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第05章 家族

08 サーナの成長と呼び出し

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 テントの増築をすることとなり、ルンボーテで材料などを買いこんだのち、南門から出てしばらく歩いたところでテントを取り出し工事開始である。
 まず最初に取り掛かったのは、リビングの壁を一部壊して両親の部屋へ入り口を開ける。
 そのため壊すといっても派手にではなく扉の大きさに合わせて鋸などを使ってのものとなる。これは、主にダンクスと父さんが行うことになる。俺もやりたいところだが、場所が狭いために俺の作業スペースがない上に危ないからといって両親から止められた。俺としては全く危なくないんだが、両親にとってはそう思うのだろうか。
 まぁ、それはともかく扉分を破壊するだけだからすぐに終了した。

「よしっ、あとはスニル頼むぜ」
「おう、待ってろ今やる」

 ダンクスと父さんが壁を壊したところで、俺の出番となる。こればかりは俺じゃなければできない。というわけで魔石を設置してあるリビングの床下を開けて魔石をあらわにさせた。

「それは?」
「この魔石に魔法式を刻むことでテントを魔道具にしているんだ。だから、これの魔法式を書き換えることでこの空間を広げるんだっと、よしっ、いいぞ」

 母さんに説明しつつ魔法式から空間の広さを表す部分を探してそこを書き換えた。

「おう、それじゃ始めるか」
「ああ、そうだな」
「どのくらいの広さにする。ていうか、かなり広くなってるな」
「今までの倍の広さにしたからな。今回は空間内に作業場を作って、そこで作業してくれ」

 前回はテントの外で木材を加工してから、テント内に運んでからの作業だったから結構面倒だった。だから今回は空間の広さをさらに広げて作業を中でできるようにしたというわけだ。まぁ、それ以外にも倍のほうが魔法式としては簡単になるというのもあったりするんだけどな。なにせ、倍にするわけだが記述に”X2”と書けばいいだけだしな。

「すごいわね。スニル、本当にすごいわ」
「全くだ。俺たちの子とは思えねぇな」

 またもや父さんと母さんが俺をほめながら頭をなでてくる。くすぐったいからやめてもらいたいんだけど。

「んで、広さはどうすんだ。2人用だと俺たちと同じってわけにはいかないだろ」
「私たちはそれでいいとは思うけれど」
「ああ、俺もそれで構わないぞ。俺たちだけ広い部屋ってのな」
「それは気にしなくていいよ。俺たちの部屋は1人部屋ということで作ったから、そうだなぁ。俺たちの1.5ぐらいでいいんじゃないか」

 父さんと母さんは俺たちと同じでいいというが、それだと2人では少し手狭だから俺たちの1.5倍ぐらいの大きさでいいと思う。

「そうね。それぐらいあったほうがいいと思う、いくら夫婦といってもものはあるだろうし、たまにはスニルも一緒に寝たら」
「あらっ、いいわね」
「いや、俺はほらもう14だし」
「あははっ、確かに14の息子が親と一緒にってのもさすがにないな」
「そうそう」

 父さんはよくわかっているようで、助かるが母さんは少しつまらなそうだ。いや、そんな目で見ても、勘弁してくれ。

「まっ、まぁ、それはおいておいて、さっそく始めようぜ」
「おっ、そうだな」

 こうして、俺とダンクス、父さんの3人で取り出した木材を鋸などで加工を始めたのだった。ちなみに俺が刃物を持つたびに母さんがひやひやしながら見ているが、父さんはうまいなと言ってくれた。


「ヒュリック、スニル、そっちを持ってくれ」
「おう」
「任せろ」

 木材の加工が終わり、いよいよ建築となるわけでまずは俺が土魔法で作った基礎の上にこの木材を並べてつなげていく、ええとこれはなんていうのかわからないが、この基礎の上に並べた木材の上に柱などを組んでいくわけだ。まぁといってもこの木材もそれなりに太いものを使っているので結構思い、ダンクスなら1人で問題なく運べるが俺と父さんは子供のために2人でエッコらと運ぶ。まぁ、子供といっても父さんは神様から転生特典としてステータスの大幅向上をもらっているので、子供でも難なく持てるし、俺の場合は見た目通り力はないが魔法の身体強化を使えば問題なく持てるというわけだ。

