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第06章 獣人の土地
11 長い長い戦いの勝利
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ポリーを村へと送り届けてからさらに1か月が経過した。
「みんな、喜べ我々の勝利だ。これもすべてここにいるスニル殿のおかげだ」
そう言って叫んで言うのは族長である。
どういうことかというと、2~3日前から毎日のように来ていたハンターたちがめっきり現れなくなってきた。
こうしたことは今までの長い歴史上一度たりともなかったという、当初は何かの作戦だろうかという話題も上がり、より一層警戒をしていたんだが、今朝満を持して調査を行った。
といっても、俺たちが”転移”で様子を見に行っただけなんだが。
===============回想=======================
「ここに来るのも久しぶりだな」
「そうだよね。でも、なんかおかしくない」
「人が少ないな」
俺たちがやって来たのは、川の対岸にありハンターの拠点となっている国エイパール。一応俺たちもハンターの資格を持っているのでここら辺をうろうろしていても問題ないためにこうしてやって来たというわけだ。
「ここが奴らの……」
俺たちのほかにサーナの伯父であるグルトが一緒だ。俺たちもこの一か月でそれなりに信用は得ているが、様子を見るためにこうして獣人族代表としてグルトを連れてきたというわけだが、そのグルトはつくなりかなりの渋面を作っている。それはそうだろう、ここにいる奴らが彼の同胞を幾人もさらい、妹までさらったのちに殺した連中なんだからな。
「おとなしくしてろよ。暴れると面倒だからな」
「わかってる」
「でもさ、これどういうことかな。あたしちょっとギルドに行ってみるよ」
「ああ、そうだな」
本来なら俺たち全員で行ってもいいんだが、なにせグルトがいるために下手なことができない。
そうして、少し待っているとギルドからシュンナが出てきた。
「おう、どうだった?」
「う、うん、なんていうかさ」
シュンナが少し言いよどんでいるように見える。何かあったのだろうか?
「誰もいなかったんだよね」
「はっ?」
「いない? どういうことだ?」
今はまだ午前中船だってまだ出ていないから、本来なら多くのハンターたちがギルド内に集まっているはずだ。それなのに誰もいないってどういうことだ。
「おい、お前らもしかしてハンターか」
「えっ、ああ、そうだけど」
突如そんな声をかけられた。声をかけてきたのは何やら薄汚れた男だった。
「その様子だと知らないみたいだけど、もしかしてお前ら他所言ってたのか」
「まぁな。それで何かあったのか?」
ダンクスは調子を合わせて男から情報を聞き出そうとしている。
そのおかげで情報をゲットすることができた。それによると、異変が起き始めたのは数か月前、奴隷の首輪の中に不良品が紛れ込んできた。この不良品は間違いなく俺が改造した後に製造されたものだろう。んで、この男がなぜそこまで知っているのかというと、この男はなんと元ハンターギルドの職員で奴隷の首輪の仕入れ担当責任者だったそうだ。尤も、その不良品の数が無視できないレベルで増えてきたところで責任を取らされてクビになったようだ。そう聞くと俺が改造したことでこの男の人生を狂わせることになったということとなったわけだ。とはいえ俺としては悪いことをしたという罪悪感は全く沸いてこない。それはそうだろうこの男のようにハンターというのはなんの罪とがもない、ただ人族ではないというだけで奴隷にしてもいいということはない。
それはともかく、その不良品が出回りだして、ハンターたちに多くの犠牲が出てきていた。そんな中、始まったのがせっかく奴隷の首輪をハメたにもかかわらず突如大音量の音が流れることが度々発生するようになった。そのせいで、周囲から敵が集まって来て殺された者や、命からがら逃げかえってきたものたちが続出したという。もちろんその大音量も俺が作った警報の魔道具のことだ。
