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第2章 彼との出会い
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翌日。咲希のことが気になって眠れなかったひかりは。珍しく寝坊をしてしまいました。
「はぁ!はぁ!やばい、乗り遅れる!」
7時ちょうど発の快速電車なんて、乗れるはずがありません。息を切らしながら桜並木を走ります。7時12分。走って走って、なんとか駅の改札まで来ました。
次の電車は16分発の普通電車。この時間なら、南鳴海温泉口で急行に乗り換えできます。いつもより1本遅くなったけれど、乗り遅れたのは仕方ないと思い、次の電車を待ちます。
7時14分。ゆっくりと南鳴海温泉口行きの普通電車が入ってきました。ひかりはすぐさま席を探しますが、ラッシュ時ということもあり、席なんて空いていません。重いカバンを背負い直し、ドアの近くに立ちます。そして、7時16分。予定通りにドアが閉まりました。ここから先は、山の中を走っていきます。
電車はあまりスピードを出さず、次の山川町駅に停車しました。数人の客を乗せると、すぐに電車は発車します。しばらく進むと、とびきり澄んだ、綺麗な川が見えます。神有川です。この神有川には、数多くの伝説が存在しています。
昔、この川は、神様が集まる場所だったと言われていて、神が有る川と書いて、かみありがわと読みます。ひかりは、数ある伝説の中でも、扉伝説がお気に入りでした。
~銀の満月の日に、霧の立つ神有川に星が流れれば、思いは蘇り、扉が開く。~
銀の満月、霧の立つ神有川…。きれいな情景が思い浮かびます。ふと気がつくと、電車は神有川を渡り切っていました。
「神有川、神有川です。」
車掌のアナウンスを合図に、電車はゆっくりとスピードを落とし、神有川駅に停車しました。ドアが開いた、その時でした。
見慣れない、学ランを着た学生が乗ってきました。どこの学校でしょうか、左手には単語帳を持っており、赤シートでところどころ隠しながら見ています。身長は175cmほど、どこか大人びていて、背が高く見えます。さらに、高い鼻に澄んだ目。整った髪…。まさに、美青年といったところでしょう。ひかりは思わず、時間も忘れて、彼をじっと見つめていました。
「まもなく、南鳴海温泉口です。」
もう南鳴海温泉口か。電車で知らない人をずっと眺めていたなんて、自分が恥ずかしく感じます。ずっと単語帳を開いていた彼は、パタッと単語帳を閉じて、制カバンにしまうと、ドアが開くと同時に急行電車に乗り換えて行きます。ひかりも急行に乗るので、彼の後を追います。彼とひかりを乗せた急行電車は、たくさんの人を乗せて、南鳴海温泉口駅をいそいそと発車して行きます。
あっという間に次の駅、南区役所前に止まり、さらに次の駅、前後区プール前のアナウンスが流れます。
「前後区プール前、前後です。アリオ前後へは、当駅が便利です。」
彼は開いていた単語帳をパッと閉じ、ドアに向いて立ちました。間違いない、彼は前後学園の生徒なんだ。ドアが開くと同時に、彼は急行電車を降りて行きました。
美青年って感じだったなぁ…。ぼーっとしていると、電車が止まり、ドアが開きました。清洲に着いたのです。ひかりは慌てて電車を飛び出し、改札を出ました。
翌日。ひかりは16分発の普通電車に乗っていました。寝坊したわけではないのですが、昨日の男の子のことを引きずっているなんて、とてもじゃないけれど誰にも言えません。まだ咲希にも謝れていないのに、こんなところで自分は何をしているのでしょうか。
今日は文化祭の準備日なので荷物が多く、いつもならつり革に捕まるのですが、あまりの荷物の多さにつり革を持つことが出来ず、少しの揺れでよろけそうになっていました。
電車は神有川駅に着きます。彼はいるかな、目をキョロキョロさせながら探します。いました。彼です。彼は昨日と全く同じように、単語帳を片手に持っていました。すぐに扉が閉まり、普通電車は神有川駅を発車して行きます。ぼーっとっしながら彼を眺めていると、電車が急ブレーキを掛けました。
「きゃっ!」
激しい揺れでひかりはバランスを崩し、彼がいるところに体が傾いていきます。やばいやばいやばい!どうしよう!ぶつかる!
