上 下
14 / 117
〜シンデレラガール〜

華麗なる変身

しおりを挟む
 私はクリスの家に到着するなり、奥の部屋に通された。部屋に入ると両サイドにズラリとメイド達が並んでいた。

「この方たちは一体?」

 私がクリスに聞くとクリスは優しく笑って言った。

「君に学園の制服をプレゼントしたくてね」

「え? そ……そんな、悪いわ……」

「いや、だめだ。今日は絶対に受け取ってもらうからね」

「え……でも……」

 私がどうしていいか考えていると、クリスは無理やりメイドたちに命令した。

「さあ早く! ティアラを採寸してください」

 クリスがそう言うと私はあっという間にメイドたちに取り囲まれてしまった。

「僕はここから出ていくけど、ティアラは採寸が終わるまでこの部屋から出られないからね」

 そう言うとクリスは部屋を出ていった。

 メイドたちはなれた様子でテキパキと私の体の採寸をしていった。採寸を終えたメイドは次々に部屋から出ていったので、私は一通り採寸を終えると一人部屋に取り残されていた。すると部屋の扉が開きクリスが入ってきた。

「明日までには出来上がるから、朝一番でメイドに届けさせるよ」

「お金は? 今は持ち合わせが無いので届けてもらった時でいいかしら?」

「お金はいらないよ。プレゼントしたいんだ」

「でも……」

「いいんだよ。君の作ったカイロや石鹸でうちのパープル商会もかなり稼がせてもらっているんだ。その御礼にプレゼントしたいんだ」

「ほ……本当にいいの?」

「いいんだよ。これでも安いくらいだよ」

「クリス、ありがとう」

 私がそう言うとクリスは満面の笑みで答えてくれた。私は制服を着れることが嬉しくて明日の朝が待ち遠しく思った。

 ◇

 次の日の朝、クリスの家のメイドが数人我が家にやってきた。服を届けるだけなのになんで複数人のメイドが来たのかわからなかったが、メイドたちを家に上げるとすぐに分かった。その中のひとりがメイク箱を持っていた。そのメイドはメイクアップ専門のメイドで服を着せたあとにメイクを施すように言われているそうだ。

 私はここで断ってもせっかくわざわざ来てもらったのに悪いと思い、メイクをしてもらった。私は前の世界でもメイクは数える程度しかしていないのでイマイチわからないが、その私でもこのメイドの手付きは素晴らしいと思えるほど卓越した技術だった。

 メイクを終えると同時にエリカが家に来た。昨日別れ際に朝一緒に登校しよう約束していたのだ。

 私はメイクをした自分の顔が気になったが、友達を待たせるのは悪いと思い、急いでクリスからもらったばかりの制服に着替えると、エリカのもとに走って行った。

「おはようございます」

「………………」

 エリカは私の顔を見るなり挨拶もせずに固まっていた。

「エリカどうしたの?」

「え……あ……テ……ティアラ様こそどうしたんですか?」

「ああ、クリスのところのメイドさんが来てメイクをしてくださったの、似合わないかな?」

「す!…すごいですぅーーー!!」

「え!? どうしたのエリカ?」

「どうしたもこうしたもないですよーー! ティアラ様。鏡で自分の顔ご覧になりました?」

「いえ、まだ見てないわ。そんなに変かしら?」

「何言ってるんですか! 逆ですよ! めちゃめちゃ可愛いですよーーー!! 絶世の美女、こんなに綺麗な人見たこと無いですよ!!」

「ほ……本当に? からかってないよね?」

「嘘だと言うんなら、ほら、鏡で自分の顔をご覧になってくださいよーー」

 エリカはそう言うとカバンから手鏡を出して私に渡した。私はエリカから受け取った手鏡で自分の顔をみて驚いた。元からティアラの顔はきれいで整った顔つきだったので、そんなに変わらないだろうと思っていたが、想像以上にきれいになっていた。前世でも余裕でモデルになっていただろうと思えるほど綺麗だった。そばにいたメイドたちも私の顔を見てウットリした表情になっているのが分かった。

「ど……どうしようこんな格好で登校して大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ、メイクは淑女の嗜みですので、校則違反では無いですよ」

