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風の魔法
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「どうして風が起こらないの……?」
震えたような声で沙羅が呟く。
沙羅の様子を見ると、明らかに落ち込んでいる様子だった。
聖女として呼ばれたのに、魔法が使えない自分が悔しいんだろうな……。
沙羅は何度も、お願いだから!と祈りを込めているようだった。
しかし、一向に魔法が使える気配はなかった。
けれど、これは仕方がないのだ。
聖女と言うだけでいきなり魔法が使えるようになるわけではない。
そもそも、私の様に生まれた時から力があって魔法が使える方が珍しい
のだ。
私は、沙羅の隣に行き手を添える。
そして、沙羅の瞳を真っ直ぐ見据える。
「沙羅落ち着いて……深呼吸して力を抜いて」
「うん………ふぅ……」
沙羅は私の言葉を聞いて、深呼吸をする。
私は、もう一度沙羅の手に自分の手を重ねる。
そうする事で、沙羅の手を通して魔力を送る事が出来るから。
「そう上手……そのまま私の力を自分の力にするようにして……」
「はい……"ウィンド"」
沙羅がそう唱えた瞬間、足元に小さな風が巻き起こった。
「うん……成功ね」
「すごいすごい!沙羅凄いよ!!」
そう言ってエミリアが沙羅に抱き着く、沙羅も嬉しそうにはしゃいで、やったーっと私に抱き着いてぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「でも、まだまだ練習がしなくちゃね?」
「う、うん!」
「いい返事ね、じゃあ少し休憩しましょうか。疲れたでしょう?」
「でも……」
「この間も言ったでしょう?無理して倒れたら意味が無いのよ?」
「はーい」
そう言うと沙羅は、渋々納得してくれたみたいで、分かった。と言ってくれた。
エミリアは、まだ元気があるのか、遊びたいっと言っていたけれど、休憩が先だよ。と言うとしょんぼりしながら分かった。と言っていた。
「ちょっと待ってて、今お茶を用意してくるから」
「私も手伝うよ~」
「ありがとう、でも私一人で大丈夫よ」
「そう?じゃあ沙羅と二人で待ってるね~」
「うん、いい子にしてるのよ?」
「は~い」
私はそう言うと、部屋を出てキッチンに向かう。
二人っきりにして大丈夫かな?と少し心配だけれど
、エミリアはしっかりしているから大丈夫よね。
私は、慣れた足取りで厨房に向かい、ティーセットを用意する。
そして、お湯を沸かし紅茶を入れる。
その香りが辺りに漂ってくる。
私は、それを楽しみながらカップに注ぎトレーに乗せると、部屋の方に向かった。
ドアを開けると、二人は仲良くお話をしていた。
私は、そんな二人の邪魔をしないように、静かに机に紅茶を置く。
すると、それに気づいた二人がこちらを見る。
「あっ!ルカおかえり~」
「ただいま、随分楽しそうにお話してたみたいね?何を話していたの?」
「う~ん色々かな、ね?沙羅」
「うん!」
「ふ~ん、私には内緒なの?」
私がそう言うと、沙羅とエミリアは焦ったようにち、違うの!と必死になって弁解する。そんな二人を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
「ふふ、冗談よ。さぁ、お茶にしましょうか」
「う、うん!」
「わぁ~美味しそうなお茶にお菓子……これ何処で買ったの?」
「あ、これは……」
「コレはねルカの手作りなんだよ!ね?ルカ」
「えぇ、お口に合えばいいのですが……」
「いただきます~……ん~美味しい!」
「ほんとですか?良かった」
私はホッと胸を撫で下ろす。
そして、自分も一口飲む。うん、良い出来だと思う。
沙羅とエミリアがニコニコと笑顔でこちらを見ている。
どうしたんだろう。そんなに見られてると食べづらいんだけど……。
「二人ともどうかしたのですか?」
「ん~ルカはやっぱりかわいいな~って思って、ねぇ?沙羅」
「そうそう!いつも可愛いけど今日は特に可愛いなって思って」
私は、そんな事を言われて顔が熱くなる。
そんな風に言われると思っていなかったから。
そして、照れ隠しをするように、そう言えば……っと話題を変える。
それから暫く、三人でのおしゃべりを楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、そろそろ帰る時間になったようだ。沙羅とエミリアは名残惜しそうに、また来るね!と言って帰って行った。
