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第02章 旅立ちと出会い

18 幼児誘拐事件

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 工場への侵入者を逆に襲撃してやったことで、見せしめとなったのか工場への侵入者がいなくなった。
 それはよかったと、俺はいつものように街を散歩していた。

「んっ?」

 その時、背後に何らかの気配を感じた。
 なんだろうと思い背後を見てみるが何もない、気のせいか。
 そう思いつつも路地に入っていった。
 この辺りはひと気のない路地だが、この先にある空き地に用があるんだよな。
 なんでも、この空き地はかつて父さんと母さんがよく通っていたらしい。
 シエリルたちによると、その空き地で2人は人目を避けるように愛を育んでいたそうだ。
 息子としてはちょっと妙な気分だが、それでも両親の面影が残る場所ということで、毎日散歩としてここに自然とやって来ている。

「ふぅ、休んでいくか」

 そうして、ここでゆっくりと休むのか日課となっているわけだ。

「んっ」

 再び、気配を感じた。
 まさにその時だった。

「うぉぅ、なんだ!」

 突如複数の人間が襲い掛かって来て、俺はあっという間に袋詰めにされてしまった。


 そして、今に至るってわけだ。

 言い訳みたいだけど一応あの時、俺なら逃げ出すことは簡単にできた。
 しかし、俺みたいな見た目幼児を誘拐するような恥ずかしい奴がどんな奴か、ちょっと興味を惹かれておとなしく捕まってみたというわけだ。

 ほんとだぞ。

 はてさて、どんな奴かなぁ。

 そう思いながら、俺はまず自分がどこにいるのか調べることにした。
 メティスルの権能の1つである”マップ”を確認すれば、難なく今現在どこにいるのかがすぐにわかるわけだが、それを確認して驚いた。

「おいおい、まじかよ!」

 俺が今いる場所はカリブリン中央通り沿いにあるアリプライス商会の地下1階。
 アリプライス商会というのは、王都での新進気鋭の商会で、つい5年前この街に来たばかりの新参商会。
 扱っているのは主に食料品で、野菜はもちろん肉類、魚類と扱い、保存食も扱っている。
 そんな店だが、ここまで言えば想像がつくだろう。
 そう、このアリプライス商会こそ、父さんが育った孤児院からその土地を奪った商会だ。
 まぁ、それだけなら俺としても特に思うことはない。
 だってそうだろ、孤児院はもともと中央通りに面した場所にあり、孤児院の場所としてはあまりいい場所とは言えなかった。
 その移動のきっかけを作ったという意味ではよくやったといったところだからな。
 孤児院の貧民街行きは全面的に領主が悪い、俺たちの認識としてはそうだった。
 だが、ここのところ侵入者があったとはいえ、基本的には日中は暇だった。
 そこで、練習もかねて孤児院の貧民街行きについて詳しく調べてみようとなった。
 俺はまず魔法や鑑定を駆使して領主屋敷などを調べ、シュンナとダンクスには聞き込みを頼んだ。
 俺が聞き込みをしなかったのは性格もあるが、何より俺が子供だからだ。
 子供にまともに答える奴は普通なかなかいないしな。
 てなわけで、調べた結果、孤児院の貧民街行きはどうも領主だけが悪いわけではないらしいんだよなぁ。


 5年ほど前アリプライス商会はここカリブリンに新しい支店を作る計画を立て、商会立ち上げ以前より長らく商会長の補佐をしていたバーバンという男が支店長として選ばれた。
 さっそくカリブリンにやってきたバーバンは愕然とした。
 それは当然だろう、彼が思うアリプライス商会が店を構えるにふさわしい立地がすべて埋まっていたのだから。
 そんなときに目を付けたのが孤児院だった。

