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第4章 繋がり
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それから数日経ったある日のことだった。いつものように授業を受け、昼休みになると、僕は屋上へと向かっていた。この学校には屋上があるので、たまに気分転換でそこに向かうのだ。階段を上っていくと、そこには先客がいた。それは桜井さんだった。彼女はこちらに気づくと笑顔で近づいてきた。
「こんにちは!」
「こんにちは。」
「いつもここでご飯食べてるの?」
「たまにだけどね。」
「私も同じだよ。」
彼女は僕の隣に来ると言った。
「今日は何食べるの?」
「今日は、サンドイッチかな。」
今日の昼ごはんは、朝、父さんが置いて行ってくれたサンドイッチだった。
「私と同じじゃん!私達気が合うね!」
「そうだね!」
僕は彼女が作ってくれたクッキーのことを思い出していた。あれは本当に現実だったのだろうか……。最近、夢と現実が交錯しすぎてしまい、何が現実で何が夢なのかわからなくなってきてしまっていた。あれももしかしたら夢だったのかもしれない……。僕は彼女に聞いてみることにした。
「ねえ……。」
「何?」
「前にさ、クッキー焼いたって言ってたよね……。」
「うん。それがどうしたの?」
「あ、い、いや、他にも何か作れるものあるのかなって思って。」
「まあ、簡単なものなら何でもできるよ!なんでも言ってみて?」
「じゃあさ、レモンケーキが食べたいな。」
「レモンケーキ?」
レモンケーキ。それは、昔、母さんがまだ元気だったころに作ってくれた、懐かしいお菓子だ。
あの時はとても甘くて美味しくて……。今でも忘れることができない味なのだ。
「うん。ダメかい?」
「レモンケーキ、私も大好きなんだ!今度作るから楽しみにしてて!」
彼女はニコッと笑った。その表情はまるで天使のような可愛らしさだった。僕は思わずドキッとしてしまった。彼女はそんな僕を見て言った。
「でも、どうして、急にそんなこと聞いたの?」
「えっと……、いや、なんとなく気になったから……」
「ふぅ~ん……。」
僕は慌てて取り繕ったが、彼女は不思議そうに僕を見つめていた。僕は恥ずかしくなり、顔を背けた。すると、いきなり後ろから声をかけられた。
「長嶋、ここにいたのか。」
平沢だった。彼はなぜか不機嫌そうな表情をしているように見えた。
「どうしたんだ?」
「長嶋、明日空いてるか?」
「えっ?」
突然の誘いに戸惑っている僕を見て、平沢は続けた。
「いや、明日男子たちてわりんくう鳴浜のショッピングモール行こうぜって話になってさ。それで、今色んな人を誘ってるところなんだよ。」
「誰が来るんだ?」
「えっと……まだそれは決まってないけど…まあ、決まりな!明日の朝10時に駅前集合だからよろしく!」
平沢は一方的にそう告げると、その場を立ち去った。僕は呆然としていたが、隣にいた桜井さんが話しかけてきた。
「ねぇ、今の人って、」
「同じクラスの平沢。」
桜井さんはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「あのさ……。」
僕は桜井さんの方を向くと、その真剣な眼差しを受け止めて、続く言葉を待つことにした。すると桜井さんは予想外の言葉を口にする。
「私も一緒に行きたいな。」
「え?」
僕は耳を疑った。
「だめ……?」
「いや、別に構わないと思うけど……。」
「ホント!?」
桜井さんは嬉しそうに笑った。その笑顔を見て、僕は断れなかった。
男子ばかりの遊びに転校生の桜井さんを誘うのはどうかと思ったが、平沢に伝えたところ、案の定すぐに返事が返ってきて、明日の予定が決まった。
放課後。僕は桜井さんと一緒に下校することにした。僕たちは2人で歩きながら会話をした。
