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第03章 コルマベイント王国
09 増えた面倒
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王都を脱出してから3週間が過ぎた。
相変わらずの逃亡生活を過ごしている。
といっても、夜は快適なのが救いだ。
「そういえば、最近騎士たちや兵士を見なくなったな」
ふと思ったことだが、王都を出てしばらくは街道に出ると、騎士や兵士たちがひしめき合うように俺たちを探していた。
それが、近ごろになってくるととんと見かけなくなってきた。
もちろん全くというわけではないが、明らかに数が減っている。
おかげで、時々ではあるがのんびりと街道を通ることができたのだった。
「そりゃぁ、もうここは王都からだいぶ離れたからな」
ダンクスによると王都付近で俺たちを探し回っていた騎士や兵士にとっては、あの襲撃者たちは知らずとはいえ仲間だった。
そのため、仲間の仇をとるために躍起になって俺たちを探し回っていた。
しかし、王都から離れると今度は近場の街から派遣された騎士や兵士たちに代わる。
この両騎士、一見すると同じ国に使える騎士や兵士と思われるが、実は王都付近にいた者たちは王国騎士団といって国王に仕えているものたちで、ここら辺にいる騎士たちはそれぞれ街の領主に仕える騎士という違いがある。つまり、組織としては別物だという。
だから、王都から離れれば騎士や兵士たちにとっても特に思い入れはなくやる気が出ないという。
実際、ダンクスが騎士だったころに同じ命令が下っても一応は捜査するが、適当なところで切り上げるだろうとのことだった。
「まぁ、それでも俺がいたところは最初からやらなかっただろうけどな」
ダンクスは真面目なのでもしこの命令が下れば気合を入れて捜査しただろうが、上司がそれを許さず結局適当な捜査となっていただろうという。
それを聞いて大丈夫なのかとちょと心配になったんだけど、まぁ、幸いというべきか南のブリザリア王国とは良好な関係を結んでおり、戦争ということはないらしい。
「なるほどねぇ。だったらこの後は普通に街道を行けそうね」
「だな」
もちろん時々は騎士や兵士がいるために、一応隠れながらとなるのは言うまでもないだろう。
そうして、のんびりと街道を歩くこと2日騎士や兵士たちの数はめっきりと減り、今日にいたってはまだ見かけることすらなかった。
「ここまで来るともう大丈夫そうだな」
「そうね。でも、街には入らないほうがいいのよね」
「そうだな。多分手配書だけは出回っているはずだ」
「まっ、仕方ないって」
いくら騎士や兵士たちが俺たちを探しに来なくても、街には手配書が出回っており俺たちが街へ入ろうとすれば逮捕されるのは必至のため街へはいけない。
尤も、何度も言うが俺たちはそもそも街へどうしても行かなければならないというわけではない。
俺たちが街へ入る理由は、単純に街を目の前にして入らないという選択肢がなかったことや、俺自身がこの世界の文明文化を見て回りたいという思いからでしかない。
その目的を考えると本来ならこの西に向かう街々も見て回りたいというのが本音だ。
街の文化というものはそれぞれ独自のものを作り上げるが、そこに外部からの影響を大きく受けることでさらなる進化を遂げるものだ。
つまりカリブリンでは南のブリザリア王国の文化の影響を受けていたのに対して、こちら側は西側の国ウルベキナ王国の影響を受けているということになる。
だからこそ本来であれば街に入ってその文化を見てみたいところだが、仕方ないとあきらめるしかない。
でもま、ウルベキナ王国に行けばその国の文化を見ることができるわけだから、問題ないといえば問題ないんだけどな。
そんなことを思いながら歩くことしばし、俺たちはすでにフードを外して歩いていた。
まさにその時であった。
街道を歩く俺たちの前でなんともガラの悪そうなやつら4人とエンカウント。
「おいっ、奴らじゃないか?」
「まじか!」
「おいおい、すげぇいい女じゃねぇか!」
「確かに、特徴は一致しているな」
「間違いないのか?」
「間違いねぇよ。ほら、あんなでかい男そうそういないだろ」
「それに、ガキもいるぜ」
「なら間違いないな」
俺たちを見て口々にそんなことを言い始めた。
なんか嫌な予感がするんだが……
「なんだこいつら」
「さぁ」
「なにか俺たちのこと言ってるみたいだな」
「だな、おい、お前ら俺たちに何か用か?」
柄が悪い連中ということでダンクスが代表してたずねた。
「とぼけてんじゃねぇぜ。こいつぁ、てめえらのことだろが」
そう言って何やら紙を差し出してきた。
なんだろうかとみてみると、そこには大男と小さい子供、それと女がフード付きマントを被った状態で描かれ、その下には金額が書かれているわけだが、その金額は352,000トラムとなっていた。
それなりに高い金額だな。
ていうかそれより気になるのが、大男と子供の下に書かれた文字、生死を問わずって書かれているんだけど……。
女の下には書かれていないから、多分生かせということだろう。
んで、こんなことが書かれている紙ということは、どう考えても手配書だな。
なんで、こいつらがこんなものを持っているのか一瞬わからなかったが、下に金額が書かれているということは、もしかしなくても賞金がかけられているということだ。
ということはこいつら賞金稼ぎ?