 そうだ、この場所を買い取れば。

 バーバンの光明だった。
 問題はこの孤児院の持ち主は院長ではなく領主であるというものだった。
 そこで、バーバンは領主に直に交渉を持ち掛けた。
 領主自身中央通りに孤児院があることをよく思っていなかったこともありこれを了承。
 しかし、ハイどうぞというわけにはいかない。
 というのも、この国の法律でどの町にも孤児院を設置すべしというものがあるからだ。
 つまり、孤児院をどこかに移動させる必要があったのだ。
 だが、その移動先がない。
 領主は悩んだそうだ。
 バーバンにとってその時間がもったいない、そこで貧民街はどうかという提案をしたという。
 領主もはじめそれは無理だと話した。というのも、孤児院を作るように言った国王が孤児院の場所として中央通りに近い場所に設置するようにと指示があったからだ。
 だから、領主も中央通りに近い場所を限定して探していたわけだが、バーバンとしては商会長からもせかされていたこともあり、すぐにでも孤児院の土地が欲しいことから、領主に中央通りに近い場所というのは指示であって、命令でも法律でもない、法律上街にあればいいわけで、貧民街だろうとどこだろうとあればいいんだと、説明しつつ説得したそうだ。
 それを受けた領主はまさにその通りだといい、ついに孤児院の貧民街行きが決定したという。
 また、現在の孤児院の位置もバーバンが適当に用意したものであったことが判明している。

 つまり、孤児院の貧民街行きに大きくバーバンが関与していることが分かったのだった。
 もちろん、最終的な決定をしたのは領主なので領主が悪いのは間違いないんだけどな。

 おっと、そんなことを考えていると、上から誰かが降りてきたみたいだな。
 俺は”探知”を使ってあたりをうかがっていたんだが、その中に3人ほどの人間が俺がいる地下に降りてきた。
 さて、どんな奴が来るのか、まぁ、予想はできているんだけどな。


 そうして、待つこと少し、扉を開けて中に入ってきた人物は50がらみのおっさん、思った通りの人物だった。
 そう、アリプライス商会カリブリン支店長バーバンである。
 ちなみに、このおっさんフリーズドライの試験販売をしたとき真っ先に現れて偉そうにしながらシエリルにフリーズドライの技術を買い取りたいといってきやがったおっさんだ。

「おや、お目覚めのようですね。初めましてわたしはアリプライス商会支店長バーバンと申します」

 バーバンはそう言って自己紹介をしてきた。
 いったい、なんのつもりだろうか?

「しかし、君のような子供が、あの素晴らしい技術の開発者とは、わたしも驚きましたよ」

 ああ、つまりこいつは俺がフリーズドライの開発者と知って俺をさらったってことか、となるとその目的はおそらく。

「いかがでしょう、あのような小さな店ではなく、わたしどもアリプライス商会にご協力願えませんか?」

 人をさらっておいてよく言えるよなぁ。
 俺は逆にこのおっさんに感心してしまったよ。

「もちろん好待遇としますよ。そうですね。まずは給金は日に大銅貨3枚でいかがです」

 俺が黙っていると給料について話し出した。大銅貨3枚って子供にたら大金なんだろうけど……

「断る」

 俺は短くそう答えた。

「おや、安かったですか。仕方ないですね。では、大銅貨4枚としましょう」

 いや、1枚追加されても……

「……そういう問題じゃない。そもそも、あれは孤児院の支援のため。儲けのためじゃない。そういうわけだから帰らせてもらう」
「ふふふっ、帰れるとでも思っているのですか?」

 バーバンは何か重しかったのか笑いながらそう言った。
 思いっきり思っているんだが……。

「ああ、言っておきますけど、あなたは魔法が使えませんよ。それに、武器もこちらで預かっておりますからね」

 そう、さっきから俺の腰が寂しいと思ったら刀がないんだよな。そんで、今俺の目の前にいるバーバンの隣にいるチンピラが俺の刀を適当に持っていやがる。
 というか、こいつ俺と交渉する気なんて最初はなからなかったよな。拉致ったり、刀を奪いやがってる。
 それに……

