上 下
7 / 157
第01章 最低な始まり

05 テッカラでの目的

しおりを挟む
 翌日。

「ふわぁ、さぁてと、飯食ったら、さっそく行くかな」

 というわけで、適当に飯食って、すぐに立ち上がり出発することにした。

 さて、そんな俺が向かっている所は、昨日見つけた冒険者ギルドだ。
 といっても、別に冒険者になろうと思っているわけではない。
 確かに、前世の記憶があるので、冒険者に憧れ的なものがあるのは事実だけど、冒険者になると最低1年は街中での仕事しかさせてもらえなく、3年は登録した街でしか仕事ができなくなるらしい。
 つまり、ある程度したところで別の街に移動する。ということができない。
 というのを、俺を売ったやつが言っていたのを覚えている。
 
 俺としては、そんな1つの街に3年もとどまるなんてことをしたくない。
 そんなわけで、俺は冒険者になるつもりはない。
 じゃぁ、なんで冒険者ギルドに向かっているのかというと、答えは簡単だ。

 俺の現在の目的は、自分の名前を知ること。
 以前説明した通り、現在俺に名前はない。
 もう一度ちゃんと説明すると、俺の首にはまっていた奴隷の首輪の機能に”真名の剥奪”というものがある。
 この真名というのは、この世界において、生まれてから最初に付けられた名前となる。
 これを剥奪することで、その人物を誰でもない”物”へと変える。
 っで、普通なら自分の真名を忘れるなんてことはないから、奴隷の首輪が外れ、自身がその名を認識することで改めて真名が刻まれるはずだった。
 しかし、先述したように、俺は幼いころに両親を失い、俺を引き取ったクソ一家から名前を呼ばれたことなど一度もない。
 いつも、”おいっ”とか”お前”、そんな風にしか呼ばれなかった。
 だから、俺の記憶には自分の真名がない。
 だったら、別の名前を自分で考えればいいんじゃないかと思うかもしれないが、思い出してほしい、俺にはちゃんと両親がいて、
 つまりだ、俺にはちゃんと両親が真名を付けてくれていたんだ。
 そのため、俺がどんな名を考えたとしても、それが真名となることはない。
 そして、この真名だけど、厄介なことにこれがないと偽名すら名乗れない、という事実がある。
 どういうことかというと、俺も使うがこの世界には”鑑定”という能力がある。
 その結果どんな名前を付けても、名前の欄には『なし』としか表示されない。
 もちろん、この鑑定は誰もが持っているような能力だはないから大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。
 てなわけで、その真名を知るには、会いたくはないが俺を売ったやつに会う必要がある。
 尤も、そいつが知っているとは限らないけどな。まぁ、そうなったらそうなったで、今度はそいつから故郷の村を聞き出せばいいだけだ。
 さすがに、村長なら知ってるだろ。

 そんなわけで、ギルドへとやって来たわけだ。
 今現在の問題としては、あの野郎がまだいるかってことだな。

 俺が売られてからたぶんまだ3年程度、奴はまだギリこの街にいるはずだ。
 とはいえ、冒険者は危険と隣り合わせ、魔物にやつが殺されている可能性もあるし、自身の限界を感じてさっさと故郷に逃げ帰った可能性もある。
 さすがの俺も、誰かに祈らずにはいられない……。

 俺はそう考えながら、ギルド内を見てみる。
 ギルドの中は、まず正面に受付があり、そこには美女が数人座っていて、冒険者たちの相手を次々にこなしている。
 こういうところってどの世界も一緒なんだな。
 俺が前世で読んだり見たりした異世界物の光景そのものであった。
 次に左側を見る。そこには、掲示板のようなものがあり、その前で冒険者たちが真剣な表情で見ていた。
 依頼の掲示板ってところか、これもよくあるやつだな。
 っで、右側は酒場、ではなく休憩とか打ち合わせをするのか、椅子が並んでいたり、机がいくつか並んでいたりの光景だった。
 俺としては興味はあるのでいろいろと観察したいところだが、下手にきょろきょろすると目立つし、絡まれても面倒だ。
 ということで、端の方に向かい前世で培った能力、”話しかけるなオーラ”を出しつつ、簡単な認識阻害の魔法を発動させる。
 ちなみに、この認識阻害の魔法だが、全く気が付かれないようにするというものではなく、にくくするだけの魔法だ。
 まぁ、それと前世からの能力と合わせえば、基本絡まれることはないようだけどな。
 さて、奴は来るか……おっ、ありゃぁ、よしっ!

 俺は内心、小躍りしたい気分となった。
 なんといっても、今俺の前には、忘れもしない俺を売り払いやがったクソ野郎がいる。
 今すぐ、飛びついてぶん殴ってやりたいところだが、今は我慢だ。
 こんなところで暴れれば面倒なことになるのは明白、だったら、奴が何か依頼を受け街の外に出たところが良いだろう。
 というわけで、俺はやつから目を離さないように観察していった。

 どうやらあの野郎、しっかりと冒険者人生を楽しんでいるらしい。
 奴の周囲にはガタイのいい少年と、それなりに可愛いんじゃないかという少女が2人いた。
 そんな連中を観察する。
 ガタイが良い奴は、その背中に背負っている大きな盾から考えると、タンク役ってところか。
 少女の2人のうち1人はシスターみたいな恰好をしているところを見ると回復役かな、っで、最後の1人はローブを身にまとっていることから魔法使いかな。でも、その腰にはダガーが2本ぶら下がっているから、接近戦も行けるタイプかな。
 そんな仲間とともに楽しんでいやがるクソ野郎、しかも見た感じどうやら魔法使いの少女とできているのか、ことのほか仲がよさそうだ。
 人を地獄に突き落としておいて、てめぇはよろしくやってるってか、ざけやがって。
 奴を見れば見るほど腹が立ってしょうがない。
 ほんと、今すぐにでも恨みをぶつけたい気分だが、ここは元大人としても我慢だ。
 漏れ出そうな怒りのオーラで気が付かれないように深呼吸をする。

 すぅー、はぁー、よしっ。

 こうして、俺が怒りを抑えている間にやつらは依頼を見つけたのか受付へと向かって行った。
 その後、ギルドを出ていくやつら、俺もまたそんなやつらを追いギルドを出ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...