とまぁ、そんな風にハンターたちが被害を受ける出来事が後を絶たなくなってきたためにハンターたちは1人1人と徐々に減っていき、ついに一昨日最後のハンターが姿を消したことを受けて昨日、ギルドの閉鎖と相成ったそうだ。
「つまり、もうハンターは誰もいないってことか」
「そうなるな。だからお前らも別の場所に行った方がいいぜ。あの森に沿って行けばここみたいなギルドもまだあるしな」
「そうか、ありがとよ」
「いいってことよ。じゃぁな」
そう言って男は去っていったが、あの男はこの後どうするんだろうか。まぁ、やっていたことを考えるとどうでもいいと言えばそうなんだけどな。
「そっか、ここは誰もいないんだね」
「あ、ああ、だが、本当に、本当にいなくなったのか」
グルトが信じられないというようにつぶやいているが、俺としては本当のことだという確信がある。
シュンナが誰もいないといったこともそうだが、何よりさっき”探知”を使った際に本当に誰もいないということが分かったからだ。
「まぁ、グルトからしたら信じられないかもしれないが、嘘はついてないと思うぜ。というかその意味がないからな」
「そうね。あたしたちは人族でありハンターと名乗ったわけだからね。グルトだって今は不本意かもしれないけれど人族の姿でしょ。それなら、あの人が嘘をつく理由はないわよ」
現在グルトはサーナに施していたように人族への変装の魔道具を身に着けてもらっている。本人としてはかなり嫌がったが、そうするとここに来ることはできないし来たとしてもより嫌な思いをする羽目になるという説得の元に身に着けているわけだ。
「それで、これからどうする村に戻るか」
ここに居ても仕方ないとダンクスが言う。
「もう少し調べてからにしましょう」
「そうすっか」
シュンナの提案でもう少しここエイパールを調べることになり、あたりを歩き回り情報を集めていった。その結果間違いなくハンターギルドは閉鎖し、ハンターたちはみないなくなったこと、何よりここエイパール自体が国として滅んだということだった。
「それじゃ、今後は俺たちはもうハンターたちに襲われずに済むということか」
グルトがそう言って体を震わせている。
「そういうことだな。といってもハンターってやつらはここ以外にもいるらしいからな。そいつらが暴れているだろうが」
「それも、多分シムサイトから奴隷の首輪を買っているのよね。だとしたら、ここと同じようなものじゃないかな」
シュンナの言う通り、奴隷の首輪の製造はそう簡単なものではないだから普通に考えるとあの製造をしているのはシムサイトのみではないかという思う。もしそうだとすれば今後ハンターと呼ばれる連中はこの世界から完全に姿を消すことになるわけだ。尤も、それはあくまで俺の希望でありもしかしたらほかにも奴隷の首輪を作っているところがあっても不思議ではない。
「まっ、様子見だな」
俺は一人そうつぶやいたのだった。それから、俺たちはこれ以上ここに居ても仕方ないというわけで集落へと戻ったのであった。
===============回想終わり======================
とまぁ、そういうわけで俺が行ったことでこの辺りのハンターたちが撤退したことは事実。そのことを族長が高々に宣言した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぅ」
その瞬間この場にいた獣人族たちが一斉に沸いたのだった。彼らにとって長年の悩みが解決したことになるわけだから当然と言えば当然だな。そして、その一番の功労者となった俺は今現在多くの獣人族たちから喝さいを受けている。
「スニル、ありがとうよ」
「本当に本当にありがとう」
「スニルのおかげだよ」
「……俺は自分のやりたいことをしただけだ」
