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あの時の魔法陣

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何事もなく、今日の用事を終えて帰宅する。
自室の机に向かい、引き出しの中から一冊の日記帳を取り出した。
この日記は、私の大切な宝物。
「今日の事を書かないと……」
ペンを手に取り、今日あった事を思い出しながら書き綴っていく。
今日は沙羅が学園に無事に入学することが出来た。
沙羅は凄く緊張していたけれど、きっとあの子なら大丈夫だと思う。
それとは別に……気になる事が一つある……
「アルマ様……」
日記を書いていた手を止めて、はぁ……とため息をつく。
最近、あの人が大人しすぎる。
別に、あの人が私に興味がなくなって、大人しくなった……と言うのなら
良いのだけれど、正直違和感しかない。
あの人の事だ、きっとまた良くない事を企んでいるのだろうけど……
「もう諦めてくれないかしら……」
そう呟いて、またため息をついた。
何だか日記の続きを書く気にならず、ぱたん、と日記帳を閉じて再びしまった。
「あの人の事もだけれど……黒い服の人も気になるのよね……今度また
西の町に行ってみよう」
一人そう呟いて、窓の外を見る。
空は夕焼け色に染まっていて、綺麗だった。
外の景色に目を奪われていると、ふわっと風が吹いてきた。
窓から入ってきた風に、目を細める。
風に乗ってきたのか、桜の花びらが一枚ひらり、と落ちてきて それを掴まえようと手を伸ばした。
しかし、花びらを掴まえたら、ふわっと溶けるように消えていった。
その花びらが消える瞬間、微かだけれど私が感じたことがない魔力を
纏っているのを感じた。
それはまるで、闇のように暗く冷たい魔力。
「魔力……一体どこから……??しかもこの力、西の町で感じたのと同じ……?」
慌てて、窓の外を見て魔力の出所を探る。
微かに魔力の気配を感じられたけれど、その魔力の元を探る事は出来なかった……
「これは……ちょっと面倒な事になりそうですね……」
急いで身支度を整え、魔力が感じた方へと急いで向かった。
まだ、犯人がいるとは限らないけれど、何か起こる前に対処しなくては……
急いで家を飛び出して、町の中を走る。
街を抜け、着いた先は私がムルに出会った森……
けれど、そこはいつのも様な雰囲気は無くて、精霊たちの力も感じられないほど
弱っていた。
それに、木々は枯れていて、空気はどんよりとしている。
いつもとは違う様子の森を見て、眉を寄せながら奥へと進む。
しばらく歩くと、小さな湖が見えた。
そこは、私が大好きだったあの湖……けれど、その面影は
どこにもない。
「ひどい……」
目の前に広がる光景に、思わずそう言葉を漏らした。
その場にしゃがみ込んで、湖の水に手を触れてみる。
その瞬間、身体中に寒気が走る。
「これは……ちょっとまずいですね……」
ふぅ、と息を整えて力を集中させる。
この湖だけ、浄化してもきっとダメだ、一時的にには良くなるかもしれないけれど、きっとすぐに元に戻ってしまう。
だからもっと広く……この森全部を浄化しなくては……
手を胸の前で組んで、力を集中させ、魔法を発動させた。
すると、私の足元から光が溢れて辺り一面を包み込むように広がっていく。
「まだ……もっと……浄化しなくちゃ……」
その光はどんどん強くなって、やがて視界全てが真っ白になった。
しばらくして、ゆっくりと目を開くとそこには、元の姿を取り戻した森の姿があった。
「良かった…………ん?これは………」
見つけたのは、西の町で見た魔法陣の書かれた小さな紙だった……
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