「そういえば、桜井さんは部活とか入ってるの?」
「ううん。まだ何もやってないよ。」
「そうなんだ。じゃあ、どこか入りたいとこあるの?」
「今のところは考えてないけど、強いて言うなら、料理部に入りたいな!」
「料理部か。桜井さんにピッタリじゃんか。」
「そうかな?でもね……実はもう1つ理由があるんだ。」
「どんな理由?」
「それは……秘密です!」
桜井さんは悪戯っぽく笑うと、それ以上は何も言わなかった。僕は少し気になったが、あまりしつこく聞くのも悪いと思い、話題を変えることにした。
「そういえば、桜井さんってどうしてこの高校に来たの?」
「お父さんの仕事の都合でね。本当はもっと遠い学校に行く予定だったんだけど、お母さんがここが良いっていうから……。」
「へぇ……。」
僕は桜井さんの母親を思い出してみた。そう言えば、火事の時に桜井さんの両親に会ったんだった。なんだか少し無愛想で、僕の父さんよりも少し年上に見えた。そう考えていると、桜井さんが僕の方を向いて言った。
「あのね……私のお母さんのことなんだけどね……。」
「うん。」
「死んじゃったの。」
「えっ?」
僕は驚いた。彼女の母親とはつい数日前に会ったばかりなのだ。まさか彼女の母親が亡くなっていたとは……。僕は恐る恐る彼女に尋ねた。
「こんなこと、聞くの良くないと思うんだけどさ…、お母さん、いつ頃亡くなったの?」
「5年前。」
「……」
桜井さんになんて声をかけて良いか分からなくなってしまった。しかし、桜井さんはすぐに笑顔で話を続けた。
「大丈夫だよ!もう整理はついてるから!それに今はお父さん、再婚してて、お母さんもいるしね!」
「そっか……。」
あぁ、再婚されていたのか。この数日のうちの話かと思ってびっくりしてしまった。
今度は彼女の方が口を開く。
「あのね……。」
「うん……。」
「私、ずっと言いたかったことがあるの……。」
僕は緊張しながら次の言葉を待った。そして、彼女は意を決したように話す。
「クッキー、美味しいって言ってくれてありがとう!」
「ああ……。」
僕は思い出した。そうだった。僕はあの時、初めて桜井さんのお菓子を食べたんだ。美味しかったことを素直に褒めた。あの時はただそれだけのことだった。しかし、今こうして改めて言われると、照れ臭い気持ちになる。僕が照れていると、桜井さんは続けて言った。
「嬉しかったよ。」
彼女は俯き加減で言うと、頬を赤く染めていた。僕もつられて顔が熱くなるのを感じた。僕達はしばらくの間沈黙したままだった。しばらくして、桜井さんが何かに気付いたかのように、パッと顔を上げた。
「あっ!」
「どうしたの?」
「私ね、夢を見たの。」
「夢?」
「うん。不思議な夢なの……。」
「夢か……。」
「夢と現実は繋がっている。」
彼女は唐突にそう言った。僕は聞き返す。
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ。見えない何かで、ずっと繋がってる。」
彼女はニコッと笑って答えると、さらに続けた。
「どんな夢だったの?」
「誰かと話してる夢だった。」
「それって誰?」
「分からないんだ……。」
「ふぅ~ん……。」
僕は彼女が見たという夢のことを考えてみる。彼女と会話をする人物。彼女と繋がりのある人間……。それは一体誰なんだろう……。考えれば考えるほど謎が増えていくような気がする。そんなことを考えていると、彼女はクスッと笑って言った。
「私ね、その人が誰なのか、知ってるような気がするの。」
「えっ?」
「だって、夢と現実は繋がってる。その人は私にとってきっと、大切な人だと思うから。いつか会えるんだろうと思うんだ。」
彼女はそう言って笑った。僕が戸惑っていると、桜のある曲がり角が見えてきた。
「そしたら、明日、楽しもうね。じゃあ、また明日。」
「うん!また明日!」
僕たちは手を振ると、それぞれの帰路についた。僕は家に帰り着くまでの間、先ほどの会話について考えていた。