「よし、この辺りだな。スニル下ろすぞ」
「わかった」
「ふふっ、いいわね。こういうの」
「なにが?」
「こうしてヒュリックとスニルが一緒に何かを作っているのがよ」
「ああ、そうだね。確かに父子って感じでいいよね」
「でしょ。まぁ、見た目は兄弟みたいだけど」
「スニルのほうが下でね」
「年は俺のほうが上なんだけど」

 母さんとシュンナがサーナの面倒を見ながら、こっちを見てそんな会話をしているので俺は思わず突っ込んだ。

「はははっ、いいじゃねぇか、そもそもお前が息子だろ」
「それは、まぁ、確かだな」

 とまぁ、そんな会話をしながら俺たちは楽しく増築をしていったのであった。

「キュイー」
「んっ、なんだ?」
「鳥?」

 作業をしているとテントの外からそんな鳴き声が響いてきた。あの声はもしかして、そう思った俺はテントから出た。するとそこにいたのはサンダーバードだった。

「えっ、サンダーバード?」
「なんで、こんなところに?」

 父さんと母さんは知らないためにいきなり現れたサンダーバードに驚き臨戦態勢を取った。

「大丈夫だよ2人とも、あれはポリーの召喚獣でリーフだ。リーフ、ポリーからの手紙か?」
「キュイー、キュイー」

 リーフは幾度となく俺に手紙を届けてくれているだけあり俺にもすっかりなついており、俺に甘えてきた。

「悪いな。よしっと、それじゃリーフほらご褒美だぞ」
「キュイー」

 ご褒美の餌をやるとさらに甘えてきて、それから少ししてから飛びだって言った。

「それにしてもポリーちゃん召喚魔法が使えるのね」
「ああ、適性があったから教えたんだ。今じゃ、リーフは村中からもかわいがられて、村のペット状態になっているよ」
「へぇ、そうなのね」

 母さんは感心しきりだ、それはそうだろう召喚魔法というのはそう簡単なものじゃない、早々覚えられるものじゃないからな。

「それで、ポリーちゃんはなんて?」

 母さんはポリーがどんな手紙を出してきたのか気になってきたようでそわそわしながら聞いてきた。いや、そんな風な手紙じゃないから。

「さぁ、いつもは近況報告とか俺のこと聞いてきたりってとこだな」

 そう言いながらリビングへと戻って来て、すぐさま手紙を開けた。部屋で開けないのは別に隠すような手紙ではないからだ。

「なになに、ああ、いつものだな。見る?」
「いいの?」
「いいよ。特に妙なことが書いてあるわけじゃないし、ていうか今の村のことだし2人も気になるでしょ」
「ま、まぁね」

 それから、少し休憩がてら父さんと母さんもポリーからの手紙を読んでいく。ていうかこの手紙、以前は俺のことを聞くようなことが書かれていたが、最近の手紙にはサーナがどうしているかとか、そんなことばかりが書かれている。このことを言うと、父さんが納得したように言った。

「女ってのは、子供ができると旦那のことは二の次になるからなぁ。実際ミリアもお前が生まれるまではいろいろ俺を気にかけてくれたが、生まれた途端俺のことを邪魔扱いしてくることもあったからな」

 と、母さんに聞こえないように小声で言ってきた。なるほど、確かにそれはあるかもなまぁ、それに関しては俺もなんとなく想像はできる。そりゃぁ、旦那よりも子供だろう。いやいや、俺は別にポリーの旦那じゃないんだが。まぁ、それはいいとして、休憩も終わりそろそろ作業を再開しようと思う。

