夢現しの桜

星崎 楓

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第8章 アルバム

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昼休みになった。僕はいつものように弁当を食べようとすると、突然植田先生が教室に入ってきた。
「長嶋くん、お父様から連絡で、『大事な話があるので、今日の夕方6時に病院に来てください。』とのことだそうよ。」
「父さんから……?」
僕はその内容を聞いて困惑していた。今まで父さんからこんな内容の話を聞いたことがない。一体どんな内容なのだろうか。僕は不安になりながらも、先生からの話を受け止めた。
「長嶋くん、どうしたの?」
「父さんから病院に来るように言われたんだけど……。」
「大丈夫?」
「うん……。」
僕はそう答えると、続けて言った。
「それで……できれば一緒に来て欲しいなって……。」
「私も行っていいの……?」
「うん……。むしろ、来てくれるとありがたいというか……。」
僕は少し照れながらそう言った。
「わかった。少し遅くなるけど、後から追いかけて行くね。」
「ありがとう……。」
僕はそう言うと、午後の授業を受けてから、早速病院に向かった。
病院に着くと、すぐに受付に向かい、父さんの名前を伝えた。しばらく待つと、看護師さんがやってきた。
「こちらへどうぞ……。」
僕は言われるがままについていくと、エレベーターに乗った。そして、3階にある病室の前に案内された。扉を開けると、ベッドの上に父さんが座っているのが見えた。僕は父さんに駆け寄ると、挨拶をする。
「父さん、来たよ……。」
「おお、よくきたな……。」
父さんは嬉しそうにそう言うと、僕に椅子に腰掛けるよう促す。僕はそれに従うと、父さんの向かい側に腰掛けた。父さんは僕が椅子に腰掛けるのを確認すると、話し始めた。
「それで……話というのはだな……。」
「う、うん……。」
僕は緊張しながら返事をすると、父さんの言葉を待つ。父さんは少し間を置くと、ゆっくりと言葉を続けた。
「実は……この病院で入院することになったんだ……。」
「……え?」
僕は思わず聞き返してしまった。父さんは申し訳なさそうに話を続ける。
「持病が悪化してしまいそうでな。早めに手術を行うことにしたんだ。」
「そっか……。」
僕は安堵のため息をついた。
「でも……どうして急に?」
「まあ……色々あってな……。」
父さんは言葉を濁すと、僕に理由を説明しようとしなかった。僕は少し気になったが、あまり深くは聞かないことにする。
「それで……しばらくは家に帰れないから、お前に渡しておきたいものがあるんだ……。」
「えっ……?」
「これだ……。」
僕は渡されたものを見て驚いた。それは、一冊のアルバムだったのだ。僕はそれをゆっくりと開くと、中身を確認した。そこには家族全員の写真がたくさん貼られている。写真の真ん中には僕が写っており、その隣には母さんが写っている。僕達は楽しげに笑っていた。父さんはその写真を見ながら、懐かしむように話す。
「これは……俺達が初めて出会った時の写真だ……。」
「……え?」
僕は驚いて写真を見直す。確かに父さんと母さんは見覚えのある顔をしている。僕はさらにアルバムをめくっていく。すると、そこには生まれたばかりの僕の写真と、一人の少女が写っている写真があった。その少女の顔に見覚えがあった。
「……え?」
僕はその顔を見ると、動揺が止まらなかった。なぜなら、その顔は夢の中で見た女の子の顔にそっくりだったのだ。僕は恐る恐る父さんに話を聞いた。
「父さん、これ、って…」
「あぁ、それは…」
「教えてよ、父さん!」
僕はどうしても彼女のことが知りたかったので、少し厳しく言う。
「その黒髪の白いワンピースの女の子が…お前のお姉さんだ……。」
「お姉ちゃん……?」
僕は呆然としながらも、なんとか理解しようと努力する。僕は夢の中で会った女の子の弟ということなのか。
「えっと……名前は?」
「……『桜』だ…。」
「……え?」
僕はその名前を聞くと、なぜか胸が締め付けられるような感覚に襲われた。そして、その瞬間、僕は思い出した。あの子の名前を。
「何でそんなことずっと黙ってたんだよ!」
「それは…、その……すまない!!いつかは言わないといけないと思っていたんだが、タイミングがなかったんだ…!」
僕は落胆すると、俯いた。すると、そんな僕の様子に気付いたのか、父さんは僕に話しかけてきた。
「もしかして、桜のこと、何か知っているのか?」
「え?……いや、初めて知ったよ。」
僕は咄嵯に嘘をつくと、誤魔化そうとした。しかし、うまくごまかせなかったのか、父さんは僕に詰め寄ってきた。
「教えてくれ!何か、知っているのか?」
「知らないよ何も!」
「教えてくれ!何でもいいから!」
「何も知らないって言ってるだろ!」
僕はそのまま走って部屋を出て行った。
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