(桜井さんは僕のこと、どう思っているんだろうか……。)
僕はそんなことを考えながら歩いていた。しかし、いくら考えても結論など出るはずはなく、モヤモヤとした気分のまま、家に着いた。
「こんにちは!」
「こんにちは。」
「いつもここでご飯食べてるの?」
「たまにだけどね。」
「私も同じだよ。」
彼女は僕の隣に来ると言った。
「今日は何食べるの?」
「今日は、サンドイッチかな。」
今日の昼ごはんは、朝、父さんが置いて行ってくれたサンドイッチだった。
「私と同じじゃん!私達気が合うね!」
「そうだね!」
僕は彼女が作ってくれたクッキーのことを思い出していた。あれは本当に現実だったのだろうか……。最近、夢と現実が交錯しすぎてしまい、何が現実で何が夢なのかわからなくなってきてしまっていた。あれももしかしたら夢だったのかもしれない……。僕は彼女に聞いてみることにした。
「ねえ……。」
「何?」
「前にさ、クッキー焼いたって言ってたよね……。」
「うん。それがどうしたの?」
「あ、い、いや、他にも何か作れるものあるのかなって思って。」
「まあ、簡単なものなら何でもできるよ!なんでも言ってみて?」
「じゃあさ、レモンケーキが食べたいな。」
「レモンケーキ?」
レモンケーキ。それは、昔、母さんがまだ元気だったころに作ってくれた、懐かしいお菓子だ。
あの時はとても甘くて美味しくて……。今でも忘れることができない味なのだ。
「うん。ダメかい?」
「レモンケーキ、私も大好きなんだ!今度作るから楽しみにしてて!」
彼女はニコッと笑った。その表情はまるで天使のような可愛らしさだった。僕は思わずドキッとしてしまった。彼女はそんな僕を見て言った。
「でも、どうして、急にそんなこと聞いたの?」
「えっと……、いや、なんとなく気になったから……」
「ふぅ~ん……。」
僕は慌てて取り繕ったが、彼女は不思議そうに僕を見つめていた。僕は恥ずかしくなり、顔を背けた。すると、いきなり後ろから声をかけられた。
「長嶋、ここにいたのか。」
平沢だった。彼はなぜか不機嫌そうな表情をしているように見えた。
「どうしたんだ?」
「長嶋、明日空いてるか?」
「えっ?」
突然の誘いに戸惑っている僕を見て、平沢は続けた。
「いや、明日男子たちてわりんくう鳴浜のショッピングモール行こうぜって話になってさ。それで、今色んな人を誘ってるところなんだよ。」
「誰が来るんだ?」
「えっと……まだそれは決まってないけど…まあ、決まりな!明日の朝10時に駅前集合だからよろしく!」
平沢は一方的にそう告げると、その場を立ち去った。僕は呆然としていたが、隣にいた桜井さんが話しかけてきた。
「ねぇ、今の人って、」
「同じクラスの平沢。」
桜井さんはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「あのさ……。」
僕は桜井さんの方を向くと、その真剣な眼差しを受け止めて、続く言葉を待つことにした。すると桜井さんは予想外の言葉を口にする。
「私も一緒に行きたいな。」
「え?」
僕は耳を疑った。
「だめ……?」
「いや、別に構わないと思うけど……。」
「ホント!?」
桜井さんは嬉しそうに笑った。その笑顔を見て、僕は断れなかった。
男子ばかりの遊びに転校生の桜井さんを誘うのはどうかと思ったが、平沢に伝えたところ、案の定すぐに返事が返ってきて、明日の予定が決まった。
放課後。僕は桜井さんと一緒に下校することにした。僕たちは2人で歩きながら会話をした。
「そういえば、桜井さんは部活とか入ってるの?」
「ううん。まだ何もやってないよ。」
「そうなんだ。じゃあ、どこか入りたいとこあるの?」
「今のところは考えてないけど、強いて言うなら、料理部に入りたいな!」
「料理部か。桜井さんにピッタリじゃんか。」
「そうかな?でもね……実はもう1つ理由があるんだ。」
「どんな理由?」