「大丈夫ですか?」
体が止まりました。ひかりは驚いて振り向きました。すると、そこにはひかりのリュックを持って、とっさにひかりを支えている彼がいたのでした。
「す、すみません!お、お怪我とかなかったですか?」
「大丈夫ですよ」
彼は落ち着いた優しい笑顔で答えます。
「あ、ほ、ほんとにすみません!」
憧れの彼と喋っていると思うだけで、つい緊張して声がこわばってしまいます。
「あはは、緊張しなくてもいいですよ、別になんとも思ってませんし。」
彼が優しく言葉をかけてくれたので、少し緊張がほぐれます。
「そういえば、最近よく、電車で会いますよね。以前からこの電車、乗ってたんですか?」
「あ、い、いいえ。私、今、同じ学校に通ってる幼なじみと喧嘩してしまって、前は一本前の快速に乗ってたんですけど、あえて時間ずらしたりしちゃってて…」
「そうなんですね。それなら、早く仲直りした方がいいですよ。」
「で、でも…」
「幼なじみなんでしょう?きっとその相手の方も、そんなことであなたを嫌いになったりしませんよ。まあ、部外者の僕が言うのもおかしな話ですけどね。」
「そうですよね。あ、ありがとうございます!あ、あのー、ずっと気になってたんですけど、お名前、教えていただいてもいいですか?」
「僕?僕は、天野春輝。前後学園中等部の3年。あなたは?」
「私は、篠山ひかりです。清州学園の中学3年です。お、同い年ですね!」
「そうですね。あー、なんか敬語やめにしません?同い年だし、普通に篠山さんって呼んでいいかな。僕はなんて呼んでもらってもいいよ。」
「いいよ。そうだな・・・じゃあ、よ、よろしく、天野くん。」
「よろしく、篠山さん。」
こうして、憧れの彼、春樹と友達になることが出来たのでした。
授業中も春樹のことを考えていました。あのカッコいい天野くんと、お近づきになれたなんて…ああ、心臓が爆発しそう!しかも、ひかりは春樹と約束をしたのです。
明日、快速電車に乗って、絶対に仲直りをする。
天野くんとの約束を破るわけにはいかない。絶対に、絶対に謝るんだ。そう思い、家路を急ぎました。
「はぁ!はぁ!やばい、乗り遅れる!」
7時ちょうど発の快速電車なんて、乗れるはずがありません。息を切らしながら桜並木を走ります。7時12分。走って走って、なんとか駅の改札まで来ました。
次の電車は16分発の普通電車。この時間なら、南鳴海温泉口で急行に乗り換えできます。いつもより1本遅くなったけれど、乗り遅れたのは仕方ないと思い、次の電車を待ちます。
7時14分。ゆっくりと南鳴海温泉口行きの普通電車が入ってきました。ひかりはすぐさま席を探しますが、ラッシュ時ということもあり、席なんて空いていません。重いカバンを背負い直し、ドアの近くに立ちます。そして、7時16分。予定通りにドアが閉まりました。ここから先は、山の中を走っていきます。
電車はあまりスピードを出さず、次の山川町駅に停車しました。数人の客を乗せると、すぐに電車は発車します。しばらく進むと、とびきり澄んだ、綺麗な川が見えます。神有川です。この神有川には、数多くの伝説が存在しています。
昔、この川は、神様が集まる場所だったと言われていて、神が有る川と書いて、かみありがわと読みます。ひかりは、数ある伝説の中でも、扉伝説がお気に入りでした。
~銀の満月の日に、霧の立つ神有川に星が流れれば、思いは蘇り、扉が開く。~
銀の満月、霧の立つ神有川…。きれいな情景が思い浮かびます。ふと気がつくと、電車は神有川を渡り切っていました。
「神有川、神有川です。」
車掌のアナウンスを合図に、電車はゆっくりとスピードを落とし、神有川駅に停車しました。ドアが開いた、その時でした。
見慣れない、学ランを着た学生が乗ってきました。どこの学校でしょうか、左手には単語帳を持っており、赤シートでところどころ隠しながら見ています。身長は175cmほど、どこか大人びていて、背が高く見えます。さらに、高い鼻に澄んだ目。整った髪…。まさに、美青年といったところでしょう。ひかりは思わず、時間も忘れて、彼をじっと見つめていました。
「まもなく、南鳴海温泉口です。」