んっ、賞金稼ぎ……
「賞金稼ぎか? うわっ、いるのか?」
おもわず、そう言って叫んでしまった。
賞金稼ぎ、異世界ファンタジーではよくいる存在、日本にはいなかったから考えもしなかった。
考えてみれば盗賊を討伐した場合、賞金がかかっていれば街でその賞金がもらえる。
つまり賞金制度があるってことだ。
また、冒険者の中にはその盗賊を専門に討伐している連中もいる。
そいつらは盗賊のお宝と賞金目当てなんだよな。
となるとだ、盗賊以外の犯罪者に賞金を懸け、その賞金を目当てに民間人が動いていてもちっともおかしくない。
もう一度言うけど、日本にはいないから全く思いつきもしなかった。
「賞金稼ぎ? なんだそれ」
「スニル知っているの?」
ああ、どうやらシュンナとダンクスは賞金稼ぎを知らないらしい、まぁこれは仕方ない2人は元冒険者と騎士ということでいろいろ知ってはいるが、しょせんは辺境の出身そんなところに賞金稼ぎはいないということだろう。
「盗賊とかに賞金がかかってるだろ。その賞金を目当てにそいつらを専門に狩っている連中のことだよ」
「なるほど、確かにそういう連中がいてもおかしくはなさそうだな」
「そうね。冒険者の中にもそういう人たちっているものね」
「そういうこと、んで、どうやら俺たちにその賞金が懸けられているみたいだな」
「ということは、もしかしてこれからは騎士や兵士だけじゃなくて、こういう手合いも警戒しないといけないってことか」
「そういうことだな。面倒だけど」
これは本当に面倒だ騎士や兵士だけでも面倒な逃亡だっていうのに、その騎士や兵士の数が減りやっと少しはのんびりと旅を続けられると思っていた矢先、今度は賞金稼ぎってちっとものんびりできないな。
「何ごちゃごちゃ言ってやがる。覚悟しろ」
俺たちが話していると賞金稼ぎが一斉に、手に持った武器を持ち俺たちに襲い掛かってきた。
俺たちも別にこいつらの存在を忘れてしゃべっていたわけでない、その証拠に奴らが動いた瞬間シュンナは目にもとまらぬ速さで賞金稼ぎの1人の懐に入り込むと、素早くその腹部を切り裂いた。
「ぐぎゃぁぁ!」
一方でダンクスは突っ込んできた男を、正面から殴りつけて吹き飛ばしている。
「ぐぶふぅっ」
そんな中俺もまた2人の男に襲い掛かられていた。
どうして俺みたいな子供相手に2人も来たんだろうと思うが、これは単純にシュンナとダンクスが動いたことで1人が目標を失い目に入った俺をめがけてきたからだ。
というわけで、俺は迫りくる剣を体を回転させながらすり抜け、腰に差した刀を抜き放つとともに右側にいた奴を斬り上げ、返す刀で左側の奴を斬り捨てた。
俺の剣は神剣となっているために切れ味は鋭い、つまり断末魔の叫び後を上げることすらできずに絶命したというわけだ。
「ほんと、面倒になったな」
「ほんとね。これからはこういう連中からも逃げなきゃいけないのかな」
「だろうな」
俺たちはそれぞれため息を漏らした。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
賞金稼ぎに襲われてから1か月が過ぎた。
俺たちはいまだにコルマベイント王国にいた。
「はぁ、疲れたな」
「ははっ、スニルは体力がないからね」
「それもあるけど、精神的にもな」
「確かにな」
そう言って肩を回すダンクス。
俺たちがいまだ国を出ていないのは、単純にこの国が横長の形をとっていることと、王都が少し東寄りにあることが原因だ。
つまり、王都から見た場合西側のウルベキナ王国が最も遠くなる。
また、騎士や兵士だけではなく賞金稼ぎからも身を隠しながらとなるために、どうしても動きが遅くなってしまう。
騎士や兵士は見ればわかるからいいんだが、賞金稼ぎは全くわからない、これまで出会った賞金稼ぎだって見た目は冒険者といった俺たちと似たような恰好をしているやつがいたり、中には商人に化けていた連中もいた。
そのため、通る人通る人すべてを警戒しなければならず、ちっとも進まない。
それにだ、隠れるにしても周囲が森ならいくらでも隠れられるが、そうではなく普通に草原といった遮蔽物が何もない道だっていくらでもある。
そう言った場所になると俺の”霧散”も使えなくなるためにどうしようもなく戦いになる。
