上 下
37 / 321

怪しい気配と西の森

しおりを挟む
三人が帰った後の部屋で、私は一人ムルの名前を呼ぶと
部屋の隅の方からフッとムルが姿を現した。
私はやっぱりここに居た、と思いながらムルの元に近づく。
「ねぇ?ムル、私達の話聞いていたでしょう?」
『うん、全部聞いてた……盗み聞きしてゴメンなさい』
「ううん、いいの。それよりも、協力して欲しい事があるの」
『もちろん!アイツをやっつけるんでしょ!ムル頑張る!』
そう言ったムルはとてもやる気満々といった感じだった。
あと、私はムルに聞きたいことがあるのを思い出して、気になっていたことを質問した。
「ねぇ、ムル。なんでエミリアに会いに行ったの?」
『ん~ルカの大切な人だから会わなきゃって思って!』
「そうだったの、じゃあ……最近よく出かけてた理由は?」
『それは……最近ルカの周りで変な気配がしたから調べに行ってたんだ
ほら、最近町に魔物が出たって言ってたでしょ?それに何か関係あると思って』
知らなかった、まさか私の周りでそんな気配があっただなんて……
私の周りで、変な気配があるのなら私が気づくはずだし……
「そうだったのね……」
『多分精霊にしか分からない力なんだと思うんだけど……正体掴めなかったの、ごめん』
「いいえ、気にしないで。でも、ありがとう。教えてくれて」
私はムルの頭を優しく撫でると、嬉しそうな顔をして、もっと!とねだってくる。それに答えるように、何度も撫でていると満足したのか、ありがとう!と言ってくれた。
変な気配……か。
これは……私も調べた方がよさそうね、ムルにもう一度ありがとうと伝えた後、私は自室に戻った。次の日、私は早速行動を起こすことにした。
朝食を早く済ませ、着替えると町に向かった、目的地は魔物が出たという
西の町。
私は、人目の付かない場所に移動して、魔法を使うと一気にその場所まで飛んで行った。
着いた先は、町の近くの小さな森。
魔物が出たという森は、もう少し町に近い所で出たらしいけど、念のため、こちらにも調査に来たのだ。
「……少しだけれど、魔力を感じる……」
やっぱり、この辺りで何かあったのは間違いない。
けれど、残ってる魔力はほんの少しだけで、これだけでは魔力を使った
人物を特定する事は出来ない。
「もう少し町の方を見てみましょうか……」
そう呟いて、町の方の森へと歩いて向かった。
森に近づいていくと、濃い魔力の残り香を感じ始めた。
どうやら、ここで誰かが魔法を使ったようだ。
でも、この濃すぎる魔力……ただの人間が扱えるようなものではない。
町の近くの森を進んでいると、あるものを見つけた、それは……
「魔法陣……?でも、こんなもの見たことがないわ……」
私が見つけたのは、魔法陣が描かれた小さな紙。
それも、かなり古いもので、書かれている文字は読めないし、とても小さく 書かれていた。
でも、どうしてこれがここにあるのだろうか……
私は、これが何なのか確かめたくなって、その紙を拾い上げようとした。
その時……
―――バチンッ!!!!
「いたっ!」
静電気のような音がすると、私の手に痛みが走った。
突然の事で驚きながらも、私は咄嵯に手を引っ込めた。
そして、目の前にあった魔法陣の紙は燃えて消えてしまっていた。「今のは一体……」
手を見ると、火傷をしたかのように赤く腫れていた。
これは、触れてはいけないものだったということかしら……
そう思いながら、私は痛む手をそっと握った。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

その婚約破棄喜んで

空月 若葉
恋愛
 婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。  そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。 注意…主人公がちょっと怖いかも(笑) 4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。 完結後、番外編を付け足しました。 カクヨムにも掲載しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...