震えたような声で沙羅が呟く。
沙羅の様子を見ると、明らかに落ち込んでいる様子だった。
聖女として呼ばれたのに、魔法が使えない自分が悔しいんだろうな……。
沙羅は何度も、お願いだから!と祈りを込めているようだった。
しかし、一向に魔法が使える気配はなかった。
けれど、これは仕方がないのだ。
聖女と言うだけでいきなり魔法が使えるようになるわけではない。
そもそも、私の様に生まれた時から力があって魔法が使える方が珍しい
のだ。
私は、沙羅の隣に行き手を添える。
そして、沙羅の瞳を真っ直ぐ見据える。
「沙羅落ち着いて……深呼吸して力を抜いて」
「うん………ふぅ……」
沙羅は私の言葉を聞いて、深呼吸をする。
私は、もう一度沙羅の手に自分の手を重ねる。
そうする事で、沙羅の手を通して魔力を送る事が出来るから。
「そう上手……そのまま私の力を自分の力にするようにして……」
「はい……"ウィンド"」
沙羅がそう唱えた瞬間、足元に小さな風が巻き起こった。
「うん……成功ね」
「すごいすごい!沙羅凄いよ!!」
そう言ってエミリアが沙羅に抱き着く、沙羅も嬉しそうにはしゃいで、やったーっと私に抱き着いてぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「でも、まだまだ練習がしなくちゃね?」
「う、うん!」
「いい返事ね、じゃあ少し休憩しましょうか。疲れたでしょう?」
「でも……」
「この間も言ったでしょう?無理して倒れたら意味が無いのよ?」
「はーい」
そう言うと沙羅は、渋々納得してくれたみたいで、分かった。と言ってくれた。
エミリアは、まだ元気があるのか、遊びたいっと言っていたけれど、休憩が先だよ。と言うとしょんぼりしながら分かった。と言っていた。
「ちょっと待ってて、今お茶を用意してくるから」
「私も手伝うよ~」
「ありがとう、でも私一人で大丈夫よ」
「そう?じゃあ沙羅と二人で待ってるね~」
「うん、いい子にしてるのよ?」
「は~い」
私はそう言うと、部屋を出てキッチンに向かう。
二人っきりにして大丈夫かな?と少し心配だけれど
、エミリアはしっかりしているから大丈夫よね。
私は、慣れた足取りで厨房に向かい、ティーセットを用意する。
そして、お湯を沸かし紅茶を入れる。
その香りが辺りに漂ってくる。
私は、それを楽しみながらカップに注ぎトレーに乗せると、部屋の方に向かった。
ドアを開けると、二人は仲良くお話をしていた。
私は、そんな二人の邪魔をしないように、静かに机に紅茶を置く。
すると、それに気づいた二人がこちらを見る。
「あっ!ルカおかえり~」
「ただいま、随分楽しそうにお話してたみたいね?何を話していたの?」
「う~ん色々かな、ね?沙羅」
「うん!」
「ふ~ん、私には内緒なの?」
私がそう言うと、沙羅とエミリアは焦ったようにち、違うの!と必死になって弁解する。そんな二人を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。
「ふふ、冗談よ。さぁ、お茶にしましょうか」
「う、うん!」
「わぁ~美味しそうなお茶にお菓子……これ何処で買ったの?」
「あ、これは……」
「コレはねルカの手作りなんだよ!ね?ルカ」
「えぇ、お口に合えばいいのですが……」
「いただきます~……ん~美味しい!」
「ほんとですか?良かった」
私はホッと胸を撫で下ろす。
そして、自分も一口飲む。うん、良い出来だと思う。
沙羅とエミリアがニコニコと笑顔でこちらを見ている。
どうしたんだろう。そんなに見られてると食べづらいんだけど……。
「二人ともどうかしたのですか?」
「ん~ルカはやっぱりかわいいな~って思って、ねぇ?沙羅」
「そうそう!いつも可愛いけど今日は特に可愛いなって思って」
私は、そんな事を言われて顔が熱くなる。
そんな風に言われると思っていなかったから。
そして、照れ隠しをするように、そう言えば……っと話題を変える。
それから暫く、三人でのおしゃべりを楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、そろそろ帰る時間になったようだ。沙羅とエミリアは名残惜しそうに、また来るね!と言って帰って行った。
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