どういうことかというと”霧散”は気配を散らす魔法であり、姿を消す魔法ではないということ、つまり”霧散”を使っても姿は見えるってことだ。
だからこの魔法を使うときはどこかに隠れる必要があるんだよな。
「ところで、スニル、どっか調子悪くない?」
俺が少し考え事をしているとふいにシュンナがそんなことを聞いてきた。
「? いや、特に普通だけど……」
「そう?」
「ああ、なんでだ?」
シュンナがなぜいきなり聞いてきたのか逆に尋ねた。
「うーん、なんかね。ねぇ、ダンクス」
「あ、ああ、だな。お前、なんか顔が赤いぞ。熱とかないのか?」
「熱? いや、そんな気はしないが」
2人によると俺の顔が赤いらしい、そこで少し自身の体を確認してみる。
確かに、言われてみれば若干いつもより体温が高いような気がするが、特にこれといって異常は感じない。
「……うわっ、あつっ! 熱あるじゃない!!」
「うぉ、まじで熱いじゃねぇか!」
俺のすきをついて2人が俺のおでこに手を当てての反応がこれだ。
「そうなのか?」
いまだわからない俺はそう反応するしかなかった。
「そうよ。いや、そんなことより、ダンクステント!」
「お、おう、すぐ出す」
テントは”収納”に収まっているが、ダンクスが持つマジックバックは俺の”収納”とつながっているために、ダンクスも取り出すことができる。
そして、最近は大体ダンクスが取り出しているので、シュンナがダンクスにそう言ったのだった。
そうして、取り出されたテントの中に俺は半ば強制的に放り込まれて、そのまま自室へと連行された。
「とにかく、これに着替えて寝てなさい、スニル」
「え、あ、ああ」
俺は大丈夫だと言いたいが、シュンナの剣幕に押されておとなしく指示に従った。
「でもスニル、なんでこんなになるまで何も言わなかったの?」
シュンナは俺を叱るようにそう言ったが、そう言われても俺自身気が付かなかったのは事実だ。
「そういわれてもなぁ。今でも特に問題ないしな」
「どういうことだ?」
俺が事実だと告げるとさすがに2人とも深刻な顔で聞いてきた。
「多分だけど、それこそこの12年が原因だと思う」
推測でしかないが、俺がこうなったのはおそらくこの12年虐待を受け続けたことが理由だと思う。
というのも、俺はあの連中に酷使されてきた、それはたぶん俺が不調の時だろうが関係なくだ。
そのため、俺自身体調が悪くても誰にも言えず働いていたから、いつしか己自信をだますために気が付かないようになったのだろう。
また、そんな生活だった俺を見たのだろう神様が”丈夫な身体”という加護をつけてくれた。
そのおかげで、俺は生き延びることができたといってもいいと思う。
「くそがっ!」
「ほんと、許せない!」
俺がこの推測を話すと当然ならが2人は奴らに対する怒りを再熱させた。
その後、俺は2人から強制的に寝かされ、苦い薬草を飲まされた。
この薬草は熱さましの薬草で、どこにでも生えている薬草を煎じたものだ。
ちなみに俺の不調は単なる風邪、どうやらこの世界にも風邪はあるらしい。
といっても俺はもともと体力ないために、治療に時間がかかり完治するのに3日を要したのだった。
その間、シュンナとダンクスはつきっきりで看病してくれたのだった。
相変わらずの逃亡生活を過ごしている。
といっても、夜は快適なのが救いだ。
「そういえば、最近騎士たちや兵士を見なくなったな」
ふと思ったことだが、王都を出てしばらくは街道に出ると、騎士や兵士たちがひしめき合うように俺たちを探していた。
それが、近ごろになってくるととんと見かけなくなってきた。
もちろん全くというわけではないが、明らかに数が減っている。
おかげで、時々ではあるがのんびりと街道を通ることができたのだった。
「そりゃぁ、もうここは王都からだいぶ離れたからな」
ダンクスによると王都付近で俺たちを探し回っていた騎士や兵士にとっては、あの襲撃者たちは知らずとはいえ仲間だった。
そのため、仲間の仇をとるために躍起になって俺たちを探し回っていた。
しかし、王都から離れると今度は近場の街から派遣された騎士や兵士たちに代わる。