俺は昔からこうして感謝されるのがあまり好きではない。というか俺が何かをするにしてもそれらは常に自分がそうしたいからであり、感謝などの見返りを求めてのことではない。だから感謝されても困るだけとなる。しかしまぁ、だからと言って感謝を受け取らないといういのはさすがに無粋が過ぎる。というわけで素直にその感謝を受け取ることにした。といっても、黙ってうなずくだけだが。
「はははっ、スニルは相変わらずだなぁ。おい」
「ほんと、おとなしいよね」
「でも、かわいいからいいんじゃない」
前世の俺だったら、ただただ根暗な男と言われるだけであった、それは俺の前世が特に変哲のない顔をしていたからでしかない。しかし、今の俺は村一番の美少女と言われた母さんと同じ顔をしており、結構整った顔をしている。そのおかげでこのような同じ性格でも全く異なる評価を得ることができているというわけだ。
「さぁ、皆今宵は宴会だ。飲んで、食べ、大いに騒ごうじゃないか」
族長の言葉が乾杯の音頭となったようで、その場にいた皆が一斉に手に持っていた杯をあおったのだった。
こうして始まった宴会だが、朝から始まり夜まで続いたわけだが、残念ながら俺は途中で眠ってしまったのでいつまで続いたからわからない。そう思いながらテントを出た瞬間あまりの光景に絶句した。
「おっ、なんだスニル、起きたのかぁ」
「ホントだ。こっち来なよ」
……まだ、宴会は続いていた。大人たちはいまだに飲んでおり、ていうか一晩中飲んでいたのだろうか、かなり酔っ払っているし何より酒臭い。
「……まだ、続いていたんだな」
「おう、スニルか。まぁな」
「ふふっ、それだけみんなうれしいことなのよ」
宴会の輪の中にいるダンクスとシュンナを見つけて、その隣に座って目の前にあったものを朝食として食べながらつぶやくと2人がそう答えたのだった。
とまぁ、その日には終わるだろうと呆れつつもまたもや参加していたんだが、結局その日も終わらず夜となり俺は眠りについた。そうして、翌日、再び俺は絶句した。ていうかまだやってんのかよっ!
さすがに突っ込まずにはいられない。とはいえ、突っ込んだところでこの宴会が止まるわけでもなくその日も夜まで続いたのだった。
まさか、宴会が三日三晩続けられるとは思ってもみなかった。
俺たち子供組は夜になると寝ていたが、大人たちの一部は三日間徹夜で騒いでいたらしい。さすが獣人族体力がとんでもないな。というかそれに付き合い続けたダンクスとシュンナがおかしい。
とまぁ、そんな宴会が行われてから1週間が過ぎた。
「お前ら遠くまで行くんじゃないぞ」
「はーい」
「いこっ、スニル」
ハンターが来なくなったことで集落の子供たちが外で遊べるようになった。といっても動物や魔物が居たりするので一応集落から離れないようにと言われている。んで、それはいいんだけどなぜか子供たちが俺を強制的に連れ出すんだよなぁ。これまでは俺も魔道具作りで引きこもることができたんだけど、今はその必要もないからってことで、子供らしく遊べということらしい。
いや、俺もう14なんだけど……
そんな言葉を無視されて見た目だけで遊ばされているというわけだ。
「スニル、あきらめろ」
「たまにはいいんじゃない」
もちろん現在12歳である父さんと母さんも一緒だ。2人は前世の記憶があるとはいえまぎれもなく子供であるからこうして遊ぶことにそこまで抵抗がない。というか俺の場合性格もあると思うんだけどな。
でも、考えてみるとこうして何も考えずにただただ馬鹿みたいに、時には泥んこになって遊ぶなんてことは、前世のまだ純粋な子供だった頃以来だよなぁ。そう考えると確かにたまにはいいか。
そう言うことで童心に帰って遊んでいる。
「おおう、いたいたスニルー」
遊んでいると突如そんな声が聞こえてきた。呼ばれたそっちを見てみると、そこにいるのはブレイスだった。このブレイスは族長の息子でこれまではハンターたちと戦う戦士たちを束ねる立場だった男だ。そのブレイスが俺を呼びに来たようだ。