「それは……秘密です!」
桜井さんは悪戯っぽく笑うと、それ以上は何も言わなかった。僕は少し気になったが、あまりしつこく聞くのも悪いと思い、話題を変えることにした。
「そういえば、桜井さんってどうしてこの高校に来たの?」
「お父さんの仕事の都合でね。本当はもっと遠い学校に行く予定だったんだけど、お母さんがここが良いっていうから……。」
「へぇ……。」
僕は桜井さんの母親を思い出してみた。そう言えば、火事の時に桜井さんの両親に会ったんだった。なんだか少し無愛想で、僕の父さんよりも少し年上に見えた。そう考えていると、桜井さんが僕の方を向いて言った。
「あのね……私のお母さんのことなんだけどね……。」
「うん。」
「死んじゃったの。」
「えっ?」
僕は驚いた。彼女の母親とはつい数日前に会ったばかりなのだ。まさか彼女の母親が亡くなっていたとは……。僕は恐る恐る彼女に尋ねた。
「こんなこと、聞くの良くないと思うんだけどさ…、お母さん、いつ頃亡くなったの?」
「5年前。」
「……」
桜井さんになんて声をかけて良いか分からなくなってしまった。しかし、桜井さんはすぐに笑顔で話を続けた。
「大丈夫だよ!もう整理はついてるから!それに今はお父さん、再婚してて、お母さんもいるしね!」
「そっか……。」
あぁ、再婚されていたのか。この数日のうちの話かと思ってびっくりしてしまった。
今度は彼女の方が口を開く。
「あのね……。」
「うん……。」
「私、ずっと言いたかったことがあるの……。」
僕は緊張しながら次の言葉を待った。そして、彼女は意を決したように話す。
「クッキー、美味しいって言ってくれてありがとう!」
「ああ……。」
僕は思い出した。そうだった。僕はあの時、初めて桜井さんのお菓子を食べたんだ。美味しかったことを素直に褒めた。あの時はただそれだけのことだった。しかし、今こうして改めて言われると、照れ臭い気持ちになる。僕が照れていると、桜井さんは続けて言った。
「嬉しかったよ。」
彼女は俯き加減で言うと、頬を赤く染めていた。僕もつられて顔が熱くなるのを感じた。僕達はしばらくの間沈黙したままだった。しばらくして、桜井さんが何かに気付いたかのように、パッと顔を上げた。
「あっ!」
「どうしたの?」
「私ね、夢を見たの。」
「夢?」
「うん。不思議な夢なの……。」
「夢か……。」
「夢と現実は繋がっている。」
彼女は唐突にそう言った。僕は聞き返す。
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ。見えない何かで、ずっと繋がってる。」
彼女はニコッと笑って答えると、さらに続けた。
「どんな夢だったの?」
「誰かと話してる夢だった。」
「それって誰?」
「分からないんだ……。」
「ふぅ~ん……。」
僕は彼女が見たという夢のことを考えてみる。彼女と会話をする人物。彼女と繋がりのある人間……。それは一体誰なんだろう……。考えれば考えるほど謎が増えていくような気がする。そんなことを考えていると、彼女はクスッと笑って言った。
「私ね、その人が誰なのか、知ってるような気がするの。」
「えっ?」
「だって、夢と現実は繋がってる。その人は私にとってきっと、大切な人だと思うから。いつか会えるんだろうと思うんだ。」
彼女はそう言って笑った。僕が戸惑っていると、桜のある曲がり角が見えてきた。
「そしたら、明日、楽しもうね。じゃあ、また明日。」
「うん!また明日!」
僕たちは手を振ると、それぞれの帰路についた。僕は家に帰り着くまでの間、先ほどの会話について考えていた。
(桜井さんは僕のこと、どう思っているんだろうか……。)
僕はそんなことを考えながら歩いていた。しかし、いくら考えても結論など出るはずはなく、モヤモヤとした気分のまま、家に着いた。
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