「そ……そいう問題かな?」

 私とエリカが話しているとレンがやってきた。

「おい、おはよ……ん?!」

 レンは私の顔をみて絶句して固まった。

「レン、おはよう」

 私はレンに挨拶してレンの制服姿を見た。私がお願いした金の飾緒しょくしょ付きの校章をしていてプレートアーマーの制服がレンのがっしりした体型にとても似合っていた。

「レン、制服とても似合っているね」

「あ……ありがとう……テ……ティアラも……か……可愛いな……」

 レンはそれだけ言うと真っ赤な顔をして目をそらした。私も男の人から可愛いと言ってもらってすごく恥ずかしかった。

「と……とりあえず学園に行きましょう」

「そ……そうだな」

 私達が二人で行こうとするとエリカが興奮して言って来た。

「金の飾緒の校章を付けた男子学生と絶世の美少女のカップルが登校したらパニックになりますよ」

「そ……そんな。大げさよ……」

 私はまさかそんなことが起こるとは思っていなかったが、残念ながらエリカの言ったことが現実になることをこのときの私は知るよしもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法の華~転移した魔女は勘違いされていても気づかないわよ?~

マカロン
ファンタジー
ここに、美しく怪しい魔女がいた。 彼女は町の皆が恋い焦がれるほどの美女だった。時には賢者のような賢さに恐ろしさを感じさせ、時には男を無邪気に、妖艶に振り回す。すべてわかってやっているからたちが悪い。それでも、俺たちは彼女に愛を囁く。彼女を護る。彼女に従う。それが彼女のお望みだからーーーーーーーーーーー。 「えっ、ちょっと待って……?」 やることなすこと勘違いされる、 不憫な異世界に飛ばされた女性のお話。 剣やら盾やら出てくるこの世界。ふと起きればそんな世界へ迷い込んでいた。 いつのまにか魔法が使える、 チートライフここに極まれり!! しかも女性が少なく貴重っ!!?転生して肌と髪が綺麗になったら絶世の美女判定されたわっ!?  え、魔女?女神?ちがいます普通の人間の女の子です!誰一人本名で呼んでくれないのはどうして!? 気がつけば、森の奥の大きな館に住む魔女となり……女性の少ないこの世界で、唯一の妖艶な魔女として君臨し、動物も人も踊り出す。 コミカル要素、ミュージカル要素満載!そんなラブコメ小説。 王族、貴族、精霊、魔神、弟子…なんでもござれ!

普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ
ファンタジー
いたって普通の女子高生・花園 アリス。彼女の平穏な日常は、魔法使いを名乗る二人組との邂逅によって破られた。 異世界からやって来たという魔法使いは、アリスを自国の『姫君』だと言い、強引に連れ去ろうとする。 心当たりがないアリスに魔の手が伸びた時、彼女を救いに現れたのは、魔女を名乗る少女だった。 未知のウィルスに感染したことで魔法を発症した『魔女』と、それを狩る正統な魔法の使い手の『魔法使い』。アリスはその戦いの鍵であるという。 わけもわからぬまま、生き残りをかけた戦いに巻き込まれるアリス。自分のために傷付く友達を守るため、平和な日常を取り戻すため、戦う事を決意した彼女の手に現れたのは、あらゆる魔法を打ち消す『真理の剣』だった。 守り守られ、どんな時でも友達を想い、心の繋がりを信じた少女の戦いの物語。 覚醒した時だけ最強!? お伽話の様な世界と現代が交錯する、バイオレンスなガールミーツガールのローファンタジー。 ※非テンプレ。異世界転生・転移要素なし。 ※GL要素はございません。 ※男性キャラクターも登場します。 ※イラストがある話がございます。絵:時々様( @_to_u_to_ )/SSS様( @SSS_0n0 ) 旧タイトル「《ドルミーレ》終末の眠り姫 〜私、魔女はじめました〜」 ※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載中。

【完結】元ヤンナース異世界生活

川原源明
ファンタジー
回復魔法の存在しない世界で医療知識を活かした異世界生活 交通事故で、子どもを庇って命を落とした。元ヤンキーの看護師、進藤 茜 創造神の態度に納得いかずにクレームをつける!すると先輩の神と名乗る女性が現れ一緒に謝罪 謝罪を受け取ったと思ったら…話も終わってないのに…異世界に飛ばされる…あのくそ女神! そんな思いをしながら、始まる元ヤンナース茜の異世界生活 創造神と異界の女神から貰ったチート能力を活かした 治療魔法を使って時には不治の病を治し、時には、相手を殺す… どんなときも、周りに流されないで自分の行きたい道を! 様々な経験を積むうちに内なる力に目覚めていく…その力とは… 奴隷商で大けがしてる奴隷を買って治療魔法で回復させ、大けがをさせた元凶討伐をしたり、 王国で黒死病治療に関わったり お隣の帝国の後継者争いに巻き込まれていく… 本人は、平穏な生活を望むが、周囲がそうさせてくれない…

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~

イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?) グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。 「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」 そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。 (これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!) と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。 続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。 さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!? 「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」 ※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`) ※小説家になろう、ノベルバにも掲載

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...