この両騎士、一見すると同じ国に使える騎士や兵士と思われるが、実は王都付近にいた者たちは王国騎士団といって国王に仕えているものたちで、ここら辺にいる騎士たちはそれぞれ街の領主に仕える騎士という違いがある。つまり、組織としては別物だという。
だから、王都から離れれば騎士や兵士たちにとっても特に思い入れはなくやる気が出ないという。
実際、ダンクスが騎士だったころに同じ命令が下っても一応は捜査するが、適当なところで切り上げるだろうとのことだった。
「まぁ、それでも俺がいたところは最初からやらなかっただろうけどな」
ダンクスは真面目なのでもしこの命令が下れば気合を入れて捜査しただろうが、上司がそれを許さず結局適当な捜査となっていただろうという。
それを聞いて大丈夫なのかとちょと心配になったんだけど、まぁ、幸いというべきか南のブリザリア王国とは良好な関係を結んでおり、戦争ということはないらしい。
「なるほどねぇ。だったらこの後は普通に街道を行けそうね」
「だな」
もちろん時々は騎士や兵士がいるために、一応隠れながらとなるのは言うまでもないだろう。
そうして、のんびりと街道を歩くこと2日騎士や兵士たちの数はめっきりと減り、今日にいたってはまだ見かけることすらなかった。
「ここまで来るともう大丈夫そうだな」
「そうね。でも、街には入らないほうがいいのよね」
「そうだな。多分手配書だけは出回っているはずだ」
「まっ、仕方ないって」
いくら騎士や兵士たちが俺たちを探しに来なくても、街には手配書が出回っており俺たちが街へ入ろうとすれば逮捕されるのは必至のため街へはいけない。
尤も、何度も言うが俺たちはそもそも街へどうしても行かなければならないというわけではない。
俺たちが街へ入る理由は、単純に街を目の前にして入らないという選択肢がなかったことや、俺自身がこの世界の文明文化を見て回りたいという思いからでしかない。
その目的を考えると本来ならこの西に向かう街々も見て回りたいというのが本音だ。
街の文化というものはそれぞれ独自のものを作り上げるが、そこに外部からの影響を大きく受けることでさらなる進化を遂げるものだ。
つまりカリブリンでは南のブリザリア王国の文化の影響を受けていたのに対して、こちら側は西側の国ウルベキナ王国の影響を受けているということになる。
だからこそ本来であれば街に入ってその文化を見てみたいところだが、仕方ないとあきらめるしかない。
でもま、ウルベキナ王国に行けばその国の文化を見ることができるわけだから、問題ないといえば問題ないんだけどな。
そんなことを思いながら歩くことしばし、俺たちはすでにフードを外して歩いていた。
まさにその時であった。
街道を歩く俺たちの前でなんともガラの悪そうなやつら4人とエンカウント。
「おいっ、奴らじゃないか?」
「まじか!」
「おいおい、すげぇいい女じゃねぇか!」
「確かに、特徴は一致しているな」
「間違いないのか?」
「間違いねぇよ。ほら、あんなでかい男そうそういないだろ」
「それに、ガキもいるぜ」
「なら間違いないな」
俺たちを見て口々にそんなことを言い始めた。
なんか嫌な予感がするんだが……
「なんだこいつら」
「さぁ」
「なにか俺たちのこと言ってるみたいだな」
「だな、おい、お前ら俺たちに何か用か?」
柄が悪い連中ということでダンクスが代表してたずねた。
「とぼけてんじゃねぇぜ。こいつぁ、てめえらのことだろが」
そう言って何やら紙を差し出してきた。
なんだろうかとみてみると、そこには大男と小さい子供、それと女がフード付きマントを被った状態で描かれ、その下には金額が書かれているわけだが、その金額は352,000トラムとなっていた。
それなりに高い金額だな。
ていうかそれより気になるのが、大男と子供の下に書かれた文字、生死を問わずって書かれているんだけど……。
女の下には書かれていないから、多分生かせということだろう。
んで、こんなことが書かれている紙ということは、どう考えても手配書だな。
なんで、こいつらがこんなものを持っているのか一瞬わからなかったが、下に金額が書かれているということは、もしかしなくても賞金がかけられているということだ。
ということはこいつら賞金稼ぎ?