「へへっ、いい剣だぜ。見たことないけどよ。こいつは俺がもらっておいてやるよ」
「てめぇはおとなしく、バーバンさんのいうことを聞いておくんだな」

 バーバンの近くにいたチンピラ2人がそれぞれ俺の刀を持ちながらそう言ってやがる。おい、もっと大事扱え!
 そいつはそんじゃそこいらの刀とはわけが違い、ドワーフが打ち上げたものを俺になじむように盛大に魔力を投入したことで進化して、魔剣を通り越してなぜか神剣となった代物だ。
 そのおかげか、実は俺の成長に合わせてサイズなどをはじめとして一緒に成長してくれるというとんでも刀となっている。
 そうそう、バーバンが言った俺が魔法が使えない理由を説明しておこうか、実は俺の首には首輪がはまっている。
 といっても、例の”奴隷の首輪”ではないんだけどな。

「それは、”魔封じの首輪”といいましてね」

 バーバンが言ったように、これは”魔封じの首輪”といい、簡単に言えば呪文を詠唱しようとすると首輪が狭まり首が絞まり、首輪の効果で魔力操作を阻害する仕組みが施されている。
 つまり、これをつけて魔法を使おうと詠唱をすると首が絞まり、それでも何とか詠唱を完成させたとしても魔力操作を阻害されているのでどうしても魔法が発動しないという魔道具だ。
 ほんと、ろくでもないよな。
 ちなみに、この2つの魔道具を作っているのは同じところなんだよな。

 とまぁ、それはどうでもいいとして、言っておくが俺にはこれ意味ないんだよ。
 というか、さっき俺普通に”探知”使ったしな。
 そもそも、メティスルの権能で”詠唱破棄”があるから詠唱は必要ないし、魔力操作の阻害にしてもメティスルによる操作を阻害なんてできるわけがない。

 でもまぁ、とりあえずまずは刀を返してもらうか。

「”戻れ”」

 俺は短くそう言った。
 すると、チンピラが持っていた俺の刀が突如その場から消え、次の瞬間には俺の手の中に納まっていた。

「えっ!」
「なっ!!」
「どうしました? なっ!! 馬鹿な!」

 これは、鍛冶屋のドワーフではなく俺が自分でつけた機能。
 詳しく説明すると、刀に埋め込んだ魔石に魔力をこめた者が、魔力のこもった言葉で”戻れ”と命じると、その手に空間を跳躍して戻ってくるという便利機能だ。
 ちなみにこの機能、ダンクスとシュンナの剣にもそれぞれつけていたりする。

 というわけで、刀を取り戻した俺は、すぐさまそれを腰に差した。

「なっ、いつの間に……」

 バーバンがまた驚いている。
 それというのも、実は俺はさっきまで手を縛られていたからだ。
 それが自由に刀を手に持ち、それを腰に差したんだから驚くなというほうが無理だろう。
 言っておくが、縄を解いたのは特に魔法を使ったわけでも呼び戻した刀で斬ったわけではなく、普通に縄抜けをしただけ。
 ここで、普通にっていうのもなんだけど、俺は前世の子供ころテレビかなんかで縄抜けのことを聞いたことがあり、当時はまだ多少なりとも友人がいた俺は、その友人と縄抜けの練習をしたことがあった。
 まさか、その時のことがこんなところで役に立つとは思わなかった。
 まぁ、それはいいとしてこいつらどうしようか。

「……仕方ありません、こうなってはこれを使うしかないようですね。あなたたちもう一度拘束しなさい」

 バーバンは手に持ったカバンから首輪をもう1つ取り出しつつ、チンピラに命じた。
 それを見た瞬間、俺としてもあまり手加減は必要ではないということが分かった。
 というのも、バーバンが取り出したものは言わずと知れた”奴隷の首輪”だったからだ。