「あっ、ブレイス兄ちゃんだ」
「なになに、スニルにようじ」
「おう、ってまとわりつくんじゃねぇって」
ブレイスは戦士だったこともあってから口は悪いが子供たちから大人気で、子供たちも見つけるこうして群がっていく。
「それで」
「お、おう、親父が呼んでる。うちに来いってよ」
「族長が」
まとわりつかれているのを助けるわけではないが、話が進まないので用事を尋ねると族長が呼んでいるという、一体何の用だろうか。そう思いながらも子供たちにまとわりつかれているブレイスを置いて歩き出す。
「お、おい、俺を助けてから行けよ」
「……無理?」
「あっ、おい」
ブレイスから助けを求められたが、俺にどうしろというのだろうか。一応父さんと母さんに目配せをしてからその場を立ち去った。まぁ、2人が子供たちを誘導してて透けるだろ。
というわけで、やって来た族長の家である。
「あらっ、スニル君ごめんね急に来てもらって」
「別に、構わない。それで?」
「ええ、とにかく入って」
族長の家に着くとまず出てきたのはメリルさんで、用事を聞いてみると話は中でするようだ。
「東の、なぜ人族の子供が!」
俺が族長の家の応接室へ着くとそこにはすでに先客がおり、俺を見つけるなりそう言って怒鳴っている。
「落ち着きなさい。確かに彼は人族ではあるが、ここ東獣人族の恩人なんだ」
「恩人? それはどういうことだ」
怒鳴った人物は見たことないからどうやらこの集落の人間ではないようだが、何だろうか東とかって。
「さっき話した魔道具の作りてこそ彼なんだ。あと、この村に設置されている結界も彼の仕事だ」
「馬鹿なっ! こんな子供が!」
ええと、何だろうか。よく状況が分からないんだけど……
「そうだ。確かにスニルの見た目は子供だが、魔法関連に関しては天才だ。我等では思いもよらないことをあっさりと成してしまう。実際奴隷の首輪をいともたやすく外して見せてくれたんだ」
「馬鹿なっ!! あ、あれは一度漬けたら二度と外せないはずだ」
……
何やら俺を放置して族長と男が言い合いを始めてしまった。ええと、俺は帰っていいかな。
「みんな、喜べ我々の勝利だ。これもすべてここにいるスニル殿のおかげだ」
そう言って叫んで言うのは族長である。
どういうことかというと、2~3日前から毎日のように来ていたハンターたちがめっきり現れなくなってきた。
こうしたことは今までの長い歴史上一度たりともなかったという、当初は何かの作戦だろうかという話題も上がり、より一層警戒をしていたんだが、今朝満を持して調査を行った。
といっても、俺たちが”転移”で様子を見に行っただけなんだが。
===============回想=======================
「ここに来るのも久しぶりだな」
「そうだよね。でも、なんかおかしくない」
「人が少ないな」
俺たちがやって来たのは、川の対岸にありハンターの拠点となっている国エイパール。一応俺たちもハンターの資格を持っているのでここら辺をうろうろしていても問題ないためにこうしてやって来たというわけだ。
「ここが奴らの……」
俺たちのほかにサーナの伯父であるグルトが一緒だ。俺たちもこの一か月でそれなりに信用は得ているが、様子を見るためにこうして獣人族代表としてグルトを連れてきたというわけだが、そのグルトはつくなりかなりの渋面を作っている。それはそうだろう、ここにいる奴らが彼の同胞を幾人もさらい、妹までさらったのちに殺した連中なんだからな。
「おとなしくしてろよ。暴れると面倒だからな」
「わかってる」
「でもさ、これどういうことかな。あたしちょっとギルドに行ってみるよ」
「ああ、そうだな」
本来なら俺たち全員で行ってもいいんだが、なにせグルトがいるために下手なことができない。
そうして、少し待っているとギルドからシュンナが出てきた。
「おう、どうだった?」
「う、うん、なんていうかさ」
シュンナが少し言いよどんでいるように見える。何かあったのだろうか?
