」
「あぁ、まるで俺達がルカの話をしてるのを知っていたようなタイミングの良さだったな」
「ルカならあり得るかもね~」
そう言ってエミリアはクスクス笑いながら笑っている。
本当に、ルカならあり得そうな気がするがするから不思議だ。
「あ、もうこんな時間なのか……」
「ほんとだ!早く帰らないと怒られちゃう」
「もしかして……何も言わずに家を出てきたのか?」
「あたり~よくわかったね?」
「エミリアの事だからね、送って行こうか?」
「ううん、一人で大丈夫」
「そっか、気を付けて帰るんだぞ?」
「は~い!じゃあ、また後で!」
「あぁ、またな」
エミリアを玄関まで送り届けた後、俺は部屋に戻りベッドに横になった。
ルカの事……沙羅の事……そしてムルの事。
考えることが沢山あって、頭がパンクしてしまいそうになっている。
俺達はこれから何が起きるか分からない。
その時、後悔しないように考えなければいけない。
俺は目を閉じ、深く息を吸いゆっくりと吐き出す。
「黒服の男……一体何者なんだ……」
俺はまだ見ぬ敵に不安を抱きながらも眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。

しぎ
恋愛
※題名変更しました  旧『おっとり令嬢と浮気令息』 3/2 番外(聖女目線)更新予定 ミア・シュヴェストカは貧乏な子爵家の一人娘である。領地のために金持ちの商人の後妻に入ることになっていたが、突然湧いた婚約話により、侯爵家の嫡男の婚約者になることに。戸惑ったミアだったがすぐに事情を知ることになる。彼は聖女を愛する取り巻きの一人だったのだ。仲睦まじい夫婦になることを諦め白い結婚を目指して学園生活を満喫したミア。学園卒業後、結婚した途端何故か婚約者がミアを溺愛し始めて…!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...