「……はぁ」

 俺はため息を1つつくと、魔法を行使。

「なんだとっ!!」
「う、動けねぇ!!?」
「どうしました? 早くしなさい」

 チンピラが一歩動こうとしたが動けずにいると、バーバンは早くするようにとせかされていた。

「なんでだ、うごけねぇ、どういうことだよ」
「いったい、どうしたんですか?」

 ここにきてバーバンにもようやくことが理解できたらしい。

「無駄だ、そいつらの周りに物理結界を張った」

 俺が行使した魔法は結界、結界は通常敵の攻撃を防ぐものと思われがちだが、こうして敵を拘束するにも使えるんだよな。

「なんですって? 馬鹿な! 魔封じの首輪が付いているのですよ。それに、詠唱はどうしたのですか?」
「……悪いが、俺にはこいつは通用しない」

 俺はそういうと、すぐに次の魔法を行使した。
 暗黒魔法”スリープ”、文字どりただ眠らせるだけの魔法だ。
 それを受けたバーバンは手に持った”奴隷の首輪”を持ったままその場で眠りこけてしまった。
 ちなみに、この魔法こめた魔力にもよるが、それなりにこめると、魔法で解かない限り目覚めることがない。
 んで、俺はそれなりにこめたので神聖魔法の”アラウザ”を使わないと起きないだろうな。

「さてと、あとはここから出るかな」

 そんなわけで、俺はさっそく地下から地上に躍り出ることにした。
 しかし、俺も拉致されたっていうのにずいぶんとあっさりと抜け出しちまったな。
 これじゃ、面白みもくそもなかったな。
 まぁ、バーバンも俺をただの子供だと思っていただろうからな。
 まさか、メティスルなんてとんでもないスキルを持つ、前世の記憶持ちの男とは思うまい。

 そんなわけで地上に出た俺は、すぐに店へと戻って拉致られていたことを話すことにする。


「えっ、拉致? 大丈夫だったの?」
「おいおい、一体どこのどいつだよ。ていうか、どうやって、逃げてきたんだ?」

 案の定シエリルとワイエノは俺が拉致られていたと聞き、疑うわけでもなく驚愕して心配してくれた。

「メティスルがあるから、問題ない」
「あ、ああ、そっか、そういえば、でもけがとか大丈夫なの」
「ない」
「そう、よかったぁ。でも、一体誰が?」
「もしかしてスニル、奴か?」

 2人が心配している一方、俺が前世の記憶を持つことを知っているシュンナとダンクスは一切心配することもなく犯人のあたりをつけてきたので俺はうなずいておいた。

「奴? 誰だ?」

 ワイエノが若干怒気を含みながら訪ねてきたので、答えることに。

「あたしたち、ちょっと時間があるとき孤児院のことを調べていたんですよ」

 それから、俺たちが調べたことを2人に話した。

「……そういうことか、だからお前ら、あの店から仕入れをするなといったのか」
「はい、まぁ、あの時はまだ確信ではなかったんですけどね」

 アリプライス商会は食料品を扱っている。
 フリーズドライを作るにはどうしても、孤児院の野菜だけでは作れないということでほかの食料品店で購入する必要がある。
 当初、特に気にはなっていたがアリプライス商会が悪いと思っていなかったこともあり、あそこからも仕入れを行おうと話があった。
 しかし、孤児院の貧民街行きに関与しているのではないかと疑いを持ち始めたころだったので、一応ということで仕入れをしないように2人に頼んでいたのだった。

「くそっ、あの野郎。ふざけやがって!」

 ワイエノがかなりの怒気をまき散らし始めた。

「それで、スニルどうなったんだ」

 ダンクスに問われたことで俺は拉致されてから抜け出すまでのことを話した。

「……」
「……またかっ」
「ざけやがって」
「許せない」

 ”魔封じの首輪”のところで、腹を立て”奴隷の首輪”の時点で4人はともに怒りをあらわにした。

「よりにもよって”奴隷の首輪”かよ」
「スニルにそれをはめようとするなんて、ほんと許せない」

 特にシュンナとダンクスは怒り心頭だ。
 こればかりは、どうしても許せないことなんだろうな。
 まぁ、俺もさすがにバーバンの奴には呆れたけどな。

「それで、スニル、あの野郎はまだ眠っているんだよな」
「ああ、”アラウザ”を使わない限り目覚めないと思う」
「そうか、なら、さっそく乗り込むか」
「そうね」
「俺たちでか?」
「いや、その前に警備隊を連れて行く、ジョンダクあたりを連れていきゃぁいいだろ」
「ええ」