「誰もいなかったんだよね」
「はっ?」
「いない? どういうことだ?」
今はまだ午前中船だってまだ出ていないから、本来なら多くのハンターたちがギルド内に集まっているはずだ。それなのに誰もいないってどういうことだ。
「おい、お前らもしかしてハンターか」
「えっ、ああ、そうだけど」
突如そんな声をかけられた。声をかけてきたのは何やら薄汚れた男だった。
「その様子だと知らないみたいだけど、もしかしてお前ら他所言ってたのか」
「まぁな。それで何かあったのか?」
ダンクスは調子を合わせて男から情報を聞き出そうとしている。
そのおかげで情報をゲットすることができた。それによると、異変が起き始めたのは数か月前、奴隷の首輪の中に不良品が紛れ込んできた。この不良品は間違いなく俺が改造した後に製造されたものだろう。んで、この男がなぜそこまで知っているのかというと、この男はなんと元ハンターギルドの職員で奴隷の首輪の仕入れ担当責任者だったそうだ。尤も、その不良品の数が無視できないレベルで増えてきたところで責任を取らされてクビになったようだ。そう聞くと俺が改造したことでこの男の人生を狂わせることになったということとなったわけだ。とはいえ俺としては悪いことをしたという罪悪感は全く沸いてこない。それはそうだろうこの男のようにハンターというのはなんの罪とがもない、ただ人族ではないというだけで奴隷にしてもいいということはない。
それはともかく、その不良品が出回りだして、ハンターたちに多くの犠牲が出てきていた。そんな中、始まったのがせっかく奴隷の首輪をハメたにもかかわらず突如大音量の音が流れることが度々発生するようになった。そのせいで、周囲から敵が集まって来て殺された者や、命からがら逃げかえってきたものたちが続出したという。もちろんその大音量も俺が作った警報の魔道具のことだ。
とまぁ、そんな風にハンターたちが被害を受ける出来事が後を絶たなくなってきたためにハンターたちは1人1人と徐々に減っていき、ついに一昨日最後のハンターが姿を消したことを受けて昨日、ギルドの閉鎖と相成ったそうだ。
「つまり、もうハンターは誰もいないってことか」
「そうなるな。だからお前らも別の場所に行った方がいいぜ。あの森に沿って行けばここみたいなギルドもまだあるしな」
「そうか、ありがとよ」
「いいってことよ。じゃぁな」
そう言って男は去っていったが、あの男はこの後どうするんだろうか。まぁ、やっていたことを考えるとどうでもいいと言えばそうなんだけどな。
「そっか、ここは誰もいないんだね」
「あ、ああ、だが、本当に、本当にいなくなったのか」
グルトが信じられないというようにつぶやいているが、俺としては本当のことだという確信がある。
シュンナが誰もいないといったこともそうだが、何よりさっき”探知”を使った際に本当に誰もいないということが分かったからだ。
「まぁ、グルトからしたら信じられないかもしれないが、嘘はついてないと思うぜ。というかその意味がないからな」
「そうね。あたしたちは人族でありハンターと名乗ったわけだからね。グルトだって今は不本意かもしれないけれど人族の姿でしょ。それなら、あの人が嘘をつく理由はないわよ」
現在グルトはサーナに施していたように人族への変装の魔道具を身に着けてもらっている。本人としてはかなり嫌がったが、そうするとここに来ることはできないし来たとしてもより嫌な思いをする羽目になるという説得の元に身に着けているわけだ。
「それで、これからどうする村に戻るか」
ここに居ても仕方ないとダンクスが言う。
「もう少し調べてからにしましょう」
「そうすっか」
シュンナの提案でもう少しここエイパールを調べることになり、あたりを歩き回り情報を集めていった。その結果間違いなくハンターギルドは閉鎖し、ハンターたちはみないなくなったこと、何よりここエイパール自体が国として滅んだということだった。