「さて、そろそろ再開すっか」
「だな、まぁ、焦ることでもない気がするが」

 俺たちの旅は特に急ぐというわけでもないために、ここはゆっくり確実な建築をしても問題ない。

「そうだな。まぁ、俺たちの部屋だが」
「このまま親子3人でってのも魅力があるのよね」
「そうだな」

 父さんと母さんとしては俺を含めた親子3人で過ごすということも捨てがたいということだろう。

「まぁ、そこは部屋ができたとしても3人で過ごす日があってもいいんじゃないかな」

 ここでシュンナがそう言った提案をした。まぁ、確かに部屋ができたからといって必ずしも自分の部屋で過ごさなければならないということはない。

「それもそうだな」
「そうね」
「まっ、なんにせよ。始めようぜ」
「だな」
「おう、引き続き頼むぞダンクス」
「お願いねダンクス」
「だっくす」

 最後の言葉が聞こえた瞬間俺たちの時が止まった。

「……」

 ……今、最後のしゃべったのって、まさか、サーナ。

「……ねっ、ねぇ、今のって、まさか」
「……おっ、おう、聞き間違いじゃねぇよな」
「たぶんな」

 シュンナとダンクス、俺は3人が3人とも機械仕掛けのようにベビーベッドにいるサーナに注視した。

「サ、サーナが、しゃべったよね」
「ああ、間違いない」
「ダンクスの名前だったよな」
「う、うん」

 わなわなと震える俺たち3人と、それを懐かしそうに見ている父さんと母さん問う言う構図である。

「きゃー、サーナ、すごい、すごい!!」
「まじかよ。おい!」
「サーナがしゃべったー!!」

 俺たち3人はそう言って叫んだのだった。尤も、その声にびっくりしてサーナが泣き出してしまったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。まさか、サーナがしゃべるととは、いやぁ、なかなかしゃべらないから大丈夫かと思っていたが、ここにきて急だな。ていうか、それがダンクスの名前ってのはどうなんだ。

「サーナちゃん、サーナちゃん、今度は、シュンナって言ってみて、シュンナ」

 俺が考え事をしている間にシュンナに咲きこされてしまった。しかし、サーナがどうするかそれが気になってしまった。

「しゅあ、しゅあぁ、しゅなぁ」

 サーナはシュンナを練習したのかしゅあから、最後はしゅなぁとなった。これはもうシュンナといっているといってもいいんじゃないか。

「やったね。サーナちゃんえらい、偉いよ」
「まじかよ。よしっ、サーナ、今度はスニルっていってくれ、スニルだぞ」

 俺も負けじとサーナに向かって、これまでにないハイテンションで詰め寄った。

「すにーる?」
「おお、そうそう、スニルだ。すごいぞサーナ」

 サーナにとって俺の名前は呼びやすかったのか、間違いなくスニルといった。それを聞いた俺は、シュンナからサーナを奪うと高らかに掲げたのだった。まぁ、俺が掲げたといっても大した高さじゃないんだけど、気分の問題だ。

「ははっ、懐かしいな。ミリア」
「ええ、そうね。思い出すわね。スニルが初めてままって言った時のこと」
「ああ、そうだったな」

 俺たちを見ながら父さんと母さんがそんな会話をしていた。

「へぇ、スニルって最初なんていったの」
「おっ、俺も気になる」

 少し落ち着いたシュンナとダンクスが母さんたちに俺が最初に話した言葉を聞いた。確かに俺も気になるな。

「そうね。確か、意味は分からないけれど、”おそば”って言ったわよね」
「ああ、はっきりとそう言ったな。何のことかはさっぱりなんだが」

 それを聞いて俺は一人吹いてしまった。

「どうした、スニル、お前意味が分かるのか」
「あ、ああ、多分な。ていうか、俺ほんとにそれいったの?」
「ああ、間違いないぞ。はっきりといったからな。さっきのサーナとは違って、はっきりといったぞ。確かあれは麺料理を食ってた時だったよな」
「そうそう、私たちが食べようとしていたのよね」
「よく覚えてるな」
「そりゃぁね。あなたたちも今日のこの瞬間は忘れないでしょ」