んっ、賞金稼ぎ……
「賞金稼ぎか? うわっ、いるのか?」
おもわず、そう言って叫んでしまった。
賞金稼ぎ、異世界ファンタジーではよくいる存在、日本にはいなかったから考えもしなかった。
考えてみれば盗賊を討伐した場合、賞金がかかっていれば街でその賞金がもらえる。
つまり賞金制度があるってことだ。
また、冒険者の中にはその盗賊を専門に討伐している連中もいる。
そいつらは盗賊のお宝と賞金目当てなんだよな。
となるとだ、盗賊以外の犯罪者に賞金を懸け、その賞金を目当てに民間人が動いていてもちっともおかしくない。
もう一度言うけど、日本にはいないから全く思いつきもしなかった。
「賞金稼ぎ? なんだそれ」
「スニル知っているの?」
ああ、どうやらシュンナとダンクスは賞金稼ぎを知らないらしい、まぁこれは仕方ない2人は元冒険者と騎士ということでいろいろ知ってはいるが、しょせんは辺境の出身そんなところに賞金稼ぎはいないということだろう。
「盗賊とかに賞金がかかってるだろ。その賞金を目当てにそいつらを専門に狩っている連中のことだよ」
「なるほど、確かにそういう連中がいてもおかしくはなさそうだな」
「そうね。冒険者の中にもそういう人たちっているものね」
「そういうこと、んで、どうやら俺たちにその賞金が懸けられているみたいだな」
「ということは、もしかしてこれからは騎士や兵士だけじゃなくて、こういう手合いも警戒しないといけないってことか」
「そういうことだな。面倒だけど」
これは本当に面倒だ騎士や兵士だけでも面倒な逃亡だっていうのに、その騎士や兵士の数が減りやっと少しはのんびりと旅を続けられると思っていた矢先、今度は賞金稼ぎってちっとものんびりできないな。
「何ごちゃごちゃ言ってやがる。覚悟しろ」
俺たちが話していると賞金稼ぎが一斉に、手に持った武器を持ち俺たちに襲い掛かってきた。
俺たちも別にこいつらの存在を忘れてしゃべっていたわけでない、その証拠に奴らが動いた瞬間シュンナは目にもとまらぬ速さで賞金稼ぎの1人の懐に入り込むと、素早くその腹部を切り裂いた。
「ぐぎゃぁぁ!」
一方でダンクスは突っ込んできた男を、正面から殴りつけて吹き飛ばしている。
「ぐぶふぅっ」
そんな中俺もまた2人の男に襲い掛かられていた。
どうして俺みたいな子供相手に2人も来たんだろうと思うが、これは単純にシュンナとダンクスが動いたことで1人が目標を失い目に入った俺をめがけてきたからだ。
というわけで、俺は迫りくる剣を体を回転させながらすり抜け、腰に差した刀を抜き放つとともに右側にいた奴を斬り上げ、返す刀で左側の奴を斬り捨てた。
俺の剣は神剣となっているために切れ味は鋭い、つまり断末魔の叫び後を上げることすらできずに絶命したというわけだ。
「ほんと、面倒になったな」
「ほんとね。これからはこういう連中からも逃げなきゃいけないのかな」
「だろうな」
俺たちはそれぞれため息を漏らした。
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賞金稼ぎに襲われてから1か月が過ぎた。
俺たちはいまだにコルマベイント王国にいた。
「はぁ、疲れたな」
「ははっ、スニルは体力がないからね」
「それもあるけど、精神的にもな」
「確かにな」
そう言って肩を回すダンクス。
俺たちがいまだ国を出ていないのは、単純にこの国が横長の形をとっていることと、王都が少し東寄りにあることが原因だ。
つまり、王都から見た場合西側のウルベキナ王国が最も遠くなる。
また、騎士や兵士だけではなく賞金稼ぎからも身を隠しながらとなるために、どうしても動きが遅くなってしまう。
