メルトアイネ

夢限

文字の大きさ
上 下
13 / 23
第02章 異世界転移

第03話 ダンジョン内状況

しおりを挟む
 円卓のある部屋へ戻ってきた俺たちは誰ともなくため息が漏れた。

「なぁ、これってやっぱり、そういうことだよな」
「認めたくはないけど、さすがにね」
「この体は間違いなく本物だよな」
「うんうん、間違いないよ」
「たとえ偽物でも、おかしいだろ」
「言えてる」
「ほんと、なんなんだろうね。これ?」
「まったくだ」

 みんな口々にそういった。俺も同感でこの状況の意味が分からない。

「とにかく、明日昼になればセビスチャンたちが帰ってきて……あっしまった!」
「な、なに?」
「ああいや、俺セビスチャンに調査を命じたけど、考えてみたら今、夜なんだよな。あの命令じゃ下手したら夜通しでやるんじゃないか」
「あっ!」
「た、確かに」
「ミスったな」
「ああ、ええと、大丈夫じゃない。帰ってきたらちゃんとねぎらってあげようよ」
「だ、だな」

 なれないことはするものじゃないな。まさかこんなミスをしてしまうとは、さてどうしたものか。

「ああ、俺たちはどうする」
「私たちも付き合って徹夜する」
「無理、ていうかそろそろ眠い」
「そうだよね」
「仕方ない、セビスチャンたちには明日謝るとして俺たちは寝るか」
「そだね。そうしよ」
「だな」
「そうすっか、ふわぁ」

 みんなもう30代超えているから、おっとまずいルナ3ににらまれた。ルナ3はまだ20代だったな。とにかくみんなもう夜更かしができる年齢ではない。いや無茶すれば可能だけど、ここはその時ではないからな。というか精神的にもつかれた。

 そういうわけで俺たちはそれぞれの部屋へと引っ込んだのであった。




 翌日時計を見て驚いた。いや、別に寝坊したとかではない、時間は8時あたりだ。それじゃ何が驚いたかっていうと、現実時間の方、俺の部屋にはゲーム内時間と現実時間の両方の時計がある。普段ならその時間の流れは全く別で、現実時間の方がかなりゆっくり動いて見える。しかし今は双方全く同じだった。つまり現実時間も8時というわけだ。

「ほんと、これが夢だったならよかったんだけどな」

 昨夜はこれが夢で目が覚めたら現実に戻っているといいなと願っていたが、その願いもむなしく朝起きても寝た時と同じダンジョン内であった。

「あっ、おはよ。夢じゃなかったね」
「ああ、おはよう。ほんとにな」
「なんだろうね。これ」
「わからない」

 起きてきたフローレンとそんな会話をしているとみんながぞろぞろ起きてきた。

「みんな起きたみたいだな」
「ああ、起きたけどよ。どうすんだ」
「それこそ、昼になったらセビスチャンたちが帰ってくるからいろいろわかるだろ。それまでは……どうする?」

 正直言って昼まで俺たちがすることはない。だからといってセビスチャンたちに朝までに帰ってこいじゃさすがにブラックだ。とはいえ、このまま何もせずというのもそれはそれで落ち着かないし、働いてくれているセビスチャンたちに悪すぎる。

「何もしないというわけにもいかないし、私たちは私たちで調査した方がよさそうね」
「だな、それじゃそれぞれこの状況の調査をして、セビスチャンたちが帰ってくる昼前に集まるってことにするか」
「そうね。そうしましょ」

 そういうことになり俺たちはそれぞれ得意分野を生かして、この状況の調査を行うことにした。

 そうして、昼前それぞれ調査をしていた面々が再び円卓のある部屋へと集まった。

「それで、みんな何かわかったか?」
「一応ネットの状況見たけど、だめだなあれ。完全にシャットダウンされてる」
「何をしてもつながらない。というかたぶん、ううん間違いなくここにはネット環境そのものがないと思う」

 SEをしているガルマジオとフローレンの2人がそういうのなら間違いないのだろう。
 その後いくらかの報告が上がり、それに対してそれぞれの意見が出し合った。その結果やはり昨日言っていた異世界転移というのが濃厚になってきた。しかし結論を出すのはまだ早い。セビスチャンが帰ってきてダンジョン内はもちろん外の情報も入る。そこからでもいいだろう。

 そう思っていると、不意に扉がノックされて、はいるように促すと、セビスチャンと最下層守護者にして、守護者統括を任せているルシファーラが入ってきた。ルシファーラという名は、もちろん悪魔ルシファーからとっている。ではなぜそのままにしなかったのかというと、例のごとくすでに使われていたからだ。ちなみにその容姿は大きな角を持ち、身長2m80はある巨大で背中には黒い翼をもつ、まさに堕天使な格好だ。尤もこの姿は普段の姿であり、本来の姿は何というか結構ラスボス感ある姿をしている。やっぱりラスボスなら変身位するだろ言う遊び心だ。

「いいところに来たな。報告を頼む」
「はっ」

 俺の言葉を受けてセビスチャンとルシファーラが跪いた。こう見るとこの2人の基本部分は変わっていないようで安心する。ここがもし異世界であるということを考えると、俺たちはゲームのシステムから外れているということ、それならこいつらもNPCではないという可能性が高い。尤もそうなると何なのかということにもなるんだけど。とまぁそれはいいとして、さっそく報告を聞こう。

「ではまずは我から説明をさせていただきます」

 そう言って顔を上げたルシファーラ、一人称は我、これは統括という立場からそう設定した。

「ダンジョン内を探索した結果、放っている魔物を含め異常ありません」

 どうやらダンジョン内の異常はないみたいでそれはよかった。となると異常があるのは俺の後ろの扉だけか。

「そうかそれはよかったが、お前たちも異常なしか?」

 タナートスが訪ねた。ゲームのシステムから外れたと思われるNPC達に何か異常がないか気になっているのであろう。

「心使い痛み入ります。確かに昨日より異変は感じますが、悪いものではないと確信しております。そして、今後も一層皆様への忠誠を誓います」

 タナートスの何気ない一言に感動したのかルシファーラの声が若干震えている。

「お、おう、問題ないならいいが」
「だな。ああ、でもあとで守護者たちをいったん集めてもらえるか、俺たちも一応目視で確認したいし」
「かしこまりました」

 こうしてルシファーラの報告が終わったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...