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第11章 戦争

08 集まってきた敵さん?

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 テレスフィリアの西側で20万の兵が集結している。その知らせを受けた俺だが、ひとまずは監視するだけにとどめることにした。

「スニル、ダンクスから連絡が来て戦争終わったって」
「終わったか思ったよりも早かったな」
「兵数も士気もこっちが上だったからね。ダンクスによると、兵たちもうまくやってたみたいだし」
「そうか、それはよかった」

 シュンナが言っているのはテレスフィリアから派遣している獅子人族たちと他3国の人族の兵たちのことだ。懸念としてうちの兵たちは人族とうまくやれるのかと思っていたが、どうやら無事に問題なくやれたようだ。

「それじゃ戻るのは2~3週間ってとこか」
「そうね。ただダンクスにもこっちの状況は知らせてあるし、一応急いで戻るって書いてあったわよ」
「そうか、ならもう少し早いか」

 ダンクスも獅子人族たちも足は速いのでそんなにかからずに戻ってくるかもしれない。


 それから、約2週間、いや、1週間と少しといったところか、ダンクスから迎えに来てくれという連絡が届いた。

「というわけで、ちょっと行ってくる」
「……かしこまりました」

 俺がそういうと執事が何か言いたそうにしながらも送り出してくれる。

 どうしてこんな反応をするのかというと、単に俺がいちいち迎えに行くということに苦言を言いたいからだ。それはそうだろう、俺は魔王であり、この国のトップ、国家元首だ。そんな存在がわざわざ配下であるダンクスと獅子人族たちを出迎えに自ら行くというのは普通ならありえない。しかし、こればかりは仕方ないのあきらめてほしい。
 実は、このことは以前議会でも取り上げられたことがある。しかし、その有用性はわかるために何か代替え案がないかという話となった。その際に上がったのが魔族の中で”転移魔法”の使い手を育ててはとものがあったが、残念ながらこれは断念せざるを得なかった。というのも、”転移魔法”というのは”空間魔法”に属しており、まずこれに適性が必要になる。まぁ、それは俺の鑑定で数名発見することはできたのだが、問題として彼らが習得するまでにはいかなかった。なにせ、”転移魔法”は超超超といくつもつけたくなるほどに高難度魔法だからだ。

 では、少し”転移魔法”について説明しておこう。これは以前にも説明したかもしれないが、”転移魔法”は今現在地と転移先の空間座標を把握する必要がある。尤もこの座標は極点を起点とした絶対座標と自分を起点とした相対座標とあり、俺の場合は絶対座標を使っている。その理由は単純に”マップ”に依存しているからでしかない。しかし、通常の魔法使いであれば、相対座標を使うのが一般的となるわけだけど、この相対座標の把握というのが厄介だ。自分は0,0,0だからいいが、転移先の座標なんてものは不可能に近い、というか、それを導くために相当高レベルの計算をしなければらなくなる。それが一体どんな計算か、正直俺には全くわからないほどだ。また、たとえその計算がうまくいき”転移”できたとしても、そこに例えば石や壁などがあった場合、下手したらその中に、なんてことだって起こりえる。また、この魔法は消費魔力も大きく、普通の人間、魔族ですら足りない。
 結果、俺以外”転移魔法”を行使することが出来なかったわけだ。
 ちなみに俺の場合その面倒ごとはすべてメティスルがやってくれているので、”転移”するときは”マップ”で指定すればいいから楽なんだよ。

 そうした理由から結局俺以外は無理となった。それなら、以前カリブリンとゾーリン村をつないだ転移門を作ればいいのではとなるが、これはこれで、防衛やセキュリティーの問題でできなかった。
 それはそうだろう、以前のものは同じ国で近く、その存在は秘匿しているために問題はないが、それを公にそれも他国間となると防衛的にまずい。いくら同盟国といってもそれはあくまで今現在の話でありのちはわからない。例えば時世や統治者などが変わり、同盟が破棄される可能性だってある。そうなった際に転移門を使われたら夢見が悪すぎる。まぁ、俺がいる以上意味のない懸念なんだけどね。なぜかって、そりゃぁ俺は自前で”転移”できるからだよ。

 閑話休題。

「おう、スニル来たか」
「ああって、何してんだ?」

 転移でやってきたのはグラッツニール要塞の中庭、ダンクスたちとはここで待ち合わせている。本来なら最後の戦場となった要塞に行きたいところではあったが、俺はそこに行ったことがないうえ、わざわざそこに俺が迎えに行く必要もないためダンクスたちにはここまで戻ってきてもらったというわけだ。
 んで、やってきてさっそくダンクスを探したところ、何やら複数の兵たちに囲まれていた。何をしてるのかと思って覗いてみると、ダンクス対兵士5人で腕相撲をしていた。しかも必死な表情の兵たちに比べてダンクスはかなり余裕があるようだ。