 それを言われると確かにと納得してしまうな。

「それで、スニルその”おそば”ってなんなんだよ」
「あたしも気になる。なになに」
「ああ、ええと、その麺料理を見ていったんだろ。だったら十中八九間違いないと思う、けどまさか記憶も戻ってないのにな」
「記憶って、もしかして前世?」
「そう、その”そば”ってのは、蕎麦のことで、前世での俺の好物の1つだよ。俺が住んでた国の伝統的な麺料理なんだ」
「麺、ああ、なるほどね」
「多分、麺を見て蕎麦だと思ったんじゃないか。でも、記憶も戻ってない時だってのに、どういうこと何だろうな」

 いくら好物だったとしても不思議だ。

「そう、スニルの好物なのね。それで、そのお蕎麦というものはどういうものなの」

 母さんが蕎麦とは何か聞いてきたので当然答えることにした。

「蕎麦は蕎麦って植物の実を粉にして麺にしたものなんだけど、それをつゆっていう、なんていうかな大豆を発酵した調味料の醤油ってものと海の食材を乾燥させて取った出汁、そのほかにもいろいろ合わせるんだけど、それにつけて食べるんだ」

 そばとは何か説明を求められてもそういう説明しかできない、ていうか説明したところで材料がないからこの世界じゃできないし。

「うーん、それはちょっと作れないわね。残念」

 俺の説明を聞いてそれを作ることは不可能ということが分かり本当に残念そうだが、俺自身もかなり残念だ。というのも、醤油自体は大豆があるから、麹菌でも見つければメティスルを使って簡単に作ることは可能となる。しかし、問題は出汁、出汁を手に入れるために必要な海産物は当然海でとれるものだが、この辺りに海はないためにそれを手に入れることはできない。また、それ以外にも米もないから、酒とかみりんが作れないんだよな。まさに前途多難だ。

「そういうこと、でもまっ、これでポリーへの返事の内容は確保できたよな」
「そりゃぁ、そうよね」
「そうだな」
「ふふっ、そうね」
「手紙の様子からしてきっと喜ぶぞ」

 というわけで俺はさっそくポリーへの手紙を書き始める。増築はいいのかと思うかもしれないが、そこはダンクスと父さんで問題ない。ていうかそれよりも手紙を書いてやれと2人から言われてしまった。

「それじゃ、疾風頼むぞ」
「キュイー」

 手紙を俺の召喚獣サンダーバードの疾風に託したのだった。

「ハヤテちゃんもかわいいのね」
「ポリーのリーフとは兄妹だからなぁ」
「あら、そうなの?」

 母さんも驚いているが、実はリーフも元は俺が召喚しそれをポリーに契約させた個体だったりする。その時疾風と一緒に召喚したために、近くの存在である兄妹だったというわけだ。


 ポリーに手紙を書いてから翌日のことである。増築を行っていると、またテントの外から声が響いてきた。

「あれ? また、リーフか、今回は早いな」

 昨日の時点で疾風は帰ってきており、すでに送還してある。にもかかわらずサンダーバードの声が聞こえるということはリーフということになる。一体どうしたんだろうかと思いながらテントの外に出ると確かにそこにいたのはリーフであった。

「リーフ、どうしたんだ?」
「キュイー、キュイー」

 リーフは自身の足にある筒を俺に向けてきた、ここにポリーからの手紙が入っているわけだ。

「またか、まぁ、ありがとなリーフ」
「キュイー」

 リーフから手紙を受け取りそれを開くと、そこには簡潔にすぐ帰ってこいと書いてあった。

「ああ、まぁそうなるか」

 つまり、サーナが言葉が聞きたいからすぐに戻って聞かせろちうものらしい。さて、どうしたものか。
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