 というわけで、店をウィルクとルモアに任せた俺たち5人は警備隊の詰め所によって、ジョンダクという奴と、その同僚を2人連れてアリプライス商会に乗り込んだ。
 もちろん、そこに入るにはひと悶着があったが、気にせず俺たちは地下に再び向かったのだった。

「なっ、し、支店長!?」

 アリプライス商会の従業員が地下で眠りこけているバーバンを見て驚愕している。

「確かに、これは”奴隷の首輪”ですね」
「こいつを、どうするつもりだったのかってとこか」
「十中八九スニルに着ける気だったんだろうよ」
「でしょうね」
「みんなは下がっててくれ、俺は元の場所に戻る」

 シュンナとダンクスの2人だけならいいんだが、見ず知らずの警備隊がいることで俺の人見知りが発動していた。
「なるほどな。わかったぜ、おい、みんな後ろに下がって隠れるぞ」
「隠れるとは?」
「これから、スニルがあの男たちにかけた魔法を解くわ。そこで、あれをどうするのか、スニルが聞き出すからあたしたちはそれを聞くのよ」

 さすがシュンナとダンクスは俺が言わんとすることを理解してくれたらしい。
 てなわけで、みんなが隠れたところで俺はさっきまでいた場所に立ち神聖魔法”アラウザ”を行使。

「うん、ここは、そうだ!」

 バーバンは目を覚ますとさっそく俺を見た。

「なにをしたのかわかりませんが、どうやら”魔封じの首輪”が効果を発揮したようですね。さて、おとなしくこの首輪をはめさせてもらいますよ」

 俺が誘導するまでもなく、バーバンは勝手にそう言いだした。
 そして、ゆっくりと俺に近づいてきて、俺の首に首輪をはめようとした。

「それは、なんだ?」

 俺は一歩引くとともにそれが何かを訪ねた。

「ふふっ、いいでしょうこれは”奴隷の首輪”といいましてね。これをはめれば、あなたは私に逆らえなくなるのですよ」

 はい、言質頂きました。

「そいつをはめることができるのは資格を持った奴隷商のみだ」

 その時背後からそんな声が聞こえた。
 見ると、そこには警備隊のジョンダクがいた。

「ええ、ですが、ばれなければいいのですよ。書類をいじってしまえば、わかりませんからね」

 今度は書類偽造の証言をいただきました。
 これで、もはや言い逃れはできないな。

「アリプライス商会、カリブリン支店長バーバン! 貴様を逮捕する!」
「なっ、警備隊、なぜ、ここに?」

 突如背後から警備隊が現れたことでバーバンは驚愕に目を見開きながら慌てふためいている。
 こうして、アリプライス商会のバーバンは逮捕され、その後犯罪者として厳しい取り調べが行われることとなった。
 これを受けたアリプライス商会はというと、バーバンの行った罪はすべてバーバンが行ったものであり、自分たちは全く無関係であると主張したという。
 いわゆる尻尾斬りだな。
 警備隊もこういわれてはどうしようもなく証拠もないということで、バーバン1人が逮捕されたことですべてなかったことにされたのだった。
 もちろん、拉致されて奴隷にされそうになった俺に対しては多少の慰謝料が支払われたが、ほんと微々たる額でしかないうえに、渡しに来たのも明らかに下っ端の丁稚、ちゃんとした謝罪もなかったわけだ。
 これにはシエリルとワイエノは特に怒り、今後何があってもアリプライス商会とは取引はしないと豪語していた。
 とまぁ、ちょっとしたことはあったが、これにてほかの連中もおとなしくなったようでフリーズドライに関する騒動は幕を閉じた。
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