「それじゃ、今後は俺たちはもうハンターたちに襲われずに済むということか」
グルトがそう言って体を震わせている。
「そういうことだな。といってもハンターってやつらはここ以外にもいるらしいからな。そいつらが暴れているだろうが」
「それも、多分シムサイトから奴隷の首輪を買っているのよね。だとしたら、ここと同じようなものじゃないかな」
シュンナの言う通り、奴隷の首輪の製造はそう簡単なものではないだから普通に考えるとあの製造をしているのはシムサイトのみではないかという思う。もしそうだとすれば今後ハンターと呼ばれる連中はこの世界から完全に姿を消すことになるわけだ。尤も、それはあくまで俺の希望でありもしかしたらほかにも奴隷の首輪を作っているところがあっても不思議ではない。
「まっ、様子見だな」
俺は一人そうつぶやいたのだった。それから、俺たちはこれ以上ここに居ても仕方ないというわけで集落へと戻ったのであった。
===============回想終わり======================
とまぁ、そういうわけで俺が行ったことでこの辺りのハンターたちが撤退したことは事実。そのことを族長が高々に宣言した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぅ」
その瞬間この場にいた獣人族たちが一斉に沸いたのだった。彼らにとって長年の悩みが解決したことになるわけだから当然と言えば当然だな。そして、その一番の功労者となった俺は今現在多くの獣人族たちから喝さいを受けている。
「スニル、ありがとうよ」
「本当に本当にありがとう」
「スニルのおかげだよ」
「……俺は自分のやりたいことをしただけだ」
俺は昔からこうして感謝されるのがあまり好きではない。というか俺が何かをするにしてもそれらは常に自分がそうしたいからであり、感謝などの見返りを求めてのことではない。だから感謝されても困るだけとなる。しかしまぁ、だからと言って感謝を受け取らないといういのはさすがに無粋が過ぎる。というわけで素直にその感謝を受け取ることにした。といっても、黙ってうなずくだけだが。
「はははっ、スニルは相変わらずだなぁ。おい」
「ほんと、おとなしいよね」
「でも、かわいいからいいんじゃない」
前世の俺だったら、ただただ根暗な男と言われるだけであった、それは俺の前世が特に変哲のない顔をしていたからでしかない。しかし、今の俺は村一番の美少女と言われた母さんと同じ顔をしており、結構整った顔をしている。そのおかげでこのような同じ性格でも全く異なる評価を得ることができているというわけだ。
「さぁ、皆今宵は宴会だ。飲んで、食べ、大いに騒ごうじゃないか」
族長の言葉が乾杯の音頭となったようで、その場にいた皆が一斉に手に持っていた杯をあおったのだった。
こうして始まった宴会だが、朝から始まり夜まで続いたわけだが、残念ながら俺は途中で眠ってしまったのでいつまで続いたからわからない。そう思いながらテントを出た瞬間あまりの光景に絶句した。
「おっ、なんだスニル、起きたのかぁ」
「ホントだ。こっち来なよ」
……まだ、宴会は続いていた。大人たちはいまだに飲んでおり、ていうか一晩中飲んでいたのだろうか、かなり酔っ払っているし何より酒臭い。
「……まだ、続いていたんだな」
「おう、スニルか。まぁな」
「ふふっ、それだけみんなうれしいことなのよ」
宴会の輪の中にいるダンクスとシュンナを見つけて、その隣に座って目の前にあったものを朝食として食べながらつぶやくと2人がそう答えたのだった。
とまぁ、その日には終わるだろうと呆れつつもまたもや参加していたんだが、結局その日も終わらず夜となり俺は眠りについた。そうして、翌日、再び俺は絶句した。ていうかまだやってんのかよっ!