騎士や兵士は見ればわかるからいいんだが、賞金稼ぎは全くわからない、これまで出会った賞金稼ぎだって見た目は冒険者といった俺たちと似たような恰好をしているやつがいたり、中には商人に化けていた連中もいた。
そのため、通る人通る人すべてを警戒しなければならず、ちっとも進まない。
それにだ、隠れるにしても周囲が森ならいくらでも隠れられるが、そうではなく普通に草原といった遮蔽物が何もない道だっていくらでもある。
そう言った場所になると俺の”霧散”も使えなくなるためにどうしようもなく戦いになる。
どういうことかというと”霧散”は気配を散らす魔法であり、姿を消す魔法ではないということ、つまり”霧散”を使っても姿は見えるってことだ。
だからこの魔法を使うときはどこかに隠れる必要があるんだよな。
「ところで、スニル、どっか調子悪くない?」
俺が少し考え事をしているとふいにシュンナがそんなことを聞いてきた。
「? いや、特に普通だけど……」
「そう?」
「ああ、なんでだ?」
シュンナがなぜいきなり聞いてきたのか逆に尋ねた。
「うーん、なんかね。ねぇ、ダンクス」
「あ、ああ、だな。お前、なんか顔が赤いぞ。熱とかないのか?」
「熱? いや、そんな気はしないが」
2人によると俺の顔が赤いらしい、そこで少し自身の体を確認してみる。
確かに、言われてみれば若干いつもより体温が高いような気がするが、特にこれといって異常は感じない。
「……うわっ、あつっ! 熱あるじゃない!!」
「うぉ、まじで熱いじゃねぇか!」
俺のすきをついて2人が俺のおでこに手を当てての反応がこれだ。
「そうなのか?」
いまだわからない俺はそう反応するしかなかった。
「そうよ。いや、そんなことより、ダンクステント!」
「お、おう、すぐ出す」
テントは”収納”に収まっているが、ダンクスが持つマジックバックは俺の”収納”とつながっているために、ダンクスも取り出すことができる。
そして、最近は大体ダンクスが取り出しているので、シュンナがダンクスにそう言ったのだった。
そうして、取り出されたテントの中に俺は半ば強制的に放り込まれて、そのまま自室へと連行された。
「とにかく、これに着替えて寝てなさい、スニル」
「え、あ、ああ」
俺は大丈夫だと言いたいが、シュンナの剣幕に押されておとなしく指示に従った。
「でもスニル、なんでこんなになるまで何も言わなかったの?」
シュンナは俺を叱るようにそう言ったが、そう言われても俺自身気が付かなかったのは事実だ。
「そういわれてもなぁ。今でも特に問題ないしな」
「どういうことだ?」
俺が事実だと告げるとさすがに2人とも深刻な顔で聞いてきた。
「多分だけど、それこそこの12年が原因だと思う」
推測でしかないが、俺がこうなったのはおそらくこの12年虐待を受け続けたことが理由だと思う。
というのも、俺はあの連中に酷使されてきた、それはたぶん俺が不調の時だろうが関係なくだ。
そのため、俺自身体調が悪くても誰にも言えず働いていたから、いつしか己自信をだますために気が付かないようになったのだろう。
また、そんな生活だった俺を見たのだろう神様が”丈夫な身体”という加護をつけてくれた。
そのおかげで、俺は生き延びることができたといってもいいと思う。
「くそがっ!」
「ほんと、許せない!」
俺がこの推測を話すと当然ならが2人は奴らに対する怒りを再熱させた。
その後、俺は2人から強制的に寝かされ、苦い薬草を飲まされた。
この薬草は熱さましの薬草で、どこにでも生えている薬草を煎じたものだ。
ちなみに俺の不調は単なる風邪、どうやらこの世界にも風邪はあるらしい。
といっても俺はもともと体力ないために、治療に時間がかかり完治するのに3日を要したのだった。
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