「ちょっと暇でな。ちょっと待てよ今終わらす」
「くっ、くそっ、なんで動かねぇんだ」
「こっちは5人なんだぞ!」
「うごぉわぁ!」

 こうしてみると、いかにダンクスが規格外な力を持っているのがよくわかる。ちなみにダンクスは身体強化を使って射るわけではなく、純粋に地力がとんでもないだけだ。

「いよっと」
「うゎぁ!」

 ダンクスが少し力を入れると、4人が一斉に倒れこむ……兵士だって鍛えぬいているというのに、一体どれだけの力があるのか。ダンクスの人外としか思えない力にあきれる俺であった。

「待たせたな」
「いや、まぁいいけどよ。それで、帰る準備はできてんのか?」
「おう、出来てるぜ。ああ、でもよ。その前に俺たち以外も送ってもらいてぇんだ」
「?」

 ダンクスたち以外ってことは、もしかして他3国の兵士たちもってことか?

「テレスフィリアの現状から、なるべく急いで戻る必要が出てきたってことでな」
「そういうことか。確かに同盟に基づくとそうなるのか」
「そういうこった。まぁ俺としては申し訳ない気もするが」
「そうだな。せっかく戦争が終わったところだからな」

 ウルベキナでの戦争が終わったところで、今度はテレスフィリア、休む暇がない状態だ。まぁ、兵士たちであれば交代すればいいんだけど、将軍とかとなると替えが聞かないのでもしかしたら同じ人たちが来てくれる可能性が高い。ダンクスともそれなりに仲良くやっていたようだしな。

「そっか、まぁそういうことなら別に構わないが、それで俺はどうすればいいんだ」

 ダンクスたちだけならすぐにでも転移で戻ってもいいのだが、ほかの3国の兵たちともなると、それぞれと話す必要がある。

 てなわけでさっそくダンクスとともに将軍たちが居るという会議室へ向かいそれぞれの将軍と話をしたのだった。その結果やはり俺が転移でそれぞれを送るということになった。もちろん将軍たちはかなり恐縮していたが、その後のことを考えると、こっちの方が恐縮する。


 そうして、それぞれ送った後は当初の予定通りダンクスたちと一緒にテレスフィリアに戻ったのだった。


「おかえり」
「おう、帰ったぜ。それで、敵の様子はどうなんだ?」

 俺たちを出迎えたのはシュンナで、ダンクスはさっそく西側に集まった兵たちの様子を聞いている。

「変わらずよ。ただ、数が多いわね」
「どんだけ増えた?」
「昨日の情報だと、大体50万ぐらいにはなったみたいね」
「ご……それはまた、多いな」
「ほんとよね。しかもまだ増えそうなのよね」
「まじかっ!」

 この情報は俺も聞いていたので驚くことはなかったが、改めて聞いても多いと思う。

「なぁ、これってもしかして1つの国だけじゃないよな」
「たぶんね」
「だろうな」

 ダンクスが言うように俺も1つ国の兵士だけではないと思う。というのもさすがに1つの戦場に50万もの兵士を出すことはないと思えるからだ。

「レンテルン伯爵によれば、一国の軍総数は大体数十万程度、そう考えると50万が一国と考えてもおかしくはないんだが、防衛などの面を考えてもさすがに同一の戦場にそれだけの数をそろえることはないそうだ」

 ダンクスが言うようにさすがに国軍すべてを一か所に集めるということは考えられない。その理由はもちろんこの世界がまだ国際的なつながりが薄いためにあちこちで戦争が勃発している。そんな状態で全戦力を一か所に集めるなど、どう考えても正気ではない。

「やるとしても一個総軍、大体10万程度だそうだ」

 総軍というのは軍部隊の単位最上位のもので、その下に軍団、師団、旅団、連隊、大隊、中隊、小隊、分隊、班(一般的でコルマベイント、ブリザリア、ウルベキナ3国はこれを採用している)となる。尤も、総軍を動かすとなるとかなり珍しい事態となる。

「情報によると10万単位で増えてるような気がするから、たぶんその総軍が動いているってとこね。でもそうなるともしかして、すでに5つの国が動いているってことにならない」
「単純計算だとそうなるな」
「これって、もしかしなくてもあたしたちを狙った連合軍ってことよね」

 かつて、先代の魔王の時代、その暴走した魔王を討伐するために勇者を旗印に各国が連合軍を結成したという史実がある。それにより当時の魔族軍は壊滅、魔王もまた当時の勇者に討伐されている。今回もそのつもりで西側諸国が連合軍を結成したとみるしかない。