さすがに突っ込まずにはいられない。とはいえ、突っ込んだところでこの宴会が止まるわけでもなくその日も夜まで続いたのだった。
まさか、宴会が三日三晩続けられるとは思ってもみなかった。
俺たち子供組は夜になると寝ていたが、大人たちの一部は三日間徹夜で騒いでいたらしい。さすが獣人族体力がとんでもないな。というかそれに付き合い続けたダンクスとシュンナがおかしい。
とまぁ、そんな宴会が行われてから1週間が過ぎた。
「お前ら遠くまで行くんじゃないぞ」
「はーい」
「いこっ、スニル」
ハンターが来なくなったことで集落の子供たちが外で遊べるようになった。といっても動物や魔物が居たりするので一応集落から離れないようにと言われている。んで、それはいいんだけどなぜか子供たちが俺を強制的に連れ出すんだよなぁ。これまでは俺も魔道具作りで引きこもることができたんだけど、今はその必要もないからってことで、子供らしく遊べということらしい。
いや、俺もう14なんだけど……
そんな言葉を無視されて見た目だけで遊ばされているというわけだ。
「スニル、あきらめろ」
「たまにはいいんじゃない」
もちろん現在12歳である父さんと母さんも一緒だ。2人は前世の記憶があるとはいえまぎれもなく子供であるからこうして遊ぶことにそこまで抵抗がない。というか俺の場合性格もあると思うんだけどな。
でも、考えてみるとこうして何も考えずにただただ馬鹿みたいに、時には泥んこになって遊ぶなんてことは、前世のまだ純粋な子供だった頃以来だよなぁ。そう考えると確かにたまにはいいか。
そう言うことで童心に帰って遊んでいる。
「おおう、いたいたスニルー」
遊んでいると突如そんな声が聞こえてきた。呼ばれたそっちを見てみると、そこにいるのはブレイスだった。このブレイスは族長の息子でこれまではハンターたちと戦う戦士たちを束ねる立場だった男だ。そのブレイスが俺を呼びに来たようだ。
「あっ、ブレイス兄ちゃんだ」
「なになに、スニルにようじ」
「おう、ってまとわりつくんじゃねぇって」
ブレイスは戦士だったこともあってから口は悪いが子供たちから大人気で、子供たちも見つけるこうして群がっていく。
「それで」
「お、おう、親父が呼んでる。うちに来いってよ」
「族長が」
まとわりつかれているのを助けるわけではないが、話が進まないので用事を尋ねると族長が呼んでいるという、一体何の用だろうか。そう思いながらも子供たちにまとわりつかれているブレイスを置いて歩き出す。
「お、おい、俺を助けてから行けよ」
「……無理?」
「あっ、おい」
ブレイスから助けを求められたが、俺にどうしろというのだろうか。一応父さんと母さんに目配せをしてからその場を立ち去った。まぁ、2人が子供たちを誘導してて透けるだろ。
というわけで、やって来た族長の家である。
「あらっ、スニル君ごめんね急に来てもらって」
「別に、構わない。それで?」
「ええ、とにかく入って」
族長の家に着くとまず出てきたのはメリルさんで、用事を聞いてみると話は中でするようだ。
「東の、なぜ人族の子供が!」
俺が族長の家の応接室へ着くとそこにはすでに先客がおり、俺を見つけるなりそう言って怒鳴っている。
「落ち着きなさい。確かに彼は人族ではあるが、ここ東獣人族の恩人なんだ」
「恩人? それはどういうことだ」
怒鳴った人物は見たことないからどうやらこの集落の人間ではないようだが、何だろうか東とかって。
「さっき話した魔道具の作りてこそ彼なんだ。あと、この村に設置されている結界も彼の仕事だ」
「馬鹿なっ! こんな子供が!」
ええと、何だろうか。よく状況が分からないんだけど……
「そうだ。確かにスニルの見た目は子供だが、魔法関連に関しては天才だ。我等では思いもよらないことをあっさりと成してしまう。実際奴隷の首輪をいともたやすく外して見せてくれたんだ」
「馬鹿なっ!! あ、あれは一度漬けたら二度と外せないはずだ」
……
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