もう南鳴海温泉口か。電車で知らない人をずっと眺めていたなんて、自分が恥ずかしく感じます。ずっと単語帳を開いていた彼は、パタッと単語帳を閉じて、制カバンにしまうと、ドアが開くと同時に急行電車に乗り換えて行きます。ひかりも急行に乗るので、彼の後を追います。彼とひかりを乗せた急行電車は、たくさんの人を乗せて、南鳴海温泉口駅をいそいそと発車して行きます。
あっという間に次の駅、南区役所前に止まり、さらに次の駅、前後区プール前のアナウンスが流れます。
「前後区プール前、前後です。アリオ前後へは、当駅が便利です。」
彼は開いていた単語帳をパッと閉じ、ドアに向いて立ちました。間違いない、彼は前後学園の生徒なんだ。ドアが開くと同時に、彼は急行電車を降りて行きました。
美青年って感じだったなぁ…。ぼーっとしていると、電車が止まり、ドアが開きました。清洲に着いたのです。ひかりは慌てて電車を飛び出し、改札を出ました。
翌日。ひかりは16分発の普通電車に乗っていました。寝坊したわけではないのですが、昨日の男の子のことを引きずっているなんて、とてもじゃないけれど誰にも言えません。まだ咲希にも謝れていないのに、こんなところで自分は何をしているのでしょうか。
今日は文化祭の準備日なので荷物が多く、いつもならつり革に捕まるのですが、あまりの荷物の多さにつり革を持つことが出来ず、少しの揺れでよろけそうになっていました。
電車は神有川駅に着きます。彼はいるかな、目をキョロキョロさせながら探します。いました。彼です。彼は昨日と全く同じように、単語帳を片手に持っていました。すぐに扉が閉まり、普通電車は神有川駅を発車して行きます。ぼーっとっしながら彼を眺めていると、電車が急ブレーキを掛けました。
「きゃっ!」
激しい揺れでひかりはバランスを崩し、彼がいるところに体が傾いていきます。やばいやばいやばい!どうしよう!ぶつかる!
「大丈夫ですか?」
体が止まりました。ひかりは驚いて振り向きました。すると、そこにはひかりのリュックを持って、とっさにひかりを支えている彼がいたのでした。
「す、すみません!お、お怪我とかなかったですか?」
「大丈夫ですよ」
彼は落ち着いた優しい笑顔で答えます。
「あ、ほ、ほんとにすみません!」
憧れの彼と喋っていると思うだけで、つい緊張して声がこわばってしまいます。
「あはは、緊張しなくてもいいですよ、別になんとも思ってませんし。」
彼が優しく言葉をかけてくれたので、少し緊張がほぐれます。
「そういえば、最近よく、電車で会いますよね。以前からこの電車、乗ってたんですか?」
「あ、い、いいえ。私、今、同じ学校に通ってる幼なじみと喧嘩してしまって、前は一本前の快速に乗ってたんですけど、あえて時間ずらしたりしちゃってて…」
「そうなんですね。それなら、早く仲直りした方がいいですよ。」
「で、でも…」
「幼なじみなんでしょう?きっとその相手の方も、そんなことであなたを嫌いになったりしませんよ。まあ、部外者の僕が言うのもおかしな話ですけどね。」
「そうですよね。あ、ありがとうございます!あ、あのー、ずっと気になってたんですけど、お名前、教えていただいてもいいですか?」
「僕?僕は、天野春輝。前後学園中等部の3年。あなたは?」
「私は、篠山ひかりです。清州学園の中学3年です。お、同い年ですね!」
「そうですね。あー、なんか敬語やめにしません?同い年だし、普通に篠山さんって呼んでいいかな。僕はなんて呼んでもらってもいいよ。」
「いいよ。そうだな・・・じゃあ、よ、よろしく、天野くん。」
「よろしく、篠山さん。」
こうして、憧れの彼、春樹と友達になることが出来たのでした。
授業中も春樹のことを考えていました。あのカッコいい天野くんと、お近づきになれたなんて…ああ、心臓が爆発しそう!しかも、ひかりは春樹と約束をしたのです。
明日、快速電車に乗って、絶対に仲直りをする。
天野くんとの約束を破るわけにはいかない。絶対に、絶対に謝るんだ。そう思い、家路を急ぎました。
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