「でもよ、スニルが安全だってことは教皇が認めたんだよな」
「ああ、それは事実だな」
「まぁ、俺もその場にいたから知ってるけど、聖人ダンクスの末裔、その事実は教皇自体からもたらされたものだしなぁ」

 ダンクスが言うように俺がキリエルタ教において、聖人といわれるダンクスの末裔であるという事実を認めたのは、まぎれもない教皇本人となる。

「それなのに、どうして西側は軍を動かしたのかしら」
「さぁな」
「魔王というのはそれほど恐れられているってことじゃないか。まぁ、俺だってガキの頃から聞かされてたからなぁ」
「ああ、確かにあたしたちは今の魔王がスニルで、スニルのことはよく知ってるし、魔族だって最初は怖かったのよねぇ」

 今でこそダンクスとシュンナは魔族たちと問題なく接しているが、最初はかなりビビっていた。人族にとって魔族や魔王という存在はそれほど恐ろしいものということだ。

「つまり、教皇が認めようと俺が魔王を名乗り、魔族が存在しているという事実から動かしたというわけか」
「たぶんね」
「そう考えるのが自然か」
「それまた、厄介だな」
「んで、これからのことだが、どうすんだ?」

 どうして軍の展開が行われているのかの話が終わったところで、今後具体的にどうするかという話となる。

「まぁ、普通に考えて使者を送って、どういうことか聞くでいいと思うが……」
「問題は誰を使者にするか、ということか」
「そうなる」
「あたしが行ってもよかったんだけどね」

 この使者に関してはいくらかの議論が行われている。普通であれば兵や文官などといったもの達から選ぶものだが、今回の相手が人族となると話が変わってくる。例えば魔族を送った場合、姿を現したとたんに討伐対象とされる可能性がある。なにせ、人族の間では魔族というのは魔物と同等のもので見つけ次第討伐を推奨されているからだ。また、それ以外の獣人族、エルフ、ドワーフとなると、今度は捕まって奴隷の首輪をつけられてしまう。俺が改造した奴隷の首輪が出回っているのは東側だけで、西側にはまだ改造前のしかない。そう、つまり通常通りの使者では使者にならない。となるとここは同じ人族を送るべくとなってくるわけだが、これも問題があった。それというのもテレスフィリアにいる人族は、俺を筆頭にシュンナ、ダンクス、父さんと母さん、そして麗香、孝輔、那奈の3人。これで全部となるわけだが、まず麗香たちだが、確かに孝輔が勇者であり那奈が聖女である以上人族受けはいいので使者としてはもってこいだと思う。しかし、俺としては彼らを戦争にかかわらせる気はないし、何よりすでに俺のそばにいるという事実が知られているから、下手したら裏切り者扱いを受ける可能性がある。そうである以上それをやらせるのは俺の本意ではない。というわけで麗香たちは無となり、次に考えるのが両親、中身は確かに俺の親というだけあり大人だが、問題として見た目というか実年齢がまだ13と子供なんだよな。そんな両親を使者としたら、どう考えても馬鹿にしていると思われてしまうので使えない。となると、俺かシュンナ、ダンクスの3人しかいないが、俺は俺で魔王自ら使者に行くのはだめだろ、と方々から言われて断念。まぁ、俺も使者なんてできるとは思えないしな。となるとシュンナかダンクスとなるが、話をしているときダンクスはおらずシュンナしかいなかった。しかし、このシュンナも使者としては問題があった。
 というのも、西側に隣接している国であるバリアラータリョウ王国という国はシムサイトほどではないが女性蔑視があり、シュンナを使者として送ると、女を使者にするなんて馬鹿にしているのかとこれまた言われてしまう。そうなると消去法としてダンクス鹿いないんだよな。といってもこれまでダンクスはウルベキナに行っており当然使者としてはできない。そこで今まで様子を見つつダンクスの帰りを待っていたというわけだ。

「相手が相手だからな。シュンナは無理で、ほかも無理、となると」
「俺しかいないってわけか」
「そうなるな。立場的にはダンクスもおかしいんだけど、ほかがいない以上はな」
「そうね。一応誰かを連れて行ってくれる」
「おう、それは構わねぇが、だれをだ?」
「相手がだれかわかりやすくするためにも、魔族の誰かがいいだろうな」

 魔族が行けば当然相手から討伐対象として攻撃を受けるかもしれない。しかし、ダンクスと一緒ならいきなり攻撃をされるということはないだろう。

「それは構わないが大丈夫なのか?」
「魔族がいれば魔王の使者ってのが分かりやすいからな」
「確かにな。まぁ、俺が守ればいい話か。わかったぜ。それじゃ、適当に人選してさっそく行くとするか」
「おう、頼んだ」

 こうして俺たちはまず相手に使者を送り、事情を聴くことにしたのだった。
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